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二人のクリス

2015-02-25 | 栗田禎子と日本中東学会
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年 2月25日(水)20時49分49秒

>筆綾丸さん
>『アメリカン・スナイパー』
話題に乗り遅れないようにと思って私も観てみましたが、新兵のしごきと結婚話はリチャード・ギアの『愛と青春の旅だち』を思い出させ、狙撃手が互いに相手を意識して剣豪の決闘みたいになる展開はジュード・ロウの『スターリン・グラード』と似ていますね。
ご指摘のように携帯の国際電話の場面は、仮に事実としてもひどく不自然な感じがしてスクリーンへの集中を妨げ、結局、レッド・ネックの粗野な主人公には最後まで感情移入できませんでした。
何だか全体的にチグハグな寄せ集め感が漂い、寒々とした気持ちで映画館を後にしました。
戦闘場面が好きな軍事オタクの人以外には奨められない映画ですね。

たまたま今日のBBCニュースで知ったのですが、クリス・カイルを殺害した犯人は精神的障害を理由とする無罪の主張を認められず、仮釈放なしの終身刑となったようですね。

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Eddie Ray Routh guilty of American Sniper Chris Kyle's murder

A Texas jury has found Eddie Ray Routh guilty of the murder of US Navy Seal Chris Kyle, who wrote American Sniper, and his friend Chad Littlefield.
The judge sentenced Routh to life in prison without parole; prosecutors had not sought the death penalty.

クリス・カイルと同じ米海軍特殊部隊の出身者としては、もう一人の非常に有名なクリスとしてクリスティン・ベックさんがいますね。
この人は1966年にクリストファー・ベックとして生まれ、海軍特殊部隊のスーパーエリートとして数々の危険な任務をこなし、20年の輝かしい軍歴を残して退役した後、2013年、47歳にして性転換手術を受け、名前もクリスティン・ベックに変えたそうです。
クリント・イーストウッド監督の次回作としては、悲惨な最期を遂げたクリス・カイルと対照的に、自叙伝がベストセラーとなり、充実した後半生を送っているらしいクリスティンをヒーロー兼ヒロインとする Warrior Princess を期待したいですね。

Kristin Beck

※筆綾丸さんの下記二つの投稿へのレスです。

映画『アメリカン・スナイパー』 2015/02/21(土) 17:11:04
小太郎さん
ジル・ケペル『中東戦記』を面白く読了しました。デテールの描写が生き生きしていますね。
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もう少し歩くと、背の高いレトロな細首のボトルに入った泡立つステラ・ビールを今でも出してくれる唯一の大衆カフェがある。通りから見えないようにと張られた幕をくぐり、地元産のブランデーを水と一緒に用心深く飲んでいる男たちの間に席を取る。このカフェはコプト教徒の経営である。コプト教はエジプトのキリスト教で、手首の内側にある十字架の刺青で見分けることができる。消すことのできないインクが神の子羊たちの、あまねく広がるイスラーム教の下での脆い被保護者の立場と、支配宗教への改宗圧力への抵抗のしるしである。(「エジプトを嗅ぐ」38頁)
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http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AD%E3%83%B3%E5%85%B8%E7%A4%BC%E3%82%AB%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E6%95%99%E4%BC%9A
マロン派というキリスト教の一派の名を初めて知りましたが、カルロス・ゴーンはマロン派の信徒なんですね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Houari_Boumediene
http://www.bbc.com/news/world-europe-30786139
アルジェリアのブーメディエン大統領の話がありますが(113頁)、先月のパリ襲撃事件の女性容疑者 Hayat Boumeddiene と何か関係があるのか、興味を惹かれました。(なお、両者のスペルは少し違うものの、フランス語風に発音するなら、ブーメディエンではなくブーメディエンヌですね)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%A9
ミシェル・スーラ(Michel Seurat)は(「レバントの街道をゆく」91頁)、新印象派の画家ジョルジュ・スーラ(Georges Seurat)と同じ姓で、これも惹かれますね。

http://wwws.warnerbros.co.jp/americansniper/
『アメリカン・スナイパー』の評価は高いようですが、戦闘シーンをしばしば中断する家庭の話(妻、妊娠、出産・・・)がくどすぎて、興趣を殺がれました。また、イラクの戦場で狙撃の最中に携帯の国際電話で妻と話をする場面は実話なのか、不明ですが、人間として不自然な行為のような気がしました。
二人のスナイパーの対決はゴルゴ13のような神業(キリスト教の神とイスラム教の神の腕競べ?)でした。射程距離2?というのは、時々刻々変化する風向きや風速や空気密度を考えると(また、弾丸の先端に誘導装置がないとき、重力の影響による弾丸の放物線軌道をどのように計算すればいいのか)、ほとんど物理的な限界なんでしょうね。

追記
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%B9%EF%BC%9D%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%AA
元国連事務総長ガリはコプト教徒ということなので、手首に十字架の刺青があるのでしょうね。ウィキに「(ガリは)訪日時には必ず東郷神社に参拝していた」とありますが、なぜ東郷元帥なのか。

2015/02/24(火) 13:56:10
彷徨える墓 小太郎さん
落し所としてはちょうど好い塩梅なのでしょうね。
http://d.hatena.ne.jp/xuetui/20090204/1233764836
克念という聞き慣れぬ語は、「惟聖罔念,作狂。惟狂克念,作聖」(『尚書』多方篇)を典拠にするとのことですが、この哲学的な漢文の意味がわかりません。
http://homepage3.nifty.com/kanaya/history.html
京都市内の町名は殆ど何も知りませんが、風間家に関係の深い金屋町は四条堀川の北に位置するのですね。

http://en.wikipedia.org/wiki/Tomb_of_Suleyman_Shah
http://en.wikipedia.org/wiki/Suleyman_Shah
オスマン帝国の後継者を任ずるトルコにとっては重要な霊廟のようですが、スレイマン・シャー(1178-1236)は後鳥羽院(1180-1239)とほぼ同時代の人なんですね。川の規模に雲泥の差があるものの、方や溺れた人、方や水練の人。ユーフラテス河に寄り添う彷徨える霊廟(mausoleum)というか、まるでヴァーグナーのオペラのようです。

http://www.bbc.com/news/world-asia-31585492
この記事は Prince Naruhito が Prime Minister Shinzo Abe を批判した、と読めなくもないですね。
コメント
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