長野県佐久穂町の奥村土牛博物館の庭園にて 29.7
一度手に入れた道具類は比較的長く使う方だと思っている。今乗り回してい
る車、平成16年製三菱エアトレック車、この当時三菱自動車は最初のリコ
ール事態を隠蔽したり、小説の題材ともなったトラックの車輪が走行中に外
れてしまう事故で世論の袋叩きにあっていた。株価は上場廃止寸前まで落ち
込む。当然製造する車の買い手不在で地方デーラーはあえいでいた。セダン
型ではなくこの頃からはやり始めた四輪駆動のSUV車。こんな時に買ってく
れるお客さんは神様に見えます、などと持ち上げられた。そんならその気持
ちを反映した価格を提示してくれと交渉し、破格の値段で手に入れた。
イノシシ面なぞと揶揄され人気のない車だったが、15年経って改めて見る
と精悍で男っぽくて悪くないなと思う。給油所のお兄ちゃんには外車?なん
て言われることもある。写真のようなダート道を走ると三菱ご自慢の本格的
なフルタイム四駆が躍動する。
以来乗りまわし、9月には15年目に入る。車検とオイル交換以外の出費は
最低限に抑えられて、大きな故障もなく今に至った。しかし半年前から車庫
入れ等で前進後退を繰り返す際に、ミッションがガツンという衝撃音を発す
るようになった。その原因は判っている。走り始めれば問題ないのだが、不
具合には違いない。整備工場に相談するとミッション自体の交換が必要です
と言われれる。その費用は最低でも25万円ほどかかるという。
こういうことがなければ生涯乗り続ける予定だったが、そうもいかなそうに
なってきた。さてどうする??
食わず嫌いなのだろうが、電気モーター駆動の車のフィーリングに抵抗感が
あった。しかしこの15年間の自動車技術の進歩を体験したくなり、日産ノ
ートe-powerなる車をレンタルで借り1日乗り回してみた。
雨模様の天気だったが、軽井沢から浅間山山麓を回って新鹿沢温泉まで約20
0kmを走る。高速道路、上り坂下り坂、未舗装路いろんな条件で走ってみた。
なかなか素晴らしい車との印象を持ちながら返した。以下その詳細を書いて見
たい。
ガソリンエンジンは発電機を回すことのみに作動し、車輪を回す動力は全て電
気モーターというコンセプトに興味を持った。トヨタお得意にハイブリッドと
は一線を画す。近い将来水素と空中の酸素で電気を作りモーターを回すのが究
極の電気自動車。その過程の車だ。60年近くガソリンエンジン車の感覚を当
たり前と思っていたが、殆ど違和感なかった。
今迄乗り継いできた車の燃費はアクセルの踏み加減でかなり上下する。しかし
試乗車はいろいろな走り方を試しても21km/ℓ台をを示したまま動かない。
この数値は今乗っている車の3倍近い良燃費、素晴らしい。
アクセルを踏み込む、ガソリンエンジン搭載車ならエンジン音がスピードに連
れて高まる。これが試乗車は電気モーターが唸るような低い音でぐいぐい加速
する。理論上電気モーターの低速トルクは大きく、車の発進時からの加速性能
は優れていると知っていたが、実際に体験すると興奮する。エンジンは走行状
態に関係なく、電池の電気量が減れば発電のために回りだす。車のスピードと
無関係。ただエンジン音を感じさせないために、ある程度車速が上がりタイヤ
ノイズが発生し始めるとそれに紛れて回り始めるらしい。うまいことを考えた
ものだ。その回転数は車速には関係なく、発電に最適な回転数にセットされる
という。最適回転数を維持するだけだから、ツインカムエンジンのような高度
の機構は必要なくなってくるだろう。部品メーカーにとり死活問題となり得る。
次期候補に有力な選択肢を手にした。1年以内に決めればよいので、他の車も
試乗し、人生最後の車に悔いのない選択をしたいと思う。
年寄りの運転操作ミスが社会問題になっている。また車は価格も維持費も高い。
手放せばあちこち旅行する選択肢もグッと拡がる。それは判っているが、車を
操り好きな時、好きな所に出かけられる楽しみはまだまだ持っていたい。この
田舎だ。車を手放すと生じる不便は都会の皆さんとは比較にならない。免許証
返納はまだ10年先に考えれば十分だろう。なお一層慎重な運転を心がけるの
は当然のこと。
帰途八ッ場ダムの工事現場を上流から眺める。スキーシーズンの半年前に比べ
てダムの形がかなり見えてきた。あらかた撤去された名湯旧川原湯温泉が水面
下に没するのも2年後くらいか。近くの高台に移転した旅館街はまだ寂しいが、
道の駅はえらい人気だ。