その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

今野一光 『家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』 太田出版、2013

2016-04-30 08:00:00 | 



 2012年10月に兵庫県尼崎市で発覚した連続殺人死体遺棄事件についてのルポルタージュ。事件はまだ記憶に新しい方も多いと思う。主犯の角田美代子が、兵庫県尼崎市で血縁関係にない人物たちと築いた(または乗っ取った)疑似家族との共同生活の中で、暴力、虐待、脅迫等により、8名の人間が死亡し、いまだ3名が行方不明のまま(Wikiより)という、おそらく戦後日本でも例を見ない怪奇事件である。主犯に加え、その親族など11名が起訴されたという点においても、異常な事件だ。本書は複雑かつ異常なこの事件を丁寧に取材を重ね、事件の真相をつまびらかにしている。

 「事実は小説よりも奇なり」とは言うが、読めば読むほどこんなことが起こるとは信じがたい。ちょっとした弱み、出来事につけこみ、普通の家族を崩壊させ、乗っ取り、葬る。読んでいて、こうした悪人達の悪行に気分が悪くなり、吐き気を催す。人ってここまで悪くなれるのだろうか?

 逆に一般市民がこうした悪人に付け込まれないためにはどうすればいいのか?警察があてにならないことは、この事件に止まらないようだ。少しでもこうした手口を知って、早め早めに周囲に助けを求めるしかないのだろう。本書を読んでいて、被害者たちを、何とか救い出そうとした人が周囲に少しでもいたことは、最悪の事態を防げなかったケースもあるにしても、数少ない救いである。

 普通の人は「悪」について知っておいた方が良い。本書はそのための必読書だと思う。

【目次】
プロローグ
第一章 角田美代子と裏稼業
第二章 グリコ森永事件との奇妙なつながり
第三章 親の愛に飢えた少女
第四章 非公然売春地帯への紹介者
第五章 最初の家族乗っ取り
第六章 警察の怠慢
第七章 美代子の暴力装置
第八章 被害者と加害者の父
第九章 谷本家の悲劇
第十章 自由への逃走、追跡後の悲劇
第十一章 崩れる大人たち
第十二章 さまようファミリー
エピローグ



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映画 「スポットライト 世紀のスクープ」 (監督トム・マッカーシー、2015)

2016-04-28 20:00:00 | 映画


 ボストングローブ紙の記者たちが、地元ボストンのカトリック教会の神父たちによる児童への性的虐待について、粘り強い調査をもとにスクープ。これまで隠し続けられた教会組織の犯罪を暴く実話に基づいた物語。今年の第88回アカデミー賞の作品賞と脚本賞を受賞しているだけのことはある、良質の映画。

 ずいぶん昔に観た、ワシントンポストの記者がニクソン大統領の盗聴事件(ウォーターゲート事件)を暴く映画「大統領の陰謀」を思い出した。最近は政府の広報官と化しているNHXをはじめとして、日本ではジャーナリズムの基盤がぐらついているが、ジャーナリズムの役割、意義について考えさせられる。

 また、編集長、チーフ等、それぞれの立場におけるリーダーシップも興味深い。強くて、しなやかなリーダーからは強いチームが生まれるのだ。

  記者役の俳優さんたちの熱演で、ぐーっとスクリーンに引き込まれる。女性記者役で出ている女優は、どこかで見たことあるなあと思っていたのだが、後で確認したら「アバウト・タイム」でヒロインを演じていたレイチェル・マクアダムだった。個人的に好み。

 テーマは硬派だが、映画自体はシリアスながらもさほど重いつくりにはなっていない。テンポよく作られており、2時間10分を感じずに楽しめる。

 蛇足だが、ボストンって東海岸のまさに保守的でWASPの町という勝手なイメージを持っていたのだけど、カトリック系住民が多いとは知らなかった。



スタッフ
監督トム・マッカーシー
製作マイケル・シュガースティーブ・ゴリンニコール・ロックリンブライ・パゴン・ファウスト

キャスト
マーク・ラファロ: マイク・レゼンデス
マイケル・キートン: ウォルター・“ロビー”・ロビンソン
レイチェル・マクアダム: スサーシャ・ファイファー
リーブ・シュレイバー: マーティ・バロン
ジョン・スラッテリー: ベン・ブラッドリー・Jr.

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オペラ「アンドレア・シェニエ」/ウンベルト・ジョルダーノ @新国立劇場オペラパレス

2016-04-25 21:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

《新国立劇場HPから拝借》

 初めて観るオペラです。ウンベルト・ジョルダーノの音楽も初めて。フランス革命期に断頭台に消えた詩人アンドレア・シェニエと貴族のお嬢様マッダレーナとの愛の物語。

 聴きやすいアリアや二重唱が充実しているこのオペラ、題名役のカルロ・ヴェントレ、恋人役のマリア・ホセ・シーリ、恋敵ジェラールのヴィットリオ・ヴィテッリのメインどころの3名がいずれも安定かつ高い声量を持ったハイレベルな歌唱で、舞台を盛り上げました。私的には、特にマリア・ホセ・シーリの美声とヴィットリオ・ヴィテッリの歌と演技の表現力が印象に残ったかな。

 ヤデル・ビニャミーニ指揮の東フィルは、美しくドラマティックに音楽を鳴らしてくれました。

 演出は賛否両論あるようですが、私にはすべてとは言いませんが好みです。舞台セットも洒落ているし、回転舞台を活用して場の状況がしっかりわかります。ただ、幕の前とかに入る映像は効果的とは思えません。特に2幕にギロチンの模型図が細胞分裂のように増えていく映像はしつこい。

 全体的には決して悪くない、むしろ出来の良い公演だったと思うのですが、不幸だったのはこれが2週間前の衝撃的な「ジークフリート」の後の上演だったこと。まだあの時の音や緊張感が耳に残っていて、比較できないまったく違うオペラであるにかかわらず、どうしても見劣りするのは否めません。なんかもったいないというか、申し訳ない感じ。


2015/2016シーズン
オペラ「アンドレア・シェニエ」/ウンベルト・ジョルダーノ
Andrea Chénier/Umberto Giordano
全4幕〈イタリア語上演/字幕付〉
オペラパレス


スタッフ

【指揮】ヤデル・ビニャミーニ
【演出・美術・照明】フィリップ・アルロー
【衣裳】アンドレア・ウーマン
【照明】立田雄士
【振付】上田 遙
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】斉藤美穂

キャスト


【アンドレア・シェニエ】カルロ・ヴェントレ
【マッダレーナ】マリア・ホセ・シーリ
【ジェラール】ヴィットリオ・ヴィテッリ
【ルーシェ】上江隼人
【密偵】松浦 健
【コワニー伯爵夫人】森山京子
【ベルシ】清水華澄
【マデロン】竹本節子
【マテュー】大久保 眞
【フレヴィル】駒田敏章
【修道院長】加茂下 稔
【フーキエ・タンヴィル】須藤慎吾
【デュマ】大森いちえい
【家令/シュミット】大久保光哉

--------------------------------------------------------------------------------

【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【芸術監督】飯守泰次郎


Andrea Chénier

2015/2016 Season

Music by Umberto GIORDANO
Opera in 4 acts
Sung in Italian with Japanese supertitles
Opera Palace

Staff
Conductor Jader BIGNAMINI
Production  Philippe ARLAUD
Scenery and Lighting Design  Philippe ARLAUD
Costume Design Andrea UHMANN
Lightining Design TASTUTA Yuji
Choreographer UEDA Haruka
Revival Director SAWADA Yasuko
Stage Manager SAITO Miho

Cast
Andrea Chénier Carlo VENTRE
Maddalena di Coigny Maria José SIRI
Carlo Gérard Vittorio VITELLI
Roucher KAMIE Hayato
Un Incredibile MATSUURA Ken
La Contessa di Coigny MORIYAMA Kyoko
Bersi SHIMIZU Kasumi
Madelon TAKEMOTO Setsuko
Mathieu OKUBO Makoto
Fléville KOMADA Toshiaki
L'Abate KAMOSHITA Minoru
Fouquier Tinville SUDO Shingo
Dumas OMORI Ichiei
Il Maestro di Casa/Schmidt OKUBO Mitsuya

Chorus Master MISAWA Hirofumi
Chorus New National Theatre Chorus
Orchestra Tokyo Philharmonic Orchestra
Artistic Director IIMORI Taijiro

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N響 4月定期Cプロ/ 指揮:レナード・スラットキン/ ブラームス交響曲 第1番ほか

2016-04-23 20:45:05 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 冒頭、熊本・大分の震災被害者の方々を追悼し、黙とうが捧げられ、続けてバッハのアリアが演奏された(事前に「拍手はお控えください」とのアナウンスがあった)。聴衆のための演奏でないけど、美しい演奏と被害に遭われた方のことを思い、自然と胸が熱くなった。

 仕切り直して、スラットキンが改めて登壇し、コンサートがスタート。前半は武満 徹の「系図(ファミリー・トゥリー)」が特に秀演。武満の曲としては耳に馴染みやすく、山口まゆの語りもマッチ。家族を歌った曲だけども、昔懐かしい日本の原風景が瞼に浮かぶ演奏だった。(山口まゆという女優さんは殆ど知らなかったが、オペラグラスを忘れてよく見えなかったのが悔やまれる)

 後半のブラームスはストロングスタイルの演奏。スラットキンは、所々にアクセントは入れるものの、奇をてらったようなところの無い横綱相撲(もっとも最近の本当の「横綱」は奇をてらうけど・・・)。N響にとっても、この曲はきっと十八番なのだろう。曲の細部に至るまで、自信に満ちた骨太の音が聞こえてきた。重層的な弦、美しいホルン、切れのあるティンパニーがとりわけ印象的。第4楽章のフィナーレでは、ちょっと乗りすぎとも思えるほど、オケを煽り、盛り上げ、大団円で締めた。8割5分ほどの入りだったNHKホールだけど、満員並みの大拍手とブラボーに包まれた。



第1833回 定期公演 Cプログラム
2016年4月23日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

ベルリオーズ/歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
武満 徹/系図(ファミリー・トゥリー)― 若い人たちのための音楽詩(1992)*
ブラームス/交響曲 第1番 ハ短調 作品68

指揮:レナード・スラットキン
語り*:山口まゆ(女優)



No.1833 Subscription (Program C)


Saturday, April 23, 2016 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Berlioz / “Béatrice et Bénédict”, opera - Overture
Toru Takemitsu / Family Tree - Musical verses for young people (1992)*
Brahms / Symphony No.1 c minor op.68

Leonard Slatkin, conductor
Mayu Yamaguchi, narrator*

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長野マラソン後の長野2時間観光

2016-04-22 00:00:30 | 旅行 日本
 長野マラソンを走り切った後、着替えを済ませ、長野駅へ戻ります。事前にネットで得ていた情報は、ゴールの南長野の競技場から長野駅までは、シャトルバスに乗るのも、乗ってからもとても混み合うので、それぞれ1時間近く見ておくべきというものでした。でも、意外とスムーズで午後2時には長野駅に戻ってこれました。4時過ぎの新幹線を予約済みなので、2時間しかないけど、長野を楽しもうっと。

 まずは、空腹を満たすためにおひるごはん。信州に来たら、やっぱり蕎麦でしょうということで、駅ビル3階にある蕎麦屋さんへ。お手頃価格でボリュームいっぱいの蕎麦で、空っぽになった胃袋を満たしました。


《店頭でそば打ち》


《野菜天ぷらそば》

 そして、長野と言えば善光寺。路線バスに乗って、出かけます。善光寺を訪れるのは、20年以上ぶり。記憶も薄れかけてましたが、想像以上に立派な門構えや本堂にさすが国宝ととっても感心。境内をぶらついた後は、内陣参拝券を購入し、内陣を参拝。名物のお戒壇巡りもやりました。お戒壇巡りとは、「瑠璃壇床下の真っ暗な回廊を巡り、中程に懸かる「極楽の錠前」に触れることで、錠前の真上におられる秘仏の御本尊様と結縁を果たし、往生の際にお迎えに来ていただけるという約束をいただく道場」(HPより)。中に入るとほんとの真っ暗闇。壁に手をあて、文字通り手探りでそろりそろりと前に進みます。こんな光が全く入らない空間に身を置いたのは記憶にありません。しかも、たまたま前後にまったく他の訪問者がおらず、前の人の音を頼りに前に進むこともできず、一人で無事脱出できるのかどうかかなり緊張しました。


《宿坊。一度泊まってみたい》


《参道です。昔よりも随分洗練された感じがします》


《山門。上まで上れるようです(有料)》


《壮大な本堂。国宝です》

 山門の上にも上れるようになっていましたが、残念ながら時間の関係で断念。ぶらぶら参道を歩きながら、長野駅に向かいました。2時間弱の長野ぶら歩きでしたが、マラソンの疲れも忘れさせてくれる、満足のいくものでした。また、時間をかけてゆっくり廻りたいと思います。

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素晴らしい大会 第18回長野マラソン完走記

2016-04-18 21:09:09 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 ちょっと長いですが、おつきあいください。

【スタートまで】
 いろいろ良い噂を聞いて一度走りたいと思っていた長野マラソン。念願かなって、今回初出場。前日は、長野から離れた上田に宿を取り、当日朝5:45発の臨時ローカル列車でスタート地点最寄の北長野駅へ。そこから歩くこと20分程度で到着です。


《スタート会場の様子》

 この日は、天気予報通り、朝から強風。それもグォー、グォーと響く音が聞こえるほど。「こりゃあ難儀しそうだなあ~」とちょっとくじけ気味。風に加えて雨の予報でしたが、スタート前は曇り空から時折、部分的に青空が顔を出すこともあり、「せめて雨だけは避けてほしい」と祈ります。

 大規模なマラソン大会としては、スタート前準備は極めてスムーズでした。体育館を着替えに提供して頂き、トイレもさほど混み合うこともなく、イライラ無くスタートエリアに並べました。昨年11月末に臀部の内筋を痛めたのがまだ完全でなく、フルでタイムを狙うには練習量は十分とは言えないので、今回はまずは完走が目標です。


《スタートエリア》

 ゲストの高橋尚子さんの掛け声でストレッチをした後、アナウンスで、「感謝と敬意を込めて18回連続出場のかたはゴールドゼッケン、10回以上はシルバーゼッケンを提供させて頂いています」との紹介がありました。なんか、良いですね。こういう賞賛。

【スタート~ハーフ地点】
 8:30スタート。強風による危険回避で、スタートゲートは設営されずじまい。確かに走り出した瞬間に全身で風を受けます。痛めた臀部がまだ完全でなくスピードがでないこと、さいたま国際で前半オーバーペースだった反省から、今回はキロ5分30~40秒で走り続けるのがペースイメージ。最初の5キロは27分(キロ5分36秒)で入り、まずまずです。5キロ過ぎで善光寺の参道へ。道の両端から発せられる凄い声援を体で受け止めます。風より強い声援のおかげで、風も感じなくなるほど。


《善光寺の参道を下ります》

 12.5キロを過ぎて犀川の土手に出ます。ぐっと視界が開けて、気分爽快。ただこの土手コースは意外と早く終わって、15キロ地点を経過(5キロラップは27分25秒)し、エムウエーブを目指して走ります。ムウエーブは長野オリンピックでのスピードスケート会場です。ここを周回したのですが、周回路の両端から沢山の声援を頂き励まされました。失礼を承知で言うと、「長野ってこんなに人がいるんだ」と思ってぐらい。


《信州の山々を望みながら》



 エムウエーブを経過して20キロ地点を過ぎると自動車専用有料道路の五輪大橋を渡ります。これが、結構きつい上りが続いて、苦しかった。自動車専用道路を走るのって、ホント嫌い。渡りきったところで中間点。1時間58分台でまずまず。ただ、この辺りから雨がポツポツ降りはじめました。いやーな予感。


【ハーフ~ゴール】
雨がだんだん強くなってきて、25キロ地点前後ではほとんど暴風雨に。気温が高いので、体が冷えることはないのが救いでした。5キロラップが少しずつ落ちてきたのが気になりますが、自分自身としては結構、動けている感覚。これはこのまま最後までこのペースで走り続けられるのでは少し欲が出始めます。30キロ経過で2時間49分台(5キロラップが29分17秒)。自己ベストのタイムには程遠いですが、残り10キロの逆算が始まります。コースが初めてなので、どのあたりにいるのかの感覚が無いので、東京マラソン、さいたま国際マラソンなど過去走ったレースに置き換えて、「築地あたりだね」とイメージしながら淡々と走ります。


《大塚南の折り返し点。24キロぐらい。》


《子供たちの応援からはホント元気がもらえます》


《雨に泣きそう》

 30キロ過ぎで千曲川の土手道路に入り、解放感が包まれます。何時の間にか雨が上がり、青空が覗いてきます。土手の左右には桃の花が咲き、菜の花が咲き乱れなんとも牧歌的な風景。太陽も出始め、気温が上がっていきます。前方から明るい声が聞こえてくると思ったら、Qちゃん(高橋尚子さん)がハイタッチしてくれています。私も力をもらいました。


《いつの間に雨空が青空に。まるでイギリスの天気のよう》

 岩野橋で千曲川を渡り対岸に出ると、今までアゲインストだった風が今度は背中を押してくれます。これは「風に乗って行けるぞ~」と勢いに乗ったつもりでいたのは、ほんの一瞬。35キロの3時間18分台、5キロラップはなんとか30分未満ぎりぎり(29:17)で経過したものの、その後、足がばったりストップ。良くあるのは30キロ過ぎでの脚攣りや痙攣ですが、それはないのですが、ただ足が動かず、どんどん周りのランナーに抜かれていきます。1キロの表示がどんどん遠くなっていく。

 川を離れると残り2キロ。声援も一杯受けるのですが、いよいよ足が動きません。足が攣っているわけでもないのに、何が悪いのか?2回連続の4時間切りは既に断念ですが、何とか4時間1ケタ分台は確保したいという思いだけで足を動かします。やっと、ゴール会場の南長野のスタジアムへ。入り口ではいつの間にか先回りされたQチャンと最後のハイタッチ。中は驚くほど、立派な野球場でびっくり。人工芝も千葉マリンスタジアム並みのふわふわ。最後は、中盤の暴風雨は何だったのかと思うほどの、晴天の中でゴール。タイムは手持ち時計で4時間8分18秒、記録は平凡ですが、負傷中の中、完走できたのはうれしかった。アルプス山脈をデザインした完走メダルもカッコいい。


《ゴール地点》

【長野マラソン総評】
自分の走りはともかく、この大会素晴らしい大会であることは間違いありません。
1.声援:しつこいですが、長野にこれほど人がいるかと思うほどの声援を頂きました。これが無くて完走はありませんでした。ありがとうございました。
2.コース:善光寺前の参道や犀川・千曲川の土手は桃の花や菜の花が咲き、見事です。走っていて、これほど気持ちの良いコースは数少ないと思います。微妙なアップダウンはありますが、変化があって面白い。
3.運営:着替え、ウォーターステーション、給食(バナナ、饅頭、塩飴)、荷物運搬、トイレなど、運営面が非常にしっかりして、ストレスなく走ることに専念できます。スタッフ、ボランティアの方に大感謝です。

出場枠争奪戦(早い者勝ち)が厳しいこの大会ですが、来年も是非とも出たいと思います。


コメント (2)
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ボッティチェリ展 @東京都美術館

2016-04-14 20:00:00 | 美術展(2012.8~)


 もう会期も過ぎてしまったので、簡単に備忘録を。

 日伊国交樹立150周年記念イベントということもあり、フィレンツェを中心に20点以上ものボッティチェリ作品が集まった充実の展覧会でした。ボッティチェリがこんなに集まるなんて、マーケットとしての美術都市東京ってホント凄い。

 ため息が出るほどボッティチェリ作品が並んでます。冒頭のポスターになっている《聖母子(書体の聖母)》はその神聖さ、神々しさに見とれてしまいました。ボッティチェリ以外にも、師のフィリッポ・リッピや弟子のフィリッピーノ・リッピの作品が多数楽しめるのも本展の素晴らしさでした。

 会期中に何回か足を運びたいと思いつつも、結局一度きりになってしまったのが残念です。

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東京春祭ワーグナー・シリーズvol.7 『ニーベルングの指環』 第2日《ジークフリート》

2016-04-11 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 休日出勤となり危く行けなくなるところでしたが、なんとか強制終了させて上野へGo!暖かくなってきたこともあって、上野界隈はすごい人だかりでした。

 楽しみにしていた甲斐がある鳥肌モノの5時間でした。私自身は「ジークフリート」は全く初めて。なので、比較対象はないのですが、間違いなくワールドクラスのパフォーマンスです。

 まず、歌手陣の素晴らしさに肝を抜かれました。とりわけ、題名役のアンドレアス・シャーガー。ホール内を突き抜けるレーザービームのような鋭く、力強いテノールです。歌声が若々しく、それがジークフリートのイメージにぴったり。5時間(休憩含み)ほぼ出ずっぱりですが、最後の最後まで全く疲れを感じさせず、舞台を大いに盛り上げてくれました。

 1、2幕でジークフリートと対となるミーメ役のゲルハルト・シーゲルも素晴らしかった。柔と剛を併せ持ったテノールのシーゲルの声は、豊かな表現力で、ジークフリートとの掛け合いに彩りと立体感を与えてくれました。昨年の「ワルキューレ」にヴォ―タン役で出てくれたエギルス・シリンスやアルベリヒ役のトマス・コニエチュニー、ファーフナー役のシム・インスンなど他の男性歌手陣も全く文句なしです。

 女性陣も完璧。最終幕で登場したブリュンヒルデ役のエリカ・ズンネガルドは、見た目では年齢不詳ですが、美形で声が若々しい。シャーガーとの掛け合いは、クライマックスにふさわしく緊張感一杯。歌手陣の中では唯一の日本人、清水理恵も美しいソプラノを披露してくれました。

 N響の演奏も盤石です。いつも通りの安定感に加えて、無駄のない、研ぎ澄まされたアンサンブルを聴かせてくれました。個の技も素晴らしいのですが、全体としてのまとまり感が半端なし。今年もライナー・キュッヒル氏がコンサートマスターを務めましたが、この方が居るとオケの音に更に磨きがかかって聴こえます。

 これだけの歌手陣とオケをしっかり束ねて仕上げるのは、名匠ヤノフスキのなせる技なのでしょうね。必要以上にオケを煽ったり、音楽を盛り上げようとすることはなく、音楽は音楽に語らせる。そんなスタンスです。加えての愛想のかけらも無い表情が、日本人好みの職人を感じさせてくれます。カーテンコールでも決して自分は中心に立とうとせず、歌手陣、オケを引き立ててました。

 昨年同様、ステージ後ろのスクリーンにはイメージ映像が投影されました。この映像には批判的な意見もあるようですが、私としては、聴衆のイメージ作りをサポートしてくれるという点において、悪いものではないと思います。

 5時間、あっという間に終わっちゃいました。一年に数度あるかないかの、「クラシック音楽が好きで、俺の人生良いなあ~」とまで思える演奏会でした。ホールの熱狂的な拍手が、それが私だけで無かったことの証だと思います。
 

《雰囲気だけでも・・・》


2016.4.10 [日] 15:00開演(14:00開場)
東京文化会館 大ホール


指揮:マレク・ヤノフスキ
ジークフリート:アンドレアス・シャーガー
ブリュンヒルデ:エリカ・ズンネガルド
さすらい人:エギルス・シリンス
ミーメ:ゲルハルト・シーゲル
アルベリヒ:トマス・コニエチュニー
ファーフナー:シム・インスン
エルダ:ヴィーブケ・レームクール
森の鳥:清水理恵

管弦楽:NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル )
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田尾下 哲

■曲目
ワーグナー:舞台祝祭劇 『ニーベルングの指環』 第2日 《ジークフリート》
(全3幕/ドイツ語上演)[上演時間:約4時間50分(休憩2回含む)]

Spring Festival in Tokyo -Tokyo Opera Nomori 2016-

Tokyo-HARUSAI Wagner Series vol.7
'Der Ring des Nibelungen' Zweiter Tag "Siegfried"
(Concert Style / With projected images and subtitles)

[ Date / Place ]
April 10 [Sun] at 15:00
Tokyo Bunka Kaikan Main Hall

[ Cast ]
Conductor: Marek Janowski
Siegfried: Andreas Schager
Brünnhilde: Erika Sunnegårdh
Der Wanderer: Egils Silins
Mime: Gerhard Siegel
Alberich: Tomasz Konieczny
Fafner: In-sung Sim
Erda: Wiebke Lehmkuhl
Stimme des Waldvogels: Rie Shimizu
Orchestra: NHK Symphony Orchestra, Tokyo
Musical Preparation: Thomas Lausmann
Video: Tetsu Taoshita

[ Program ]
Wagner: 'Der Ring des Nibelungen' Zweiter Tag "Siegfried"

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深い余韻・・・ 映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』 (監督 岩井俊二、2016年)

2016-04-07 22:14:49 | 映画


 先週金曜日(4/1)の夕刊に、マイブームの女優、黒木華さんの紹介記事が掲載されていて、岩井俊二監督の新作に出演していることを知った。岩井×黒木なら見ないわけにはいかないということで、その場で翌日の上映をネット予約。

 監督と主演以外は知識0で突撃したこともあって、イライラ、ドキドキ、ビックリ、シンミリ、ホッと。感情のジェットコースターを味わった3時間だった。この作品、名作と言えるのかどうかはわからないが、深く胸に残り、余韻を楽しめる映画であったことは間違いない。

 正直、前半の一時間弱は苦痛だった。黒木華が演じる主人公皆川七海は、性格は素直だが、あまりにも思慮や自己主張の足りないダメ女。自滅と言われてもしょうがない不幸のスパイラルにはまってしまう。私には、全く感情移入できないどころか、余りの情けなさに苛立ち、腹立たしくなる程だった。見切って退場しようと腰が上がりかけたが、何とか持ちこたえた。

 が、その後、物語は持ち直す。Coccoが演じる里中真白との出会いがきっかけで、主人公に新たな人生が展開しはじめる。物語の「承転結」にあたる中盤以降は私としても落ち着いて鑑賞でき、かつラスト30分はグッと感情が高ぶった。前半は長かったが、中盤以降はあっという間に過ぎて、見終わったら三時間が過ぎていた。

 この映画、俳優陣の個性的な演技と岩井監督ならではの現実と幻想が入り交じった世界のマッチングが素晴らしい。

 黒木華は「幕が上がる」で、個人的に注目度が一気に上がっている(世間的にはもっと前から注目されている)のだが、素朴で自然体の役作りが印象的。主人公の成長物語である本作品で、一人の「普通の」女性の成長を力むことなく演じている。彼女以上にこの役を演じられる女優さんはいないだろう。そして、黒木と同等に映画を支えたのは、怪しげな何でも屋安室を演じる綾野剛と里中真白役のCocco。特に、Coccoが自壊していく様は鬼気迫るものだった。この2人なしには、本作品は成立しなかったことは間違いない。そして最後に登場する里中真白の母珠代を演じるりりィ。凄い存在感と迫力だった。

 久し振りに見る岩井監督の長編作品だが、相変わらずの不思議な岩井ワールドが構築されている。幻想的な映像は日々の日常生活シーンでさえ、意味ありげに再構成される。今回は登場人物に沿ってストーリーを追っていくのが精一杯だったけど、何度か見てワンカットワンカットを味わいたい魅力的な映像に溢れている。

 好き嫌いが分かれる種類の映画かもしれないが、いろんな人に見てもらって、感想を聞きたい作品だ。

2016年4月2日 @新宿バルト9

スタッフ
監督:岩井俊二
原作:岩井俊二
脚本:岩井俊二
エグゼクティブプロデューサー:杉田成道
プロデューサー:宮川朋之

キャスト
黒木華:皆川七海
綾野剛:安室
Cocco:里中真白
原日出子:鶴岡カヤ子
地曵豪:鶴岡鉄也
和田聰宏:高嶋優人
毬谷友子:皆川晴海
佐生有語:滑
夏目ナナ:恒吉冴子
金田明夫:皆川博徳
りりィ:里中珠代

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花曇りの野川の桜ラン

2016-04-03 08:00:00 | 旅行 日本
 桜もいよいよ満開ですね。今日はあいにくの曇り空でしたが、一昨年走った野川の桜並木を走りました。そのスナップを何枚か。

 今回も小田急線喜多見駅からすぐのところに野川が流れてますので、そこからスタートです。まずは喜多見ふれあい広場の川向いにある桜並木を見ながら走ります。



 20分弱程走ると、狛江市から調布市に入ります。甲州街道を渡ってからは、見事な桜並木が続きます。、



 満開というよりは八分咲きといったところでしょうか。天気が良ければもっと綺麗なのに残念です。



 この季節は、桜の薄桃色と並んで菜の花の黄色がとても綺麗です。



 10キロ弱ほど走ると都立野川公園~都立武蔵野公園に入り、長閑な武蔵野の風景が一杯に広がります。



 武蔵野公園を過ぎると小金井市のはずですが、今日の最大の収穫はこれ。ウグイスです。なかなか姿形を捕らえるのは難しいと思うのですが、今日はたまたま走っていたすぐ横で鳴いていました。まさか写真まで撮れるとは思ってなかったので、これはとってもハッピー。



2016年4月2日

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映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 (監督アダム・マッケイ/2015)

2016-04-02 12:29:04 | 映画


 2年前に読んだマイケル・ルイス著「世紀の空売り」の映画化と言うことを知り、久しぶりに映画館へ。リーマンショックを予見し、逆張りした投資家たちの物語。

 ノンフィクションの書籍はとても興味深く読めたが、映画のほうも書籍がうまく映像化されていると思った。ユーモラスな場面も含ませながら、金融業界の欺瞞、虚栄、緊張がテンポよくスピード感を持って表現されている。かなりエッジが立った登場人物たちを、俳優陣達が好演。

 もともと非常に複雑な金融商品をネタにした巨大システムの破綻なので、理解は簡単ではない(=本でも苦労)。本映画では、レストラン・シェフの料理作り、カジノでの心理学などの喩を使った一コマ解説を挿入して、楽しみながら分かりやすくする工夫が施されている。それでも、難しいものは難しいので、初めて見る人には、この映画の隠れた主役のMBS(Mortgage Backed Securities:不動産担保証券)、CDO(Collateralized Debt Obligation:債務担保証券)、CDS(Credit Default Swap)と言った金融商品の仕組みについて本当に理解できる人は殆どいないのではないだろうか。原作を読んだ私でも、記憶をたどりながら、なんとなく理解するのが精一杯。

 この映画は、金融界のマネー装置が、いかに一般人の常識を超えているかということをまざまざと見せつけてくれる。映画のエンディングには、リーマンショックから7年たった今、形を変えたCDOが売られ始めているという下りが入る。世の中、懲りないインテリ詐欺師に満ち溢れているのだ。



キャスト
クリスチャン・ベイル: マイケル・バーリ
スティーヴ・カレル: マーク・バウム
ライアン・ゴズリング: ジャレッド・ベネット
ブラッド・ピット: ベン・リカート
ルディ・アイゼンゾップ: ケイシー・グローヴズ
マリサ・トメイ: アデペロ・オデュイエ
レイフ・スポール: ハミッシュ・リンクレイター
ジェレミー・ストロング: ジョン・マガロ
フィン・ウィットロック: デイヴ・デイヴィス
メリッサ・レオ: カレン・ギラン
マーゴット・ロビー: セレーナ・ゴメス

スタッフ
アダム・マッケイ:監督
ルイーズ・ロズナー=マイヤー:製作総指揮
ケヴィン・メシック:製作総指揮
マイケル・ルイス:原作
チャールズ・ランドルフ:脚本
アダム・マッケイ:脚本
ニコラス・ブリテル:音楽

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