ギリシャ神話あれこれ:アキレウス出陣(続々々々)

 
 両軍がスカマンドロス河畔まで達すると、アキレウスはトロイア軍を両断、一方を平原へと追い立て、もう一方を河へと追い落とす。
 渦巻く激流のなかを必死に泳ぐトロイア勢を、アキレウスは次々と太刀で薙ぎ払っていく。阿鼻叫喚の悲鳴とともに、河の水はたちまち血で真っ赤に染まった。
 そして、パトロクロスの血の償いとして、彼を弔う暁にその喉を切り裂くために、トロイアの若者たちを12人、生きているまま河中から引っ張り上げて、捕縛し船陣へと運ばせる。

 このときアキレウスは、プリアモス王の子の一人、王子リュカオンが、武具を捨てて河中を泳いでいるのを見出す。
 この年若いリュカオンは、かつて、アキレウスの夜襲に遭って生け捕られて売り飛ばされたのだが(アキレウスはその金で、百頭の牛の価値を持つ銀器を得たという)、その3倍の身代と引き換えに自由を得、ようやく故郷へと帰ってきたところだった。

 再びアキレウスの手中に落ちたと知ったリュカオンは、アキレウスに縋り寄り、必死になって命乞いを始める。が……

 冥府からも戻ってこられるものかどうか、見てやろう。なぜそんなに死ぬのを悲しむ。お前よりも優れたパトロクロスはすでに死に、私自身もまた死を予言されている。トロイア王家の者たちを見逃すわけにはいかない。
 アキレウスは冷酷にこう言い放つと、一撃でリュカオンを切り殺し、その足首を掴んで河へと投げ込んだ。
 海原に出て、魚どもに屍を食い尽くされるがいい! パトロクロスに償うまでは皆、惨めな死にざまで果てていけ!

 To be continued... 

 画像は、ルンゲ「アキレウスとスカマンドロス河との戦い」。
  フィリップ・オットー・ルンゲ(Philip Otto Runge, 1777-1810, German)

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