ザールの珠玉の田舎町(続々々々)

 
 翌朝、ご機嫌の相棒が食堂のピアノでバッハを弾く。その後、昨日の教会まで散歩。このとき、昨日私たちは橋を一つ間違えていたこと、ユースホステルは、地図上では橋の袂に位置するのだが、実際には橋から迂回した道によってしか、たどり着けない場所にあること、が分かった。

 ドイツ人男性は約束の時間を5分遅れて、ドイツ車でやって来た。そして遅れたことを謝った。
 助手席には女性が乗ったほうが彼が喜ぶ、と相棒が言うので、そうすることに。男性は自己紹介し、赤いにこにこ顔で、
「日本に滞在していたとき、私は日本人たちから大変親切にしてもらった。だから今日は私が、あなたがたに親切にする番だ」と言った。

 誰かの親切が別の人の親切を生む。私の知らない同国の人々が、コエーリョの言う“恩義の銀行”に貯蓄した結果、この日、私たちは、昨日知り合ったばかりのドイツ人男性、ハンスさんから、思いがけないもてなしを受けることになったわけだ。

 ハンスさんがまず連れて行ってくれたのは、ザールブルクとザール川を一望できる山上。昨日は気づかなかったけれど、ここにはリフトが通っていて、それに乗って町からここまで簡単に来ることができる。
 普段、写真にこだわらない相棒が、「ちゃんと撮っておきなさいよ」と促す。で、カメラを取り出すと、ハンスさん、
「あなたがたを撮ってあげよう」
 証拠写真を撮ったことのない私たち。相棒、調子に乗って私の肩を抱く。私はカメラに向っても鯱張らない。二人とも上機嫌で、貴重なツーショット。

「今日はどれくらい時間を取れるだろう。私のほうは1時間でも、2時間でも構わないんだが」
「私たちも。今晩、もう一泊することにしたんです」
「そうか! OK!」ハンスさんは大喜び。

 To be continued...

 画像は、ザールブルク、旧市街。

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