気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

桃植ゑて

2007-11-13 23:10:02 | きょうの一首
生きがたき此の生(よ)のはてに桃植(う)ゑて死も明(あ)かうせむそのはなざかり
(岡井隆 鵞卵亭)

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『鵞卵亭』には、ため息の出るような名歌がいくつもあって、飽きない。
この世とあの世の境の曖昧なところに桃の林があって、はなざかりのときに、自分が生きているのか死んでいるのかわからないような気持ちのうちに、あの世へ連れて行かれるような味わいがある。岡井先生は、あの艶然とした含み笑いで「まあ悪くないよ」などと、おっしゃるのである。

亡き母と湯豆腐を食む夕餉なりこの世の果てまでずんずん運ぶ
(近藤かすみ)