このニュースに世界の人たちが注目したに違いない。トヨタ自動車は23日、静岡県裾野市で計画する、ITでつなぐ次世代都市「Woven City」(ウーブン・シティ)の建設に着手したと発表した。今後、人を住まわせて自動運転をはじめとするAIや通信を活用した実証実験を行い、社会課題の解決に役立つ新たなサービスや製品の開発につなげる(2月23日付・共同通信Web版)。
豊田社長は昨年2020年1月、デジタル技術見本市「CES 2020」(ラスベガス)でウーブン・シティ構想を発表していた。当時から凝った名称だと感じ入っていた。wovenは weaveの過去分詞で「織られた」という意味合いで、「Woven City」はIT技術と人間社会がタテ糸とヨコ糸のように織り込まれたデザイン都市と解釈している。トヨタ自動車は自動織機の製造にルーツがあり、ネーミングの発想もおそらく繊維から来ているのだろう。さっそくトヨタの公式ホームページをチェックした。
地鎮祭での豊田氏のあいさつが興味深い。都市開発の場所はトヨタの東富士工場があったところ。「東富士工場のDNA。それは、たゆまぬカイゼンの精神であり、自分以外の誰かのために働く『YOU』の視点であり、多様性を受け入れる『ダイバシティ&インクルージョン』の精神です。これらが『人中心の街』、『実証実験の街』、『未完成の街』というウーブン・シティのブレない軸として受け継がれてまいります」(HP掲載のスピーチ原稿より)
スピーチが意義深い。この開発の意義を、多くの仲間とともに、多様性を持つ人々が幸せに暮らせる未来を創造することに挑戦する、と意欲的に述べている。人種や言語、障害などを超えて幸せに暮らせる未来都市。では、そのような都市の設計なのか。
街の広さは約70万平方㍍。住人は約360人でスタートし、2000人以上を想定する。地上に自動運転モビリティ専用、歩行者専用、歩行者とパーソナルモビリティが共存する3本の道を網の目のように織り込み、地下にはモノの移動用の道を1本つくる。高齢者、子育て世代の家族、発明家、起業家の人々に住んでもらう。街にはロボット、AI技術を取り入れた様々な領域の新技術をリアルな場で実証していく。また、世界中の企業や研究者と一緒に取り組み、社会課題の解決に向けた発明がタイムリーに生み出せる環境を目指す(トヨタ公式ホームページ)。
発表文だけではイメージは沸かないが、地下にモノの移動用の道を1本つくるということは、たとえばスーパーへ買い物に行かなくても、自宅からパソコンで商品を発注すれば、モノが自宅に届くというシステムなのだろうか。足の不自由なシニアや障がい者も自動運転でドアからドアへの移動が可能。どこにいてもAIによる手話や翻訳サービスがあり、多様な人々が対面でのコミュニケーションが取れる。リアルな富士山を眺めながら、オフィスでのリモートワークやVR会議ができる。
壮大な社会実験の街でもあるウーブン・シティでの暮らしをイメージすると興味は尽きない。住んでみたいという誘惑にかられる。(※写真はトヨタ公式ホームページより)
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