
(承前)
道庁赤れんがを正面にのぞむ、札幌市北3条広場、通称「アカプラ」で毎年さっぽろ雪まつりと同時期に開かれている「SAPPORO YUKITERRACE(サッポロ・ユキテラス)」。
今年で6度目だそうです。
東側(駅前通側)に「体験ゾーン」を、西側(道庁側)に「鑑賞ゾーン」を配置し、体験ゾーンでは、スノーボードで滑ったりスープカレーを食べたりできるようになっていたようです。

鑑賞ゾーンのほうは、建築家の五十嵐淳さんが会場設計。
迷路のような、各作家の独立性を生かしつつ回遊性もあるおもしろい空間をつくりあげました。
参加作家は、会田大也、樫見菜々子、時里 充+福留麻里、早川祐太。
映像プログラムとして大﨑のぶゆき、斉藤 幹男、高橋喜代史の3氏の名が挙がっており、これは、SCARTSと行く順番を間違えたかなと思いました。
見られなかったのが残念です。
さて、冒頭と3~5枚目の画像は、地元の樫見菜々子さん。
題名をどこにメモしたのか分からなくて、すみません。
樫見さんの作品は、雪の壁に小さなくぼみを、何カ所かあけて、その中に小さなオブジェを配しているというもの。
内側からライトで照らしているので、小樽の「雪あかりの路」を思い出させますが、あれよりももっと小さくて、顔を壁に近づけないと、中に何が設置してあるのかわからないほどです。
3枚目の画像は、庭木の冬囲いを模しているのでしょうか。
それぞれのくぼみは何十センチも離れているので、全体を1枚の写真に収めようとすると、なかなかうまくいきません。

おかしな言い方になるかもしれませんが、樫見さんの作品ほど「ささやかであること」において徹底しているものはめったに無いでしょう。
小さくて、弱くて、ささやかな世界。
それは、マッチョで、威圧的で、大上段に世界とかかわろうとする多くのアートに対する、かすかな、しかしたしかな批評たりえているようにも、筆者の目には見えてきます。
小文字のアートの、小さくない意味。
冷たいはずの雪が、心を寄せるに足るあたたかい物質ではないかと思えてくるのです。
それぞれの小さなくぼみが「かまくら」にちょっと似て見えるせいなのかもしれません。
もう一人、取り上げたいのが早川祐太さん。
ホログラフィーにも似て、写真に撮ろうとするとうまくいきません。
チラチラとした光が、炎のように躍っているという作品です。
気がつくと、その炎は4~5メートルの高さのところまで立ち上っています。
ただ、ギラギラした光ではないので、筆者が会場にいて見ていたときには、8割以上の人は単に歩いて通り過ぎるばかり。
足を止めて見ている人は1人か2人しかいませんでした。
(みんな、何をしにここに来ているんだろう)
おそらく、雪面の上に取り付けられた光源が回転しているので、光の炎もちらちらと動いているように見えるのだと思われました。

清岡卓行の詩集「凍った炎」を思い出しました。
ところで、このユキテラス、雪や氷を生かしたアートのイベントとしては札幌を代表するものの一つになった感がありますが、次回は「札幌国際芸術祭2020」の会期末にぶつかります。
これまでと同様に実施するのか、それとも、札幌国際芸術祭のプログラムのひとつになったり、関連する催しのひとつに位置づけられたりするのでしょうか?
2020年2月2日(日)〜 9日(日)正午〜午後8時(映像プログラムは午後5時〜)
札幌市北3条広場“アカプラ”(中央区北2~3 西4)
□ @hayakawa1020
関連記事へのリンク
■SAPPORO YUKITERRACE 2019(さっぽろユキテラス2019)
■−雪と光のプロジェクト− SAPPORO YUKITERRACE さっぽろユキテラス2017
■雪と光のプロジェクト さっぽろ ユキテラス2015

【告知】樫見菜々子 「風がやむ」 (2012)
■あな展 樫見菜々子 (2010年)
■遅れてくる風 樫見菜々子個展 (2009年7月)
■樫見菜々子個展「そらの跡」(2009年3月)
■500m美術館(2008年11月)
■樫見菜々子展 『水々しい秘密』(2004年)
■樫見菜々子『なぜ鳥と目が合ったか』 -- 色 匂い 音 湿度 の一致した『その時』--(2004年)
道庁赤れんがを正面にのぞむ、札幌市北3条広場、通称「アカプラ」で毎年さっぽろ雪まつりと同時期に開かれている「SAPPORO YUKITERRACE(サッポロ・ユキテラス)」。
今年で6度目だそうです。
東側(駅前通側)に「体験ゾーン」を、西側(道庁側)に「鑑賞ゾーン」を配置し、体験ゾーンでは、スノーボードで滑ったりスープカレーを食べたりできるようになっていたようです。

鑑賞ゾーンのほうは、建築家の五十嵐淳さんが会場設計。
迷路のような、各作家の独立性を生かしつつ回遊性もあるおもしろい空間をつくりあげました。
参加作家は、会田大也、樫見菜々子、時里 充+福留麻里、早川祐太。
映像プログラムとして大﨑のぶゆき、斉藤 幹男、高橋喜代史の3氏の名が挙がっており、これは、SCARTSと行く順番を間違えたかなと思いました。
見られなかったのが残念です。

題名をどこにメモしたのか分からなくて、すみません。

内側からライトで照らしているので、小樽の「雪あかりの路」を思い出させますが、あれよりももっと小さくて、顔を壁に近づけないと、中に何が設置してあるのかわからないほどです。
3枚目の画像は、庭木の冬囲いを模しているのでしょうか。
それぞれのくぼみは何十センチも離れているので、全体を1枚の写真に収めようとすると、なかなかうまくいきません。

おかしな言い方になるかもしれませんが、樫見さんの作品ほど「ささやかであること」において徹底しているものはめったに無いでしょう。
小さくて、弱くて、ささやかな世界。
それは、マッチョで、威圧的で、大上段に世界とかかわろうとする多くのアートに対する、かすかな、しかしたしかな批評たりえているようにも、筆者の目には見えてきます。
小文字のアートの、小さくない意味。
冷たいはずの雪が、心を寄せるに足るあたたかい物質ではないかと思えてくるのです。
それぞれの小さなくぼみが「かまくら」にちょっと似て見えるせいなのかもしれません。
もう一人、取り上げたいのが早川祐太さん。
ホログラフィーにも似て、写真に撮ろうとするとうまくいきません。
チラチラとした光が、炎のように躍っているという作品です。
気がつくと、その炎は4~5メートルの高さのところまで立ち上っています。
ただ、ギラギラした光ではないので、筆者が会場にいて見ていたときには、8割以上の人は単に歩いて通り過ぎるばかり。
足を止めて見ている人は1人か2人しかいませんでした。
(みんな、何をしにここに来ているんだろう)

おそらく、雪面の上に取り付けられた光源が回転しているので、光の炎もちらちらと動いているように見えるのだと思われました。

清岡卓行の詩集「凍った炎」を思い出しました。
ところで、このユキテラス、雪や氷を生かしたアートのイベントとしては札幌を代表するものの一つになった感がありますが、次回は「札幌国際芸術祭2020」の会期末にぶつかります。
これまでと同様に実施するのか、それとも、札幌国際芸術祭のプログラムのひとつになったり、関連する催しのひとつに位置づけられたりするのでしょうか?
2020年2月2日(日)〜 9日(日)正午〜午後8時(映像プログラムは午後5時〜)
札幌市北3条広場“アカプラ”(中央区北2~3 西4)
□ @hayakawa1020
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■樫見菜々子展 『水々しい秘密』(2004年)
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(この項続く)