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『女房官品』

2018-03-27 | 『増鏡』を読み直す。(2018)
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2018年 3月27日(火)13時06分6秒

>筆綾丸さん
>『日本史のツボ』
本郷氏が『文藝春秋』に連載していたものを纏めた本でしょうか。
連載の方はときどき読んでいたのですが。

>>平安時代の女官で二条、八条といった通りの名前がついている人は身分が高い。

ちょうど「悪妻・東二条院の誹謗中傷に対する後深草院の弁明」という設定の二条の自由作文を検討していたところなので、ご引用の部分、興味を惹かれました。
久保田淳氏は、「祖父が子にて参り候ひぬるうへは、小路名を付くべきにあらず候ふ」の「小路名」について、

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京都の小路の名にちなむ女官の呼び名。二条・春日・大宮・高倉などの類。『女房官品』には「小路の名の事。一条・二条・三条・近衛・春日、此等は上の名なり。大宮・京極、此等は中なり。高倉・四条などは小路のうちにも劣りたるなり」という。
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と書かれていますが(『新編日本古典文学全集47 建礼門院右京大夫集・とはずがたり』、小学館、1999、p276)、四条が劣るというのは『十六夜日記』の作者、安嘉門院四条にとってはなかなか厳しい指摘ですね。
仮に四条以下が全部劣るものだとすれば本郷氏の見解に抵触しますし、また、天皇の名前に六条院・四条院、女院の名前に八条院・七条院といった四条以下のものがあることとのバランスも気になります。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

続・閑話 2018/03/27(火) 12:04:06
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166611539
本郷和人氏『日本史のツボ』を読みました。
僭越ながら円熟の域に達した文体と内容で、これは皮肉でも何でもないのですが、司馬遼太郎の晩年の作品を読んでいるような印象を受けました。
いくつか、細かいことを書いてみます。

「一一九二年、源頼朝が鎌倉に幕府を開いた時点では・・・」(27頁)ですが、この直後に、「権門体制論」に拠らない著者の見解が示されているので、著者の従来の説である「一一八〇年」にしないと、前後の論理が合わなくなります。「一一九二年」の幕府開設では、「権門体制論」になってしまうと思います。

https://kotobank.jp/word/%E7%A6%81%E4%B8%AD%E5%B9%B6%E5%85%AC%E5%AE%B6%E4%B8%AD%E8%AB%B8%E6%B3%95%E5%BA%A6-1525613
「江戸時代に入ると、禁中並公家諸法度によって・・・」(36頁)について、橋本政宣氏『近世公家社会の研究』(2002・吉川弘文館)を読んでからは、「禁中並公家中諸法度」の方が正しいのではないか、と思いますが、中中、難しいですね。

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・・・時頼の精神的な師匠ともいうべき人物に、大叔父の極楽寺重時(北条重時)がいます。執権に次ぐ連署というポジションで鎌倉幕府を支えた重時は、熱心な浄土宗信者でした。そして重時、時頼の師だったのが、法然の正統的な孫弟子の信瑞。(58頁)
 ぼくの本職は『大日本史料』、そのうちの第五編という史料集を編纂すること。そのためには来る日も来る日も建長年間(一二四九~一二五六)の史料を読んでいる。だから、建長年間のことであれば、日本で一番詳しい自信は、偉そうですけれど、あります。(221頁)
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信瑞の名は、森幸夫氏『北条重時』や高橋慎一朗氏『北条時頼』にはないと記憶していますが(後で確認してみます)、信瑞が重時と時頼の師であったことを示す史料は何なのか、わかりません。自分で勉強しろと言われれば、それまでですが。

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・・・平安時代の女官で二条、八条といった通りの名前がついている人は身分が高い。また紫式部が仕えていた中宮彰子のように「子」がつくのも相当に身分が高い。(177頁)
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後者の理由はわかるのですが、前者の根拠は何なのでしょうか。

蛇足
最近の藤井君の将棋をずっと見てきましたが、現在、将棋界最強の棋士は文句なく藤井君で、しかも群を抜いています。順位戦最終の三枚堂君との対局などは猫が鼠をいたぶっているような感じで、怪物くん(糸谷)との対局も、バッサリ切って捨ててましたね。藤井君はもうずっと負けないのではないか、という印象すら受けます。詰将棋解答選手権も想像を絶するものがあり、こんな頭脳、いままで見たことがありませんね。
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