チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第164話 口 紅

2009年05月22日 | チエちゃん
 この春の新色です。気に入ったので買ってみました。
それはそうと、チエちゃんが初めて口紅をつけたのは、何時のことだったのかしらん。

 女の子なら、お母さんの化粧品をイタズラ半分に失敬して、ほんのちょっとだけ大人気分を味わった経験があるでしょう?
でも、チエちゃんにはその経験がありませんでした。
なぜなら、チエちゃんのお母さんは乳液やクリームこそ持っていたものの、お化粧をしたことなどなかったからです。

 だから、あの時なんです。

 高校卒業を前に、女子には、化粧品会社の美容部員が学校へやって来て、メイクの講習会が開かれることになっていたのです。
社会人になるためには、お化粧も身だしなみのひとつということなのでしょう。
その日、チエちゃんもワクワクしながら、お友達と会場へ向かったのでした。

生徒のひとりをモデルにして、メイクをして見せるというのです。
クラスメートの金沢さんがモデルに選ばれました。
椅子にかけた金沢さんは、肩にケープをかけられ、前髪をピンで留められて、照れくさそうにしています。
美容部員のお姉さんは説明をしながら、ファンデーションをのばし、パフをたたき、アイメイク、頬紅、そして最後に、口紅を引きました。

「金沢さん、きれい!」お世辞抜きにそう思いました。

 チエちゃんは家に帰って、その時もらったサンプルキットを早速使ってみることにしました。
化粧品会社のお姉さんがやったように、ファンデーションをのばして、パフをたたき、アイシャドウを入れて、頬紅をブラシでつけて、最後にピンク色の口紅を引きました。

さて、出来上がったその顔は・・・

 何これ!お稚児さんみたい!

白っぽい顔に口紅だけが浮き上がり、どうしてもお祭りに化粧をしたお稚児さんにしか見えなかったのでした。