原田マハさんの作品だが、美術をめぐって、これだけの作品ができるとは驚きだった。中盤から後半にいたっては、約束の時間に遅れそうになりながらも、読み続けてしまうほどであった。
恐らく、今まで、本を読んでいてこんなことになったことはなかった。まさに、エンターテインメントとしての小説の醍醐味を味わった。
小説は読まない、ノンフィクションは読む、という人がいるが、これは、もったいない話しである。事実から題材をとりながら、より深い世界が描かれているから、現実逃避とも違う。むしろ、現実を豊かにする作用がある。
そういう人は、それに気づいていないというか、そのような作品にであったことがないことを意味する。こうなると、作者との対話としての小説の面白さは、ノンフィクションでは得られない世界であって、知らないことはかわいそうなことである。
それにしても、この本は、人から紹介されて読むことになった。書店で見たとしても、自分からは買わないだろうと思う。多くの人がいて、こういう紹介を受けることから世界が広がる。人間素直にいろいろ聞いて体験することだなと思う。