ギリシャ神話あれこれ:ペンテシレイア来援(続々)

 
 どんな無謀な輩が挑んできたのか見てやろう。勝ち誇るアキレウスは、ペンテシレイアの亡骸から無造作に槍を抜き取ると、彼女がまとう軍神の兜を剥ぎ取った。すると……

 兜の下からは現われたのは、女神と見紛う美しい顔。アフロディテ神がアキレウスを苦悩させるために、死後もその美貌を保ったのだそう。
 息を呑むアキレウスとギリシア軍一同。アキレウスは恍惚となって立ちすくみ、ペンテシレイアを殺してしまったことを大いに悔やむ。ああ、生け捕って、妻にすればよかった!
 アキレウスは泣き崩れ、あまり想像したくないのだが、その美しい亡骸をせっせと犯したという(鎮魂のまじないの意味があるのだそう)。 

 娘の死を知ったアレス神は怒り狂い、アキレウスを血祭りに上げんとイデ山頂に立ったのだが、ゼウス神が足許に放った雷霆に制されて、やむなく諦めた。

 さて、めそめそとペンテシレイアの死を嘆いて泣き続けるアキレウスの様子が、あまりに女々しいのを見て、いつも英雄たちの揚げ足ばかり取っているテルシテスという男(以前、アガメムノンがギリシア軍の士気を試した際にも最後まで罵り続け、オデュッセウスの杖に打たれた)が、嘲笑する。
 アキレウスが激昂し、テルシテスを殴り飛ばすと、そのたった一撃でもって、テルシテスは歯をすべて地上に撒き散らし、口からどっと血を流して死んでしまった。

 ギリシア軍は歓声を上げた(……どうして従軍したんだか、テルシテス)。が、テルシテスと血縁だったディオメデスだけはアキレウスに激怒。今にも二人は切り結ぶかと思われたが、ギリシア勢に仲裁される。

 ギリシア軍はペンテシレイア以下女戦士たちに敬意を払い、その亡骸を、その甲冑とともにイリオス城に返してやる。老王プリアモスは、彼女たちを丁重に埋葬した。

 To be continued...

 画像は、J.H.W.ティッシュバイン「アキレウスの腕のなかで息絶えるペンテシレイア」。
  ヨハン・ハインリヒ・ヴィルヘルム・ティッシュバイン
   (Johann Heinrich Wilhelm Tischbein, 1751-1829, German)


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