今から20年ほども前、金は無いけどヒマはある。
いや、ヒマもないけどなんとか隙間を見つけてでも呑もうや、と
名古屋の仲間とあちこち呑み歩いたものだ。
その仕上げで行ったのが、ここ「江南柳橋本店」。
滅法うまかったあの中華そばと、久々に会いたい…!
長年の悲願である。
円頓寺商店街を歩いて、柳橋をめざした。
さすがは名古屋だなも。
アンタらの好きな金のシャチホコだぎゃあ。
怒るな、名古屋人。
ワシにも何分の一か、名古屋の血が流れとりゃ~す。
妙にリアルな水戸のご老公。
なんのメッセージもないんだけど。
死んだ牧伸二に似ている。
あ~あ、やんなっちゃった~
中京元祖の文字に、いいなぁ。
ほどをわきまえている辺りが素晴らしい。
そうこうしてる間に柳橋。
ほほう、きれいなビルの半地下みたいな場所になっていた。
以前はへんな地道みたいな場所で、行列を作ること40分。
その間に行列を乱す奴が多数いて、キレそうになるが、
車で来て、車内で喰うやつには先に出していた。
このルールにも「どやねん!」と思ったが、郷に入れば郷に従え、で
ぐっと怒りを呑み込んだのも、懐かしき思い出である。
行列は出来ていなかったが、店内には待ち客が数組。
人気継続中に胸打たれた。
20年変わらないということはスゴイことである。
まだ新しい店内で待っていると、次から次ひっきりなしに客が入ってくる。
いやいや今回は腹など立たぬ。
磨き込まれた厨房で一人一人が黙々と仕事をする。
それを眺めているだけで、待てる。
そして…
ここのエライのは、出世しようが新築しようが、
スケベ心を出さず、うちはラーメン屋という基本のスタンスを
固持し続けている点にある。 その心根は見上げたもんだ。
いろいろ喰いたいも、胃袋には限界あり。
中華そばだけでは侘びしいので、春巻きセットにした。
セットにすんのかよ…。
パリリとクリスピーな春巻き。
豚肉・タケノコ・玉ネギ・シイタケ・春雨だったかな。
パリッと揚げた皮一枚を隔てて、
中は高温アツアツの蒸し料理になっている。
こういうものでも、いい加減に作っているかどうかは、
食べ手にはすぐに判別がつく。
丁寧な仕事に好感が持てた。
そして、やっと会えた~。
江南本店の中華そば、柳麺。
かつて、ここのスープに仰天した。
なんでもない鶏ガラと豚骨、醤油ダレだと思うのだが、
その妙なるハーモニー。
す~っと消えて行く、あと味。
記憶は純化されて行くので、
こうだったかな…といぶかりながら食べ進む。
だが、裏切られることはない。十分に美味い。
フムフム言いながら、一気に啜り込む。
ボクの喰いたいラーメンはドロドロの地獄谷のようなとんこつに非ず、
血管浮きそうな塩でも、クセの強い味噌でもない。
あっさりしている中にコクがあり、食べ続けて飽きない中華そばなのである。
改めて、自分の中のラーメンの軸を確認するに至った。 やっぱコレや。
食べなくていいのに、ザーサイつまみ、茶碗一杯のごはんもたいらげた。
これで980円。
さあて、腹ごなしに名古屋駅まで歩くとすっか。
また来るから、それまで首洗って待っていやがれってんだぁ、べらぼうめ~。