ギリシャ神話あれこれ:ヘクトルの死(続々々々々)

 
 船陣に戻ったアキレウスは、武装も解き敢えずパトロクロスの亡骸に、ヘクトルを討ち取ったことを報告する。ヘクトルの屍を曳きずったまま、戦車でパトロクロスの亡骸の周りを駆け廻り、ミュルミドン人らとともにその死を悼んで嘆く。
 アキレウスはパトロクロスの亡骸が安置された傍らの土の上に、ヘクトルの亡骸を投げ出すと、パトロクロスを弔うまではこの身を洗い流すことはない、と宣言し、血みどろののまま横になった。
 そして……

 ふと眠り込んだアキレウスの前に、パトロクロスの亡霊、生きている姿そのままの亡霊が現われる。
 亡霊は言う。自分は未だ冥府の門をくぐれずにさまよっている。どうか早く弔って欲しい。そして自分の遺骨を、アキレウスのそれと一緒に納めて欲しい。
 おお、パトロクロス! アキレウスはパトロクロスを掻き抱こう手を伸ばすが、霊はそのまま地中へと消えてしまった。

 翌朝、総大将アガメムノンは火葬のための薪を、アキレウスがいずれ自分も入るつもりの、パトロクロスの塚まで運ばせる。パトロクロスの亡骸も、武装したミュルミドン兵率いる戦車で運ばれる。薪が山と積み上げられると、アキレウスは自らの金髪を切り落として、パトロクロスに捧げる。
 そして約束どおり、前日に生け捕ったトロイアの若者たち12人を切り殺し、その血を犠牲として投げ込むと、薪に火を放つ。

 西風神ゼピュロスと北風神ボレアスが風を起こし、火はたちまち猛火となって、終夜燃えに燃え続ける。そしてアキレウスは夜もすがら、パトロクロスを焼き尽くす火を眺めながら、酒を酌んでは地に注ぎ、パトロクロスの霊魂に呼びかけ続ける。

 To be continued...

 画像は、バスティアン=ルパージュ「アキレウスとプリアモス」。
  ジュール・バスティアン=ルパージュ
   (Jules Bastien-Lepage, 1848-1884, French)


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