その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

イングリッシュ・ナショナル・オペラ 『ファウスト』 (グノー作曲)

2010-10-02 22:57:37 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 イングリッシュナショナルオペラへグノーの『ファウスト』を見に行く。

 心底、感動した。演奏、声楽、演出がとっても上手く組み合わされた素晴らしい舞台だった。失礼ながら、ENOのオペラにここまでの感動は期待していなかったが、個人的には今年のトップクラスの印象に残る公演だった。

 特に、音楽が美しかった。オーケストラも音がよく出ていると思った。第3幕までは、木管のふくよかな調べ、弦は特に低弦セクションの重厚さがすばらしく、深みのあるアンサンブルだった。そして、4・5幕では、狂気と悲劇の緊張感満点の演奏。金管、打楽器が劇場を突き抜ける音が印象的だった。今日のオーケストラは本当に凄いと思った。指揮のガーディナーのリードが良かったのだろうか?

 歌手陣もなかなか。ロイヤルオペラでも良く出るトビースペンスのファウスト博士は、演技、歌ともに良かった。歌は最初、本調子でないのかとも思ったが、尻上がりに調子を上げて行ったように見受けられた。むしろ、僕はトビースペンスの演技も好きで、今日も特に、3幕以降の演技は真に迫ったもので、舞台を大いに盛り上げた。
 マルガリータ役のメロディムーアは初めて聴く人。第1,2幕は声はとっても美しいが、高い音のボリュームがやや物足りないなあと思ったりしたが、この人も尻上がりに調子を上げ、第3幕のファウスト博士との重唱などはとっても美しくうっとりするもので、第4,5幕は歌、演技ともに悲劇のヒロインを見事に演じていた。
 この舞台を支えたのは、悪魔メフィストフェレス役のIain Patersonだと思う。存在感がある演技かつ、声も通る綺麗な低音だった。

 今回は新プロダクション。ニューヨークのメトロポリタンオペラとの共同で、ブロードウエイの作品(例えばジェシー・ボーイズ)を手掛けるカナダ系アメリカ人デス・マッカナフ(Des McAnuff)が監督。ロンドンのメディアではプロダクションを取り上げる紹介が多かった。私的にもなかなか良かったと思う。大きな仕掛けがあるわけではないが、照明の色彩、時折の映像、作りが立体的で面白く見られた。時おりハリウッドのSF映画まがいのへんてこ骸骨の化物のようなものが登場するが、気になるほどではない。舞台設定にも意味が込められているようだが、私には今回1回では良く理解できなかったので、これについては省略。

 最近、オペラの難しさというのは、作品、歌、演奏、演出のどれが欠けても観劇後になんか不満が残ることだと思っているのだが、今日は、それが見事にプラスに組み合わさった公演で、満足感一杯で劇場を後にした。
 
 余談だが、今日はバルコニー席(最上階)の中段で観劇。舞台には遠いが、オケの音や歌は十分良く聴こえた。チケットがダンピング売りされているという話を聞いた通り、バルコニー席は8割ぐらいの入り。こんなに感動する作品だから、もっと見に行ってほしい。

※今日は自分の写真は頭2枚。最後はWebからの拝借です。

(ENOの本拠地ロンドン・コリシウム)


(幕間の舞台)


(トビースペンスとメロディムーア)



Faust

Oct 2 at 6pm
Gounod
Barbier and Carré after Goethe
New Production
CAST
Cast includes Toby Spence, Melody Moore, Iain Paterson, Benedict Nelson, Anna Grevelius & Pamela Helen Stephen
Conductor Edward Gardner; Director Des McAnuff; Set Designer Robert Brill; Costume Designer Paul Tazewell; Lighting Designer Peter Mumford; Choreographer Kelly Devine; Video Designer Dustin O'Neill

コメント (2)
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