その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

オリンピック期間中の勤務には特別£500ボーナス!

2012-01-30 22:26:27 | ロンドン日記 (日常)
 良くも悪くもロンドン生活も3年を過ぎると、イギリス社会やイギリス人に対するサプライズも段々と少なくなってくるのですが、今夕は久しぶりに呆れました。

 無料の夕刊紙"Evening Standard"の一面記事。見出しは"OLYMPICS 'BRIBE' FOR ALL TUBE WORKERS" 見出しに続いてのサブ見出しは、"But £500 bonus just for working is not enough say 'greedy, unpatriotic' unions"

記事はこちら→ http://www.thisislondon.co.uk/standard/article-24031862-tube-workers-reject-pound-500-olympics-pay-offer.do

 私には信じられないことなのですが、地下鉄経営陣は、オリンピック期間に勤務する地下鉄勤務者(約14000名)には、無条件で500ポンドのボーナスを支払う提案を組合にし、組合は額が少ないとしてその提案を蹴ったとの内容です。そして、このボーナスだけで700万ポンドの追加税負担がかかるとのことです。

 会社では、このオリンピック期間どう事業継続性を支障なく担保するかについて、何度となく議論しているのに、オリンピックを政治的道具として利用するこの英国の組合と言うのは、何なんでしょうね?

 この期間、通常のシフト以上に働くための長時間勤務手当やシフト変更による手当なら分かるのですが、通常の勤務でもオリンピック期間働いただけで£500、それも少額で不満とするとする組合幹部の考えには全くついて行けません。
 
 久しぶりのサプライズでした。 
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2回目のヴェネティア旅行

2012-01-29 20:59:40 | 旅行 海外
《編集前のメモ》

2012年1月28日

6:25 地下鉄乗る
7:30 空港着
8:50 出発
11:20 到着
11:50 バス
ボートに乗ってサンマルコへ。
13:20 ホテル探しに時間がかかる。やっぱり、ヴェネティアは道が分からん
13:40 前回行った大衆レストランへ
    イワシのマリネ、スパゲティボンゴレを食す。美味しい。
14:30 フィネ-チェ歌劇場へ 古くて新しい 豪華絢爛
15:30 オペラはルーサロメ。意味が全然わからない。
    客席を変更して、取り囲むように舞台作り。
18:00 終演
ホテルに戻って、一服して出かけて食事。
最初のレストランは予約でいっぱいだったが、偶然入った2つ目があたり。
タコのカルパッチョ、魚介類のパスタを食す
帰って寝る


2012年1月29日

朝起きたら800。昨日11時には寝てるから良く寝た。スカイプ音声のみ。830朝飯。コールドミールだけだが、砂糖付きのクロワッサンがうまい。930からジョギング35分。風が冷たいが、天気が素晴らしい。11時15分前にチェックアウト。
鐘塔に上る。以前来たときは100メートル近い行列ができていたが、5分と待たずエレベーターへ。眺めは最高だが、冷たい風が強くとてもゆっくりはできない。青空、屋根の煉瓦、海の色のコントラストが素晴らしい。これは登る価値あり。
歩いてアカデミア美術館へ。部屋を工事のためか、絵の配列がずいぶん違っていた。企画展もなかなか良い。老婆、ルビの晩餐、などなどイタリアルネッサンスものを楽しむ。15世紀のサンマルコ広場を描いた絵などは今とほとんど変わっていない。ずいぶんはしょってみたが、やっぱり1時間は優にかかる。
サンタマリア教会まで歩くが、予想通り道を迷い、広場についたのが12時過ぎ。べネティア一番のピザやというレストランにはいる。たしかにピザ生地は薄いが粘っこくて味が良い。モツレラチーズもうまい。トマトソースが少なかったのが残念。ナポリには叶わんな。もう1時20分となったので宿へ荷物を取りに帰る。14時過ぎのボートで大運河を上り、最後の観光がてら空港バスが発着するローマ広場へ。

冬のベネティアは人が少なく落ち着いている。しかし、この街はまさに生きた博物館だ。ここまで頑なに景観を保っているのは驚嘆するしかない。

定刻着
629ヴィクトリア行き列車
710遅れてヴィクトリア着
中華買って帰る

ホテル 60ユーロ
飛行機 70ポンド
ボート36時間券 28ユーロ
美術館 11ユーロ
メシ 40、43、12
空港バス 5*2
ガトイック往復 13ポンド
展望台 5ユーロ
オペラ 70ユーロ
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初雪

2012-01-28 00:43:56 | ロンドン日記 (日常)
 といっても、ロンドンの天気ではありません。出張ででかけたフランクフルト近郊の町。ビジネスホテルで、朝起きると、外は雪景色でした。



 今年のロンドンの冬は異様に暖かいので、私は雪どころか霜さえも見ることがありません。ホテルの会議室で缶詰で打ち合わせが続く出張だったので、ホテルの外には全く出られませんでしたが、ホテルの窓から見える雪景色の朝は、ウキウキ気分としっとりと落ち着いた気分が同居する不思議な気分に浸らせてくれるものでした。

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春の気配が漂うエセックス(ESSEX)州を走る

2012-01-24 23:58:47 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 今年初の大会であり、昨年11月のアテネ・クラシック・マラソン出走以来のレースです。ロンドンから40マイル程東に向かったエセックス州South Benfleetという地域で行われた15マイルのレースに参加しました。この辺りは、テムズ川の河口近辺になるのですが、894年にバイキングとサクソン人の間でベンフリートの戦いが行われた歴史的なところでもあるらしいです。

 天候は晴れ時々曇り、気温が8度ぐらいの、ランニングには最適なコンディションと言いたいところですが、2つの天敵に悩まされました。

(スタート地点の丘から)




 1つは凄く強い風。春一番を思わせるような強風で、向かい風になった時は、走っているんだが、停まっているのだか、自分でも分からない位です。これには体力を消耗させられました。汚い話ですが、走っている最中に、唾をはくと風に乗って3メートルぐらいは優に飛んでいく強さです。

(廻りの風景はとっても気分がいいです)


 2つ目は、コース。丘の上からスタートになるので、最初と最後の1マイルは急な坂があるのですが、それ以外は平地なのですが、全くそうではありませんでした。コースの95%は草地か砂利道、または泥道。特に前半は、水はけの悪い低湿地帯を走るため、泥がベトベト靴に張り付くし、着地した途端に足元が滑り、危うく転びそうになるわで、走りにくいことこの上なし。砂利道は、天然足裏マッサージで、練習不足の私には足裏が痛くなって、難儀しました。帰ったら、足の裏に水豆がいくつもできていました。

(これはまだマシなほう)


 そんな、こんなで、15マイルを何とか完走はしたものの、手持ちのタイムは2時間35分20秒。この日は、完走第一でタイムは殆ど気にしていませんでしたが、それにしても近年まれに見る低調な結果に終わりました。

(ゴール前)


 ロンドンマラソンまであと3カ月。この2カ月はしっかり走りこもうと思っています。

 2012年1月22日
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映画 『The Iron Lady』 (アイアン・レディー)

2012-01-22 18:54:18 | 映画
 英国初の女性首相であったマーガレット・サッチャーの伝記映画『 The Iron Lady』(アイアン・レディー)を見てきました。公開前からメディアでの露出も多い話題作です。2週間ほど前から公開されていますが、私が出掛けたこの土曜日夕方の回も、8割ほどは座席が埋まる盛況ぶりでした。

 サッチャーを演じるメリル・ストリープの好演が何かと評判ですが、納得です。メリル・ストリープは、国会議員になった時期から痴呆症を患う現在までのサッチャーを演じていますが、その仕草、表情、雰囲気は、私が若かりし頃にTVを通して見たサッチャーそのもの(今でも、YouTubeでMargaret Thatcherで検索すると、国会答弁の模様とかをいくつも見ることができます)で、強い信念を持った女性を演じ切っています。また、メリルに引き継ぐまで、学生時代から政治の世界に足を踏み入れるマーガレットを演じたAlexandra Roachも、純粋さと信念を持つ女性を演じ、好感度高かったです。

 メリル・ストリープの演技以外にも幾つもの楽しみがあります。サッチャーの取った政治的姿勢や決断を追えば、リーダーシップについて考えさせらないわけにはいきません。また、私にはイギリス戦後現代史のおさらいにもなります。特に、年初めに、ミュージカル「ビリー・エリオット」を複数回見て、ストライキを行う側の心理や行動を見たのですが、今回は逆の立場であるストライキを封じ込める立場から、この時代を追うことができたのは、コインの表裏を見るようで興味深かったです。

 また、サッチャーとその夫デニスとの愛の物語でもあります。痴呆症のサッチャーが常に、彼女を支えたデニスとの思い出とともに、彼女の政治人生が振り換えられ、既に他界したデニスの幻影と会話をするサッチャーが、全編の軸となっていることで、この映画にヒューマンタッチな色合いを加えています。

 あえてこの映画の難しさを言えば、結局のメッセージは何なのかが伝わりにくいことでしょうか。「King's Sppechの (英国王のスピーチ)」ような明快な結末があれば、見る方も気分すっきりシアターを後に出来ますが、存命中であり、痴呆症である元首相の視点で半生を振り返るという設定や、リーダーシップ、男女平等、政治史、夫婦愛等の幾つもの重要な種が織り込まれた本映画は、かえってこの映画の後味を、なんとなく不明確な、すっきりしないものにしてしまうのも事実です。ただ、全体を通じては、良く出来た映画であり、私としてはおススメです。

 2012年1月21日

Director: Phyllida Lloyd
Writer: Abi Morgan (screenplay)
Stars:Meryl Streep, Jim Broadbent and Richard E. Grant
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とある職場の風景 「元気?」

2012-01-21 10:05:13 | ロンドン日記 (日常)
1週間程前のエピソードなのですが・・・

 職場のコピー機で鉢合わせになった、プロジェクトマネジャーのJさん(恰幅の良い、陽気な英人おばさん)から、突然

「XXさん(私のこと)、最近、何かあったの?」と聞かれました。

「え???そんなことは無いよ。いつも通りだよ」と答えたら、

「M(私の近くに座るマネジャー)も言っていたよ。『なんか年が明けてからXXさんの様子がいつもと違う。妙に静かでおとなしい(そんなにいつもうるさいか???)。なんか体調が悪いのか、悩みでもあるんじゃないか。それとも、よっぽど期末の財務数字が悪いんじゃないか』って。」

「へえ~、Mがそんなこと言っていたの?僕は元気だし、まだ数字は出てないよ・・・」

「ほんと?それならいいけど、いつもだったら、こんなところ(コピー機近辺)でも、いつも何かジョーク言って、笑っているのにね~。なんか、変な感じがするけど」

・・・・・

 確かに、年始からプライベート面で幾つかアクシデントや悩み事が重なっていたのですが、公私はしっかり切り分けて行動しているつもりだったので、こうも簡単に指摘されるとは・・・と内心冷や汗。

 と同時に、結構、みんな何気なく人のことを観察しているんだなあ~との驚き。期末数字は彼らのボーナスにも直結するので、これからの懐具合が気になっているだけなのかもしれませんが・・・。

 まあ、仮にそうした思いが入っていたとしても、職場の同僚のちょっとした変化に気づいて、声をかけてくれるのは、嬉しいものです。プライベートの件も前進しつつあることだし、今度は、「最近、ちょっと、はしゃぎすぎでないか~」と言われる位にしようと思うと同時に、私もちょっとした一声ケアのお返しを廻りにしようっと決意。



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塩野 七生 『ローマ人の物語 30 終わりの始まり<中>』

2012-01-19 23:47:13 | 
 本巻では、哲人皇帝マルクス・アウレリウスとその後を継いだ皇帝コモドゥスが描かれます。コモドゥスは、父である哲人皇帝マルクス・アウレリウスが、息子は皇帝には不適格とわかっていながらも、これ以外に選択肢がなかったため後継者にしたと言われる皇帝です。映画『グラディエーター』にも登場していますが、暗殺されたあげくに「記録抹殺刑」の処分を受け、同時代から後世にかけての歴史家からも碌な評価を受けていない皇帝です。

 本書の読みどころは、筆者がこのコモドゥスの罪だけでなく、功も含めて、筆者なりの評価をしているところです。それでも、総合点はペケですが・・・

 いくつかの筆者らしいコメントを以下抜粋。

「マルクスが傾倒していた哲学は、いかに良く正しく生きるか、への問題にはこたえてくれるかもしれないが、人間とは、遂行な動機によって行動することもあれば、下劣な動機によって行動にかられる生き物でもあるという、人間社会の現実までは教えてくれない。それを教えてくれるのは、歴史である。」(pp177-178)

「家の外での生活が大半であったにもかかわらず、彼(コモドゥス)の棲む世界は狭かった。生涯を政務と学問と家庭に捧げ、家の中の生活が多かったマルクス・アウレリウスの方が、広い世界に棲んでいたのである。自分の好みに合った世界でのみ生きるのは、老齢に達した人にとって人生の勲章である。だが、二十代で早くも自らの世界を限定してしまうのは、明らかに病気だ。そして、悪魔のささやきが最も効果を上げるのは、このような病を持つ人に対してなのである。」(p199)

「職業に貴賎は無いが、行き方に貴賎はある」(p202)



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カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』 (ハヤカワ文庫)

2012-01-17 20:06:24 | 
カズオ・イシグロの小説は英国ではとても人気があるようで、「ホリデーに持ってきたい本」などの新聞の書評欄とかでよく目にするので、一度、読んでみたいと思っていた。本書は2010年に映画化されており、Carey Mulligan, Keira Knightley見たさに、昨年、私も見ているのだが、予備知識ゼロかつ英語(字幕なし)と言うことで、全くストーリーについていけなかった。今回、やっと日本語訳が手に入ったので、原作を読んでみたのだが、初めて話の中身が分かった。

ストーリーは、紹介すること自体が、ネタばれになるので、とても書きにくい。大胆に要約すると、ボーディングスクール風の理想的な環境だが、特殊な目的を持った学校で、寝食をともにして育った男女3人の成長、友情、愛、死の物語である。物語の背景にある現実を離れた特殊な状況設定をもってSF小説に分類する向きもあるようだが、科学的SF小説というよりは、SF的な特殊環境をもとにした人間や社会について探求した小説。

扱うテーマは重いが、主人公の視点で語られるこの物語は、その冷静で淡々とした語り口のために、人により好き嫌いが分かれるかもしれない。私自身は、読んでとても良かったと思った。人の感情の機微を丁寧に追いかけるこの小説は、大切な友人や恋人に対する気遣いや人間の尊厳について考えさせられる。

もう一度、映画の方も借りて見てみることにしたい。
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プリムローズ・ヒルからの朝焼け

2012-01-16 20:06:54 | ロンドン日記 (日常)
 冬至を過ぎて徐々に陽が長くなりつつあるロンドンです。

 本当に今年のロンドンは暖かく、早朝のジョギングでも公園に霜が降りて真っ白になったり、池の氷が凍ったような風景をこの冬はまだ見たことがありません。このまま春に向かって暖かくなるのかと思うと、何故か少し寂しい気がするほどです。

 週末にリージェントパーク、プリムローズヒルを走った際の、朝焼けシーンをご紹介します。冬のこの季節、ハムステッドヒースからの朝焼けは何回か拝んだことがあるのですが、プリムローズヒルからの朝焼けを見るのは初めてです。ハムステッドよりもロンドンセンターに近い分、また違った風景が楽しめます。

 暖かいとは言っても、手を露出して走ったせいか、手が震えて碌な写真はないのですが、3枚ほど。息をのむ美しさでした。





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"Moneyball" (マネー・ボール)

2012-01-14 22:45:36 | 映画
 貧乏球団のオークランド・アスレチックスのGMであるBilly Beaneが、データを駆使した野球でアスレチックスを一気に優勝を争うチームまでに引き上げる。実話に基づいたドラマ。

 私のような野球好きにはもちろんだが、野球好きでなくても十分に楽しめる良質のアメリカ映画。ビジネスライクに見ると、野球を題材に、「変革」にチャレンジする経営管理者の話だが、サクセスストーリとして単純に楽しむことが出来る。

 野球というスポーツに対してデータを駆使して科学的にアプローチしようとする実証主義、コストパフォーマンスに見合わない選手はすぐにトレードに出される経済効率性重視、成功を収めたビリーに対して他球団から提示される高額の引き抜きオファーなどなどの、いかにもアメリカ的な価値観が底流に流れていること、そして最後は「成功」という意味で、色んな意味で「アメリカ」的。

 ブラッド・ピッドの映画は久しぶりに見たが、随分歳を重ねたなあと思った一方で、その存在感の強烈さと素晴らしい演技には、完全に脱帽。大物俳優の風格が漂っていた。ブラッドピッドの演技を楽しむだけでも面白い映画である。


Director: Bennett Miller
Writers: Steven Zaillian (screenplay), Aaron Sorkin (screenplay), Stan Chervin (story), Michael Lewis (book "Moneyball: The Art of Winning an Unfair Game")
Cast: Stars:Brad Pitt, Robin Wright and Jonah Hill

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ロイヤルオペラ 『ニュルンベルクのマイスタージンガー』

2012-01-13 01:25:16 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 年末からやっていたパッパーノが振る『ニュルンベルクのマイスタージンガー』に1月8日の最終日の公演に行ってきました。既にいろんな方のブログ記事が載っていますので、簡単に。

 季節がら代役が絶えない公演になっているようですが、最終日もやっぱり一人歌えない人がいました。歌合戦の賞品エファ役のEmma Bell。演技のみの口パク出演でした。舞台袖で代役のソプラノが立ったのですが、残念ながら名前が聞きとれず不明なのですが(誰か知っていたら教えて)、この代役が思いのほか綺麗なソプラノであんまり口パク+舞台袖からの歌唱という違和感は殆ど感じずにすみました。

 サイモン・オニールのヴォルターは良くないというような記事もありましたが、この日は前半ちょっと調子が出ていないような感じもしましたが、徐々に調子を上げ、3幕の「ヴァルターの栄冠の歌」などは透き通るようにホールに響く感動的なテノールでした。

 存在感では、やはり主役のザックス役のWolfgang Kochと脇役のDavid役のトビ―・スペンスが良かった。Kochは歌よりも演技の重量感が何とも舞台全体を締めていたし、その弟子役のトビ―・スペンスは溌剌とした靴職人見習いを演じ、かつそのテノールも美しい。

 もちろんパッパーノ指揮のワーグナーは、時に雄大で、時に甘美でうっとり。演出も幻想的で、特に素晴らしいとも思わなかったですが、不満はありません。

 ただ、やっぱり休憩入れて総時間5時間45分はちょっと長すぎるでしょ。3幕だけで2時間もあり、あまり休憩時間に体を動かさなかった私は、途中から腰が痛くなって、見ながら体をくねくねさせほぐさないと、とても見てられない状態に。隣の人に迷惑をかけているのを承知しながら、「オペラハウスでエコノミー症候群になったらどうしよう」と本気で自分が心配になりました。お正月にミュージカルを集中的に見たおかげで、あの速い場面展開がまだ残像として残っていた私には、正直、かなりこのオペラは冗長なものに映ってしまったところがあるのは事実です。その分、観終わった後は、「見切ったぞ~」というわけのわからない満足感、充足感もありましたが・・・。

(大活躍のトビー・スペンス)


(中央の黒の服がエヴァの代役歌手)


(パッパーノも入って・・・)




Die Meistersinger von Nürnberg
Sunday, January 08 3:00 PM

Credits
Composer: Richard Wagner
Director: Graham Vick
Designer: Richard Hudson
Original lighting design: Wolfgang Göbbel
Movement: Ron Howell

Performers
Conductor: Antonio Pappano
Hans Sachs: Wolfgang Koch
Walter von Stolzing: Simon O'Neill
Eva: Emma Bell
Sixtus Beckmesser: Peter Coleman-Wright
Veit Pogner: John Tomlinson
David: Toby Spence
Magdalene: Heather Shipp
Kunz Vogelgesang: Colin Judson
Konrad Nachtigall: Nicholas Folwell
Fritz Kothner: Donald Maxwell
Hermann Ortel: Jihoon Kim§
Balthazar Zorn: Martyn Hill
Augustin Moser: Pablo Bemsch§
Eisslinger: Andrew Rees
Hans Foltz: Jeremy White
Hans Schwarz: Richard Wiegold
Nightwatchman: Robert Lloyd

Chorus: Royal Opera Chorus
Orchestra: Orchestra of the Royal Opera House

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社会派ミュージカル ビリー・エリオット

2012-01-10 00:31:41 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 連続のビリー・エリオットネタになります。

 このミュージカルは、一面では子供を主役にした成長物語ではありますが、決して子供向けミュージカルではありません。むしろ、民営化や小さな政府を推進し、ストライキなどの労働運動に強硬姿勢を取ったサッチャー政権と、その負の直接的影響を受けた炭坑労働者たちとの対立を描いた社会派ミュージカルです。

 今回、ビリーエリオットの中で歌われる幾つかの歌詞を読んで、改めてこのミュージカルの社会性や過激さを発見し驚きました。(ミュージカル・ビリーエリオットのサウンドトラックの歌詞は、以下のサイトで紹介されています。こちら→)いくつかのさわりを、私のつたない逐語訳付きでご紹介します。


 まずは、本ミュージカルでメロディが何度も流れ、一つのテーマソング的な歌であるSolidarity (歌はYouTubeでこちらから。曲は1:40から始まり、断続的に続きます→)。タイトルからして「団結」ですから凄いのですが、歌の一部は、私も若かりし頃メーデーで歌ったことがあるような労働ソング。

 例えば、サビとして、何度も繰り返されるコーラスの歌詞は・・・
Solidarity, solidarity,               (団結!、団結!)
Solidarity forever.                 (いつまでも、団結だ!)
We're proud to be working class,       (オイラ達は誇りある労働者階級だ)
Solidarity forever.                 (いつまでも、団結!)
歌の後半に、子供コーラスもこれを歌うのが何ともユーモラス。

 更に、冒頭で歌われる、ストライキを監視する警官たちとストライキ中の炭坑夫の間で交わされるやりとりは・・・
<警官たち>
Oi Geordie (おい、ジョーディー(舞台の北イングランドのタイン川流域の人達のこと))
Wanna see something (何か見たいんだろう)
You've never seen before (まだ見たことないぜ)
And that's just off the overtime (ただの残業カットだけどな)
Wanna see some more? (もっと何かみたいのか?)
<炭鉱夫たち>
You think yer smart ya cockney shite (自分のこと賢いと思ってんじゃねえだろうな、このコックニー(生粋のロンドン人(江戸っ子のロンドン版?))のクソったれ)
You wanna be suspicious (そんなに疑り深くなりたいのか)
When you were on the picket line (おまえらがピケのラインで監視してた時)
We went and fucked yer missus (俺らはおまえらのカミサンとやってきたんだぜ)
All of us at once (俺らいっぺんにな)

 これが子供向きのミュージカルであるわけがありません・・・。


 続いてもう一つ紹介したいのは、第2幕冒頭の、村の仲間が集まったクリスマス・パティーでのコーラスです。タイトルは、"Merry Christmas Maggie Thatcher“ (メリー・クリスマス、マギー・サッチャー)"。(メギーはマーガレット・サッチャー首相の愛称?)(歌はYouTubeでこちらから→

 この曲のサビとして、何度も繰り返されるコーラスの歌詞は・・・
So merry Christmas Maggie Thatcher (メリー・クリスマス、マギー・サッチャー)
May God's love be with you       (あんたに神の愛があらんことを)
We all sing together in one breath   (おいらたちは声を揃えて歌うぜ)
Merry Christmas Maggie Thatcher   (メリー・クリスマス、マギー・サッチャー)
We all celebrate today           (みんな、今日はお祝いだ)
'Cause it's one day closer to your death (だって、あんたがくたばるのに1日近づくからな)

 これも子供たちも揃って大合唱なのですが、「まだ存命であり、功績もあるサッチャー元首相をここまで言うか???寅さんがタコ社長に『お前なんか、早くくたばっちまえ』というのとはわけが違うんだけど・・・」という私の驚きは、日本人感覚なのでしょうか?

 さび以外も過激な歌詞が続きます。例えば・・・
And they've brought their fascist boot boys (そして連中は子飼いのファシスト少年団をつれてきた)
And they've brought the boys in blue (ブルーの服(サッチャー首相が好んで青色のスーツを着ていたのをもじっている)を着せてな)
And the whole Trade Union Congress (そして、産業組合議会も)
Will be at the party too         (パーティーにいるだろう)
And they'll all hold hands together    (手を取り合って)
All standing in a line          (一列になって)
'Cause they're privatising Santa   (だって、連中はサンタも民営化してるんだから)

 もちろんこういった闘争ソングだけでなく、このミュージカルには、亡きお母さんがビリーに宛てた手紙の歌やビリーのバレエに対する思いを歌った歌など、しんみり、じっくり味わう曲も沢山入っています。

 ただ、こういった当時の社会情勢や一つ一つの歌詞に込められた背景を紐解いていくと、多分に商業目的のところはあるのかもしれませんが、このミュージカルのメッセージがより明確になったり、サッチャーと同じように緊縮財政を強行している現Cameronの政策との関連性も見えたりして、このミュージカルがより多層的に楽しめます。ここに紹介したのは、その極々一部ですので、是非、歌詞を通じて読んで頂くと、よりその強烈さを感じることが出来ると思います。

 ビリー・エリオットを見に行かれる方は、是非、これらの歌詞を読まれてから行かれることをおすすめします。楽しみ方が増えるのは間違いありません。

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新春 ビリー・エリオット祭り

2012-01-07 21:17:45 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 この年末年始は体調を崩して寝込んだことに加えて、その他のアクシデントも加わり、近年まれに見る最低の年末年始だったのですが、唯一の救いが、訪英してくれた家族と出かけたミュージカル「ビリー・エリオット(Billy Elliot)」。

 ご存知の方も多いと思いますが、2000年の映画「Billy Elliot(日本語タイトルは「リトルダンサー」)をミュージカル化したもので、ロンドンでは2005年からのロングランです。1980年代(サッチャー政権期)のイングランド北部の炭坑村で炭坑夫として働く父と兄を持つビリーが、村のバレエ教室に偶然参加したことがきっかけに、バレエに目覚めるものの、経済的困難、炭坑の労働争議、階級対立と言った厳しい環境の中、家族や周囲のサポートを受け、ロイヤルバレエスクールのオーディションに合格するという物語です。

 今回は家族のリクエストもあり、1回分はチケットを購入していたのですが、家族ともども私としても2年ぶりに見たこのミュージカルに嵌ってしまい、5日で3回も足を運ぶというお祭りとなりました。

 笑いあり、涙ありのストーリー展開、エルトン・ジョンの音楽の馴染みやすさ、効果的な演出等、優れたところが数多いこのミュージカルですが、今回の発見は主役ビリー・エリオット役やビリーの親友マイケル役の子役たちの個性の際立ち方。ビリーもマイケルも4名でローテーションを組んでいるようなのですが、その日の子役によって舞台の印象が大きく変わるのです。

 例えば、私が観た3回のうちの2回のビリーを演じたRyan Collinson君は体操レッスンの経験はあってもクラシックバレエや舞台演技の経験は無し。ですので、バレエのシーンは正直、観ていてハラハラするぐらい不安定なところもあるのですが、しぐさ、表情の少年っぽさが絶妙で、バレエは駄目でもタップダンスやモダンダンス的な場面や、空中宙返り等のキレは抜群。溌剌とした舞台を見せてくれました。一方で、1回観たAdam Vesperman 君はバレエの基礎が出来ているようで、バレエの回転シーンなどは惚れ惚れする程、軸のぶれない綺麗な踊りで、腕や足の動きがなんとも優雅です。

 驚いたのはこの2名の個性を活かしてなのか、2幕のオーディションシーンで踊るソロのダンスでは、ベースの音楽は同じなのですが、Adam君には白鳥の湖のメロディがバックに被せられた編曲がしてあり、バレエ的なダンスを中心に組み立てられているのに対して、Ryan君は白鳥の湖は被せられず、徹底してストリートダンス的なダンスでダイナミックに魅せます。どっちが良いということなく、ただその子役たちの個性とその舞台印象に与えるインパクトの大きさに感動しました。そして、ビリーの親友マイケル役は3名の舞台を観ましたが、これも各人大きく個性の異なるものでした。

 ロンドンのブロガーの方々の記事の中で、バレエの記事を書いてらっしゃる方が、ダンサーによって、同じ作品でも如何に舞台が変わるかということをご紹介されているのを良く目にしますが、実感として分かったような気がしました。

 かなり沈んだ1年のスタートだったのですが、なんとか、このミュージカルからもらった元気で、この1年頑張ろうと思わせてくれたビリー君たちに感謝です。

 ※公式ホームページはこちら→

※カーテンコールより





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『フェルメールの女性たち展 (Vermeer's Women: Secrets and Silence)』@フィッツウイリアム博物館

2012-01-06 17:51:01 | 旅行 海外
 う~ん、まだまだアンテナが低いなあ~。終了2週間前に気付きいたケンブリッジのフィッツウイリアム博物館(こちら→)で実施中のフェルメールに関連する展覧会に行ってきました。



 フェルメールとその時代(17世紀)のオランダ人画家たち(Gerard ter Borch、Jan Steen、Pieter de Hoochら)が描いた、様々な生活シーンの中の女性像の作品を集めています。フェルメールの作品は、ルーブルからの借り物のThe Lacemakerを筆頭に、ナショナル・ギャラリーの作品1点、ロイヤル・コレクションの作品1点、個人蔵の作品1点の計4点が展示してあります。(展覧会の紹介HP→

(展示のフェルメール作品) 
 

 


 総展示作品は30点程で決して多くはありませんが、その日常生活の中の女性を描くというテーマや繊細かつ優しいタッチの作品群は、私にはたまらない展覧会で、食い入るように一枚一枚を見ていました。日本では、とかく希少価値からか、フェルメールに話題が集中しますが、この時期のオランダ絵画は素晴らしい作品が多く、素人目にはフェルメールと区別がつかなかったり、むしろフェルメールよりも良いと思うような作品もあります。

 1月15日で終了のせいか、そう広くはない会場内は、日本の展覧会並みに混雑していました。ギリギリのご紹介になって申し訳ないですが、ロンドン在住の方には、おススメです。企画展ではありますが、入場無料です。



 ※今回、初めて知りました(以前は車で行ったので)が、ケンブリッジにはキングスクロスから列車で45分で行くことが出来ます。
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ロンドン シーフード・レストラン Fish!

2012-01-04 21:27:02 | レストラン・パブ (in 欧州)
 ロンドンブリッジ駅徒歩2分、バラマーケットに隣接したシーフード・レストランです。とっても気楽なワイワイ、ガヤガヤ系の雰囲気のお店です。

 メニューも極めて簡単で、フィッシュ&チップスやフィッシュパイ、フィッシュ・バーガーなどの簡易魚メニューの他に、魚の種類を選んでグリルか蒸しの調理法を指定する魚料理があります。フィッシュ&チップスも魚をCod, haddock, Halibutの中から選ぶことができます(魚の違いは正直、私には良く分かりません(Codはたら、haddockのたらの一種で、たらより小ぶりな魚、Halibutはタイセイヨウオヒョウ(どんな魚だ!?)らしいです)。

 私は、Codのフィッシュ&チップスを注文しましたが、F&Cとしては異例の15.95ポンドもしますが、衣のサクサク度や味付け、魚の身のジューシーかつフカフカさなど、ロンドンで食べた中では間違いなく1番でした。

 超大満足でレストランを後にしましたが、その後ネットでいくつかレビューを参照すると、結構レビューによって賛否両論のようです。ですので、私もこのレビューの割れ方には???なのですが、バラマーケットに行った際とか、ロンドンブリッジ近くに来られた際は、試して見る価値は十分あると思います。

 ※レストランのホームページ→ 
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