岡山県の新型コロナに関する緊急事態宣言は、当初今月末に解除の予定だったが、思うように感染者の減少傾向に至っておらず、しばらく延長されるようだ。
5日ぶりにGikoohの義の時間をお届けしようと思う。前回の(草餅編)に続き、今回の後半は(比叡のお猿さん編)の話を。御菓子司「鶴屋益光」さんの栞を引用・参照しながら、このお菓子の由来を紹介しようと思う。内容に相違あるかも知れないが寛容に願いたい。
さて、比叡山延暦寺といえば、天台宗の伝教大師最澄様を思い浮かべるが、この比叡の御山は古都・京の都を護る山、そして国民の平和を祈る神聖な霊山として篤く信仰されている。
その伝教大師最澄様が御懐妊になる前に、御両親は「よき子が産まれますように…」と、氏神様(日吉宮)の※別当寺である奥の院(西教寺)にお籠りになり、その後最澄様が御生誕されたのだそうだ19歳の時、幼少より仰ぎ見ていた比叡の山に入山なされ、それ以来、この比叡の御山は日吉山王権現を守護神と崇められている。(別当寺とは、神社を管理するために置かれた寺のこと。神宮寺とも同義)。
最澄様が支那から帰国される時に、猿を連れて帰り、神猿(まさる)として神の御使いにされたと『二十二社本縁』に記されているそうだが、昔から比叡の御山には多数の猿が生息しているそうだ。
その後、中興の祖・慈恵大師(良源上人)は、比叡山延暦寺に入山される砌、御母堂様から「山王権現の擁護を受ける立派な坊様になるように」と教えられた。良源上人は延暦寺復興に尽力され、山王権現の慈悲を忘れぬように、権現様のお使いである猿に因んで七首の歌をお作りになられた。
その中に、あの有名な「見ざる」「聞かざる」「云わざる」があり、そこに思わざるを加えて四猿とし、後世に日光東照権現の「見ざる」「聞かざる」「云わざる」の由縁はここにあるのだとか。とにかく比叡山のお猿さんは、神聖化された特別な存在であることが学べた。
そして、この(比叡のお猿さん♫)。鶴屋益光さんが、(魔去る・正さる、勝る)と心を込めて謹製された御菓子の最中が比叡のお猿さんだ。有難い子猿を抱いた母猿を象った最中で、中は漉し餡、その中に刻み栗が入っており香ばしくも、絶品な甘さに仕立てられている。
Gikoohの義なりの時間というのは、誇張かも知れないけれど五常(仁・義・礼・智・信)の誠を表現したいと、前回の草餅は抹茶で、比叡のお猿さんは煎茶で戴こうと思った。
恐らく昔の文人達もいっぷくの煎茶を嗜むのに、茶道具に拘ってきたのだろう。この画像の煎茶道具も古いものだが、Gikoohも煎茶の時間を大切にしたいと思っているうちに、コレクションしてきたものだ。たかがいっぷくの煎茶、されどいっぷくの煎茶。一つの御菓子を戴くまでに、水の選択から茶葉の選択まで数々のストーリーがある。
今、コロナ禍で何らかの影響を受けて生活をしておられる方が大勢いる。一方で、ストレスを抱えて行き詰った気持ちで過ごされている方も大勢いる。そんな時、Gikoohは息抜きの時間が大切だと思う。それも文明的な快楽に翻弄されるのでなくて、文化的な情緒に身を委ねることが良いと思う。
それがお花だったり、お茶だったり、感性が更に深まってくるとお香だったり…。そんなゆとりを経験した上での行動は、正しい方向へ歩んでいくと思うし、ゆとりなく出た行動は道を迷ってしまうかも知れない。
Gikoohは煎茶など和の文化を推奨したい。そしてとにもかくにも、この度、二種の珍菓をお持ち頂いたお客様に御礼申し上げます。