ギリシャ神話あれこれ:メムノン来援(続)

 
 アキレウスとパリスの美貌に並ぶと謳われる、優雅な美貌の黒王メムノンの、鍛冶神ヘファイストスによる甲冑をまとった、武勲の誉れ高い堂々たる身装。彼を大歓迎したトロイア軍の宴席を、しかしメムノンは、酒にかこつけて武勇を自慢すべきではないし、明日の戦闘にも差し障るから、と早々に退く。……ペンテシレイアに比べて、随分地味。

 翌朝、曙とともに眼を醒ましたメムノンは、エチオピア軍を率いて出陣。ギリシア軍の勇士を次々と倒して奮戦する。

 さてメムノンは、パリスに馬を射られて立ち往生した戦車に乗る老将ネストルに、槍をかざして突進する(……なんで、いつもネストル老人が戦場にいるんだろう?)。
 ここに、ネストルの子アンティロコスが立ちふさがり、父に代わってメムノンに挑む。両将は槍を交えて激闘を繰り広げるが、ついにメムノンがアンティロコスの心臓を刺し貫く。

 眼前で息子を討たれたネストルは、怒りと嘆きで気も狂わんばかりに叫びながら、息子の亡骸にメムノンを近づけるな! と友軍を呼び集める。が、メムノン強し! 応戦しつつも悠々、アンティロコスの武具を剥ぎにかかる。
 これを見た老ネストルは、友軍の不甲斐なさに大激怒、自らメムノンに立ち向かう。

 するとメムノンは憐んで言う。あなたとは戦わない。あなたは父のように高齢だ、勝負にはならないだろう。自分より優れた者に戦いを挑むのは、愚か者のすることだ。と。
 ネストルは発狂寸前。ああ、儂は老いさばらえた獅子だ! 誰よりもまだ勇敢であるのに! 儂の身体が若くさえあったら!

 To be continued...

 画像は、J.H.W.ティッシュバイン「アキレウス」。
  ヨハン・ハインリヒ・ヴィルヘルム・ティッシュバイン
   (Johann Heinrich Wilhelm Tischbein, 1751-1829, German)


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