気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2007-11-19 23:07:14 | 朝日歌壇
いくたびも同じシーンが映されてたった一度の死を繰り返す
(福山市 武 暁)

今は昔交換日記ありたるをパソコンで読む公開日記
(茨木市 瀬川幸子)

夜の授乳終えてベランダにガーゼ干せば星がまたたき我を励ます
(東京都 日野智子)

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一首目。ミャンマーで亡くなったカメラマンの長井さんのことだろう。たった一度の死なのに、繰り返して映されることで残酷さが増幅される。しかし、よく見て真実を追及しなければならない。
二首目。「今は昔」という初句ではじまるのが面白い。交換日記と公開日記も言葉は似ているが、時代が違っておもしろい。ネット上の日記にいろいろ自分のこと、家族のことを書く人が居て、つい興味本位で見てしまうことがある。書く人はだれかに見てもらって、共感してほしいのだろうか。パフォーマンスなのだろうか。
という私もここでいろいろ書くが、短歌のことが中心で、垂れ流し的な日記にはならないように、心がけているつもり。ときどき本音を漏らしてしまうが・・・。
三首目。まだおっぱいを飲ませるような赤ちゃんを育てている人の歌。必死で子育てをしていたころを思い出して、あたたかくなつかしい気持ちになった。


科学を短歌によむ 諏訪兼位

2007-11-19 00:48:28 | つれづれ
ザンビアの銅延棒に腰おろしコカ・コーラ飲みし国境の町
(諏訪兼位)

染色体ふたつにわかれゆく午後はカーミンの紅(べに)はつか滲(にじ)みぬ
(三好みどり 律速 砂子屋書房)

屈まりて脳の切片を染めながら通草のはなをおもふなりけり
(斎藤茂吉 赤光)

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『科学を短歌によむ』は、岩波科学ライブラリーのシリーズの本で著者は諏訪兼位。
諏訪は、東京大学理学部地質学科卒で、名古屋大学教授、地質学が専門であるが、短歌を作り、朝日歌壇に投稿して、何度も取り上げられている人である。
この本は、科学者でありつつ、歌人でもある人という切り口で、多くの歌人とその作品を紹介している。
斎藤茂吉、岡井隆、小池光、永田和宏、栗木京子と言った歌人は、もともと理科系。そこまで有名でなくても、新聞歌壇に投稿したり、短歌と科学に関わる人は多い。真実を見極めようとする姿勢が、短歌と共通するところがあるからだろう。
三好みどりさんは、朝日カルチャーをはじめ歌会などでもご一緒させていただくお友達だが、阪大の薬学部出身の研究者でもある。三好さんの歌は、茂吉の脳の切片の歌を連想させる。