ザールの珠玉の田舎町(続々々)

 
 無事到着して、ホッしながらチェックイン・シートに書き込む相棒の横で、同じくホッとして立っている私を、男性が熱心に覗き込む。
「明日はどこに行くのかい?」
「まだ決めてません」
「どっちのほうに行くのかい?」
「トリーアのほうから来たから、別のほうへ」
「トリーア! カール・マルクスの家!」ドイツ人三人が口々に叫び、一斉にドッと失笑する。

 そして、相変わらず熱心に私を覗き込んでいた男性が、こう申し出た。
「もし、もしあなたがたがそうしたいなら、明日、是非見ておいたほうがいいポイントを、私が案内するんだが。もし、あなたがたがそうしたいなら」

 私も相棒も、こうした申し出は初めてだったので、躊躇した。即答できずに顔を見合わせる私たちに、ドイツ人男性が、「もし案内するとすれば」と、一番高いところとか、ロックとか、ループとか言って、勢いよくまくし立てる。
「どうしよう?」
「別にいいよ。チマルさんの好きにして」
 で、結局そのドイツ人男性の申し出を受けることに。

「OK!」男性はとびきり嬉しそうに言うと、「明日、車で迎えに来よう。何時に来ようか。私のほうは何時でもいいんだが」
「じゃあ、10時に」
「OK! 10時にここに来るよ!」
 そして私たちは彼と、彼の奥さんと、当たり前のように快活な握手をして別れた。ドイツ人の手は大きく、握手は強くて固い。

 To be continued...

 画像は、ザールブルク、ユースホステル前からの眺め。

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