その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

福田康隆『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(翔泳社、2019)

2022-01-31 07:30:44 | 

筆者は、米国のセールス・フォース・ドットコム社で採用されていた、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスという形での営業の分業体制を「The Model」と呼び日本に輸入した当事者だ。本書は、その各営業プロセスの解説を初め、具体的導入の仕方やマネジメント上の注意点、組織・人事・育成面での考慮ポイントなどが説明される。

先日、紹介した『営業力強化の教科書』と対になると言って良い本である。『強化書』はタイトルどおり、教科書として営業プロセスの考え方やそのフレームワークが解説されたが、本書はそれを実際に米国で経験し、日本で展開した筆者の体験談に基づいている。なので、単なるフレームワーク解説に止まらない、筆者ならではの経験に基づいたノウハウが語られる。2冊を合わせて読むことで、「ザ・モデル」の考え方は理解が一層深みを増すこと間違いない。

パプライン情報のチェックポイント、フォーキャストミーティングで確認すべきこと、筆者が営業のマネジメントとして365日欠かさない習慣など、その日から活用できるようなアドバイスが散りばめられており、読んでいて感激しっぱなしだった。むしろ、自分の営業マネジメントの甘さぶりに気づかされ、恥ずかしいくらいである。

ライバル企業の関係者には読んでほしくない一冊である。


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勝間和代『健康もマネーも人生100年シフト! 勝間式ロジカル不老長寿』(宝島社、2021)

2022-01-27 06:35:50 | 

老化を身体的衰えのリスク、金銭的収入減のリスク、社会的つながり減のリスクの3つの観点から、いかに老化リスクをマネジメントして幸せな人生を築くかについて解説した1冊。

著者自身があとがきで述べているように、老化の専門家はない立場で、世の理論や自らの意見から老化リスクについて一般の言葉でわかりやすく書かれた本となっている。いろんな種本をもとにしたものではあるが、人生100年時代を迎え、長生き自体がリスクとなりうる時代にどういう生活を心がけたらよいのかが平易に書いてあって、誰もが気軽に読める作りだ。

大胆にまとめると、「良く寝て、食べる量をコントロールすることで健康を維持し、働けるまで働くことで、金銭的リスクにも対応しつつ社会的つながりを持ちつづける」につきるようだ。なーんだ、あたり前じゃないかというオチなのだが、勝間和代ブランドがついていると、類書に同じことが書いてあっても売れ方は全然違うのだろう。

個人的にもシニア生活が視野に入りつつあるので、私自身3つのリスクへの対応をまじめに考えないといけない。あれもこれもはできないので、まずは良く寝ることから始めるのかな。

雑誌感覚で、通勤電車や出張帰りに読むのに最適です。


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(株)セールスフォース・ドットコム/(株)パーソル総合研究所『訪問しない時代の営業力強化の教科書 営業×マーケティング統合戦略』 翔泳社、2021

2022-01-26 07:30:09 | 

お仕事本のご紹介となりますが、営業戦略や営業管理に携わっている方にはお勧めの1冊です。

「マーケティングによる認知」→「インサイドセールスによるナーチャリング」→「フィールドセールスによる刈り取り」→「カスタマーサクセス」といった一連の営業の流れを網羅的かつポイント的確にまとめてくれている。人材育成や営業支援システムも射程に入っており、営業マネジメントのフレームワークとしてはこの1冊でほとんどカバーできるのではないかと思う。フロント営業マンのノウハウというよりは、営業管理者・企画者向けに考えるための軸を与えてくれる本だ。

見開きで左頁が文章による解説、右頁が図解となっているつくりも良い(図解の図がちょっと詰め込みすぎで文字が小さすぎて読めないところがあるが・・・)。見直すときは、文章を読まずとも左の図解を追っていくことで、すぐに読むべき箇所に行きつく。

お買い得です。


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王道プログラムの王道演奏:N響定期1月Cプロ/指揮 アクセルロッド/ブラームス 交響曲第3番ほか

2022-01-23 07:30:36 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

オミクロン株によるコロナ感染者の爆発的増加で前日から蔓延防止策が発効している1月Cプロ2日目でしたが、チケットの予定枚数は完売で、お客さんも8割ぐらいは埋まっていました。ブルッフのヴァイオリン協奏第1番、ブラームスの交響曲第3番という馴染みある名曲で揃えたプログラムは、正月明けの数週間、業務多忙で心身ともに疲れていた私には、安心できるとっても嬉しいものでした。

1曲目のソロは服部百音さん。初めて聴く方です。薄いベージュのドレスの服部さんは、小柄ですが、演奏が始まると、堂々としていて大きく見えます。演奏はとっても丁寧で、かつ過度の装飾が無いストレートなところが私には好感度高いです。しかも、ヴァイオリンの音は濁りなく美しい。聞き惚れてしまいます。ロマンティックなブルッフの曲を堪能しました。

終演後は会場から万雷の拍手。娘というか、孫を見るようにマロさんが目を細めて、賞賛を送っているのも微笑ましい。アンコールはイザヤから。これも目茶、難しそうな曲ですが、難なく(のように見える)捌き、固唾をのんで耳をそばだてていた聴衆から、大きな感嘆の拍手が送られました。

休憩なしの後半のブラームスの3番。ソヒエフさんの代役で入って頂いたアクセルロッドさんのおおらかでスケール大きな音楽作りとクラリネット、ホルンと言った管楽器の主席陣の活躍がとりわけ素晴らしい印象です。弦も良く鳴っていました。第4楽章の盛り上がりは、先週・今週の個人的なストレスと疲れを吹き飛ばしてくれる豪快なもので、気分良かった。

私のコンディションにぴったりだったこの日のプログラムと名演。大袈裟ですが、音楽って、本当に日々の糧であり、うるおいですね。アクセルロッドさん、N響の皆様、ありがとうございました。

 

第1949回 定期公演 池袋Cプログラム
2022年1月22日(土)開演 2:00pm(休憩なし)
東京芸術劇場 コンサートホール

指揮:ジョン・アクセルロッド
ヴァイオリン:服部百音

ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26
ブラームス/交響曲 第3番 ヘ長調 作品90

No. 1949 Subscription (Ikebukuro Program C)
Saturday, January 22, 2022 2:00p.m.
Tokyo Metropolitan Theatre 

John Axelrod, conductor*
Moné Hattori, violin*

Bruch / Violin Concerto No. 1 G Minor Op. 26
Brahms / Symphony No. 3 F Major Op. 90


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新春大爆演会: N響 1⽉A定期、指揮 原田慶太揮/ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」(1910年版)ほか

2022-01-22 07:43:48 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

2022年の演奏会初め。この日は昨年のショッパン国際ピアノコンクールで優勝した反田恭平氏が出演するとあってか、満員札止め。熱気籠る芸劇でした。

ショパンの2曲の管弦楽曲に続いて登場した反田さん。私は生で初めてです。余裕を感じるほど舞台慣れした感じでした。曲は、初めて聴くパデレフスキ/ポーランド幻想曲。オペラの序曲のように始まったこの曲、民族調で初めての人にも聴きやすい曲です。反田さんは、この曲への強い思いがあるのか、情熱的かつダイナミックな演奏でした。私の舞台右サイドの席からですと、半田氏が指揮者やオケと息を合わせながら弾いているのも良く分かります。終演後は凄い拍手。指揮の原田さんもステージに残って、聴衆に拍手喝さいを促し、反田氏の名演奏を讃えていました。

後半はストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」。「こりゃ~ちょっと密すぎるのではないかい?」と思うほど、舞台狭しと並んだ奏者から劇的な火の鳥が演奏されました。私の座席だと、物凄い音圧で思わずのけぞるほど。管楽器の美音にもうっとり。ストラヴィンスキーの土の匂いが香るような音楽がとっても好みです。こちらも大拍手でした。

コロナ禍のこの2年、いろんな日本のオケに引っ張りだこで、すっかりメジャーになった指揮の原田慶太楼さん。今回のN響定期でもすっかり慣れた感じで、堂々として、若手のリーディング指揮者に相応しいオーラを感じます。今後も定期的に出演してもらいたいですね。

 

第1948回 定期公演 池袋Aプログラム
2022年1月16日(日)開場 1:00pm 開演 2:00pm
東京芸術劇場 コンサートホール

指揮:原田慶太楼
ピアノ:反田恭平*

ショパン(グラズノフ編)/軍隊ポロネーズ イ長調 作品40-1(管弦楽版)
ショパン(ストラヴィンスキー編)/夜想曲 変イ長調 作品32-2(管弦楽版)
パデレフスキ/ポーランド幻想曲 作品19*
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」(1910年版)

 

No. 1948 Subscription (Ikebukuro Program A)
Sunday, January 16, 2022 2:00p.m. (Doors open at 1:00p.m.)
Tokyo Metropolitan Theatre

Keitaro Harada, conductor
Kyohei Sorita, piano*

Chopin / Glazunov / Polonaise A Major Op. 40-1 "Polonaise militaire" (Orchestral Version)
Chopin / Stravinsky / Nocturne A-flat Major Op. 32-2 (Orchestral Version)
Paderewski / Fantaisie polonaise sur des thèmes originaux G Minor Op. 19*
Stravinsky / "L’oiseau de feu," ballet (1910 Edition)


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クイズ本感覚で楽しもう~: いとはる『世界一わかりやすい美術鑑賞ドリル』サンマーク出版、2021

2022-01-16 07:33:34 | 



(年末年始の読書シリーズから)
 美術史上の傑作の絵画を見て53のクイズに答えること通じて、絵の見方を学ぶ一冊。人物、色・光、筆致、物語、モチーフ、画家といった切り口で絵を見る技法のさわりがわかる。
 絵を見るのは好きだが、まったくの無手勝流で鑑賞している私には、気軽に楽しみながら学べる1冊だった。
 筆者は必ずしも絵の専門家というわけではないようだが、Youtubeで絵画鑑賞に関する情報を発信しているとのことだ。世の中、インターネットを通じ誰でも情報発信ができる環境が整い、深い専門性よりもシンプルなメッセージを見せ方・説明の仕方の工夫で如何に分かりやすく伝えることができるかが、カギとなっていることが良くわかる。

クイズ本を楽しむノリで手に取って見て欲しい。

 

【目次より】

第1部 見る目を育てる感情的鑑賞ドリル
第1章 この絵の主役はどこにいる?
第2章 色や光に注目してみよう
第3章 筆致から動きを感じてみよう
第4章 「この後どうなった?」を想像しよう

第2部 深く絵を知る論理的鑑賞ドリル
第1章 描かれている人物について想像しよう
第2章 “そこ"はどこなんだろう?
第3章 モチーフから読み解こう
第4章 画家の人生を想像してみよう

 


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冬の鎌倉 ひとり見仏記(番外編): 昼とは別の鎌倉

2022-01-12 07:30:06 | 旅行 日本

これまで日帰りで鎌倉を訪れたことは幾度とありますが、泊りとしたのは初めてでした。泊ならでは名の楽しみがあったので、いくつか紹介します。

暗闇の鶴岡八幡宮。人で一杯の日中とは全く別の顔を見せてくれます。人気のない神社は怖いですね。境内の奥には行けないようになっていたのは残念ですが、それでも静寂の境内、空気が更に研ぎ澄まされている感じです。

鎌倉の居酒屋。夜は、鎌倉在住の友人に勧められた企久太なる鎌倉駅近くの居酒屋へ。平均年齢高め、男性比率8割ですが、静かで、落ち着いて、暖かい独特の雰囲気が漂う硬派の居酒屋です。お酒はビールと日本酒、焼酎ぐらい。ハイボールとかがメニューに無いのもこだわりを感じます。一人なので多くは頼めませんから、飲んだことのない日本酒を合わせて二合頂きました。料理はどれも一捻りある一品で、どれも美味しい。お値段は(私には)少々お高いですが、これだけの満足度であれば、気持ちよく払えました。



そして、最後は恒例の朝の旅先ジョギング。今回は由比ガ浜に出て、相模湾沿いを江ノ島に向かって七里ヶ浜まで往復約10キロを走りました。丁度、日の出の時間帯で、場所的に水平線から上る日の出ではありませんでしたが、夜明け前から周囲の光が徐々に差し込み。浜辺の風景が変化していくのを見ながらのジョギングは格別です。

日中帯とは、全く別の表情となる夜・朝の鎌倉。日帰り圏内のかたも是非、一度、お試しください。

(おわり)


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冬の鎌倉 ひとり見仏記(その3): 極楽寺・成就院・長谷寺

2022-01-10 07:30:52 | 旅行 日本

【極楽寺】
見仏ツアー2日目。まずは江ノ電に乗って長谷方面へ向かい、極楽寺へ。「開山は忍性、開基は二代執権北条義時の三男重時で、1259年(正元1)に建立された」(HP)お寺です。本堂に不動明王坐像、薬師如来坐像、文殊菩薩坐像などが安置されているそうですが、一般公開されるのは4月7日~9日のみとのことです。

仏さまは拝めなくとも雰囲気だけでも味わえればと思い、拝観時間開始に合わせて訪れましたが、年末のため閉鎖中の掲示。う~ん、朝から残念。

【成就院】
気を取り直して、近くの成就院へ。鎌倉幕府三代執権北条泰時が1219年に建立したお寺です。敷地はとってもこじんまりしたアットホームな雰囲気。本堂の脇で寺のあらましを紹介した短いビデオを見ることができます。

正面の本堂には本尊の不動明王が安置されていますが、中には入れず遠目で存在のみ確認しました。ただ、境内にはご本尊の分身の不動明王が祀られています。視聴したビデオによると、願い事を書いた護摩木を不動明王護摩壇でご祈願する行事もあるようですい。更に、縁結び不動明王パワースポットとしても活躍中とのことで、写真を撮って待ち受け画面にしましょうとのアドバイスも。お寺のマーケティングもなかなか工夫しているんだなあと、妙に感心しました。

売りの一つは、寺の参道の頂上からの風景でしょう。由比ガ浜が見渡せます。私は極楽寺方面からきたので降りるだけでしたが、長谷方面からだと108段の石段を上って見下ろす形になります。目前に広がる眺望は、おおー鎌倉です。

【長谷寺】
そして、この日の目玉、長谷寺へ。ここは、さしずめ仏さまのアミューズメントパークと呼んでも過言でないお寺ですね。

まずは、本尊の十一面観音菩薩像へ。奈良の長谷寺の菩薩さまとどっちが大きいのかはわかりませんが、9.18メートルの菩薩さまはまさに仰ぎ見る感じです。その威容と高貴な表情に触れると自分の中の中まで見透かされているような感覚になります。


〈写真撮影不可なのでポスターで〉

そして、隣接する観音ミュージアムがまた圧巻。とりわけ前立観音とその周囲を囲む菩薩さまが変化したという33の像は見どころあります。しかもこのミュージアムは写真撮影可。うれしいです。

ミュージアムを出ると、お経を保管する経堂、そして相模湾を一望する見晴らし台へ。見どころ密度が半端ないです。目を凝らして、仏像を見た後の、海を臨む展望という展開が素晴らしすぎて・・・。


〈経堂〉


〈見晴らし台から〉

そして、戻り道にも、頼朝が自身の厄除けのために建立したと伝えられる阿弥陀如来坐像や信者の寄進によるという地蔵堂に寄り道。


〈阿弥陀如来坐像〉

更に、境内の入口まで降りた奥には、弁天窟という弁財天とその眷属である十六童子が壁に彫られている洞窟があります。暗い洞窟の中を壁に掘られた仏像を見ながら、お化け屋敷を行く子供のようなワクワク感で恐る恐る進みます。


〈実際はもっと暗いです〉

お寺の意図は全く分かりませんが、この長谷寺、普通のお寺にはないホスピタリティというか、エンターテイメント性には感服する限りです。約1時間、通常の見仏とは全く違うお寺体験を得て、今回の鎌倉見仏は締めとなりました。

(本編おわり、番外編につづく)


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冬の鎌倉 ひとり見仏記(その2): 瑞泉寺・杉本寺・浄妙寺・報国寺

2022-01-07 07:30:13 | 旅行 日本

覚園寺でかなりお腹一杯でしたが、欲張って見仏ツアーを続けます。

【瑞泉寺】
次は20分強ほど歩いて瑞泉寺へ。夢窓国師が開山し、関東十刹の第一位のお寺です。拝観料を払い本堂に向かう木々に囲まれた静寂な参道は、歩くだけで気持ちが落ち着きます。


〈本堂〉

ここでの見仏ターゲットは、本堂に祀られている本尊の釈迦牟尼仏や水戸黄門が寄進したという千手観音。しかしながら、本堂の中には入れず、外から遠目に眺めるだけでした。


〈窓の隙間から〉

瑞泉寺の見どころは仏像よりも国の名勝指定されている岩と崖でできている庭園(伝・夢窓国師作)のようです。確かに自然をそのまま活用した庭は珍しく、新鮮です。しばし眺めておりました。


〈わたしのスマフォでは全景を捉えられず〉

【杉本寺】
鎌倉の良いところは、徒歩圏内にいくつも名刹があることですね。続いて金沢街道沿いにある寺々を訪問。まずは運慶の作と伝わる仁王立像があるという杉本寺へ。観音堂には行基、慈円、源信が刻んだ十一面観音像もあるとか。期待に胸を膨らませて歩きましたが、残念ながら、年末のため閉門中(涙)。


〈竹の棒が入るべからずと言ってます〉

【浄妙寺】
へこたれず、杉本寺から5分程度のとこにある、鎌倉五山第五位の浄妙寺へ。枯山水の庭が見どころのようですが、釈迦如来座像も安置されているとのことです。が、ここも年末のため閉鎖中で涙。


〈受付は閉鎖されていて、閉鎖中とは書いてあったのですが、なぜか境内には立ち入り可能でした〉

【報国寺】
陽もかなり傾いた夕暮れ時となり、この日最後の訪問先は報国寺。竹林が有名で、ここだけはそこそこの観光客、それも若い人たちが訪れていました。本堂には南北朝時代に作られた釈迦如来坐像や観世音菩薩が安置されているそうです。こちらも本堂内は見学不可。竹林を散歩して、隣接した庭を鑑賞し、後にしました。

これで鎌倉見仏の初日はおしまい。手元のスマートフォンによると総歩行距離は19.7km。結構、歩きました。この日のNo1は圧倒的に覚園寺の薬師堂内の仏たちでしたね。またこのエリアの落ち着いた雰囲気は旅情も掻き立ててくれます。実り多く充実感たっぷりの半日鎌倉歩きでした。

(つづく)


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冬の鎌倉 ひとり見仏記(その1): 宝戒寺・鎌倉宮・覚園寺

2022-01-05 07:30:47 | 旅行 日本

年末、鎌倉へ一人旅。仏像巡りが目的です。北鎌倉エリアの円覚寺、建長寺や鎌倉の大仏は何度か訪れていますので、今回は未踏の鶴岡八幡宮の東側エリア金沢街道方面へ。

【宝戒寺】
鶴岡八幡宮の境内にある鎌倉国宝館には多数の仏像が展示されていると聞き楽しみにしていたのですが、展示入れ替えのため12月上旬から閉館中。いきなり出鼻をくじかれたのですが、気を取り直し、鶴岡八幡宮と隣接している宝戒寺へ。天台宗のお寺で、「1333年の北条氏滅亡後その霊を弔うため、後醍醐天皇の命をうけた足利尊氏公によって、当時小町邸と呼ばれ北条氏歴代執権屋敷跡であるこの地に建立されました」(HPから)とのことです。

鶴岡八幡宮の賑やかさとは打って変わった落ち着いた佇まいの寺は、敷地に居るだけで心身が浄化される感覚です。本堂に上がると、重要文化財の子育経読地蔵大菩薩、両脇には県の重要文化財の帝釈天と梵天が立ちます。畳の上に座して、仰ぎ見る仏さまたちの穏やかなこと。博物館でなく、居るべきところに居る仏さまにお参りできるのは、こうした見仏旅の醍醐味です。


<凍ってます>

【鎌倉宮】
宝戒寺から15分弱ほど歩いて、神社なので仏像はありませんが、寄り道で鎌倉宮に立ち寄り。後醍醐天皇の皇子、大塔宮護良親王を祀る神社です。若き日の私には、「太平記」で尊氏と戦い、敗れるヒーローのイメージがあったので、通り過ぎるわけにはいきません。神社は、寺とは違った清々しさがあります。抜けるような青空の下、人気の少ない境内を独り占めし、いつまでも居たくなります。

 

【覚園寺】
そして、鎌倉宮から徒歩10分ほどで、この日の主要目的であった覚園寺へ。「仏像彫刻の多彩さは鎌倉でも有数」(『てくてく歩き 鎌倉』)とのことで、寺のお坊さんが1時間ごとに境内を案内頂けるツアーがあるとのことでした。・・・が、コロナ禍でお坊さんのご案内ツアーは休止中、また年末のため見学できるのは本堂薬師堂のみとの制限付きの拝観となりました。


〈この先は撮影禁止。写真奥にうっすら薬師堂の屋根が写ってます〉

拝観料を払って(この後は写真撮影一切禁止)境内の奥に進むと、冷たく清らかな空気が身を包み、私の足音ぐらいしかしない静寂な空間は、俗世間とは別世界です。そして、敷地奥にある茅葺屋根の薬師堂に足を踏み入れると、更なる感動が。中央に薬師三尊座像(重要文化財)がそびえる様に立ち、その威光に思わず膝まづきそうになるほどです。

お堂の天井には竜の絵が描いてあります。色あせているところもあり、輪郭は不明確ですが、かえって歴史を感じさせます。三尊座像は入口上からライトが当てられていて良くみえるのですが、昔この像を拝んだ人たちは壁の小さな窓からの漏れ陽だけが光だったでしょうから、ずっと暗い中でお参りをしていたに違いありません。

更に、正面向いて左右の壁沿いには十二神将が三尊を守るように並び立っています。奈良の新薬師寺を思い起こさせる十二神将たちの迫力は、包み込むような薬師三尊像の暖かな雰囲気とは真逆の厳しい空気を放っています。堂内に1脚だけ長椅子が置いてあったので、そちらに腰かけ、ぼんやり仏さまたちを眺めていると、時間の経つを忘れます。30分ほど仏さまを独り占めして、一人満喫しました。

(つづく)


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