気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

銀耳 魚村晋太郎  

2007-11-27 23:28:41 | 交友録
包丁に獣脂の曇り しなかつた事を咎めに隣人が来る

モノレール終着駅を過ぎ昨夜天使を棄てた丘を見下ろす

あつたけどないのと同じ 絡まつたヴィデオテープの薔薇園のやうに

鯉幟でつくつたシャツを着てゆかう空の底なる夕べの酒肆へ

ふさぎたいからかも知れぬ、鬱ぐのは 釘の頭のしづむ木の蓋

(魚村晋太郎 銀耳 砂子屋書房)

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魚村さんの『銀耳』を再読。くりかえして読むと、そのたびに面白いと思う歌が違ってくる。一首の中に飛躍があって、すんなりとは読めない。深い。玄人好みの歌。
魚晋さんは、謎めいた人で、錦鯉でつくったシャツの似合いそうな人だ。ちょっと人間ばなれしてゐて、実はさかなかも知れないと、ふと思う。

美容院の椅子に抱かれまどろめば夢のみぎはにサギが来てゐる
(近藤かすみ)