A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

仏蘭西の怪奇骨董音楽機械職人『Frédéric Le Junter フレデリック・ル・ジャンテ』

2018年08月13日 00時37分14秒 | 素晴らしき変態音楽


YouTubeやSpotifyで出てくるおススメ動画や関連アーティストを時々視聴してみるとユニークな音楽との出会いがある。Frédéric Le Junter(フレデリック・ル・ジャンテ)という仏蘭西人アーティストを発見したのは2ヶ月ほど前だった。出会ったきっかけが何だったか覚えていないが、いつか紹介しようと思ってチェックしたまま忘れかけていた。



Frédéric Le Junter(フレデリック・ル・ジャンテ)1956年フランス、ダンケルク生まれ。第二次世界大戦のダンケルクの戦いで知られるドーバー海峡を臨む港湾都市で、波止場の海運機器の巨大な造形とそれらが発する様々な音に囲まれて育ち、5歳の頃から紙や日用品で音の出る玩具を作りはじめたという。十代でラジオでイギリスのロックバンドを聴いて音楽に夢中になる。

28歳の頃に再び工作をはじめ、様々な芸術分野を跨がる楽器、機械、作動環境、素材の音楽機械を作製した。ジャンテは言う。「私は道具、シンプルな楽器、音のプロトタイプを作るのが好きだ。私は演奏のプロではないが、必要に応じて即興的に一瞬の不安と驚きを与える」。

Frederic Le Junter - paysage portuaire - harbour soundscape

「波止場のサウンドスケープ」80年代初期、最初に作ったサウンドマシーン・シリーズ。港湾機器の仕組みを模した素朴な音響インスタレーション。

Frederic Le Junter - discrètes

「控えめな回転」1992 魅力的な村の音、回転板をランダム発生器として使用。

Frederic Le Junter- axe machine 73

「斧の機械73」

Frederic Le Junter MAsses Césaré 2012 Reims

MAsses Césaré 2012 振子玉を使ったパフォーマンス

スクリーンを使ってヴォジュアル面でメッセージを伝える作品もある。

Frederic Le Junter A l'ombre du dessicateur

『ドライヤーの影』

野外での規模の大きいインスタレーションもある。

Frédéric Le Junter Avec le Vent

『風と共に』2015 風のインタレーション ヨーロッパ文化センター

自作音響機械を使ってのライヴパフォーマンスは人間味溢れるテクノイズ風の演奏。

Frédéric Le Junter - 18 V 2017 - La Malterie, Lille

2017年4月18日 リール、ラ・マルテリに於けるライヴパフォーマンス

とにかくレトロな素材を使った音響機械の奏でる音はノスタルジックなイメージに満ちていて、単なるアンビエントや音響オブジェとは異なる人間性に満ちあふれている。日本でも彼の作品が観れる日が来ることを願っている。

波止場にて
聴こえる歌は
マドリガル


公式サイト⇒Official Site


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【予告】8/19(日)開催:日本一マニアックなDJイベント『盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會Vol.16』+レア盤放出『中古盤魔市(中古レコード/CDセール)』

2018年08月10日 00時51分50秒 | 素晴らしき変態音楽


盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會Vol.16
2018.8.19 sun 渋谷DJ BAR EdgeEnd
18:00 Open/Start  Charge ¥1,000 incl.1drink

日本一マニアックなDJイベント
Avant-garde, Noise, Industrial, Dark Ambient, Neofolk, Punk, Hardcore, Idol, Black Metal, Middle-east, Ethnic, Ritual, Medieval, UnderGround,… Everything Weirdness About Music!

★来場者に日本一マニアックなZINE『盤魔殿アマルガム』無料進呈!

異端DJたちの聴かせどころ
●DJ Necronomicon aka 剛田武
PSFレコードの奥の院「パタフィジック・レコード&ムジクアトラク」、ESP,FMP,ICP,INCUSの意志を継ぐ即興レーベル「メタランゲージ・レコード」、十ニ音技法の元祖「アルノルト・シェーンベルク」、謎のカセットレーベルD.D.Recordsの宅録ノイジシャン「春日井直樹」、地下アイドルの秘宝たち「ハミシス/キスエク/さかさま/ネクロ魔」等、海老一染之助・染太郎師匠を見習っていつもより余計に回してみるつもりです。

Overhang Party - Live 2003 June 7 Silver Elephant -


HAMIDASYSTEM - 舞台に溶かされて (Official Audio)



●DJ Qliphoth aka 宇田川岳夫
俺の裡で鳴り止まない盤!
コレクター人生を振り返り、サイケ、プログレ、ジャパニーズロック、ノイズなどで皆さまの耳を楽しませる


●DJ Athmodeus aka 持田保
例えばラリー・レバンが"PSFレコードしばり"でDJをするとしたら?もしくはフランキー・ナックルズが"カム・オーガニゼーションしばり"でDJをするとしたら??無音の路上で黙々と踊り狂っていたノーネックブルースバンドの連中の脳内では何が爆音でプレイされていたのか???そんな無限大の幻想をくすぶらせながら今月もDJします(つまりいつもと同じ

Nik Pascal - Robot Rock



●DJ Paimon aka Moppy
暑い日が続いていますが、そんな中さらに暑いアジアのサイケをセレクトします。韓国、インド、タイ、インドネシア、カンボジア、ミャンマーなどなど。

산울림 제2집 [Full Album - 1978]



●DJ Bothis aka MSS
もはやコレクションすることが目的となり、手当たり次第あらゆる作品を購入していると、全く同じ作品が自宅のLP・CD棚に複数枚並んでしまうという怪現象が発生します。ジャケ買いなどと称して、己の直感を頼りに「ピン!ときた」アートワークの作品を購入して家に帰ると長年連れ添ったドッペルゲンガーがお出迎えというわけです。そりゃピンとくるはずですよ。何度も見てるんですから。
さて、今回はそんなドッペルゲンガーちゃん達の中でも選りすぐりのかわい子ちゃん達をグルングルン回していく予定ですので乞うご期待。具体的には「von thronstahl」などのマーシャル・インダストリアル。「Inade」などのダークアンビエント。さらに最近個人的に気になっている「shing02」「MAKKENZ」「NORIKIYO」などの日本語ヒップホップなども選曲します。ご来場お待ちしています。

Von Thronstahl - Bellum, Sacrum Bellum



●DJ Vaby aka 大場弘規
今回は得意なジャンルの1つでもあるジャップインディーで盤魔殿に相応しいマテリアルをチョイスしました!また普段は聴くことすらままならない超秘蔵レアトラックも...きっときっとあなたのハートをドキドキさせちゃいます!!




●DJ 憑琉陀ケ aka 鶴田恵一
DOMMUNE「現代ノイズ進化論」出張編です。ハードノイズに加えて 番組ではあまり紹介しない現在進行形の日本人アーティストをかけます。実は純粋なDJは初。トークでごまかせないツラさったら。アイドルちゃんもかけます。

現代ノイズ進化論9・パワエレ特集 #1


NOISECONCRETE x 3CHI5 ~ Document & Eyewitness【ノイズ三都物語 東京編】


NECRONOMIDOL - ABHOTH 白塗り百鬼夜行ドキュメント


盤を聴き
盤に恋して
盤に死ぬ

同時開催!盤魔殿DJの秘蔵コレクションを特価で放出。
『中古盤魔市~Disque Daemonium Market~』

盤魔殿レジデントDJが自らのコレクションから貴重なレア盤、名盤、迷盤、珍盤etcを特価にて出品。盤魔殿開催中、会場内で販売します。ここに上げたのは出品予定リストのごく一部。他にも多数出品予定。リスト随時更新します。

●DJ Necronomicon出品予定

V.A./Awa 沫 Foam Ylem 1981 クリアヴァイナル2LP
八十年代初頭の日本の無名アーティストのコンピレーション。NO WAVE、ポストパンク、インダストリアル、テクノ等アノニマスなサウンドは、VanityやD.D.Records、ピナコテカとも連動している。


19/JUKE / PIECES 1982 LP
現代芸術家の大竹伸朗によるジャンク/ノイズユニット「19/JUKE」の3rdアルバム。ボアダムスの山塚アイの愛聴盤として知られる。ジャンクミニマルノイズの初期傑作。ジャケ汚れのため特価。


MERZBOW/Batztoutai With Material Gadgets 1993 2CD
メルツバウの85,6年の録音作品を自らカットアップ/デコンポーズした二枚組CD。フェイクミュージックコンクレートと呼ばれ、ノイズとは一線を画す初期メルツバウの傑作。

●DJ Qliphoth出品予定
このうち幾つかは出します。


●DJ Bothis出品予定
最近好評の盤魔殿レギュラーDJ達による盤魔殿中古市では2014年に六本木スーパーデラックスで開催された阿木譲トークイベント「0g night: DO BLOOM IN THE SILENCE」において販売された限定コンピレーションCD「Various Artists - test I: i.a.m.y.o」を中心にお持ちする予定です。


●DJ Paimon出品予定
グランギニョル S/T LP
ピナコテカの中で最もロック色が強いバンド唯一の作品

青触器 1975-77 LP
高橋幾郎が1970年代に在籍していたバンド。

宇江須門左衛門Group/Kaleidoscope Dual Cosmos LP
LLEレーベル。ジャズロック。

Negasphere - Disadvantage LP
LLEからデビューしたプログレバンドのセカンドアルバム

V.A Sound Cosmodel LP
EP-4の佐藤薫監修による12カ国50アーティストによる音の饗宴。

精密機械 - S/T LP
須山久美子参加の地下ネオサイケバンド。

とうじ魔とうじ - 移動式女子高生 LP

なぞなぞ商会 - 美しい鮨 LP
名古屋のザッパ・インスパイア系コミックバンド

黒色テント ショーボート昭和 LP



販売価格は当日のお楽しみ。皆様のご来場をお待ちしています。
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【クラシックの嗜好錯誤】第二回:シェーンベルクはパレ・シャンブルクではないが、十二音音楽は十二弦ギターで弾ける。

2018年08月09日 01時43分37秒 | こんな音楽も聴くんです


クラシック音楽を時代順に聴いてくると必ず躓く言葉、それがが「十二音技法」である。無調音楽なら調性のない音楽と分かる。電子音楽も読んで字の如し。では十二音(英Twelve-Tone)とは?オクターヴが12の音から出来ていることはピアノの鍵盤を数えればわかる。ド・ミ・ファ・ソ・シ・ドの5音で構成される琉球音楽なら別だが、特に西洋音楽はすべて十二音ではないのか?子供の頃から半音階が好きだったこともあり、半音ずつ上がったり下がったりするグリッサンドは限りなく美しい音楽だと感じる。たぶん人生の中で最も十二音音楽に接近したのは、大学の卒業論文『終止音導出を手手掛かりとしたメロディ認知における調性感の研究』の実験であろう。オクターヴの十二の音をコンピューターの乱数でランダムな音列にしてMIDI音源で被験者に聴かせ、メロディらしく聴こえるかどうか、1〜5の点数を付けされる。ひとり50回×100人×3種類=15000通りの音列を点数ごとに分類しメロディを如何にして認知しているかの過程を分析するのである。経緯や背景については下記ブログに詳しいが、結果については大学の心理学研究室の卒業生終了論文データベースをあたっていただくしかあるまい。いずれにせよ、1986年を最後に十二音とはオサラバしたつもりであった。

Zwölftonwerbung - Twelve tone commercial

まずは 音で虚無に色をつけようか!!~.es「void」(ドットエス「ヴォイド」)

話は前後するが、高校時代にストラヴィンスキーやバルトークに触れて現代音楽に心ときめかした筆者は、大学へ入学するとフリーインプロヴィゼーションに夢中になって、晦渋な音楽理論で武装された現音から距離を置くようになった。その一方でフランク・ザッパやレコメン系チェンバーロックの影響でバルトークやメシアンやヴァレーズは『ロック』として聴いていた。大学2年生の頃、某歯科大のバンドマンと知り合いノイエ・ドイチェ・ヴェレ(ジャーマン・ニュウェイヴ)を教えてもらった。それまでドイツのロックと言えばニナ・ハーゲンとクラウス・ノミ、もしくはファウストやグルグルやCANしか知らなかったので、鋭角的なビートと素っ頓狂なエフェクト、そして躁鬱症のドイツ語ヴォイスに衝撃を受けた。特に驚いたのはPalais Schaumburg(パレ・シャンブルク)であった。

Palais Schaumburg - live - Wir bauen eine neue Stadt - 1981

百鬼夜行の回想録~洋楽ロック編第2回:パレ・シャンブルクと歯科大の思い出

パレシャンのサウンドに新鮮な面白さを感じる一方で、何処かで聴いたことがあるという確信めいたデジャヴを覚えた。ふと思い立って親父の古いレコード棚を開けてみて発見したのが、Arnold Schönberg(アルノルト・シェーンベルク)のレコードだった。曲名はフランス語の『Pierrot Lunaire(月に憑かれたピエロ)』。女性ソプラノ歌手が室内アンサンブルでキャバレー風のシャンソンをドイツ語で歌う、オシャレなのか野暮ったいのか分からない境界線上の音楽だった。同時期にベルトルト・ブレヒト&クルト・ワイルの『三文オペラ』のゼミを取っていたので、親近感を覚えると同時に、ワイルに比べて地に足が付いていない華奢な演奏スタイルは、クリムトやエゴン・シーレに通じる世紀末ウィーンの香りがした。

Complete performance: Schoenberg's Pierrot lunaire


また、イタリアに同名のPierrot Lunaireという凄まじい前衛プログレバンドが居ることを音楽雑誌『マーキー・ムーン』で読んだが、簡単に手に入らないアルバムだったので、シェーンベルクを聴いて勝手に想像していたことは懐かしい思い出である。後にCD化さた『Gudrun』を聴いたとき、シェーンブルクと近くはないが決して的外れでもないと感じ、名は体を表すという格言の正しさを知った。

Pierrot Lunaire - Gudrun (1977) Full Album


そんな訳でSchönbergを今でも「シェーンブルク」と読んでしまう癖が抜けないが、レコード店の現代音楽コーナーの隣にある「新ウィーン学派」コーナーに眠るシェーベルク、アルバン・ベルク、アントン・ヴェーベルンという三羽烏のレコードを発掘するのが密かな楽しみなのである。総じてオペラや歌曲は苦手だが、シェーンベルクの『ピエロ』や『グレの歌』をはじめ、ベルクのオペラ『ルル』『ヴォツェック』まで十二音/無調の歌ものは聴いていていも苦にならない。デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』の音楽キャバレーが19世紀末にあったなら、流れていた歌はこんな感じに違いない。そんなことを考えながら十二弦ギターのチューニングを半音ずつずらせば、十二音音楽が簡単にできるじゃないかと思いつき、ひとり昂奮して眠れない台風十三号来襲の夜である。

Arnold Schoenberg - Transfigured Night for String Sextet, Op. 4


【クラシックの嗜好錯誤】バック・ナンバー
第一回:ストラヴィンスキー/冨田勲/レジデンツ/フランク・ザッパ

シェーンベル
チェーンメールの
シャンデリア

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【私の地下ジャズ愛好癖】西海岸の不屈の即興チーム『ロヴァ・サクソフォン・カルテット』と『メタランゲージ・レコード』

2018年08月07日 00時53分02秒 | 素晴らしき変態音楽


JazzTokyo最新号にレント・ロムスが寄稿したアメリカ西海岸即興シーンのレポート『Notes from the West Coast Underground(ウェストコースト・アンダーグラウンド通信)』でロヴァ・サクソフォン・カルテットの名前を見たとき、頭に浮かんだのは「そう言えば西海岸にはロヴァが居たか、しかし未だやっていたとは驚きだ」という感慨だった。サフランシスコを拠点に活動するレント・ロムスと仲間たちのウェストコースト・アンダーグラウンド・シーンに接した時、最初に連想したのはサイケデリアやレジデンツやロサンゼルス・フリー・ミュージック・ソサエティといったロック界の地下住人ばかりで、ジャズ/インプロ界の重要レーベル「Metalanguage(メタランゲージ)」レコードのことをすっかり失念していたのである。
JazzTokyo ウェストコースト・アンダーグラウンド通信第一回
Disc Review『Rova Saxophone Quartet / In Transverse Time』

70年代末にパンクに衝撃を受け、ポストパンクやオルタネイティヴ・ミュージックに魅惑された高校時代、レジデンツに始まってポップ・グループやラウンジ・リザーズの流れから、フリージャズや前衛音楽に興味を惹かれた。オーネット、アイラー、サン・ラといったアメリカのフリージャズ・レジェンド、ベイリー、パーカー、ブロッツマンなどヨーロピアン・フリーミュージックの騎手、ケージ、ベリオ、ヴァレーズといった現音作曲家。評価の固まった歴戦の猛者が多かったが、彼らに混じって例えば吉祥寺や荻窪のライヴハウスで繰り広げられる十時劇場や即興道場に集まる無名の演奏家や、音楽雑誌の片隅で名前だけ触れられる海外の辺境ミュージシャンにも心躍ったものである。そんな新たな動きとして筆者の興味を掻き立てたのがサンフランシスコのメタランゲージ・レコードだった。パンク・ムーヴメントと同時期に頭角を現した若手即興演奏家の屈託のない笑顔と裏腹の過激な変態サウンドが印象的だった。

メタランゲージ・レコードは、1978年にカリフォルニア州バークレーでギタリストのヘンリー・カイザーとサックス奏者ラリー・オクスにより設立された自主レーベル。オクスが77年に結成したサックス四重奏団、ロヴァ・サクソフォン・カルテットのデビュー・アルバムを第一弾として、80年代前半までに20数枚のインプロ系作品をリリース。80年にはメタランゲージ即興音楽フェスティバルを開催した。

The Rova Saxophone Quartet With Henry Kaiser ‎– Daredevils
Metalanguage ‎– ML-105(1979)


1977年にジョン・ラスキン Jon Raskin(bs)、ラリー・オクス Larry Ochs(ts)、アンドリュー・ヴォイト Andrew Voigt(as)、ブルース・アックリー Bruce Ackley(ss)で結成され、4人の苗字の頭文字をとって「ROVA」と名付けられたサックス四重奏団の初期作品。ラリー・オクスと一緒にメタランゲージ・レコードを創設したギタリストのヘンリー・カイザーとの共演作。同時期にデビューしたニューヨークのワールド・サクソフォン・カルテットがブラック・ミュージックの復権を謳ったのに対し、西海岸の白人であるROVAは言わばルーツレスな立場からスタートした。故にジャズ/ロック/現代音楽/エスニックをコンフュージョンする音楽性に迷いはない。四つの管のケイオティックなアンサンブルを攪乱するカイザーのギターが壮快である。

V.A. - Metalanguage Festival Of Improvised Music 1980 - Volume 2: The Science Set
Metalanguage ‎– ML 117(1981)


1980年10月19と21日の二日間サンフランシスコで開催されたメタランゲージ即興音楽フェスティバルのライヴ・アルバム。『The Science Set』と題された本作は二日目10月21日のグレート・アメリカン・ミュージック・ホールでの録音。参加ミュージシャンはブルース・アックリーを除くROVAのメンバーとヘンリー・カイザーに加え、バークレー出身のグレッグ・グッドマン(p)、日本の近藤等則(tp)、そして欧州フリーミュージックの猛者デレク・ベイリー(g)とエヴァン・パーカー(sax)という即興界の強者揃い。ソロ、デュオ、トリオと組み合わせを変えた短めのセッションは、ベイリーらのCOMPANYに倣ったワークショップ的要素があるが、観念的な部分がなくカラッと乾いた空気がメタランゲージの特徴だろう。10月19日の1750 Arch Studiosで録音された『Volume 1: The Social Set』は若干メンバーが異なる(ベイリー抜き、アックリー入り)が、全員による集団即興演奏が『The Science Set』と趣が異なり興味深い。

ROVA Saxophone Quartet: Under the Street Where You Live


メタランゲージのもう一人の『顔』ヘンリー・カイザーは笑顔の殺人鬼殺ジャケットの『アロハ』で即興以外のニューウェイヴ/プログレファンも虜にした。カイザーについては別の機会に振り返りたい。

レコメンデッド
メタランゲージ
ラルフレコード

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【JazzTokyo#244更新】レント・ロムスの『ウェストコースト・アンダーグラウンド通信』/ロヴァ・サキソフォン・カルテットの40周年記念盤

2018年08月05日 10時03分49秒 | 素晴らしき変態音楽

Photo by Myles Boisen

Jazz Tokyo #244 が更新された。3回に亘って9月に来日するピーター・エヴァンスを特集。カバーストーリーは還暦記念『月刊藤井郷子』をリリース中の藤井郷子。剛田武は以下の記事を寄稿。

『Notes from the West Coast Underground / ウェストコースト・アンダーグラウンド通信』

ウェストコースト・アンダーグラウンド通信 第1回:ROVA Saxophone Quartet, Ian Carey, Josh Allen, Philip Everett, etc.

新連載(不定期)スタート
ミュージシャン/レーベル・オーナー/コンサート・プロデューサーとして米国ウェストコースト・シーンの活況を担うレント・ロムスによるサンフランシスコ・ベイエリアを中心とした即興/実験音楽シーンの今を伝えるレポート。

Ian Carey Quintet+1 - Nemuri Kyoshiro (Live at the Sound Room)



『Rova Saxophone Quartet / In Transverse Time』

#1542 『Rova Saxophone Quartet / In Transverse Time』

40年×365.25日×24時間×4人=1,402,560時間の積層を横断するサックス四重奏団の現在地。
ウェストコースト・アンダーグラウンドのオリジネーターのひとつロヴァ・サキソフォン・カルテットの40周年記念アルバム。コンポジションにフォーカスし、円熟と野心に満ちた、次の10年への所信表明といえる渾身作。

Rova at Timucua The Dark Forest


西海岸
深い地下水
流れてる

▼カリフォルニアのFM局KFJCのNYのサックス奏者ブランドン・エヴァンスと西海岸のレント・ロムス、フィリップ・エヴァレット、アレックス・コーエンの即興セッションライヴ音源。East meets West Coast Underground.
Brandon Evans / Rent Romus / Alex Cohen / Philip Everett - Live KFJC 89​.​7 FM


Brandon Evans - Alto & Sopranino Saxophones
Rent Romus - Alto & Soprano Saxophones
Alex Cohen - Electric Guitar, Pedals
Philip Everett - Percussion, Clarinet

released August 9, 2016

Recorded 'live on air' July 29th, 2016 at the KFJC 89.7 Radio Station, Los Altos Hills, California.
Hosted by Hemroid The Leader.
Special thanks to the musicians, and to the team at KFJC for making this recording possible. Please tune in and support KFJC 89.7 FM
www.kfjc.org
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ミッシェル・アンリッツィが描く「汎」と「孤」~福岡林嗣+M.アンリッツィ『Desert Moon』/ふじゆき+M.アンリッツィ+望月治孝『白い顔』

2018年08月03日 08時34分25秒 | 素晴らしき変態音楽


8月1日(水)DOMMUNE「Plateaux of NOISE23 / 現代ノイズ進化論23」にPataphysique Records、Musik Atlach特集コーナーでアーティストのSACHIKOの相手役として出演した。1時間という短い間だったが、Overhang Party~魔術の庭を中心に、94年から現在まで24年間続く稀有なインディ・レーベルの歴史と作品、そして信念について概要だけでも伝えられたことと思う。特に印象的だったのはNO PROGRESSというタイトル通り、進化を求めるのではなく「ただやり続けるだけ=アクチュアル/現在(代)性」の発露だった。フランスのダダ/シュルレアリスト、アルフレッド・ジャリの小説に由来する「パタフィジック」、最新作『プロとコントラ』のシチュアニスト的「転用」主義、SACHIKOの民話や神話に接近したサイケデリック精神、すべてが進化なきアクチュアリティに他ならない。



Pataphysique Records/福岡林嗣と関わりの深い海外アーティストのひとりがフランスのギタリスト、ミッシェル・アンリッツィである。1959年、フランス・メス生まれのアンリッツィは88年ノイズバンド「Dustbreeders」で活動、99年から日本の地下音楽に深く関わるようになり、三上寛、友川カズキ、杉本拓、秋山徹次、浦邊雅祥、福岡林嗣といった多くの音楽家たちのヨーロッパツアーを企画。自身の運営するレーベル「Bruit Secret」からは灰野敬二、向井千惠、中村としまる、Sachiko M、杉本拓の作品をリリースする。またライターとして日本の音楽に関するエッセイを音楽誌やライナーノーツに寄稿している。そんな日本通のフランス地下音楽家ミッシェル・アンリッツィの近作を紹介する。

●福岡林嗣+ミッシェル・アンリッツィ『Desert Moon』


『プロとコントラ(pro et contra)』と同時リリースのPataphysique Records最新作。2002年からコラボする福岡/アンリッツィ・デュオの5作目に当たるアルバム。福岡がエレクトリック・フィドルとヴォーカル、アンリッツィがラップ・スティール・ギターに加え様々なエフェクトを担当。シャンソンの「暗い日曜日」にはDana ValserとJunko(非常階段)がゲスト・ヴォーカルで参加。Sachikoデザインの荒廃した月面のアートワークに相応しいダークなメランコリアが横溢したサウンドは、日仏地下音楽の精鋭が共有する終末感の反映であろう。しかし聴き終わった後に残された希望の光は、暗い日曜日を生き抜かなくてはならない人類への慈愛に満ちている。

“Desert Moon” FUKUOKA Rinji & Michel HENRITZI 5th Album



●ふじゆき+ミッシェル・アンリッツィ+望月治孝『白い顔』


フランスのAn′archivesレーベルの「Free Wind Mood 自由な風のように」シリーズの最新作。大阪のアンビエントデュオSarryの女性ヴォーカリスト、ふじゆきと静岡のサックス奏者、望月治孝とのトリオ作品。日本側がそれぞれレコーディングした素材をアンリッツィがオーバーダブしエディットする形で制作されたようだ。ふじゆきの呪術的なヴォーカル、望月のセンチメンタルなサックス・プレイ、そのどちらも日本の心の奥底にある「怨」を暴き出す演奏だが、アンリッツィが西洋的な「愁」を加えることにより、DARK SIDE OF JAPON的な幽玄が生まれている。『Desert Moon』が「汎」だとしたら、『白い顔』は「孤」の音楽と言えるだろう。

shinjuku blues - michel henritzi


八月の
濡れた砂漠の
白い影

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