自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★日本海、島民の憂い

2017年04月08日 | ⇒メディア時評

  能登半島の先端からさらに沖合50㌔に舳倉島(へぐらじま)がある。アワビやサザエの漁場でもあり、漁業の中継拠点でもある。この島の周囲は南からの対馬海流(暖流)と北からのリマン海流(寒流)がぶつかり、混じり合うところ。そのため海岸では、日本語だけでなく中国語やハングル、ロシア語で書かれたゴミ(ポリ容器、ペットボトル、ナイロン袋など)を拾うことができる。かつて、テレビ局時代に取材した島の住民からこんな話を聞かされたことがある。「島に住んでいると、よその国の兵隊が島を占領したり、大量の難民が押し寄せてきたり、そんなことをふと考え不安になることがある。本土の人たちには思いもつかないだろうけど」と。北朝鮮による拉致問題がクローズアップされ、当時の小泉総理が北朝鮮を訪問した2002年ごろの話だ。

  島民の話が現実になるかもしれないと思ったのが昨日7日のニュースだ。安倍総理が本部長を務める総合海洋政策本部会合で舳倉島や新潟・佐渡、島根・隠岐諸島など国境に近い148の有人の離島の振興に向けた基本方針を策定したと報じられた。なかでも、領海警備や治安の  確保が政策の柱となったようだ。政府としては海洋権益の確保といった言葉になるのだが、それほど海の安全保障が揺らいできたということだろう。

  同じ7日朝、アメリカが、シアリの化学兵器を保管しているとされる空軍基地を巡航ミサイル「トマホーク」59発で攻撃したとテレビ速報が流れた。シリアのアサド政権が民間人に化学兵器を使用したことに対するアメリカの報復措置で、トランプ大統領が「レッドラインを越えた」と表明し、その後電撃的にトマホークが発射された。このニュースで、「トランプ大統領の次なる標的は北朝鮮かも」と脳裏をかすめた人は少なくなかったのではないか。

  というのも、北朝鮮は5日に弾道ミサイルを日本海に向けて発射している。国連安全保障理事会は6日、安保理決議への「重大な違反」「強く非難する」との報道声明を出した。7日はアメリカと中国の首脳会談が開催された。ニュースによると、トランプ大統領は習主席に対し、北朝鮮の核とミサイルを阻止するよう中国が強く対北朝鮮制裁に動くべきだと要求したという。一連の報道から読み取れることは、今回のシリアへ空爆の事例を後ろ盾に、中国が動かなければアメリカが動くと習主席に事前通告したとも読み取れる。

  北朝鮮有事は近い。そんな空気が漂い始めた。現実になれば、大量の北朝鮮の難民が船に乗ってやってくるだろう。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って舳倉島、能登半島に漂着する。無事漂着したとして大量の難民をどう受け入れるのか、武装難民だっているだろう。シリア人を乗せた難民船が地中海で航行不能となり転覆するという事故は今も起きている。地中海の悲劇は日本海でも起きるのか。島民の憂いがようやく理解できた気がした。

⇒8日(土)夜・金沢の天気    はれ


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