自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★コロナ・ハラスメント

2020年01月30日 | ⇒ニュース走査

   中国・武漢からきのう29日、日本政府が用意したチャーター機で帰国した日本人206人のうち、男女3人が新型コロナウイルスに感染していることが確認された、とメディアが報じている。40代から50代の男女3人。このうちの2人は発熱などの症状はない、という。この新型ウイルスの怖いところはこの点ではないだろうか。症状はないが、キャリア(保菌者)であることは間違いない。

   気になったのは、帰国した206人のうち、2人はウイルス検査そのものに同意しなかったことだ。憶測だが、まったく症状がなかったので検査を拒否したのだろう。症状がないからと言って検査を拒否するケースが今後も続けば、帰国者全体にあらぬ誤解を生むことになるのではないだろう。

  その理由は帰国者については匿名であることだ。誰が拒否したのか一般には分からない。すると全員を疑わざるを得なくなる。検査を強制する法律がないので、2人は拒否したのだろうが、帰国者全体に迷惑をかけてしまうことになる。ただ、来月7日に新型ウイルスを「指定感染症」や「検疫感染症」とする法律が施行されると、検査に法的拘束力が生まれる。

   新型ウイルスの勢いは止まらない。先ほど中国国家衛生健康委員会が発表した数字は、中国本土で感染者は7700人余り、死亡者は170人になった。チベットでも初めて感染者が出て、中国の31省・自治区・直轄市のすべてで感染者が確認されたことになる。これは把握できた数値であって、感染者と死亡者はもっと多いだろう。

   これだけ感染が広がると、世界の論調は新型ウイルスは「アジアの疾病」だとして、ヨーロッパやアメリカではアジア人に近づくなという雰囲気が蔓延しているのではないか。欧米人にとっては、中国人や韓国人、日本人の顔による区別はつけにくい。そこで、アジア人に近づかないことが最大の予防だ、となる。アジア人に対する、偏見や誤解、そして差別を拡散することに。まさに、コロナ・ハラスメントだ。

   この状況をつくり出しているのは、率直に言って、WHOだと思っている。感染状況が国際的に拡大し、他の国に公衆衛生上の危険をもたらしているにもかかわらず、WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を未だに宣言していない。今月23日のWHO会合では時期尚早との判断だった。この判断が間違っていたことは、現状を見れば誰もが思うだろう。

   今頃になって、WHOが焦り始めている。健康危機管理プログラムのトップの言葉を29日付のBBCが引用している。「Coronavirus: Whole world 'must take action', warns WHO」(コロナウイルス:全世界が警戒しなくてはならない、とWHOが警告)=写真=。記事の中で、テドロス事務局長は新型ウイルスが世界に及ぼす危険性について、報告書で「高い」とせず「中程度」としたことに言及し、「深く後悔している」と述べている。何を今さらと言うべきか。

⇒30日(木)午後・金沢の天気     あめ

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