雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

ばくりや

2012-03-21 20:06:49 | 
乾 ルカ
文藝春秋
発売日:2011-10

乾ルカ著"ばくりや"を読みました。
『あなたの経験や技能などの「能力」を、あなたにはない
誰かの「能力」と好感いたします。』こういうことを
うたった店がばくりやです。
連作短編集です。

"逃げて、逃げた先に"
女性にもてまくります。
ついには家に住み着いてしまう女性まで現れます。
この能力を捨てたくてばくりやへ行きます。
交換する能力は選べません。
都合の良い相手が見つかって新しく手に入れたものは
刃物とぎです。

"雨が落ちてくる"
地元から離れると豪雨となって学生時代の旅行の催しには
まったく参加できませんでした。
豪雨でやむなく引き返してくると晴れるということを
繰り返しやがて参加をあきらめるようになりました。
この能力と交換して得たのは大食いでした。

"みんな、あいのせい"
勤める会社がすべて倒産してしまいました。
手にしたのは動物に好かれる能力でした。
動物園に勤めてうまくいくように見えましたが・・・

"狙いどおりには"
ドラフト一位で投手として入団したもののまったく
活躍できません。
同棲の女性に乱暴を振るう日々です。
彼女はタレントを目指していますがこちらも
ぜんぜん芽が出ません。
交換した能力はお互いがもっていたものです。
彼女は速球の能力を得て人の目をひきつけました。
彼が得たものは・・・

"さよなら、ギューシュン"
里親の元で育った男は泣き虫ですぐに涙が出てきます。
交換して仕事をバリバリこなす能力を得ました。
里親の息子で兄弟のように育った人を立ち退かせる
はめになる企画を経てました。
その人は彼に贈る花を取ってくるため火事の中へ
飛び込み亡くなってしまいます。
男が泣いていいのはほんとうに大切なものを失った時、
人生で一番うれしい時だと亡くなった人は言ってました。
男は彼を失って大泣きしました。

"ついてなくもない"
ついてない人生で見たくないものを見てしまったり
怪我をしたり旅行にいけなかったりしました。
交換してもらおうとばぐりやをおとづれます。
しかしばくりやは休みでした。店にいた人に
かえりなさいと交換を断られました。
ついてないように見えましたがそうすることで
もっと悪くなる危険を回避していたのでした。

"きりの良いところで"
何人目でしたというきりのいい出来事に出会う
男は女性につきまとわれてばくりやをおとづれます。
交換したものはばくりやの店員でした。
ノルマを達成するまで店にしばられることに
なりました。

"さよなら、ギューシュン"と"ついてなくもない"が
よかったです。
交換して得た能力は幸せを持ってきてはくれません。
相手がもてあました能力なんだからしょうがありません。