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「日本ヴィクトリア朝文化研究学会」会長

2015-02-09 | 映画・演劇・美術・音楽
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年 2月 9日(月)10時21分48秒

ここ数日、井野瀬久美恵氏の著書・論文を集中的に読んでみたのですが、非常に優秀な方ですね。
暫く前からイギリスの歴史を真面目に勉強しようと思って、大阪大学名誉教授の川北稔氏を中心に関西のイギリス史研究者の本をまとめて読んでいて、井野瀬氏の名前も川北氏編集の論文集で知りました。

「日本ヴィクトリア朝文化研究学会」

大英帝国のダイナミックな歴史は近代世界システム論の日本における第一人者である川北氏の著書で学ぶことができますが、女性史の観点も新鮮ですね。

>筆綾丸さん
>『戦国乱世から太平の世へ』
未読ですが、藤井譲治氏もこの時期の概説書をたくさん書いているので、イマイチ新鮮味がないような印象を受けてしまいますね。

※筆綾丸さんの下記投稿への返信です。

天下の形態学 2015/02/08(日) 15:28:29
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/
藤井讓治氏『戦国乱世から太平の世へ』を拾い読みしてみました。
最近の学説を踏まえて、信長・秀吉・家康の時代における「天下(天が下)」の意味の変容が大きなテーマになっていますね。
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このように、日本全土を意味する語としての「天下」は秀吉の後半ころから徐々に使われ始め、江戸時代初期には、日本全土を意味するものとなり、京都あるいは畿内の意で用いられることはなくなる。(「はじめに」?頁)
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天下布武、天下人、天下殿、天下の様、普天下、一天下、天下静謐、天下支配、天下愈々平和、天下一統、天下取り、天下の鎮撫、天下の覇府、天下の掌握、天下の政治、天下御仕置、天下泰平(太平)・・・。
http://en.wikipedia.org/wiki/Morphology
天下のモルフォロジー(Morphology)とでも命名したいような賑やかな種々相ですね。

最近の学説および著者の論に従えば、光秀の発句「ときは今 天が下しる 五月哉」(天正十年五月)の「天が下」は京都あるいは畿内となりますが、愛宕山威徳院で詠まれたという地理を考慮すれば、ずばり京都だと言えるのでしょうね。発句は眼前の景を詠み込むのがルールだから、この日、少なくとも洛外の愛宕山山頂には天ならぬ雨が降っていたはずですが、洛内の本能寺の瓦に雨粒が落ちていたかどうか、それはわかりません。

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(天正六年十月の本願寺との和睦交渉において)・・・天皇のヘゲモニーのもとで和談が成立するかにみえたが、信長有利に戦況が変化すると、毛利氏への勅使派遣は見送られる。天皇の綸旨であっても、信長の都合次第であり、天皇の権限や位置は脆弱なものであった。(50頁)
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「天皇の綸旨であっても、信長の都合次第であり、天皇の権限や位置は脆弱なもの」なのに、なぜ「天皇のヘゲモニー」などといえるのか、著者の語感が理解できない。信長に「ヘゲモニー」はあるかもしれないが、正親町天皇にヘゲモニーなどあろうはずもなく、ここは「天皇の斡旋(仲介)」くらいの意で、ドイツ語の Hegemonie にならっていえば Vermittlung ですかね。
コメント
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