<Dynamic>
DYNDVD 33631(DVD-Video) \3780
字幕:伊英独仏西
チマローザ:「秘密の結婚」
チンツィア・フォルテ(S カロリーナ)
プリシユ・ラプラス(S エリゼッタ)
ダミアーナ・ピンティ(Ms フィダルマ)
アルベルト・リナルディ(Br ジェローニモ)
アルド・カプート(T パオリーノ)
マリオ・カッシ(Br ロビンソン伯爵)
ジョヴァンニ・アントニーニ(指)
ワロン王立歌劇場管弦楽団
演出:ステーファノ・マッツォニス・ディ・パララフェーラ
装置:ジャン・ギ・ルカ
衣装:フェルナン・ルイツ
収録:2008年2月,リエージュ
Dynamicのワロン王立歌劇場ライヴ、新刊はオペラブッファの傑作として名高い
チマローザの「秘密の結婚」です。このオペラは1792年にウィーンで初演され、
あまりの面白さに観劇した皇帝レオポルト2世が、公演後にもう一度上演させた
というほどの傑作。物語は単純。金持ちの商人ジェローニモの娘カロリーナは、
使用人パオリーノと密かに結婚している。ところがカロリーナの姉エリゼッタ
と結婚するはずのロビンソン伯爵(伯爵は金目当て、ジェローニモは爵位目当
て)がカロリーナに一目惚れ、さらにジェローニモの妹の年増女フィダルマが
パオリーノに迫って来る始末。伯爵に腹を立てていたジェローニモも、カロリ
ーナと結婚できるなら持参金は半分で良いと言われ、妥協してしまう。すった
もんだの末、パオリーノとカロリーナは駆け落ちを決めるが、そこに伯爵とエ
リゼッタが加わり、結局カロリーナとパオリーノの仲が明らかに。二人は許さ
れ、伯爵は予定通りエリザベッタと結ばれ、めでたし。
この上演の指揮者は、イル・ジャルディーノ・アルモニコのリーダーとして高
名なアントニーニ。キリリとした音楽作りはさすが名門古楽団体を引っ張って
きた人物だけあります。ヒロインのカロリーナは、美人ソプラノとして名高い
フォルテ。歌よし容姿よしで文句なし。アルド・カプートは1980年、バーリ生
まれ。ロッシーニなどを得意としています。ジェローニモは、1939年生まれの
大ベテラン、リナルディ。1986年のウィーン国立歌劇場来日公演《フィガロの
結婚》でフィガロを歌った名バリトンです。この上演時には68歳ですが、実に
達者。ロビンソン伯爵には、この1月のベルガモ・ドニゼッティ歌劇場来日公
演の《愛の妙薬》でベルコーレが好評を博したカッシが歌っています。パララ
フェーラの演出は、伝統的な舞台作りの中に、思わず笑ってしまう仕掛けを施
したもので、「秘密の結婚」入門に打ってつけです。
CDS 653 2枚組 \3780
レグレンツィ:
教会で用いられるための合奏音楽集 Op.1(4声のミサ,証聖者の盛儀晩課)
リッカルド・ファヴェーロ(指)
オフィチーナ・ムジクム
録音:2008年11月,マッサンザーゴ
ジョヴァンニ・レグレンツィ(1626-90)は、17世紀に半ばに活躍した作曲家。
1645-56年にベルガモのサンタ・マリア・マッジョーレ教会のオルガニストを、
1665年まではフェラーラのアッカデミア・デッロ・スピリト・サントの楽長を、
そして晩年はヴェネツィアのサン・マルコ寺院で楽長にまで昇り詰めています。
「教会で用いられるための合奏音楽集」は1654年にヴェネツィアで出版された
曲集で、作品番号1が与えられています。「4声のミサ」は、キリエ、グローリ
ア、クレドの3曲だけにもかかわらず30分を超える力作。「証聖者の盛儀晩課」
は、21曲からなる70分に迫る大作です。いずれも世界初録音。
オフィチーナ・ムジクムは16、17世紀の音楽を演奏する団体で、器楽合奏と声
楽ソリストで編成されています。
CDS 657 \1950
ゲンスバッハー:フルートとギターのためのセレナード Op.12
ライナー:ギターのための8つの大変奏曲 Oev.6
フバー:スポンティーニの「ヴェスターレ」の行進曲
カル:フルートとギターのためのセレナードOp.54、
ギター独奏のための三つのソナタ集 Op.22-第2番
ジュゼッペ・カレール(G)
ルイージ・ルポ(Fl)
録音:2009年1月,ボルツァーノ
たいへんに珍しいフルートとギターのための作品ばかり集めています。このCD
には「アンネッテ・フォン・メンツのサロン音楽」という副題がついています。
アンネッテは、18世紀後半にボルツァーノで繁盛した商人アントン・メルヒオ
ール・フォン・メンツの娘で、父娘とも音楽を愛し、貴重な楽譜のコレクショ
ンを残しています。このCDには、そのコレクションから5曲を選び、アンネッ
テのサロンを再現しています。4人の作曲家のうち最も有名なのはヨハン・バ
プティスト・ゲンスバッハー(1778-1844)で、1823年から亡くなるまでウィー
ンのシュテファン大聖堂の楽長を務めました。残る3人、レオンハルト・デ・
カル(1767-1815)、ヨゼフ=エヴァルト・ライナー(1784-?)、ネポムク・フバ
ー(1803-?)についてはあまり詳しい経歴は分かっていませんが、いずれも優れ
た作曲家だったことがここに収録された音楽から分かります。
ジュゼッペ・カレールとルイージ・ルポは、共にボルツァーノのヴィヴァル
ディ音楽研究所で教鞭を取っている名手。
<IDIS>
IDIS 6587 2枚組 \3250
モノラル
ベートーヴェン:「フィデリオ」
ビルギット・ニルソン(S レオノーレ)
ジョン・ヴィッカーズ(T フロレスタン)
ハンス・ホッター(Br ドン・ピツァロ)
ゴットロープ・フリック(Bs ロッコ)
ヴィルマ・リップ(S マルツェリーネ)
ゲルハルト・ウンガー(T ヤキーノ)
フランツ・クラス(Bs ドン・フェルナンド)
ほか
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指)
ミラノ・スカラ座管弦楽団,合唱団
録音:1960年12月20日,ミラノ(ライヴ)
カラヤンは「フィデリオ」を度々取り上げており、正規録音の他、数種のライ
ヴ録音の存在が知られています。この1960年の録音は、当時スカラ座とウィー
ン国立歌劇場を牛耳っていたカラヤンがウィーンの名歌手たちをスカラ座に引
き連れて上演したもので、当時のカラヤンの帝王ぶりを象徴するもの。ニルソ
ンとヴィッカース豪腕(豪喉?)カップルが抜群です。年明け1月の公演を三島
由紀夫が観劇したことでも知られています。
<MIRARE>
MIR 096 \2500
ショパン:
ポロネーズ 変ロ長調KK.IV/1(1817)
ポロネーズ ト短調S1/1(1817)
ポロネーズ 変イ長調KK.IV/a2(1821)
マズルカ イ 短調Op.7-4(1824)
ポロネーズ ヘ短調Op.71-1(1828)
ソステヌート 変ホ長調(1840)
カンタービレ 変ロ長調(1834)
ノクターン 嬰ハ短調 遺作(1830)
幻想即興曲 嬰ハ短調Op.66(1834)
ワルツ ヘ短調 Op.70-2(1841)
マズルカ ハ短調 Op.50-3(1841-1842)
子守歌 変ニ長調Op.57(1843)
舟歌 嬰ヘ長調Op.60
スケルツォ第4番 ホ長調Op.54(1842)
ワルツ イ短調KK.IVb/11,P2/11
バラード第4番 ヘ短調Op.52(1842)
マズルカ ヘ短調Op.67-4(1848)
アンヌ・ケフェレック(P)
録音:2009年11月フランス・リモージュ
フランスを代表する女流ピアニスト、アンヌ・ケフェレック待望のショパン・
アルバムが発売されました。叙情的で艶やかな魅力に溢れたショパンの作品を、
ケフェレックの知性的で洗練されたピアニズムが繊細に紡ぎだします。ショパ
ンの複雑で苦悶に満ちた音楽、幸福な思い出を想起させるような音楽、ケフェ
レックが描く鮮やかな色彩の渦に惹きこまれ、どっぷりとショパンの魅力に浸
るこができます。特に2009年のリサイタルでも評判の高かったショパン円熟期
の最高傑バラードの4番は必聴。ケフェレックの意外にも濃厚な表現がぴったり
と合い、美しい旋律線が浮かび上がり絶美。
曲目はショパンの祖国の記憶を読み解くプログラミング。第1曲目のポロネーズ
変ロ長調KK.IV/1はショパンが7歳の時の作品。この作品の中にも確実にショパ
ンの魂は存在し、祖国ポーランドへの想いが含まれています。そしてショパン
の故国への記憶は最後のマズルカまで彼を悩まし続けました。このアルバムは
ピアノ作品を通して、ショパンの失われた時代、土地を探し求める1枚となって
います。
<BIS>
BIS SA 1809(SACD-Hybrid) \2500
ブクステフーデ:オルガン曲集
(1)トッカータ ヘ長調 BuxWV156/(2)前奏曲 イ短調 BuxWV153/(3)チャコー
ナ ホ短調BuxWV160/(4)テ・デウム BuxWV218/(5)われ神より離れず BuxWV220
/(6)われ神より離れず BuxWV221/(7)前奏曲 ト短調BuxWV148/(8)トッカータ
ニ短調 BuxWV155/(9)主、汝まことの神よ、われらから取り去り給え
BuxWV207/(10)主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ BuxWV196/(11)第1旋法の
マニフィカト BuxWV203
鈴木雅明(Org)
かの大バッハも夢中になったというブクステフーデのオルガン曲を鈴木雅明が
最新録音。北ドイツ、アルテンブルッフにある聖ニコライ教会のクラップマイ
ヤー・オルガンとハンブルクの聖ヤコビ教会、シュニットガー・オルガンの驚
異的名器を駆使して凄まじい効果を発揮させているのも注目ですが、鈴木雅明
ならではの敬虔な祈りの感情も感動的。バッハのオルガン音楽を知る上でも必
聴の一枚と申せましょう。
BIS SA 1656(SACD-Hybrid) \2500
シューベルト:
(1)交響曲第8番ロ短調「未完成」
(2)同第9番ハ長調「グレート」
トマス・ダウスゴー(指)
スウェーデン室内管
現在もっとも旬の指揮者のひとりトマス・ダウスゴーがシューベルトの交響曲
に挑戦しました。その第1弾は「未完成」と「グレート」という最高に魅力的な
カップリング。室内オーケストラ編成で現代的感覚満点の解釈は超斬新。これ
まで未完成交響曲に持たれていた暗く儚い世界が、若々しく前向きなものとな
っているのが興味津々です。
BIS SA 1583(SACD-Hybrid) \2500
ショスタコーヴィチ:交響曲第11番 Op.103「1905年」
マーク・ウィグレスワース(指)
オランダ放送フィル
1905年、皇宮に請願行進をした労働者たちに政府当局が発砲、数千人の死傷者
を出した「血の日曜日」事件。これを音で描いたショスタコーヴィチの交響曲
第11番は非常に描写的で、シリアスな大作映画を観る趣があります。労働者の
行進や有名な銃撃のシーンが、BISならではの録音の良さで恐ろしいまでにリ
アルな音像で広がります。
BIS 1383 \2380
ルーセンベリ:
(1)交響曲第3番(1939)
(2)同第6番「シンフォニア・センプリーチェ」(1951)
マリオ・ヴェンサーゴ(指)エーテボリ響
スウェーデン現代の巨匠ヒルディング・ルーセンベリ(1892-1985)。彼は8篇の
交響曲を残したシンフォニストですが、録音に恵まれているとは言いがたい現
状です。そこにBISが最新録音で参入という嬉しいニュース。1939年の第3番は
当初、男の一生を「幼年」「少年」「青年」「壮年」の4楽章で描いていました
が、後に標題を取り除いたといういわくつきの作品。ルーセンベリの作風は現
代手法を用いながら人間味あふれ、感動的です。
BIS 1590 \2380
アラン・ペッタション:弦楽のための協奏曲第3番(1956/7)
クリスチャン・リンドベルイ(指)
ノルディック室内管
悲痛で厳しい作風に根強いファンを持つスウェーデン現代の作曲家アラン・ペ
ッタション(1911-1980)。3篇ある彼の弦楽のための協奏曲のうち、第1、第2番
を収めた盤(BIS 1690)に続く第2弾。弦楽のみで協奏曲と銘打ながら演奏時間
が54分もかかる交響曲級の大作で、恐ろしく念入りな書法によりますが、内容
的には私小説風でおそらく自身の生涯のどこかを描いているようです。トロン
ボーンの魔王クリスチャン・リンドベルイが一切管楽器を含まないこの純音楽
作品で指揮者としての力量を証明しています。
BIS 1799 \2380
(1)ニコラ・バクリ:フルート協奏曲(1999)
【ジャン=ジャック・カントロフ(指)タピオラ・シンフォニエッタ】
(2)レナード・バーンスタイン:ハリル(1880/1)
【ジョン・ネシリング(指)サンパウロ響】
(3)ブレット・ディーン:シドリの舞(2007)
【ブレット・ディーン(指)スウェーデン室内管】
(4)クリストファー・ラウス:フルート協奏曲(1993)
【アラン・ギルバート(指)ロイヤル・ストックホルム・フィル】
シャロン・ベザリー(Fl)
フルートの女王シャロン・ベザリーがこれまでにリリースしたアルバムの中か
ら、異なる指揮者とオーケストラによる協奏作品を厳選したコンピレーション
盤。ユダヤ色濃厚なバーンスタインや妖艶極まりない「シドリの踊り」など、
シャロンの魅力全開の70分を楽しめます。
<OPUS蔵>
OPK 7050 \2250
モノラル
ショスタコーヴィッチ:交響曲第7番
アルトゥーロ・トスカニーニ(指揮) NBC交響楽団
録音:1942年7月19日ライヴ録音
原盤 Private LP
フォイアマンのドン・キホーテ(OPK7033)のように音響の優れた音源を提供いた
だくケースは,ライヴや放送録音でありますが,今回提供されたLPの「レニン
グラード」の音の迫力には驚かされました。エアチェックが放送局の録音より
優れているとは思えないので,今回の音源は1回限りの放送の記録として,複数
録ったであろうもののひとつと考えられます。(相原 了)
オーパス蔵の復刻CDは、あきらかに「RCAとは同演奏の別録音」のように聞こえ
ます。ほんの試みに第1楽章冒頭の第1主題を27秒ほど聴けば違いは歴然です。
まず3小節目で出現するティンパニの決然たる打ち込みの打撃音と、つづく2小
節の生々しい打ち込みがコントラバスの超低音とともに、オーケストラ全体の
響きを凄味のある重厚な力感として支えていることで、これこそトスカニーニ
のダイナミズムだと直感させます。(小林利之)
OPK 7051 \2250
モノラル
(1)ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調作品95 「新世界より」
(2)モーツァルト:交響曲第38番 ニ長調 K.504「プラハ」
ラファエル・クーベリック(指揮)、シカゴ交響楽団
録音 (1)1951年 (2)1953年
原盤 HMV-LP (オリジナルMercury録音)
「新世界から」は、ティンパニの凄まじいクレッシェンドとともにアレグロ・
モルトの主部に突入、第1主題がホルンに出ます。このあたりの凄みは、今回の
復刻ではじめて再現されたもので、オリジナルの録音にはこんな鮮烈の響きが
はいっていたのかと驚かずにはいられませんでした。また「プラハ」をクーベ
リックは、最晩年の1991年10月11日というプラハでの生涯最後の演奏会で「新
世界から」と一緒にとりあげた際のライヴ録音があり、この2曲を宿命的なプロ
グラムと考えていたもののようです。39歳という若いクーベリックのアメリカ
録音は、オーケストラの自発性にゆだねるところ顕著だった1961年ウィーン盤
の流麗かつ自然な演奏に対して、あらゆる面でクーベリックならではの知的に
構成され、冴えて品位を失わぬ演奏で、節度ある美しさが印象的なモーツァル
トを聴かせてくれます。今回のオーパス蔵盤の復刻技術とマスタリング感覚の
冴えっぷりは、お見事というに値しましょう。(小林利之)
DYNDVD 33631(DVD-Video) \3780
字幕:伊英独仏西
チマローザ:「秘密の結婚」
チンツィア・フォルテ(S カロリーナ)
プリシユ・ラプラス(S エリゼッタ)
ダミアーナ・ピンティ(Ms フィダルマ)
アルベルト・リナルディ(Br ジェローニモ)
アルド・カプート(T パオリーノ)
マリオ・カッシ(Br ロビンソン伯爵)
ジョヴァンニ・アントニーニ(指)
ワロン王立歌劇場管弦楽団
演出:ステーファノ・マッツォニス・ディ・パララフェーラ
装置:ジャン・ギ・ルカ
衣装:フェルナン・ルイツ
収録:2008年2月,リエージュ
Dynamicのワロン王立歌劇場ライヴ、新刊はオペラブッファの傑作として名高い
チマローザの「秘密の結婚」です。このオペラは1792年にウィーンで初演され、
あまりの面白さに観劇した皇帝レオポルト2世が、公演後にもう一度上演させた
というほどの傑作。物語は単純。金持ちの商人ジェローニモの娘カロリーナは、
使用人パオリーノと密かに結婚している。ところがカロリーナの姉エリゼッタ
と結婚するはずのロビンソン伯爵(伯爵は金目当て、ジェローニモは爵位目当
て)がカロリーナに一目惚れ、さらにジェローニモの妹の年増女フィダルマが
パオリーノに迫って来る始末。伯爵に腹を立てていたジェローニモも、カロリ
ーナと結婚できるなら持参金は半分で良いと言われ、妥協してしまう。すった
もんだの末、パオリーノとカロリーナは駆け落ちを決めるが、そこに伯爵とエ
リゼッタが加わり、結局カロリーナとパオリーノの仲が明らかに。二人は許さ
れ、伯爵は予定通りエリザベッタと結ばれ、めでたし。
この上演の指揮者は、イル・ジャルディーノ・アルモニコのリーダーとして高
名なアントニーニ。キリリとした音楽作りはさすが名門古楽団体を引っ張って
きた人物だけあります。ヒロインのカロリーナは、美人ソプラノとして名高い
フォルテ。歌よし容姿よしで文句なし。アルド・カプートは1980年、バーリ生
まれ。ロッシーニなどを得意としています。ジェローニモは、1939年生まれの
大ベテラン、リナルディ。1986年のウィーン国立歌劇場来日公演《フィガロの
結婚》でフィガロを歌った名バリトンです。この上演時には68歳ですが、実に
達者。ロビンソン伯爵には、この1月のベルガモ・ドニゼッティ歌劇場来日公
演の《愛の妙薬》でベルコーレが好評を博したカッシが歌っています。パララ
フェーラの演出は、伝統的な舞台作りの中に、思わず笑ってしまう仕掛けを施
したもので、「秘密の結婚」入門に打ってつけです。
CDS 653 2枚組 \3780
レグレンツィ:
教会で用いられるための合奏音楽集 Op.1(4声のミサ,証聖者の盛儀晩課)
リッカルド・ファヴェーロ(指)
オフィチーナ・ムジクム
録音:2008年11月,マッサンザーゴ
ジョヴァンニ・レグレンツィ(1626-90)は、17世紀に半ばに活躍した作曲家。
1645-56年にベルガモのサンタ・マリア・マッジョーレ教会のオルガニストを、
1665年まではフェラーラのアッカデミア・デッロ・スピリト・サントの楽長を、
そして晩年はヴェネツィアのサン・マルコ寺院で楽長にまで昇り詰めています。
「教会で用いられるための合奏音楽集」は1654年にヴェネツィアで出版された
曲集で、作品番号1が与えられています。「4声のミサ」は、キリエ、グローリ
ア、クレドの3曲だけにもかかわらず30分を超える力作。「証聖者の盛儀晩課」
は、21曲からなる70分に迫る大作です。いずれも世界初録音。
オフィチーナ・ムジクムは16、17世紀の音楽を演奏する団体で、器楽合奏と声
楽ソリストで編成されています。
CDS 657 \1950
ゲンスバッハー:フルートとギターのためのセレナード Op.12
ライナー:ギターのための8つの大変奏曲 Oev.6
フバー:スポンティーニの「ヴェスターレ」の行進曲
カル:フルートとギターのためのセレナードOp.54、
ギター独奏のための三つのソナタ集 Op.22-第2番
ジュゼッペ・カレール(G)
ルイージ・ルポ(Fl)
録音:2009年1月,ボルツァーノ
たいへんに珍しいフルートとギターのための作品ばかり集めています。このCD
には「アンネッテ・フォン・メンツのサロン音楽」という副題がついています。
アンネッテは、18世紀後半にボルツァーノで繁盛した商人アントン・メルヒオ
ール・フォン・メンツの娘で、父娘とも音楽を愛し、貴重な楽譜のコレクショ
ンを残しています。このCDには、そのコレクションから5曲を選び、アンネッ
テのサロンを再現しています。4人の作曲家のうち最も有名なのはヨハン・バ
プティスト・ゲンスバッハー(1778-1844)で、1823年から亡くなるまでウィー
ンのシュテファン大聖堂の楽長を務めました。残る3人、レオンハルト・デ・
カル(1767-1815)、ヨゼフ=エヴァルト・ライナー(1784-?)、ネポムク・フバ
ー(1803-?)についてはあまり詳しい経歴は分かっていませんが、いずれも優れ
た作曲家だったことがここに収録された音楽から分かります。
ジュゼッペ・カレールとルイージ・ルポは、共にボルツァーノのヴィヴァル
ディ音楽研究所で教鞭を取っている名手。
<IDIS>
IDIS 6587 2枚組 \3250
モノラル
ベートーヴェン:「フィデリオ」
ビルギット・ニルソン(S レオノーレ)
ジョン・ヴィッカーズ(T フロレスタン)
ハンス・ホッター(Br ドン・ピツァロ)
ゴットロープ・フリック(Bs ロッコ)
ヴィルマ・リップ(S マルツェリーネ)
ゲルハルト・ウンガー(T ヤキーノ)
フランツ・クラス(Bs ドン・フェルナンド)
ほか
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指)
ミラノ・スカラ座管弦楽団,合唱団
録音:1960年12月20日,ミラノ(ライヴ)
カラヤンは「フィデリオ」を度々取り上げており、正規録音の他、数種のライ
ヴ録音の存在が知られています。この1960年の録音は、当時スカラ座とウィー
ン国立歌劇場を牛耳っていたカラヤンがウィーンの名歌手たちをスカラ座に引
き連れて上演したもので、当時のカラヤンの帝王ぶりを象徴するもの。ニルソ
ンとヴィッカース豪腕(豪喉?)カップルが抜群です。年明け1月の公演を三島
由紀夫が観劇したことでも知られています。
<MIRARE>
MIR 096 \2500
ショパン:
ポロネーズ 変ロ長調KK.IV/1(1817)
ポロネーズ ト短調S1/1(1817)
ポロネーズ 変イ長調KK.IV/a2(1821)
マズルカ イ 短調Op.7-4(1824)
ポロネーズ ヘ短調Op.71-1(1828)
ソステヌート 変ホ長調(1840)
カンタービレ 変ロ長調(1834)
ノクターン 嬰ハ短調 遺作(1830)
幻想即興曲 嬰ハ短調Op.66(1834)
ワルツ ヘ短調 Op.70-2(1841)
マズルカ ハ短調 Op.50-3(1841-1842)
子守歌 変ニ長調Op.57(1843)
舟歌 嬰ヘ長調Op.60
スケルツォ第4番 ホ長調Op.54(1842)
ワルツ イ短調KK.IVb/11,P2/11
バラード第4番 ヘ短調Op.52(1842)
マズルカ ヘ短調Op.67-4(1848)
アンヌ・ケフェレック(P)
録音:2009年11月フランス・リモージュ
フランスを代表する女流ピアニスト、アンヌ・ケフェレック待望のショパン・
アルバムが発売されました。叙情的で艶やかな魅力に溢れたショパンの作品を、
ケフェレックの知性的で洗練されたピアニズムが繊細に紡ぎだします。ショパ
ンの複雑で苦悶に満ちた音楽、幸福な思い出を想起させるような音楽、ケフェ
レックが描く鮮やかな色彩の渦に惹きこまれ、どっぷりとショパンの魅力に浸
るこができます。特に2009年のリサイタルでも評判の高かったショパン円熟期
の最高傑バラードの4番は必聴。ケフェレックの意外にも濃厚な表現がぴったり
と合い、美しい旋律線が浮かび上がり絶美。
曲目はショパンの祖国の記憶を読み解くプログラミング。第1曲目のポロネーズ
変ロ長調KK.IV/1はショパンが7歳の時の作品。この作品の中にも確実にショパ
ンの魂は存在し、祖国ポーランドへの想いが含まれています。そしてショパン
の故国への記憶は最後のマズルカまで彼を悩まし続けました。このアルバムは
ピアノ作品を通して、ショパンの失われた時代、土地を探し求める1枚となって
います。
<BIS>
BIS SA 1809(SACD-Hybrid) \2500
ブクステフーデ:オルガン曲集
(1)トッカータ ヘ長調 BuxWV156/(2)前奏曲 イ短調 BuxWV153/(3)チャコー
ナ ホ短調BuxWV160/(4)テ・デウム BuxWV218/(5)われ神より離れず BuxWV220
/(6)われ神より離れず BuxWV221/(7)前奏曲 ト短調BuxWV148/(8)トッカータ
ニ短調 BuxWV155/(9)主、汝まことの神よ、われらから取り去り給え
BuxWV207/(10)主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ BuxWV196/(11)第1旋法の
マニフィカト BuxWV203
鈴木雅明(Org)
かの大バッハも夢中になったというブクステフーデのオルガン曲を鈴木雅明が
最新録音。北ドイツ、アルテンブルッフにある聖ニコライ教会のクラップマイ
ヤー・オルガンとハンブルクの聖ヤコビ教会、シュニットガー・オルガンの驚
異的名器を駆使して凄まじい効果を発揮させているのも注目ですが、鈴木雅明
ならではの敬虔な祈りの感情も感動的。バッハのオルガン音楽を知る上でも必
聴の一枚と申せましょう。
BIS SA 1656(SACD-Hybrid) \2500
シューベルト:
(1)交響曲第8番ロ短調「未完成」
(2)同第9番ハ長調「グレート」
トマス・ダウスゴー(指)
スウェーデン室内管
現在もっとも旬の指揮者のひとりトマス・ダウスゴーがシューベルトの交響曲
に挑戦しました。その第1弾は「未完成」と「グレート」という最高に魅力的な
カップリング。室内オーケストラ編成で現代的感覚満点の解釈は超斬新。これ
まで未完成交響曲に持たれていた暗く儚い世界が、若々しく前向きなものとな
っているのが興味津々です。
BIS SA 1583(SACD-Hybrid) \2500
ショスタコーヴィチ:交響曲第11番 Op.103「1905年」
マーク・ウィグレスワース(指)
オランダ放送フィル
1905年、皇宮に請願行進をした労働者たちに政府当局が発砲、数千人の死傷者
を出した「血の日曜日」事件。これを音で描いたショスタコーヴィチの交響曲
第11番は非常に描写的で、シリアスな大作映画を観る趣があります。労働者の
行進や有名な銃撃のシーンが、BISならではの録音の良さで恐ろしいまでにリ
アルな音像で広がります。
BIS 1383 \2380
ルーセンベリ:
(1)交響曲第3番(1939)
(2)同第6番「シンフォニア・センプリーチェ」(1951)
マリオ・ヴェンサーゴ(指)エーテボリ響
スウェーデン現代の巨匠ヒルディング・ルーセンベリ(1892-1985)。彼は8篇の
交響曲を残したシンフォニストですが、録音に恵まれているとは言いがたい現
状です。そこにBISが最新録音で参入という嬉しいニュース。1939年の第3番は
当初、男の一生を「幼年」「少年」「青年」「壮年」の4楽章で描いていました
が、後に標題を取り除いたといういわくつきの作品。ルーセンベリの作風は現
代手法を用いながら人間味あふれ、感動的です。
BIS 1590 \2380
アラン・ペッタション:弦楽のための協奏曲第3番(1956/7)
クリスチャン・リンドベルイ(指)
ノルディック室内管
悲痛で厳しい作風に根強いファンを持つスウェーデン現代の作曲家アラン・ペ
ッタション(1911-1980)。3篇ある彼の弦楽のための協奏曲のうち、第1、第2番
を収めた盤(BIS 1690)に続く第2弾。弦楽のみで協奏曲と銘打ながら演奏時間
が54分もかかる交響曲級の大作で、恐ろしく念入りな書法によりますが、内容
的には私小説風でおそらく自身の生涯のどこかを描いているようです。トロン
ボーンの魔王クリスチャン・リンドベルイが一切管楽器を含まないこの純音楽
作品で指揮者としての力量を証明しています。
BIS 1799 \2380
(1)ニコラ・バクリ:フルート協奏曲(1999)
【ジャン=ジャック・カントロフ(指)タピオラ・シンフォニエッタ】
(2)レナード・バーンスタイン:ハリル(1880/1)
【ジョン・ネシリング(指)サンパウロ響】
(3)ブレット・ディーン:シドリの舞(2007)
【ブレット・ディーン(指)スウェーデン室内管】
(4)クリストファー・ラウス:フルート協奏曲(1993)
【アラン・ギルバート(指)ロイヤル・ストックホルム・フィル】
シャロン・ベザリー(Fl)
フルートの女王シャロン・ベザリーがこれまでにリリースしたアルバムの中か
ら、異なる指揮者とオーケストラによる協奏作品を厳選したコンピレーション
盤。ユダヤ色濃厚なバーンスタインや妖艶極まりない「シドリの踊り」など、
シャロンの魅力全開の70分を楽しめます。
<OPUS蔵>
OPK 7050 \2250
モノラル
ショスタコーヴィッチ:交響曲第7番
アルトゥーロ・トスカニーニ(指揮) NBC交響楽団
録音:1942年7月19日ライヴ録音
原盤 Private LP
フォイアマンのドン・キホーテ(OPK7033)のように音響の優れた音源を提供いた
だくケースは,ライヴや放送録音でありますが,今回提供されたLPの「レニン
グラード」の音の迫力には驚かされました。エアチェックが放送局の録音より
優れているとは思えないので,今回の音源は1回限りの放送の記録として,複数
録ったであろうもののひとつと考えられます。(相原 了)
オーパス蔵の復刻CDは、あきらかに「RCAとは同演奏の別録音」のように聞こえ
ます。ほんの試みに第1楽章冒頭の第1主題を27秒ほど聴けば違いは歴然です。
まず3小節目で出現するティンパニの決然たる打ち込みの打撃音と、つづく2小
節の生々しい打ち込みがコントラバスの超低音とともに、オーケストラ全体の
響きを凄味のある重厚な力感として支えていることで、これこそトスカニーニ
のダイナミズムだと直感させます。(小林利之)
OPK 7051 \2250
モノラル
(1)ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調作品95 「新世界より」
(2)モーツァルト:交響曲第38番 ニ長調 K.504「プラハ」
ラファエル・クーベリック(指揮)、シカゴ交響楽団
録音 (1)1951年 (2)1953年
原盤 HMV-LP (オリジナルMercury録音)
「新世界から」は、ティンパニの凄まじいクレッシェンドとともにアレグロ・
モルトの主部に突入、第1主題がホルンに出ます。このあたりの凄みは、今回の
復刻ではじめて再現されたもので、オリジナルの録音にはこんな鮮烈の響きが
はいっていたのかと驚かずにはいられませんでした。また「プラハ」をクーベ
リックは、最晩年の1991年10月11日というプラハでの生涯最後の演奏会で「新
世界から」と一緒にとりあげた際のライヴ録音があり、この2曲を宿命的なプロ
グラムと考えていたもののようです。39歳という若いクーベリックのアメリカ
録音は、オーケストラの自発性にゆだねるところ顕著だった1961年ウィーン盤
の流麗かつ自然な演奏に対して、あらゆる面でクーベリックならではの知的に
構成され、冴えて品位を失わぬ演奏で、節度ある美しさが印象的なモーツァル
トを聴かせてくれます。今回のオーパス蔵盤の復刻技術とマスタリング感覚の
冴えっぷりは、お見事というに値しましょう。(小林利之)