自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆ジャニー問題で露見した報道姿勢と企業ガバナンス

2023年10月07日 | ⇒メディア時評

   ジャニー喜多川の性加害の問題が連日報道されている。ジャニーズ事務所本社では、61年の歴史に幕を下ろすため、看板の撤去が行われたようだ。事務所側はこれまで「ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切なくしたい」とコメントしていたので、社名変更と看板撤去はその手始めなのだろう。

    きょうのTBS番組「報道特集」もジャニーズとテレビ局、広告代理店、そしてスポンサーの相関関係を報じていた。その中で、TBSの報道や制作、編成の担当者80人におよぶ社内調査の結果を公表した。そのポイントの一つだったのがこの問題だった。

   週刊誌「週刊文春」は1999年10月から14週にわたってジャニー喜多川社長の性加害問題を告発する連載キャンペーンを張った。記事に対して、ジャニーズ事務所とジャニー社長は発行元の文藝春秋社を名誉毀損で提訴。二審の東京高裁は2003年5月、性加害を認定。ジャニーズ側は上告したが、最高裁は2004年に上告を退け、記事の真実性を認める東京高裁の判決が確定した。ところが、TBSなどマスメディアは判決を報道せず、判決後もジャニー社長による性的搾取が続いていた。報道しなかったことは、ジャニーズ事務所とジャニー社長への忖度だったのか。

   TBSの社内調査では、「忖度があったという証言は出てこなかった」とした。報道しなかった理由として、報道目線では、週刊誌ネタや芸能ネタを軽んじる傾向があり、ニュースとして取り上げる判断をしなかったのだ。当時の社会部デスクだった番組のキャスターは「伝えるべき事を伝えなかったのは一種の職務怠慢で、その結果、人権被害が広がったことを忘れてはならない」と話していた。「ビジネスと人権」の報道目線が欠如していた。さらに、編成の目線では、「圧力を感じたことは一度もない。忖度を強要されたこともない」との証言がある一方、「なぜ、忖度するかというと番組出演をなくされるのを恐れていたから」という現場の生々しい声が紹介された。

   番組の中で、スポンサー企業の事例も紹介していた。日本の企業はこの性加害をなぜ長年放置してきたのか。利益追求を優先するメディアと広告代理店、スポンサー企業が一体化して、売上げ至上主義にまい進していた。その中で、ネスレ日本はジャニーズ喜多川の性加害の噂を耳にした段階で、所属タレントを起用しない判断をした。ネスレ日本の前社長は「企業のガバナンス」という言葉を使い、取引先のグレーな噂や情報を得た段階で動くことが、「転ばぬ先の杖」として企業には大切、ネットの時代だからなおさら、とコメントしていたのが印象的だった。

   スピード感をもった企業のガバナンスが問われている。「君子(企業のガバナンス)危うきに近寄らず」のことわざを思い浮かべた。

(※写真は、ことし3月7日に放送されたBBCのドキュメンター番組「Predator: The Secret Scandal of J-Pop 」の紹介記事。この放送がなければ、ジャニー問題は日本で白日の下にさらされることはなかった)

⇒7日(土)夜・金沢の天気     くもり 


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