マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

個人的・織田作リバイバル

2009-04-06 12:20:39 | 芸能

このところ、私的織田作之助リバイバルである。

友人が秋に織田の「わが町」を舞台にかけるというので、そのために
織田作フェア状態なのだ。実家の書架から文庫本を取ってきて読み返している。オダサク倶楽部の講演にも出かけてきた。
これは織田が大阪の恩人、と書いた「五代友厚」の初版本。



昭和17年、西区阿波座の日進社が発行元。
こんな気骨のある出版社はなんぼもあったが、もはや絶滅した。




持主はオダサク倶楽部仕掛人、井村身恒さん。
博覧強記、織田のことではまず知らぬことはない研究者。





読書人でもないので、ほとんど全集物など持ち合わせていないが、
織田作全集だけは別。作品もさることながら、その人間に惚れた。
若き日、織田の足跡を追うようにミナミを歩き回った。

織田作之助は大阪天王寺区下寺町の出身。「夫婦善哉」で一躍注目され、戦後は太宰、安吾と共に無頼派をなのり、戦後の一時期を風のように駆け抜けていった文士。焼け跡から大阪の可能性を書き綴り、東京に負けまいと奮闘し、最後は「土曜夫人」執筆中に東京で客死。討ち死にと言われた。


        


織田熱にうなされ、銀座の「バー・ルパン」にもよく出かけた。上は林忠彦の写真。太宰の写真で有名だが、その時、織田も一緒に居合わせた。

ここは天王寺区にある楞厳寺(りょうごんじ)。作之助の菩提寺。





織田の高津中学時代の同級生、田尻玄龍上人が95歳にして今も
お元気だった。母屋を訪ね、しばし織田作の話を拝聴す。

織田作の墓。
閑静なといいたいところだが、北隣の高津中学のブラバンのラッパの音がけっこううるさいのだ。





墓碑銘は藤沢桓夫の筆による。
織田の戒名の左は、一枝が並ぶ。
二人は此処にて永遠の伴侶となれりか。





二人は所帯を北野田(丈六)で持ち、一枝はよくできた嫁だった。
毎夜、友人詰めかける宴会の後片付けを全て済ませ、仕事に向かう織田の後ろにペタンと座り、織田が小説で使う漢字を辞書で調べた。原稿が朝方出来上がると、「これ編集者に渡しといてんか」と寝てしまう作。
一枝は過労がたたり、体を壊し癌となった。


      


妻を亡くした織田作は、「ワシが殺したんや」と葬儀の日、住職に呟き、泣いたと、田尻上人のお話。
その憔悴ぶりは「高野線」、「競馬」に見られる。「競馬」では死んだ嫁の名前の一ばかり馬券を買い続ける哀れな男の話を描いている。
その後、2度結婚するが、生涯一枝の幻影は捨て切れなかったようだ。


墓参りの帰り、精進落としではないが、ちょいと時間がある。織田作ゆかりの店で仕上げようと、自由軒に向かったが、ちょうど定休日。では、と同じ洋食屋で、精華小学校裏の「重亭(じゅうてい)」へ。この名前は古く、明治時代にはあった。その名前だけいただいたという。



ポークチャップ  この甘い、ドミグラスとは全然ちがうソースが、
なんとも懐かしい。

ビールを飲もうっ!




ミックスフライ。

海老、カキ、ヒレの盛り合わせ。




照り焼きステーキ


織田がここを知ってたかどうかは知らんが、波屋書房へ行ったり、
法善寺界隈に向かう前後、この路地も歩いていたのは確実だ。

そんな昔から、ひとつも味が変わらないのだろう。
これは今どき、見上げたことなのかもしれぬ。




         楞厳寺   大阪市天王寺区城南寺町1

         重 亭    大阪市中央区難波3



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パーティーでも呑む

2009-04-05 12:53:25 | 
日頃スーツを着ることがないので、こういう機会にピシッとするのも
悪いことではない。パーティーぎらいではないが、ご当人になると挨拶にまわらねばならず、誰としゃべって誰としゃべってなかったか、なんてことを後から言われたりして、大変。

 

畏友、酒仙O氏がソムリエ一筋を評価され、なにわの名工に選ばれた。その受章パーティーへ。

待ち合いに行くと、私などよりぐっと年配の方ばかりで、居場所なし。
だんだん仕事上でも年長者に祭り上げられることが多くなってきたが、こういう会ではまだまだケツの青い、嘴の黄色い存在なり。

 

泡で乾杯。しかしワインを介したつながりというのはすごいな。
まるで経団連の集まりという感じ。名前が出てこないが
新聞などで顔を見たことがあるお歴々が何人も。
景気のいい話のない大阪、明るいニュースで集まれる機会が少なく、
こんなチャンスに盛り上がろうというところか。結構なり。

 

会場はリーガロイヤル。ソムリエ協会の重鎮たちに集合がかかり、
フレンチ、イタリアン、スペイン、チリ、日本などのワインが揃う。
ええ、グイグイいただきましたとも。

食事が始まると即座に列をなす。東京ではカッコつけてごっそり残るというが、しっかり食べるのが関西流。パーティーでは食べて喋って回遊する…これに限る。だが話の長い方もいて、次へと移るタイミングが難しい。仲間うちでだけで盛り上がるのは勿体ない。

だが親子ほど歳が違い過ぎると、とりつくシマがないというか、なんというか・・・。

 

帰りにいただいたチョコレート。O氏の30年来使っているソムリエナイフと、タストヴァンを元に作られたチョコ。よくできている。真ん中は似顔絵入り。こんなのいつ食べればいいんだろう。

 

帰りに新梅田食道街の「弥助」へ。店主会のK会長の店。
たこわさ、空豆で一杯。こういうのがいいや、やっぱ。

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極楽から目覚めてみれば・・・

2009-04-04 01:25:21 | 



3月いっぱいで閉店となった「道頓堀極楽商店街」。
5年もたずに撤退。大々的な開業だっただけに、まことに残念。

店舗プロデューサーの故・日限万里子が「大人の町である道頓堀に、この空間は汚すぎる」と開館の頃meets誌で怒っていた。錆びた看板などを再現して、戦後の焼け跡闇市的セットをよく表していると思ったが、ああいうアナクロニズム嫌いぢゃないが、やっぱし汚い(苦笑)。

暗闇が多くて酔ったら立ち小便の一つもしたくなるようなロケーション。
方向音痴なので館内でたいがい迷った。火災など起こったらえらいことになると思っていたので、大過なく閉幕を迎えられたのは幸い。

開業に際し、京阪神の有名店に出店を促した。厨房施設などハードは言いなりで用意する、人だけだんどりして下さいと。なにしろ道頓堀、店にはちょっと美味しい話だ…。
だが場所により当り外れがあり、結局、とんかつ武蔵、グリル一平、井出商店、はがくれなどは早々に撤退して行った。どだい、こんなテーマパークで真剣にめしを食おうなんて人はいなくて、せいぜい買い食いする感じ。串カツのだるまが流行ったわけだ。

櫛の歯のように抜けていく店を埋めねばならない…新店の出店がままならない中、親会社側が急作りした店が林立し出し、オペレーションのラクな粉もんの店ばかりができた。(オモニや桃太郎のことぢゃねぇよ、こちらは名店)そうなってくると、なにも入場料315円払って入るこたぁねぇ、道頓堀自体が粉もんだらけのテーマパークみたいなもんだ、ということになる。

この入場料というのもネックになった。何度も撤廃して客をよび込んでくれという店側は主張したようだが、実態はそうはならなかった。終りが見えてからタダです・・・ではだぁれも見向きもしない。

断続的に行われるショー、「極楽夫婦善哉」というのもつらかった。姦しく夫婦喧嘩をして仲直りをするという何ら意味のない゛賑やかし″で、役者作家諸君には悪いが二度見たいとは思わなかった。

もうひとつ、当初、マスコミ人など食関係の専門家たちをアドバイザーとしてヒアリングを行ったようだが、その後、全くなしのつぶてだったというのは礼を逸してやしまいか。

5年に満たず消えてしまったが、東京のパチスロメーカーsammyとしたら頑張った方かもしれん。欲をいえば、これ道頓堀ぢゃなく千日前でやって欲しかった。あすこは見世物、ケレンの本場。道頓堀はやはり大人の街という見識を持ってもらいたかった。

極楽、くいだおれ倒れ、中座なく、映画館閉め、惨憺たる道頓堀のありさまだが、なに戦後すぐだと思えばよい、この焼土から復興して行くのが大阪のしぶとさでもある。

私にゃ夢がある。キング牧師か!

道頓堀の弱体化はすなわち松竹の弱体化でもある。ならば吉本さんに道頓堀に進出してもらう。街の外観は古い道頓堀で厳しく統一感を出す。芝居街であった道頓堀をもう一度取り戻す。
浜側(川側)はかつての芝居茶屋が並んでいた頃のファサードに統一し、店内はそれぞれの業態に合わせて自由にすればいい。紐育、巴里を見なさい、百年以上の古い建造物の中でティファニーがあったりする。南の劇場側は五座の櫓を掲げた劇場然としたものにする。ここへ来ると日本のかつての劇場街へタイムスリップできるものにする。

ゴチャゴチャしたパチンコ台のような道頓堀にはもうおなかいっぱい。店主たちは観光客に迎合などしなくてよい。大阪でも特別な街である高い志を持ってもらいたい。温故知新、新しいが包み紙ばかりのペラペラなのはもう結構。オンリーワンの街を取り戻してもらいたい。心から。


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