当節、大阪でも当たり前のように出てくる小肌。
だが10年前は江戸前の下ごしらえをした小肌を食べようったって、
そうそうあるものではなかった。
突堤から海をのぞくと、いくらでも鯔(ボラ)の姿は見られるのだが、
油くさくて、食えたシロモノではない。
中央市場辺りで入手できる小肌は、九州熊本とか長崎などのものが多いと聞く。
子供の頃、近所の寿司屋に注文した並の盛り合わせには、小肌の親、
つまりはコノシロが、なかば乾いたみたいな身を晒して、そっくり返って現れた。
親がヒカリものギライだったので、こっちもあのメタリックな皮めがダメだった。
だけど、東京にいる頃、貧乏書生のくせに小銭を貯めては、名の通った寿司屋に行き、
食べた小肌のうめえのうまくねえの。ほっぺたが落ちると同時に、目から鱗がボロボロと何枚も落ちた・・・。
いなせ(鯔背)という、江戸っ子が最も好む気風に鯔(ぼら)という漢字が使われるのは、
日本橋魚河岸の若いもんが髪を鯔背銀杏(いなせいちょう)に結っていたから、といわれる。
粋で勇み肌な若い衆の容姿や気っ風を、あの魚の背で表すのは興味深い。
鯔も出世魚であり、オボコ → スバシリ → イナ → ボラ → トド と変名する。
トド以上はならないことから、トドのつまり…という。
長椅子の上にドベッと寝そべって、TVの前から動かないトドのようなヨメはん、のトドではない。
(特定の個人を指すのではありません)
さて、こちら10年版ミシュランガイドで1ツ星になった、大阪京橋の寿司「すし処・広川」。
怪しい裏通りの黒っぽい店。場所は聞かれても、特にややこしい京橋では私には説明不能。
八寸風の小さなアテから始まり、酒を頂き、寿司へ。
酒肴系の技もいろいろお持ちのご様子。 ここでカウンターに貼りついて
じっくり飲みたいなぁ~。
こいつは、タチウオをさっと炙ってある。
いろいろ頂きましたが、あえて撮影は少しだけに。
思い出した、「もつ鍋まつい」の近所。
牡蛎の煮たのは珍しい。ここは煮イカなども出す。
シメは玉子で。
京橋という土地もあるのだが、北新地よりもずっと肩の力を抜いて楽しめる感じ。
店主も余計なプレッシャーを与える人にあらず。
京橋価格で楽しめるといってもよろしゅござんすな。
すし処 広川 大阪市都島区東野田町3