自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★コロナ騒動と「能登ジン」

2021年02月27日 | ⇒メディア時評

   能登半島の尖端に金沢大学が設けている能登学舎。ここで実施する社会人の人材育成事業「能登里山里海SDGsマイスタープログラム」についてはこのブログでも何度か取り上げている。月2回の割合で土曜日に実施し、座学や演習・実習、そして卒業課題研究などに取り組む10ヵ月のプログラムだ。卒業課題研究では自然環境問題や地域課題、起業やSDGsの取り組みなど、これまでイメージでしかなかった自分の思いを調査や実施計画の策定などを通じてストーリーとして描く。

   その卒業課題研究の発表会がきょう27日あった。2020年度の受講生は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり人数は10人に減った。そして、これまで能登学舎での講義だったが、オンラインが中心となった。その分、教員は個別指導にもチカラを入れた。そして迎えたきょうの発表会は受講生が一堂に会する晴れの舞台、の予定だったが、急きょオンランに切り替わった。というのも、前日26日になって、「コロナ騒動」が持ち上がったからだ。

   別の研究プロジェクトのために能登学舎に来ていた学生が発熱と倦怠感を訴え、病院に運ばれた。26日午前のことだった。正午の段階で検査結果は出ていなかったが、万一に備えて、午後1時30分にはオンラインでの発表会に切り替え、全員に連絡した。というのも、受講生の中には能登地区だけでなく、県外の在住者もいるので、前泊のため午後には能登にやって来る。早めに連絡する必要があった。別日での開催、あるいは別の場所でとの案もあったが、「オンラインが無難」となった。結局、この学生のPCR検査の結果も陰性ということでひと安心。何より、スピード感を持って慎重に対処することがコロナ禍で求められることだと実感した。

   きょう午前9時30分からオンラインでの発表会。自身も審査員として参加した。発表者の一人で、東京のIT企業に勤める受講生は能登に移住し、5年後をめどに能登でジンの蒸留所の設置を目指す計画を淡々と述べた=写真=。能登の塩にユズの皮、クロモジなど、地元の素材を使った洋酒「能登ジン」を造る。この研究のため、去年9月にはEU離脱にともない蒸留酒製造が規制緩和されたイギリスの蒸留所の現場を訪れ、製造工程やコスト算出のノウハウなど学び、能登の植物素材で試作品を造ってもらった。その試作のジンが能登学舎に届けられていた。ユズの甘い香りは能登の自然豊かな里山をイメージさせる。「能登に新たな文化を持ち込む可能性」を感じた。

   受講生が夢の実現に向けて行動するとなれば、マイスタープログラムとは別途設けている金融機関と連携するセミナー「創業塾」で融資に至る手続きなど実務面を学ぶこともできる。

   3月20日には能登学舎で2020年度修了式も開催される予定だ。受講生がオンラインを超えて、初めて一堂に会する「晴れの舞台」となる。

⇒27日(土)夜・金沢の天気     はれ

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