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中村善策ギャラリーを見る

2014年09月16日 22時14分30秒 | つれづれ日録
(承前)

 改修後の市立小樽文学館・美術館をきちんと見るのは、じつは初めてである。

 1階の中村善策ギャラリーは、あまり変わっていないように見受けられる。
 現在の所蔵品展のテーマは「信州」。
 中村善策は小樽生まれの風景画家だが、上京後、戦中は長野県に疎開し、その後もたびたび取材旅行に訪れるなど、縁の深い土地のようだ。

 小樽の美術館であるから、これまでは北海道の風景を題材にした作品の展示がいきおい多くなっていたと思われ、今回はじめて目にする作品がけっこうあって、個人的には新鮮な展覧会であった。

 手前がおおきく開けて広さを感じさせる川原がモティーフの作品があるかと思えば、「北海道風景」(今回は出品されていない)のように手前に木などを配置してあえて奥行きをふさぐような構図の作品もあり、なかなか一筋縄ではいかない画家だと、あらためて思う。前者には「高瀬河原」「夏」「朝雲」があり、とくに「朝雲」は「夏」の再制作といってもさしつかえなさそうなくらい、似ている。
 後者は「山の国」が該当する。また「村の散歩道」は、中央を流れる黒い帯は散歩道ではなく、小川だと思われるのだが、いささか強すぎて、全体から浮き上がって見える。どうしてこんな濃い色に川を塗ったのだろう。

 1947年の「夏寂」は、ゆるやかにカーブを描く川をモティーフにした作品。戦争直後の代表作ともいえる一作だけに、何度も展示されている。これは、見る人の視線を奥へとたくみに誘導する。この仕掛けが、風景画の良さだと筆者は思うのだが、中村善策の場合は、それをあえてやらない作品があるので、かえって「何かある」と思ってしまうのだ。




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