学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

「金剛乗」 or 「金剛性」

2014-06-17 | 歴史学研究会と歴史科学協議会
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2014年 6月17日(火)21時54分8秒

>筆綾丸さん
>金剛乗
ご指摘の通り、正しくは「金剛性」ですね。
過去ログを見たら、内田啓一氏の『後醍醐天皇と密教』については、2010年8月17日の筆綾丸さんの投稿以降、ある程度の議論は既に済ませていました。
筆綾丸さんは最初の投稿で小松茂美氏の著書に「金剛性」とあることに言及され、ついで19日の投稿で、内田氏自身が『文観房弘真と美術』では「金剛性」としている旨を指摘されていますね。


私の方も8月30日の投稿で、「洞院」通成は「中院」通成の誤りだ、みたいなことを書いていました。


改めて『後醍醐天皇と密教』を通読してみて、文章がちょっとぬるいのではないかと感じましたが、「あとがき」を見たら、

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さてさて、昨今の大学では学力低下が叫ばれている。ゆとり教育の結果ともされ、テレビのニュースでもしばしば報道される。現場にいる大学教員はそれを実感していると思うが、私もその一人である。法蔵館からは「史学科系の大学生に解るように書け」との厳命がくだった。はじめ解りやすいように書いたつもりだったが、最初の原稿には「難しすぎる」とのクレームがついて、書き直しとなった。そこで私のゼミの学生に概略を読んでもらい、理解しがたい語句などに赤字を入れてもらった。(後略)
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のだそうで、大学の先生もなかなか大変ですね。
『後醍醐天皇と密教』執筆時には内田氏は「町田市立国際版画美術館学芸員を経て、昭和女子大学歴史文化学科教授」とありますが、今はご出身の早稲田大学に移られたようですね。


※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

変ロ短調と盤渉調 2014/06/17(火) 20:40:36
小太郎さん
小松茂美氏の『天皇の書』(文春新書)に後宇多法皇の施入状があり、「徳治三年六月廿日阿闍梨」の後の梵字は「金剛性」と読まれていて、内田氏の「後宇多院は出家して金剛乗と称した」は誤りなのでしょうね。
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見られるように、一糸乱れぬ重厚な骨法(書法)、正楷の運筆。王者の風格凛然。歴朝宸翰の遺墨の中において、いや日本書道史上の一群の作品において、楷書の墨痕としては最上品、孤高の君臨と言うに憚らぬ存在である。(同書177頁)
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小松氏らしい絶賛の方法ですが、あまり密教的な妖しさのない、ごく正統的な書体という感じがします。

https://www.youtube.com/watch?v=twMrnWrnjso
https://www.youtube.com/watch?v=C5oRITmyNVo
豊島岡墓地における桂宮の斂葬の儀では盤渉調の竹林楽が、赤坂東邸での霊車発引の儀ではショパンの葬送が奏されたそうですが、皇族の葬儀にショパンの曲が使われるようになったのは、やはり戦後なんでしょうね(あるいは、鹿鳴館時代以後?)。
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