ギリシャ神話あれこれ:アキレウス出陣(続々々)

 
 敵将たちを討ち取るなか、アキレウスはプリアモス王の末子、王子ポリュドロスに遭遇する。
 若いポリュドロスは自慢の俊足に頼んで戦場を駆けめぐっていたのだが、さすがにアキレウスの俊足には敵わず、背後から槍に貫かれ、こぼれ出る臓腑を掴みつつ地に膝を突いた。

 ヘクトルは弟ポリュドロスが無残に倒れたのを見るや、アポロン神の忠言もどこへやら、味方の軍勢を掻き分け、先陣へと躍り出ると、アキレウスめがけて突進してきた。
 アキレウスは猛然と叫ぶ。最愛の友を殺した男よ、来い、お前の死に向かって!

 が、常にそうなのだが、ギリシアの勇将にはアテナ神、トロイアの勇将にはアポロン神がついている。ヘクトルが槍を放つと、アテナがヘクトルの足許へと弾き返す。アキレウスは天も裂けんばかりの大声で叫びながら躍りかかるが、こちらもアポロンがヘクトルをさらうと、濃靄のなかに隠してしまった。

 アキレウスが突き出す槍は、虚しく靄を裂くばかり。アキレウスは叫ぶ。またしても命拾いしたな! 今後も戦場では神に祈るがいい!

 アキレウスは逃したヘクトルの代わりとばかりに、出くわした敵将を手当たり次第に殺していく。鬼神のごとく荒れ狂い、槍を突き、太刀を振るって、トロイア勢であれば立ち向かう者、逃げる者、命乞いする者の区別なく、無慈悲無情に殺戮し、その屍と武具とを戦車で踏みつけ進んでゆく。
 大地は血に染まり、アキレウスの豪腕も血にまみれ、戦車は血飛沫に濡れていたが、アキレウスはただひたすらに殺し続けた。
 ……もう手に負えん。

 To be continued...

 画像は、ダヴィッド「マルスとミネルヴァの戦い」。
  ジャック=ルイ・ダヴィッド(Jacques-Louis David, 1748-1825, French)

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