チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第163話 豆 乳

2009年05月01日 | チエちゃん
 チエちゃんが、にしゃばあちゃん家へ行く楽しみの一つに「豆乳」がありました。
トクおばさんが、時々ご馳走してくれるその不思議な飲み物が大好きだったからです。

 普通の日は、賢二兄ちゃんと賢三兄ちゃんは学校です。
だから、チエちゃんは豆腐を作るトクおばさんにくっついて、その様子をずっと観察していたのでした。

 にしゃばあちゃん家は傾斜した土地に建っていて、道路に面した玄関や居間が2階になり、階下は作業場となっていました。
その作業場には大きな石臼が据えてあり、モーターで回る仕組みになっていたのでしょう、ぐるぐる回転する石臼からは、ドロドロした白いクリーム状の物体が大きな金だらいに流れ込んでいました。(それが、大豆をすりつぶした豆腐の元であることは大人になってから理解したのでした。)
トクおばさんは、チエちゃん家のお風呂くらいの大きな釜にお湯を沸かし、そのドロドロした白い物体を入れるのです。
それから、大きな麻布を広げ、大きな釜から煮立った白い汁をこれまた大きな柄杓で汲んで、麻布の中へと注ぐのです。
麻布の口を絞り、それに太い丸太棒をあてて、てこの原理で更に絞っていきます。
すると、麻布の中にはおからが残り、下の入れ物の中に白い液体が出来上がります。
これが、豆腐のもとになる豆乳です。
その時、トクおばさんは小鍋に豆乳を少しだけすくって入れるのです。
それから、残った豆乳を豆腐の型に入れ、にがりを入れて重石を乗せるのでした。

 一連の作業を終えた後、トクおばさんは小鍋を持って、2階の台所へと向かいます。小鍋を火にかけ、砂糖を入れ、暖めなおしたものを湯のみに注ぎ、ちゃぶ台の前で待っているチエちゃんへ出してくれたものでした。

 ちょっと青臭いような、それでいて甘い飲み物は、にしゃばあちゃん家に行った時だけ飲むことができる特別なものだったのです。


 最近は、健康ブームで豆乳がスーパーでも手に入るようになりました。これも保存技術が進歩したお陰なのでしょうね。