或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

放浪記

2008-11-01 08:13:35 | 010 書籍
今日は門司旅行シリーズの番外編。有名スポットの旧門司三井倶楽部を見学した時のこと。2Fには林芙美子資料室との案内が。100円という格安の料金もあってすんなり入場。でも、門司とはどういう関係なんだろう?。というのも彼女の自叙伝として有名な「放浪記」の冒頭には、下関の生まれだと書いてあったような気がしたから。

展示してあった略歴をみると、門司の小森江で生まれたとある。小森江は門司港から数km離れた所にあって、ここの高台にあるイタリアンの店を夕食の予備として検討していたので位置はしっかり頭に入っていた。家に戻ってネットで調べると、門司在住の医者が指摘したらしい。当時すでに放浪していたので、彼女自身もよく知らなかったのかもしれない。

意外だったのが晩年に夫婦で絵を楽しんでいたこと。資料室にも作品が飾ってあった。上の写真はその中の1枚で彼女が描いた油彩の自画像。正直シロウトの域を出ていないけど、自分でもいつか絵を描きたい気持ちがあって、妙に親近感が湧いたのは確か。どうもこれまで悪いイメージがあったなあ、彼女には。女流作家として有名になった後、後進が自分を追い抜くのではと妨害工作までしていたという話を聞いていて。話を聞くにつけ自己中で激しい気性の持ち主という印象がつきまとった。

それが今回改めて彼女の一生をたどると、流浪の中でたくましく生きていたことの方に少し目が向いて。そう言えば女学生時代を過ごした尾道の千光寺公園に下の写真の石碑があって名所になっている。「海が見えた。海が見える。五年振りにみる尾道の海はなつかしい。汽車が尾道の海へさしかかると、煤けた小さい町の屋根が提灯のように拡がって来る。...」、という「放浪記」の中の一節。なんかウン十年も続いている森光子の舞台でも観ようかという気分になってくるから不思議。

それと映画にも興味を持った。成瀬巳喜男監督が彼女の作品をシリーズ化しているらしいので。なかでも晩年の「浮雲」(1955年)は傑作とか。でも主演が高峰秀子なんて、岸恵子よりさらに昔に遡ることになりイマイチ気が乗らないけど、まあいいか。


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