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■中村善策没後40年・記念ホール開設35年 中村善策と「加賀の北前船主・西谷家」/中村善策の2つの故郷 小樽と信州 (2023年10月21日~12月28日、小樽)=2023年12月3日(2)

2023年12月06日 22時35分15秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(承前)

 中村善策(1901~83)は小樽生まれの洋画家で、戦前は二科に出品、戦後は日展参事、一水会運営委員として活躍しました。明快な色彩と、独特な構図による風景画で知られます。
 市立小樽美術館は改修後、展示室が三つになり、2階がメインの展示室で、1階を中村善策記念ホール、3階を一原有徳記念ホールとしています。この会期中は2階も中村善策の絵が飾られており、珍しく2室での大展開となっています。

 1階の「北前船主・西谷家」という主題はどこかで聞いたことがあると思ったら、2018~19年にもこの会場でコーナー展示「北前船主 西谷家と中村善策」を見ているのですね。
 西谷家は江戸期から明治にかけて、小樽を拠点に樺太まで交易を広げた大船主で、中村善策のパトロンとして、若い彼に画室を提供するなどして支えました。戦後は加賀(石川県)に拠点を移しました。
 今回は、スペイン風邪のため19歳の若さで世を去った西谷正子の櫛やこうがい、婚礼道具などがたくさん並んでいます。

 なおこの話題については、地元の「WATASHI-BRAND 編集室」が発行している小さな季刊誌「OTARU Ture * Dure」27号で「本物のお嬢さまがいた頃」と題して特集されています。
 300円で、市立小樽美術館のギャラリーショップ、紀伊国屋書店の札幌本店・小樽店、喜久屋書店ウイングベイ小樽店、江別蔦屋書店などで販売中です。

 さて、1階の見どころは、善策の初期の絵が数多くあること。1922~36年(年代不詳の作も含む)の20点が展示され、筆者が初めて見る作が半数以上を占めました。
 1922年(大正11年)の作は「林檎園の一隅」。小樽か、となりまちの余市あたりでしょうか。
 25年「マリア館のある風景」。この絵は以前も見ましたが、マリア館が小樽なのか東京なのか判然としません。

 30年代は「国会議事堂風景」(32年)、「下落合の家」(年代不詳)、「江戸橋夕景」(33年)、「和田倉門付近」(34年)、「漁村(外房太海)」(年代不詳)、「隅田川蔵前橋」(同)と、東京やその周辺の小品が続きます。
 また、工藤三郎の初期とおぼしき絵「鰊漁場」など3点、中野五一の首なども展示されています。

 2階は1939年「山湖のほとり」以降の作品。
 こちらは、すでに一度は見たことがある絵が大半です。
 前半の18点は信州を、後半の18点のうち16点は小樽を描いています。

 晩年の「虎杖の丘にて」(1978)は、小樽の画家金丸直衛が善策に「石山から長橋を見たあたり」と現場探しを依頼され、見事その場所を突き止めて地図とともに先輩画家に送ったという一枚。東京にいても、小樽の風景のことをよく記憶していたことがわかるエピソードです。


2023年10月21日(土)〜12月28日(木)毎週月曜日、11月7日・24日休み、午前9時30分~午後5時(入場30分前)
市立小樽美術館(小樽市色内1)

過去の関連記事へのリンク
中村善策と小樽・風景画の系譜 (2018~19)
小樽洋画研究所と中村善策 (2016)
中村善策ギャラリーを見る (2014)

中村善策の全貌展 (2008)

中村善策と道一水会系の画家たち (2003)
北の個人美術館散歩-風土を彩る6人の洋画家たち (2002)
=いずれも画像なし



・JR小樽駅から約720メートル、徒歩9分

・都市間高速バス「高速おたる号」などを「市役所通」で降車、約680メートル、徒歩9分



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