ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

北朝鮮の強制収容所についてのアムネスティのアクション(上)

2011-08-25 20:41:52 | 北朝鮮のもろもろ
 最近、アムネスティ・インターナショナルが、北朝鮮の政治囚収容所について信頼できる証言をもとに、その恐るべき収容所の実態の一部を公表しました。
 そして同日本支部では、この実態の公表にもとづいて、隣国に住むものとして、同国の政治囚収容所の即時閉鎖と被収容者たちの即時釈放を求めるアクションをスタートさせています。

 その北朝鮮に対する要求項目は以下の通りです。

勧告:アムネスティは、朝鮮民主主義人民共和国政府に対し、以下の事を求める。  
○移動の自由の権利
 同国を許可無く出国しても犯罪行為とならないように同国の刑法を改正し、国内外を旅する際に必要とされる許可証を撤廃すること。
 出国者が強制送還されたり、拷問や虐待にさらされないよう保証すること。
○言論や表現の自由の権利
 憲法および関連する国際人権文書にある、表現の自由および宗教の自由を、実際に、完全に保障すること。
○拷問およびその他の虐待について
 刑務所における囚人に対する拷問ならびにその他の虐待および強制労働を直ちに止め、囚人の処遇への国際基準を確実に適用すること。
 収容所および留置所の状況を改善して最低限の国際基準を満たすようにすること。
○死刑について
 公開処刑および裁判無しの処刑を直ちに止めること。
 死刑廃止への第一歩として、死刑の正式な執行停止を導入すること。
○拉致および強制失踪について
 すべての拉致および強制失踪を公に非難し、直ちに止めさせること。
 拉致および強制失踪に関する過去および現在の申し立てを徹底的、且つ独立して公平に調査すること。
 拉致あるいは強制失踪の被害者全員の消息および行方に関する政府としての正確で決定的な情報を作成すること。
 拉致ないし強制的失踪の被害にあった人びとは、国際法に合致した明らかな犯罪事実で起訴されない限り、自らが望めば、同国を離れることができるよう保証すること。


 具体的な要求項目や収容所の実態は→コチラからダウンロードできます。

 ただ、北朝鮮の強制収容所については、すでに脱北者の手記や証言が多数刊行されていて、その数や位置等もウィキペディアに具体的に記されています。

 本ブログでも2009年10月26日の記事申東赫(シン・ドンヒョク)「収容所に生まれた僕は愛を知らない」(KKベストセラーズ)を紹介しつつ、北朝鮮の収容所について書きました。

 今回のアムネスティの調査による収容所の実態報告に目を通してみると、「15人のかつての被収容者と収容所看守の証言に拠る」ブリーフィング・ペーパーということですが、上記の申東赫さんの証言は本の記述にある通りで、また「北朝鮮脱出」を書いた姜哲煥さん(現・朝鮮日報記者)や、その外の人たちの証言も目新しいものでもない感じです。
 しかし、なんともひどい事例のオンパレードであることに違いはありません。

 その具体例については(下)に記します。

 しかし今回は、アムネスティがようやく積極的に北朝鮮の人権問題に対してアクションを起こしたこと自体に注目したいと思います。

 日本では、一般的に「左翼」「人権団体」とみられる組織・団体は、北朝鮮の人権問題についてほとんど声を上げることなく、時には逆に過去の植民地支配や、在日に対する差別を引き合いにして反発することもこれまでにありました。
 アムネスティ日本支部でも、ウィキにも記されているように、「2006年にはアムネスティ日本の総会において北朝鮮の人権・拉致問題への積極的な取り組みを求める決議案が提出されたが否決された」ということもありました。
 しかし、その後状況が変わってきているようです。
 本ブログでも、昨年(2010年)11月22日27日の記事で紹介したように、アムネスティ主催の「北朝鮮の現状」についての講演会が横浜で石丸次郎氏を講師に招いて開かれたりもしています。

 今、アムネスティ日本支部のサイトから、「朝鮮民主主義人民共和国の政治囚収容所の即時閉鎖を!」という内容の、金正日総書記へのハガキがダウンロードできるようになっています。→コチラ
 また、国連人権理事会の理事国で、北朝鮮に強い影響力を持つ中国・ロシア・フランスの大使館に対して、北朝鮮に働きかけるよう要請するハガキもダウンロードできます。→コチラ
 なお、金正日総書記へのハガキは、<北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会>のサイトでもダウンロードできるようになっています。→コチラ
 この<北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会>の方は、ハガキに金正日・正恩父子の写真入り。北朝鮮では、彼らの写真は「破棄しても踏みつけても厳罰、「丁重に扱う」よう義務付けられています。70円切手をはれば将軍様のいるところに届きます」ということです。なるほど、ですね。

 最近、「朝鮮日報(日本語版)」を見ていたら、「開かれた北韓放送」の河泰慶代表が、かつて民主化闘争をともに闘った民労党・李正姫代表に、「民労党よ、北の人権問題になぜ沈黙するのか」との公開書簡を送ったことも報じられています。
 その書簡で、河代表は次のように記しています。
 私は、民労党と李代表の今後を心配しています。民労党のような従北派は、日帝強占期の親日派よりむごい運命に遭う可能性があるからです。金正日政権の暴政は、日帝と比較してもさらにひどいものです。北朝鮮の人権じゅうりんに匹敵するのは、カンボジアのポル・ポト政権や、ナチ政権くらいしかありません。

 ・・・同様のことは日本についても明らかにいえますね。カンボジアの軍事政権・中国の人権問題・イスラエルによる攻撃等々について声を上げている皆さん、多くの人々が生存権さえ危機にさらされている北朝鮮に対する国際世論をもっと高めてほしいものです。
 北朝鮮・韓国・中国・ロシア・アメリカ、そして日本の6ヵ国政府は、どこも政治的・軍事的な観点から現状維持を望んでいるようです。その中で多数の北朝鮮住民が犠牲になっています。このような状況を変えるには、国を問わず多くの人々が声を発し、情報を広めていく必要があると思います。

※2011年9月8日の追記
「朝鮮日報」「聯合通信」によると、昨日(9月7日)世界15ヵ国から30の人権団体が7日、東京の明治大学に集まり、北朝鮮に非人道的犯罪をやめるよう求める国際機関「北朝鮮の非人道的犯罪撤廃のための国際連帯(ICNK)」を立ち上げたとのことです。
 ヒューマン・ライツ・ウォッチが「各国政府が合同で、国連に非人道的犯罪調査委員会を設置し、北朝鮮の政治犯収容所の実態を調べる必要がある」と主張しているのは大賛成。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 韓国内の映画 Daumの人気順... | トップ | 北朝鮮の強制収容所について... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

北朝鮮のもろもろ」カテゴリの最新記事