自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆WHOの緊急事態宣言の行方

2020年01月23日 | ⇒ニュース走査

        中国・武漢で新型のコロナウイルスによる肺炎は22日までに感染者540人、死者は17人に上ると今朝のニュースで報じられている。一連の関連ニュースで気になっていたのは、20日に習近平国家主席が情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出したことだった。習主席の指示は「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めよ」と求めたという(20日付・NHKニュースWeb版)。当時は感染者130人、死者は1人だった。この時点でなぜ国家主席が直接指示を出したのだろうか。

   その背景には中国が悪名を買った、例の2003年の新型肺炎SARS問題があるのではないかと察した。当時は徹底的に情報を隠したことで感染を広げ、患者8100人、770人余りが死亡したとされる。この教訓から、国家主席自ら情報開示を強化する姿勢を強調したのだろうか、と推測していた。

   ふと考えたのは、これは「WHO対策」ではなかったのか、と。WHO(世界保健機関)が22日にジュネーブの本部で緊急会合を開き、コロナウイルスへの対応を協議することを発表した日が、習主席が指示した日と同じ20日なのだ。

   ここからはあくまでも推測だ。WHOが緊急会合を開き、新型コロナウイルスの状況が国際的に拡大、他の国に公衆衛生上の危険をもたらし、国際的な対策の調整が求められると判断されれば、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として、事務局長が緊急事態を宣言することになる。この緊急事態は、WHOが2003年の中国のSARS問題を教訓に2005年に国際保健規則を改正して設けた条項だ。

   直近では、2019年7月にエボラ出血熱がコンゴやウガンダで拡散したときに緊急事態宣言が出されている。では、もしこの宣言が武漢のコロナウイルスについて出されるとどうだろう。中国にとっては非常に不名誉なことになる、と中国指導部は考えるだろう。緊急事態宣言が出されると、WHOの事務局長は加盟国に対し勧告を出すことになる。すると、加盟国は「2003年問題と同じことをやっている。中国のガバナンスはいったいどうなっているのか」とささやき始めるだろう。

          中国とすれば、国家主席の直接指導で、コロナウイルスの感染拡大の阻止に全力を挙げているので、緊急事態宣言は必要ないとWHOにアピールしたかったのではないだろうか。22日のWHOの緊急会合では結論が出ず、23日に継続協議となった。中国側もWHOに対し必死の根回しをしているのではないか。緊急事態宣言の行方に注目したい。

⇒23日(木)午前・金沢の天気     あめ

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