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ロバート・レヴィンソン氏の件

2013-12-15 | その他
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2013年12月15日(日)20時30分17秒

国家機密と報道の自由の問題を考える上で重要な素材になるはずなのに、日本ではあまり報道されていないですね。
とりあえず一昨日からツイートしたことをそのまままとめておきます。

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イランで失踪の米国人はCIA要員 米報道

 AP通信と米紙ワシントン・ポストは12日、数年前からイランで行方不明になっている元連邦捜査局(FBI)捜査官のロバート・レビンソン氏が、中央情報局(CIA)の秘密要員として働いていたと報じた。
 同氏は本来、スパイ活動を許されないCIA分析官に雇われており、関与した計10人の分析官らが解雇などの懲戒処分を受けた。APは「近年で最も深刻なCIAの不祥事」としている。
 レビンソン氏は2007年にイラン入国後、行方が分からなくなった。FBIなどが懸賞金をかけて行方を捜していたが、ここ3年ほどは生存を示す情報がない。国家安全保障会議(NSC)は12日、同氏とCIAの関係についてコメントを避けつつ、度重なる要請にもかかわらず報道に踏み切ったとして遺憾の意を表明した。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/131213/amr13121315460004-n1.htm

APとワシントンポストの記事を読んでみたけど、この共同記事の要約はあまりに雑すぎるなあ。
タイトルの「CIA要員」もおかしい。
正式な要員ではなく、権限外の分析官が報酬を支払っていただけ。

Missing American in Iran was on unapproved mission
http://bigstory.ap.org/article/missing-american-iran-was-working-cia

CIAが機関として正式に承認していない仕事を権限外の分析官が勝手に民間人に依頼。
だからこそ関与した分析官が免職等の処分を受けている。

イランで失踪の米男性は「CIAの情報要員」、米メディア
http://news.livedoor.com/article/detail/8343850/

ロバート・レヴィンソン氏の件、共同電で短く報道されたものの、日本のメディアは全く重視していない感じ。
今のところ日本語で読めるものではライブドアのAFPBB記事が一番詳しい。

昨日のAPの記事は Matt Apuzzo 氏とAdam Goldman氏の連名で、WPはAdam Goldman氏。
何故、APとWPに同一人物が署名記事を書いているのか不思議に思った。

http://bigstory.ap.org/article/missing-american-iran-was-working-cia
http://www.washingtonpost.com/world/national-security/ex-fbi-agent-who-went-missing-in-iran-was-on-rogue-mission-for-cia/2013/12/12/f5de6084-637b-11e3-a373-0f9f2d1c2b61_story.html

ま、これはAPで長年調査報道に携わり、ピューリツァ賞も受賞している優秀なAdam Goldman氏が最近ワシントンポストに転職したという事情の反映。

http://www.huffingtonpost.com/2013/10/15/ada-goldman-associated-press-washington-post-_n_4101302.html

Why AP is publishing story about missing American tied to CIA
http://blog.ap.org/2013/12/12/why-ap-is-publishing-story-about-missing-agent-tied-to-cia/

APは2010年の時点で既に今回報道された事情を全てつかんでいたが、レヴィンソン氏の生命に危険が及ぶとの当局の意見に従って報道を控えていた。
今の時点で報道したのは、もはや情報が途絶えて3年経ち、生存につながる新たな手掛かりがないこと、CIAの規律違反と10人もの懲戒がなされている事情が国民に知らされていないのは知る権利の観点から放置できないとの判断。

A Disappearing American Spy, and a Scandal at the C.I.A.
http://nyti.ms/JfQc0r

NYTも家族が依頼した弁護士からの情報に基づき早い段階で問題の所在を把握し、APと同レベルの情報を得ていたが、当局の要請とレヴィンソン氏の生命に危険が及ぶことへの家族の懸念に配慮し、報道を控えていた。
AP・WPの報道を受け、同氏が失踪した当時の生々しい事情、および事件後に介入してきた武器商人やロシアの政商等の行動について、この記事で詳細を伝えている。
AP・WPに特ダネを抜かれたことへのくやしさはにじんでいるものの、NYTの調査報道の実力を示す良記事。

ロバート・レヴィンソン氏に最後に会った男、失踪への関与を否定
http://investigations.nbcnews.com/_news/2013/12/4/21902571-last-man-to-see-robert-levinson-before-he-vanished-denies-involvement-in-disappearance?lite

Dawud Salahuddinは1980年に反ホメイニ派のイラン人元外交官を射殺してイランに逃亡した人物。
レヴィンソン氏との会合をイラン公安当局に知らせた可能性が高い。
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