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『網野善彦対談集』

2015-02-15 | 網野善彦の父とその周辺

投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年 2月15日(日)12時26分41秒

>筆綾丸さん
2012年12月頃には何を話題にしていたかなと思って以前の投稿を眺めてみたら、11月22日に私がシリアの宗教都市マルーラについて少し書いて、筆綾丸さんもアラム語などに触れられていますね。
あの頃も穏やかならざる情勢でしたが、最近はあまりに殺伐としているので海外ニュースを追うのもいささか億劫になります。

Maloula
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/6577405536b2a7b177e411bf71927f90

http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6614
broken Aramaic
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/20e6eb32779f50f78eb9a7106b5e754c

>『網野善彦対談集』
『現代思想』の網野総特集は岩波が『網野善彦対談集』で儲けるための事前工作のような感じがしないでもないですね。
このシリーズは山本幸司氏の単独編集だそうですが、山本氏は編集者として網野氏に出会わなければ静岡文化芸術大学教授の地位も得られなかったでしょうから、最後のご奉公としてがんばってほしいものです。

※最後のご奉公云々はいつまでも網野氏の解説をしていないで独自研究をされたらいかがでしょうか、という程度の意味で、悪意は殆どありません。

『網野善彦対談集』
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/092811+/index.html

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

疾風・・・ダッソ―の至福の瞬間 2015/02/13(金) 13:27:00
小太郎さん
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%81%96%E3%83%86%E3%83%AC%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%B3%95%E6%82%A6
現代史家には歴史に追い抜かれるという至福の瞬間があるという告白には、イタリア・バロックの傑作『聖テレジアの法悦』のような、中世史家や近世史家には無縁の禁断の史的法悦(?)とでも呼ぶべきものがありますね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%96%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%83%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%83%EF%BC%9D%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC
現在の大統領はクーデターの首謀者アッ=シーシーですね。

http://www.lefigaro.fr/societes/2015/02/12/20005-20150212ARTFIG00517-contrat-historique-pour-le-rafale-en-egypte.php
二基のピラミッドを背後に従えた戦闘機ラファルの雄姿は、ダッソ―の「至福の瞬間」を見事に表わしていて(ちなみに、フィガロはダッソ―・グループの新聞社)、ルーヴル美術館所蔵の名画を見るような、寸分の狂いもない美的構図には溜息が出ますね。超帝国主義的オート・クチュール的コンポジション?
ラファル24機とフリゲート艦1隻、関連部品合わせて、50億ユーロ(約7,000億円)の「歴史に追い抜かれるような」歴史的な売買契約で、オランド大統領はル・ドリアン国防相に、フランス国の名において署名するよう命じ、式典にはアッ=シーシー大統領臨席のもと、ダッソ―はじめ軍需産業の幹部が参列する予定で、契約の背景にはリビア国境やシナイ半島の治安問題がある、とのことです。(フランスの国営ラジオ放送 RFI によれば、この契約はムルシー追放を批判して F16 戦闘機20機の輸出を凍結したアメリカの裏をかいたものとのことなので、下品な表現をすれば、コキュ(間男)のような寝技で、フランス人の得意技のひとつですね)
フィガロは一貫して、「イスラム国」を Daech(ダーイシュ:ad-dawla al-islāmiyya の acronym )と表記していて、ほかのメディアと少し違いますね。
オランド大統領は、ミンスクでメルケル首相と仲人役(さながら初老の夫婦のよう)を演じていたと思いきや、返す刀でラファルを売り込むとは、原子力空母(シャルル・ド・ゴール)のスエズ運河航行におけるドゥルーズ/ガタリ的な平滑化という哲学的な問題もあったのでしょうね。オランドは顔に似合わずENA出身の大変なインテリだから、ポストモダンにも深い関心があるはずです。
RFI の記事には、le président égyptien(エジプト大統領)と同時に le maréchal (元帥)Sissi という表現をしていて、軍人は立候補できないというウィキの説明と読み比べると、元帥は軍人ではなく名誉称号であって、形式的には欧米的なシビリアン・コントロールだ、ということなんでしょうが、ただの大統領より恐い感じがしますね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E5%BC%8F%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%A6_(%E5%88%97%E8%BB%8A)
蛇足ながら rafale は疾風という意味で、旧帝国陸軍の戦闘機「疾風」の後継機で、東北新幹線の車両「はやて」の姉妹機でもあって、逃足は速いそうです。そういえば、疾風という忍者もいましたね。

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/092811+/index.html
採算は関係ないとしても、この対談集はどれくらい売れるものでしょうか。
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羽仁五郎の再臨

2015-02-15 | 栗田禎子と日本中東学会
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年 2月15日(日)12時04分8秒

私は今まで栗田禎子氏の論文やエッセイを読んだことがなかったのですが、国会図書館で検索すると121件出てきて、最近の著書に『中東革命のゆくえ : 現代史のなかの中東・世界・日本』(大月書店)
がありますね。


雑誌への寄稿は、

「『集団的自衛権』問題の正体 :『集団的帝国主義』の時代の日本型ファシズム」(『歴史学研究』927号、青木書店)
「エジプト『六月三〇日革命』とオリエンタリズムの罠 : 中東に対する国際社会のまなざし」(『歴史評論』763号、校倉書房)
「思想のフロンティア エジプト革命第二ステージをめぐる心理戦 : 中東の革命状況は今どのような段階にあるか」(『唯物論研究年誌』、大月書店)

といった具合であり、上記以外では『インパクション』、『金曜日』、『世界』などへの寄稿が多いようです。
「現代史とは何か」の最初の方を少し読んで、栗田氏は羽仁五郎みたいなタイプだなあと思いましたが、実際に羽仁五郎への言及もありますね。(p95以下)

---------
2 変革のためのたたかいと歴史意識
 二〇一一年エジプト「民衆革命」のような経験は、変革のためのたたかいと歴史意識の不可分の関係性を改めて実感させる。羽仁五郎は「現代史」はわれわれ自身がつくるものだと語り、さらに「歴史」自体についても、歴史はそれをわれわれが(覚えるもの、考えるものであるだけでなく)「生きるもの」なのであり、歴史学とは結局のところ「歴史を正しく生きる」ための学問だと述べているが、これは本質を突いたことばだと言えよう(7)。人が歴史を学ぶ必要性を最も切実に感じるのは、きわめて複雑で困難な、時にほとんど絶望的といえる状況のなかで、展望を求めてたたかっている場合なのではないか。逆に、真に価値のある歴史叙述、後世に残る歴史学の作品とは、傍観者的な記述ではなく、変革のためのたたかいに何らかの形で関わった人々、何らかの政治的課題に深くコミットした人が、そのたたかいの記録を残そうと試み、あるいは鋭い政治的意識に基づいて自らの時代と社会が抱える矛盾を分析しようとしたものだといえるのではないか。われわれが歴史叙述の古典と考えるものの多くは実はその当時の現代史なのであり、歴史叙述はある意味の「当事者性」が決定的に重要であるように思われる。
--------

注(7)には<羽仁五郎『羽仁五郎歴史論抄』(編集・解説、斉藤孝)筑摩書房、一九八六年、四─二六頁所収「歴史とは何か」(一九五〇年)。『羽仁五郎歴史論著作集』第四巻所収「現代史」(一九四七年)>とあり、栗田禎子氏は1960年生まれですから、引用されている羽仁語録は栗田氏誕生より更に十年以上も前の「古典」ですね。
羽仁五郎も、その再臨とも言える栗田禎子氏も、実に力強い文章を書く才能に恵まれていてうらやましいですね。
栗田氏の著作のうち、時事評論的なものにはあまり興味がありませんが、本業の中東研究については、池内恵氏の著作などと比較しつつ、いくつか読んでみようと思っています。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

疾風・・・ダッソ―の至福の瞬間 2015/02/13(金) 13:27:00
小太郎さん
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%81%96%E3%83%86%E3%83%AC%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%B3%95%E6%82%A6
現代史家には歴史に追い抜かれるという至福の瞬間があるという告白には、イタリア・バロックの傑作『聖テレジアの法悦』のような、中世史家や近世史家には無縁の禁断の史的法悦(?)とでも呼ぶべきものがありますね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%96%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%83%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%83%EF%BC%9D%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC
現在の大統領はクーデターの首謀者アッ=シーシーですね。

http://www.lefigaro.fr/societes/2015/02/12/20005-20150212ARTFIG00517-contrat-historique-pour-le-rafale-en-egypte.php
二基のピラミッドを背後に従えた戦闘機ラファルの雄姿は、ダッソ―の「至福の瞬間」を見事に表わしていて(ちなみに、フィガロはダッソ―・グループの新聞社)、ルーヴル美術館所蔵の名画を見るような、寸分の狂いもない美的構図には溜息が出ますね。超帝国主義的オート・クチュール的コンポジション?
ラファル24機とフリゲート艦1隻、関連部品合わせて、50億ユーロ(約7,000億円)の「歴史に追い抜かれるような」歴史的な売買契約で、オランド大統領はル・ドリアン国防相に、フランス国の名において署名するよう命じ、式典にはアッ=シーシー大統領臨席のもと、ダッソ―はじめ軍需産業の幹部が参列する予定で、契約の背景にはリビア国境やシナイ半島の治安問題がある、とのことです。(フランスの国営ラジオ放送 RFI によれば、この契約はムルシー追放を批判して F16 戦闘機20機の輸出を凍結したアメリカの裏をかいたものとのことなので、下品な表現をすれば、コキュ(間男)のような寝技で、フランス人の得意技のひとつですね)
フィガロは一貫して、「イスラム国」を Daech(ダーイシュ:ad-dawla al-islāmiyya の acronym )と表記していて、ほかのメディアと少し違いますね。
オランド大統領は、ミンスクでメルケル首相と仲人役(さながら初老の夫婦のよう)を演じていたと思いきや、返す刀でラファルを売り込むとは、原子力空母(シャルル・ド・ゴール)のスエズ運河航行におけるドゥルーズ/ガタリ的な平滑化という哲学的な問題もあったのでしょうね。オランドは顔に似合わずENA出身の大変なインテリだから、ポストモダンにも深い関心があるはずです。
RFI の記事には、le président égyptien(エジプト大統領)と同時に le maréchal (元帥)Sissi という表現をしていて、軍人は立候補できないというウィキの説明と読み比べると、元帥は軍人ではなく名誉称号であって、形式的には欧米的なシビリアン・コントロールだ、ということなんでしょうが、ただの大統領より恐い感じがしますね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E5%BC%8F%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%A6_(%E5%88%97%E8%BB%8A)
蛇足ながら rafale は疾風という意味で、旧帝国陸軍の戦闘機「疾風」の後継機で、東北新幹線の車両「はやて」の姉妹機でもあって、逃足は速いそうです。そういえば、疾風という忍者もいましたね。

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/092811+/index.html
採算は関係ないとしても、この対談集はどれくらい売れるものでしょうか。
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