自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★テレビ嗜好と司法判断

2021年02月25日 | ⇒ニュース走査

   この判決でテレビ離れがさらに進むのではないだろうか。 NHKの放送だけ映らないように加工したテレビを購入した東京都の女性が、NHKと受信契約を結ぶ義務がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、請求を認めた一審の東京地裁の判決を取り消し、請求を棄却した (2月24日付・共同通信Web版)。

   放送法では、NHKの放送を受信できるテレビの設置者に契約義務があると規定している。受信料制度に批判的な考えだった女性は2018年、フィルター付きテレビを3千円で購入した。1審の東京地裁は原告の訴えを認め「NHKを受信できる設備に当たらない」と判断して、契約を結ぶ義務はないとする判決を言い渡し、NHKが控訴していた。控訴審判決で裁判長は「加工により視聴できない状態が作り出されたとしても、機器を外したり機能させなくさせたりすることで受信できる場合は、受信契約を結ぶ義務を負う」と判断し、受信契約を結ぶ義務があるとする判決を言い渡した(同)。

   人には好き嫌いの嗜好というものがある。例えば食に限っても、漬物は食べない、ネギは嫌いだ、刺身は食べない、など様々だ。テレビも同じだ。あのチャネルは嫌いだ、ドラマは見たくない、あのキャスターは見たくもない、など。嫌いな人にとっては見たくもない、それが嗜好というものだ。NHKを受信できないようにするためわざわざフィルター付きテレビを購入するのは、相当なNHK嫌いだ。上記の高裁判決は、受信料の公平負担を重視する視点から、そのような機器をテレビに取り付けたのは受信料を払わない口実と判断したのだろう。人のテレビへの嗜好というものを理解していないのではないだろうか。

   今回の判決でNHK嫌いの視聴者の中には、「それだったらテレビを見ない」と反感を持った人もいるのではないだろうか。これを機にテレビ視聴そのものを止めるという人もいるだろう。また、NHKをスクランブル化し、契約者だけが視聴できるようにすればよいと主張する人たちの声も高まるだろう。それでなくても若者を中心にテレビ離れは進んでいる。これは金沢大学での調査だが、テレビをまったく見ないという大学生は17%(2019年・金沢大学での調査)もいる。3年前の16年では12%だった。その理由は、ネットで動画やニュースを見ることができる、と。この判決をきっかけに、さらに若者のテレビ離れが進むのではないだろうか。

   おそらく原告の女性は上告するだろう。最高裁の判断に注目したい。自身はNHK嫌いではない。このニュースの流れを読みたいと思っている。

⇒25日(木)朝・金沢の天気   はれ

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