自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「五輪の決断」まであと22日

2021年02月18日 | ⇒ニュース走査

   あと5ヵ月だ。森喜朗氏に代わって、橋本聖子氏が東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長に決まった。日本国民、そして世界が注目するのは、橋本氏がこのコロナ禍でオリンピックを開催するのか否か、開催するとなれば観客を入れるのか否かの方針をいつどう決めるのだろう。難題が山積するにもかかわらずよく決断したものだ。もう一人、橋本氏の五輪担当大臣の後任となった丸川珠代氏とのコンビネーションが実にいい。この2人が日本のオリンピック開催の顔として、開催に向けて沈んだ雰囲気を反転させるのではないか。

   一方で、島根県の丸山達也知事が東京五輪聖火リレーの中止を検討すると表明して議論を呼んでいる。詳細が知りたくて、地元紙の山陰中央新報社(2月16日付)をチェックすると。聖火リレーの実施について、島根県は大会組織委員会と協定を結んでおり、聖火ランナーやルートを決める県実行委の事務局を担当している。同県の聖火リレーは土日にあたる5月15、16日に実施予定。津和野町をスタートし、松江城(松江市)を目的地とする14市町村(総距離34.3㌔)で170人が聖火をつなぐ予定だ。

   警備費用など約9千万円を県の財源で予算化しており、県の判断で聖火リレーを事実上ストップもできる。知事はすでに今月10日の定例会見で、東京都が感染拡大で手が回らなくなった保健所の調査を縮小したため、感染経路や濃厚接触者の追跡ができていないと不信感を表明している。全国の飲食店などが打撃を受けているにもかかわらず、緊急事態宣言が出た地域と、島根など感染者が少ない地域で、政府の支援に差がある現状にも不公平感を訴えていた(同)。

   島根県知事の不満はおそらく全国の知事が心の中で思っていることではないだろうか。正直な話、県の判断でストップできるのであれば、一億円近くかけてまで無理をしてやる必要はない、中止宣言すればよい。ただ、実施する県との調整を島根県はできるだろうか。「あとは知らない、調整は大会組織委員会が勝手にやればよい」では無責任とのそしりを免れないだろう。

   聖火リレーに関して、むしろ気をもんでいるのは福島県ではないだろうか。今月13日夜に震度6強の激震が走ったが、知事発言として聖火リレー中止の話は聞こえてこない。実は、昨年の延期決定で翻弄されたのは福島だった。IOCと組織委員会が延期決定を発表したのは3月24日(日本時間)、福島から聖火リレーが出発する2日前だった。このため契約上、設営や警備にあたる業者に契約通りの経費を支払う必要が出て、県が支出した費用は約2億5000万円に上った(2020年7月8日付・福島民友新聞Web版より)。

   ことしの聖火リレーは3月25日に福島を出発、栃木、群馬とバトンタッチされていく予定だ。警備会社などのキャンセル料の支払いを考えれば、中止や再延期となると、その決定はその2週間前、つまり3月10日には決断が必要だろう。あと22日だ。コロナ禍での各国のアスリートの選抜やワクチン接種の普及、国際世論を見極めながら決断となる。IOCバッハ会長、橋本大会組織委員会会長、丸川五輪担当大臣の手腕が問われる。

⇒18日(木)夜・金沢の天気     ゆき

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★悲劇の始まりはどこにあったのか

2021年02月16日 | ⇒ニュース走査

   このニュースに接して言葉が出ない。残念としか言いようがない。事件は全国ニュースにもなった。石川県中能登町の前副町長の広瀬康雄氏(65)が93歳の母親とともに15日未明に死亡した状態で見つかった。県警の司法解剖などから、広瀬氏が母親を殺害後、自殺した無理心中とみられる(2月16日付・北國新聞)。広瀬氏は3月16日告示の町長選に出馬予定で、支援者は本人が「選挙事務所を開いてから体重が落ちた」と述べていたと言い、選挙の準備で相当なプレッシャーを感じていたようだ(同)。

   自身が広瀬氏と出会ったのは、2012年4月だった。自治体の特色ある取り組みを学生たちに講義してもうら、大学コンソーシアム石川の授業「石川県の市町」の講師依頼をした。当時は企画課長で快く引き受けてくれた。7月の講義で、「織姫の里なかのと」をタイトルに繊維産業を活かした地域づくりについて話していただいた。町の基幹産業である繊維については、麻織物から合成繊維へ、そして新素材や炭素繊維などにチャレンジしている企業の現状を紹介し、産業の観光化について熱く語ったのを覚えている。その後、住民福祉課長、総務課長を歴任して、2014年から副町長だった。講義をお願いしたことが縁となり、お会いすると言葉を交わし親しくさせていただいた。

   広瀬氏に転機が訪れたのは昨年12月だった。現職の町長から後継候補に指名され、本人も町長選に立候補を表明。1月15日に副町長を辞して、同30日に後援会の事務所開きをして選挙の準備を進めていた。先日、後援会事務所の前を通りかかったので、事務所をのぞいたが、本人はあいさつ回りに出かけていて不在だった。事務所のスタッフから、毎日100世帯以上を訪問していると聞き、選挙への意欲を感じた。

   事件についての記事を読むと、遺書などは見つかっていない。ただ、家族や支援者の話として、声がけしても返事がなかったり、本人の相当な疲労感を周囲も感じ取っていたようだ。亡くなったとされる14日もあいさつ回りをしていた。自身がこれまで接してきた印象は、理論的で仕事熱心、そして冷静なタイプだった。その人物がなぜ母親を道連れに死を選んだのか。悲劇としか言いようがない。

⇒16日(火)夜・金沢の天気    ゆき 

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☆メディアに相互監視の機能はあるのか

2021年02月15日 | ⇒メディア時評

   記者がなぜこのような行為にいたったのかその背景を知りたい。共同通信社は12日、取材で得た録音データを外部に漏えいしたなどとして、大阪支社の記者を出勤停止7日間、本社社会部の記者を減給の懲戒処分にしたと発表した。1月20日に厚生労働省が開いた大麻などの薬物対策の検討会を、社会部の記者が制限に反して録音。大阪支社の記者の依頼に応じてデータを送った。この記者は外部の6人に音声データを提供するとともに、自身のツイッターに検討会の内容などを投稿した。投稿を見た厚労省が同社に抗議した(2月12日付・時事通信Web版)。
  
   取材で知り得た情報を報道目的以外で流出させるのは記者としての倫理を逸脱する行為である。「取材の自由」は、取材源を秘密にできるという記者の権利だ。今回は、そうした記者の権利とは真逆の行為だ。相手が役所とは言え、規制されていた音声録音をし、さらにその音声データを外部の6人に提供した。

   さらに、問題となるのは、外部の6人とはどのような人物だったのか。録音したのは、厚労省による大麻などの薬物対策の検討会だったので、大麻などの薬物に関わっている、あるいは関心がある人物なのだろうか。そのような人物に厚労省内部の情報を提供したのであれば、記者の倫理逸脱どころか、機密漏洩の犯罪ではないのだろうか。他のメディアは共同通信の記者がどのような人物たちに情報を漏洩したのか報じていない。メディアを監視する権力システムは日本にはない。あってはならない。メディアは相互監視であるべきだ。そうした相互監視は果たして機能しているのだろうか。この一件から疑問に感じる。

   メディアへの疑問はさらにある。新聞や放送、雑誌な220社余りが加盟するマスコミ倫理懇談会の全国大会が2007年9月に福井市で開催され、最高裁の平木正洋総括参事官は「容疑者は犯人だ」という予断を裁判員に与える報道をしないよう配慮をメディアに対して求めた。「一個人の私見」として、捜査段階での報道について6項目を具体的に問題点として挙げた。1)容疑者の自白の有無や内容、たとえば「・・と犯行をほのめかす」という記事表現、2)容疑者の生い立ちや対人関係、3)容疑者の弁解が不自然・不合理という指摘、4)DNA鑑定など容疑者の犯人性を示す証拠、5)容疑者の前科・前歴、6)事件に関する識者のコメント。

   総括参事官が指摘した報道の姿勢はその後、変化しただろうか。確かに、別件逮捕を明確に区別したり、「無罪推定」の原則を尊重したり、「起訴事実」を「起訴内容」としたりなどこれまでの報道とは違う点もいくつかある。ただ変わらないのは、犯人とおぼしき人物を追い込む姿勢は従来通りだ。

⇒15日(月)夜・金沢の天気     ゆき

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★「オリンピックは参加することに意義」 ありやなしや

2021年02月14日 | ⇒ニュース走査

   昨夜遅く、福島と宮城の両県で震度6強の激しい揺れがあった。日本海側の能登半島でも、半島尖端にある珠洲市で震度3を観測したほか、七尾市・輪島市・羽咋市などで震度2だった。金沢も震度1だったが、気づかなかった。気象庁の公式ホ-ムページでチェックすると、日本海側だけでなく、北海道まで広範囲に揺れている=写真、13日午後11時44分発表=。

   多くの国民は「オリンピックは大丈夫なのか」と案じているのではないだろうか。新型コロナウイルスによるパンデミック、そして、オリンピック組織委員会会長(12日辞任)の森喜朗氏の女性蔑視と取れる発言が国内外で問題になっていて、さらに東日本を揺さぶる地震だ。そして、福島市では7月21日、22日、28日に野球・ソフトボール競技が開催されることが決まっている。各国の代表選手も大丈夫かと気にしているのではないだろうか。

   話は変わる。イギリスのBBCニュースWeb版日本語(2月12日付)によると、中国の放送規制当局は、BBCワールドニュース(国際ニュース放送)の放送を中国国内で禁止すると発表した。中国はこれまで、新型コロナウイルスや少数民族ウイグル族への迫害をめぐるBBCの報道を批判してきた。中国の放送規制当局・国家広播電視総局は、BBCワールドニュースの中国報道について、「ニュースは真実かつ公平でなくてはならない」などとする中国の放送ガイドラインに「著しく違反した」と述べた。その上で、BBCの次年度の放送免許の更新申請を受け付けないとした。

   上記のニュースには伏線がある。同じくBBCニュースWeb版日本語の今月5日付。イギリス通信業界の独立監視機関、放送通信庁(Ofcom)は、中国の国営テレビ「中国環球電視台(CGTN)」のイギリス国内での放送免許を取り消した。CGTNのライセンスを保有するスター・チャイナ・メディア・リミテッド(SCML)が、英語の衛星ニュース・チャンネルについて「編集責任」を持たないことが、Ofcomのルールに違反したためとしている。

   さらに、同日付でBBCは中国での人権問題を報じている。新疆ウイグル自治区の収容施設に入れられたウイグル族の女性らが、組織的なレイプ被害を受けたとBBCに証言した。この報道を受け、アメリカとイギリスの政府は「深く憂慮している」と懸念を表明した。新疆ウイグル自治区の収容施設では、ウイグル族などの少数民族100万人以上が拘束されていると推測されている。

   米英と中国で「メディア戦争」が勃発しているのだ。バイデン政権も、国務省の報道官が先日、中国がウイグル人に対して「ジェノサイド(大量虐殺)」を行っていると認め、この点においては前のトランプ政権と現政権の見解は一致していると改めて述べた(2月5日付・AFP通信Web版日本語)。

   この一連のニュースで連想するのは、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議し、アメリカや日本など50ヵ国が1980年のモスクワオリンピックをボイコットした一件だ。すでに、開幕まであと1年と迫った2022年北京冬季五輪も似たような状況に展開しつつある。世界の180以上の人権団体が署名して、人道上の理由からボイコットを呼びかける書簡を発表した。書簡は「チベット、ウイグル、南モンゴル、香港、台湾、中国民主、人権運動団体連合」の名で発表された(2月5日付・CNNニュースWeb版日本語 )。オリンピックをめぐる争いの火ダネになりそうな気配だ。

           有名な言葉、「オリンピックは参加することに意義ある」(元IOC会長・クーベルタン)はもう過去の話なのかもしれない。

⇒14日(日)夜・金沢の天気    はれ

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☆パンデミック、森発言 カギ握るNBCの論調は

2021年02月13日 | ⇒メディア時評

   前回のブログで「五輪も万博も『オワコン』か」と書いた。ブログを読んでくれた知人からメールで、「あとはアメリカのNBCが最終判断すれば、終わりじゃないのか」と。「日本のゴタゴタに世界はすでに見限っている」とも。確かにそうだ。 NBCはアメリカの3大ネットワークの一つだ。そして、1988年のソウル大会以降は全米のオリンピックの放送権を独占している。

   アメリカの放送権を独占しているだけなのに、なぜNBCの最終判断が注目されるか。IOCの収入は放送権料が73%、スポンサー料が18%とされる。実際にNBCはどれだけIOCに払っているのか。韓国・平昌冬季大会(2018年)と東京大会の合算した数字だが、NBCの供出額は21億9000万㌦で、全放送権料の50%以上を占めるとされる。ちなみに、開催国の日本はNHKと民放がコンソ-シアムを組んで5億9400万㌦だ。アメリカと日本では人口の違いがあるので1人当たりで計算すると、アメリカの人口を3億2800万人として1人当たり6.7㌦、1億2600万人の日本は1人当たり4.7㌦なので、NBCのチカラの入れようが分かる。

   知人からのメールで、NBCの論調が気になって公式ホームページをチェックしてみた。NBCニュースWeb版(12日付)はオリンピック組織委員会の森喜朗会長の辞任表明を伝えている。「Tokyo Olympics chief Yoshiro Mori resigns after sexist remarks」の見出し=写真=。記事内容は、新型コロナウイルスによるパンデミック、安倍総理の病気による退任、そして森氏の女性蔑視と取れる発言が続いて東京では混乱が続いている。森氏の退任で、IOCのバッハ会長は「東京オリンピックを安全かつ確実に開催するため、森氏の後継者と手を携えて活動を続けていく」と述べたと伝えている。

   記事の後に、イギリスのスポーツ史の研究者のコメントを紹介している。「“The biggest thing that people will always talk about is how they have dealt with the pandemic," 」(人々が常に話題にする最大のことは、パンデミックにどのように対処してきたかということだ)と。最後に「“That will be what people will remember these games for.”」(人々がこのゲームを覚えているのは)と締めくくっている。NBCの論調は、森氏の発言よりむしろパンデミックといかに対応するかが今回のオリンピック、そしてスポーツの歴史で問われることなのだ、と強調している。

   以下は憶測だが、アメリカやEUの主要国のいずれかで選手派遣をやめると決断すれば、NBCは放送の中止を決断するのではないだろうか。先のリオ大会(2016年)でアメリカは46個の金メダルを獲得したが、競泳16個、陸上13個、体操4個と花形競技の3種で7割を占める。もし、水泳の選手たちが「五輪の精神に反する、女性差別の国には行けない」と言い出したら、おそらくスポンサーも降りて放送は中止せざるを得ないだろう。放映権料の大スポンサーが降りたら、それでもIOCはオリンピックは続行できるだろうか。

   4月になれば、東京ビックサイトに設営されたIBC(国際放送センター)にIOCから放送権を得たRHBs(Rights Holding Broadcasters)と呼ばれる放送メディアが続々と準備のために東京にやって来る予定だ。本来ならば、その第一陣はNBCなのだが。果たして。

⇒13日(土)午後・金沢の天気     はれ

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★五輪も万博も「オワコン」か

2021年02月12日 | ⇒メディア時評

   けさの新聞やテレビのニュースで、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、女性蔑視と取れる発言の責任を取って辞任する意向を固め、後任をJリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏が引き受ける意向を示したと報じている=写真=。ニュースの流れを見ていて、なぜか後味の悪さを感じる。森氏の辞し方ではなく、メディアの論調、そしてオリンピックの開催そのものについてだ。

   森氏の発言をめぐって、メディア各社は最初から辞するべきという流れだった。これでよかったのか。新型コロナウイルスの感染拡大で、オリンピック開催そのものが危ぶまれているタイミングであることを多くの国民が理解している。このタイミングで森氏が辞することのダメージやデメリットを検証する報道はあっただろうか。この時期に辞めたら大変ことが起きるのではと心の中で案じている国民も多いのではないだろうか。森氏の発言を許すと言っているのではない、このタイミングでの「辞めるべき」一辺倒の論調に躊躇する。

   イギリスのBBCは「Tokyo 2020: Games chief's remarks about women 'absolutely inappropriate', says IOC」(2月10日付Web版)の見出しで、日本の首相とIOCが森氏の発言を非難するまで5日かかったが、これは双方にとって非常に恥ずかしく、ダメージの大きいエピソードとなった」と報じている。その一方で、「But others will worry that a change in leadership this close to the Games could make the job of organising them even harder.」(意訳:しかし、オリンピックに近い時期に指導者が交代すれば、大会を組織することがさらに難しくなるのではないかと心配する人もいるだろう)と、このタイミングでの辞任はいかがなものかと問うている。

   果たして、川淵氏にバトンタッチして、すっきりした気分で、オリンピック開催は可能なのだろうか。そもそも論にもなるが、国民はオリンピックの開催を心から歓迎しているだろうか。1964年の東京オリンピックは高度経済成長の真っただ中での開催だったので、国民のモチベーションも上がった。人口減少が続き、膨れ上がる赤字国債を誰が返済するのかという議論が出ているのに、さらに1兆6440億円の開催経費をかけてまでオリンピックを実施する意義はどこにあるのか。直近の世論調査でも、コロナ禍でオリンピックをどのようなカタチで開催すべきかとの問いで、「中止する」が38%で最も多く、「観客の数を制限」29%、「無観客」23%と続く(2月8日付・NHKニュースWeb版)。

   2025年開催の大阪・関西万博にしてもしかり。インターネットで情報が飛び交う時代に、万博で何か得るものがあるのだろうか。こうしたイベントで経済効果を期待すること自体、時代に合わなくなった「オワコン」(終わったコンテンツ)ではないだろうか。オリンピックにしても、万博にしても、「夢よ再び」の時代ではない。

⇒12日(金)朝・金沢の天気     はれ

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☆放送倫理と人権問題、テレビが問われること

2021年02月11日 | ⇒メディア時評

   まるで不祥事のデパ-ト、そんな印象を抱いた。このブログでも何度か事例を引用しているBPO(放送倫理・番組向上機構)の公式ホーページをチェックすると、フジテレビの案件が目白押しになっている=写真=。BPOは、放送の言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を守るため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応するNHKと民放による独自の組織だ。

   BPOがトップで掲載している項目は、フジテレビが実施した世論調査で架空の回答が入力され、報道番組で伝えていた問題が結審したとの内容だ。フジは2019年5月から2020年5月まで14回にわたり実施した世論調査で、調査会社の社員が電話をしていないにもかかわらず「電話をした」として架空の調査データが入力されていた。調査を委託した会社が再委託した、いわゆる「孫請け」の会社だった。問題の発覚を受け、同局は架空の調査をもとに報じたニュース(18回分)を取り消した。この問題を審議してきた放送倫理検証委員会はきのう10日に結審した。

   意見書によると、NHKと民放が定めた放送倫理基本綱領などに照らし合わせ、「世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、架空データが含まれた世論調査結果を1年余りにわたり報じたもので、市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めない」として、この件は重大な放送倫理違反に当たると判断した。SNSを主舞台とする、いわゆる「ネット世論」が拡大するなど、多種多様な情報が錯綜している。世論調査の信頼性を確保するためには「世論調査の外部への発注から納品、データの分析、ニュース原稿作成に至るプロセスは、それ自体が取材活動であり、担当者にはジャーナリストとしての目線が欠かせない」と述べ、調査の現場に行く、数字をチェックする、緊張感のある対応を求めている。

   同じく放送倫理違反があったと結論づけられた審議案件。同局のクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』は、100人の参加者から選ばれた解答者1人が、残る99人を相手にクイズで競う番組コンセプト。だが、参加者が不足した際、エキストラを出演させて補い、クイズへの解答もさせていなかった。コンセプトを逸脱した状態は2018年7月から1年余り続き、告発を受けて2020年4月に同局は番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪していた。放送倫理検証委員会の審議はことし1月18日に結審した。

   意見書によると、番組制作にあたってプロデューサーが6人配置されていたにもかかわらず、お互いが「見合う」カタチになっていて、エキストラによる補充の常態化に警鐘を鳴らすスタッフがいなかった。欠員は想定外でなく想定内として番組制作の数日前にエキストラの補充を手配業者に発注していた。「視聴者との約束を裏切るものであった」と放送倫理違反を結論づけている。

   3つ目が、女子プロレスラーの自死が問題となったリアリティ番組『テラスハウス』(放送:2020年5月19日未明)についての審理だ。問題となったシーンは、同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れたとして怒鳴り、男性の帽子をはたく場面だ。放送より先に3月31 日に動画配信サービス「Netflix」で流され、SNSコメントで批判が殺到した。この日、女子プロレスラーは自傷行為に及び、それをSNSに書き込んだ。フジの番組スタッフがこのSNSを見つけ、本人に電話連絡をとっていた。ところが、フジは5月19日未明の放送で、SNSで批判された問題のシーンをカットすることなく、そのまま流した。女子プロレスラーは5月23日に自ら命を絶った。 女性の母親は娘の死は番組内の「過剰な演出」による人権侵害としてBPOに申し立てた。

   放送人権委員会はことし1月19日までに3回の審理を重ねている。これまでの関係者のヒアリングで、母親はSNS上で誹謗中傷が集中したあと娘が自傷行為を行ったことは、「SOSを出していたのであり、フジテレビが適切に対応していれば娘が命を落とすことはなかった」などと訴えた。また、女子プロレスラーの知人は当時の様子について、女性とのやり取りから制作スタッフに不信を抱いていたようだと感じたなどと述べた。一方、フジテレビ側は、社内調査を行った結果から、番組に過剰な演出はなく女性を暴力的に描いたことはないとして主張した。

   審理が始まって新たな展開があった。警視庁は12月17日、女子プロレスラーを中傷する投稿をSNSで行ったとして、侮辱容疑で大阪府の20代の男を書類送検した。ツイッターアカウントに「性格悪いし、生きてる価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと投稿し繰り返し、公の場で侮辱した疑い(2020年12月17日付・時事通信Web版)。

   フジに限らず、番組の不祥事は制作スタッフの緩みやスキを突いて出てくる。放送倫理と人権問題として放送する側が問われる。緊張感を持って制作しなければ、番組は立たない。

⇒11日(祝)午後・金沢の天気     はれ    

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★世界が認める「生き物ブランド米」

2021年02月10日 | ⇒ニュース走査

   あさニュースをチェックしていて目に留まる記事は、「環境」や「エコロジー」といったワードが入っていたりする。NHKニュースWeb版(2月9日付)の記事。兵庫県北部の但馬地域のブランド米「コウノトリ育むお米」は、国の特別天然記念物、コウノトリの野生復帰を促す活動に協力するため、農薬をできるだけ使わずに作られている。ブランド米を販売する地元の農業協同組合が、フランスへの輸出を始めることになった。環境に配慮した栽培方法をアピールし、環境問題への関心が高い現地のニーズを取り込みたいとしている。

   今月下旬にもフランス南部のマルセイユにおよそ100㌔を輸送し、日本の食材を扱う小売店などに卸す予定だという。このブランド米はすでにアメリカやアラブ首長国連邦など世界6ヵ国に輸出しているが、ヨーロッパへの販路拡大は初めて(同)。

   この記事を読んで、豊岡とコウノトリの「物語」を思い出した。豊岡にはコウノトリが舞い降りる名所だった。ところが、戦時中には巣をつくる営巣木であるマツが大量に伐採され、さらに、戦後はコメの増産から農薬が普及して、コウノトリは激減していた。そこで、2005年9月に「コウノトリの里」の復元を目指して、秋篠宮ご夫妻を招いてコウノトリの放鳥が行われた。カゴから飛び立った5羽のうち一羽が近くの田んぼに降りてエサをついばみ始めた。その田んぼでは有機農法で酒米をつくっていた。金沢の酒蔵「福光屋」が酒米農家に「農薬を使わないでつくってほしい」と依頼していたものだった。

   このことがきっかけでJAなどが中心となってコウノトリにやさしい田んぼづくりを始めるようになった。その後、豊岡ではコウノトリが野生復帰した。農家は農薬を使わず、手で雑草を取っているという光景がみられるようになった。コウノトリが舞い降りる田んぼの米「コウノトリ米」には付加価値がついた。それをブンラド化した。コウノトリを見ようと毎年50万人が訪れ、エコツーリズムの拠点にもなった。福光屋は地元での限定販売で「コウノトリの贈り物」という純米酒を造っている。

   こうした、生き物と稲作が共生することで、コメの付加価値を高めることを「生き物ブランド米」と呼んでいる。まさに、豊岡の成功事例がお手本となった。自身もこれまで、新潟県佐渡市の「トキ米」や、地元石川県白山市での「ホタル米」などを見学したことがある。農家の人たちは実に熱心でブランド価値を高めることに余念がない。有機農業はヨーロッパなど世界では常識だが、それにさらに生き物を冠してのブランド米となると注目されるかもしれない。ヨーロッパでは「赤いクチバシ」のコウノトリは幸せを運んでくると言われるそうだ。

(※写真は、「JAたじま」公式ホームページより)

⇒10日(水)朝・金沢の天気    はれ

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☆「冬の華」を楽しむ

2021年02月08日 | ⇒ドキュメント回廊

   目が覚めて外の景色をみると、樹木や道路に雪が積もっている。それほど寒くはない。積もっている雪をよく見ると、「綿雪」だ。ふんわりした、まるで綿をちぎったような形状=写真・上=。当地では「ぼたん雪」と称したりする。今季のこれまでの雪は強烈な寒波がやってきたときに降る「粉雪」が続いていた。2月もそろそろ中旬に差し掛かる。立春が過ぎて、季節のやわらぎを感じる。

   綿雪は雪の結晶がくっつき合っている。なので、樹木の枝などに降りかかると、まるで花のように見える。大学の校舎をバックした樹木はまるで、満開のソメイヨシノのようにも見えて壮観だ=写真・下=。ただ、気温が少し上がり、午前中には溶けてしまった。数時間だったが、冬の華を楽しませてもらった。

⇒8日(月)午前・金沢の天気   くもり

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★森発言 五輪のモチベーションも失速

2021年02月07日 | ⇒ニュース走査

    菅総理はことし元旦の年頭所感で、「我が国は、多国間主義を重視しながら、『団結した世界』の実現を目指し、ポストコロナの秩序づくりを主導してまいります。そして、今年の夏、世界の団結の象徴となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催いたします」(総理官邸公式ホームページ)と述べたが、開催自体も怪しくなってきた。 

   共同通信社が6、7両日に実施した全国電話世論調査によると、「女性蔑視」発言をした東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長に関し、会長として「適任とは思わない」との回答が59.9%に上った。「適任と思う」6.8%、「どちらとも言えない」32.8%だった。菅内閣の支持率は38.8%で前回1月調査から2.5ポイント続落し、初めて40%を割り込んだ。不支持率は3.1ポイント増の45.9%となった(2月7日付・共同通信Web版)。

   読売新聞が5-7日に実施した全国世論調査では、森会長が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言したことについて、「問題がある」との回答は「大いに」63%、「多少は」28%を合わせて91%に上った。「大いに」を男女別にみると、女性が67%で、男性の59%を上回った。オリ・パラの開催では、「観客を入れて開催する」8%と「観客を入れずに開催する」28%を合わせ、計36%が開催に前向きな考えを示した。「再び延期する」は33%、「中止する」は28%だった(2月7日付・読売新聞Web版)。

   内閣支持率は39%と前回(1月15-17日調査)の39%から横ばいだった。不支持率は44%(前回49%)に下がった。昨年11月に69%だった内閣支持率は、その後、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い3回連続で下落していた。今回の調査で支持率の下落傾向に歯止めがかかったのは、新規感染者数が減少に転じたことが主な要因とみられる(同)。

   国内世論にオリ・パラ開催へのモチベーションが感じられない。森会長が辞めたら、世論的にモチベーションは上がるのだろうか。新型コロナウイルスの感染収束が見通せない状態では八方塞がりだ。どうやら、暗いトンネルに入り込んでしまったようだ。

⇒7日(日)夜・金沢の天気 

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