Eldon Shamblin 1916 ~ 1998
Western Swingのことを書いたついでに、スイングギターの大物の
ことを書いておこう。
エルドン・シャンブリン。テキサス・スイングギターの第一人者だ。
決して派手なリードをとるわけではないが、彼のベースランニングを
強調したパッシングコードで組み立てるリズムギターは、これぞ
ウェスタンスイング。これなくしては…という気さえしてくる、まさに
ワンアンドオンリー・ギタリストである。
リズムギターとしてコンボ全体に、バウンスを与えるその役割の大きさは、カウントベイシー楽団が誇るフレディ・グリーンと双璧と考える。
単調になり勝ちな2ビートにアクセントを加え、移動し続けるコード。
その独特な奏法は現在ほとんど顧みられていないが、是非リズムギターをするなら試みてほしい、それだけの巨人である。
彼はオクラホマのバーで演奏活動を始め、Alabama Boysを経て、
1937年 Bob Wills And His TexasPlayboys に加入。
歌は苦手だったようで、ギターに徹し、ベニーグッドマンのところで成功したチャーリークリスチャンの影響を受けたリードを弾いた。
バンドのアレンジも担当、スチールとのTwin Guitar Specialは彼の作。
ウェスタンスイングはそもそもダンスミュージック。
こんなバンドスペースが3面もある巨大ボールルームがテキサスや
オクラホマにはあった。
一番左に座るのが名手Eldon Shamblin。
3本フィドルの中央がBob Wills スチールギターはHerb Lemington
1941年の映画「Take Me Back To TULSA」。
日本でいうと大都映画が作ったちゃんばらプログラム・ピクチャーの
ようなもんだろう。
白馬にまたがるのはHigh Noonでおなじみ歌う映画スターTex Ritter。
その左がBob Wills。一番右がEldon。
奥ゆかしいこの方は、端っこが好きなようだ。
戦後、リードギターからリズムに転身し、バウンシーなギターを確立した。50年代、最高18人ほどもいたPlayboysもビッグバンド時代がすぎると縮小せざるを得なくなってきたんだろう。
その後はLeon McAuliffeの楽団やHoyle Nixのバンドでプレイした。
その後、TULSAでコンビニを経営したり、ギターを教え、ピアノの調律師にオルガンのサービスマンをしたりして静かに暮らしていたが、70年、
カントリー界の大物になっていたMerle Haggardに呼び寄せられ、再びギターを取ることに。
「The Texas Playboys Are On The Air!」のMerleのイントロで始まる
1973年のアルバム。
ここで久々に集まった面々は、スタジオに車椅子を持ち込んだ最晩年のBob Willsの前で素晴らしいセッションを繰り広げる。
1974年ローリングストーン誌で、ベストリズムギター部門にノミネートされた。
その後は昔なじみのTiny Mooreとアルバムをこさえたり、
マンドリンのJethro BunesのアルバムやAustin City Limitsに出演したり、Asleep At The Wheelとジョイントしたりした。
たぶん我儘を言わない、穏やかなセッションマンには最適な性格だったのだろう、Eldonの人柄とギターは方々で再評価されるようになる。
後半、彼が弾いていたのがフェンダーのストラトキャスター。
バンド時代はフルアコみたいなギターを弾いていたのに、いつしか
これ一本になった。
病気みたいなもんで、彼のリズムギターがしっくりきだすと、なければ
頼りないということになる。あんなギターをバックに演奏してみたいもんだ。
彼は2006年 オクラホマ州のMusic Hall Of Fameに加えられている。
彼は才能に満ち、愛と友情と誠実に満ちていた。彼はまた夫であり、
父であり、祖父でもあった・・・とある。
彼のギタープレイについてはこちらに
http://www.guitarplayer.com/article/eldon-shamblin/apr-06/19528