その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

テアトロ・レアル/ ムツェンスク郡のマクベス夫人/ ショスタコーヴィチ

2012-12-11 01:04:09 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 夜は、マドリッドの代表的オペラハウスであるテアトロ・レアル(Teatro Real、王立劇場)へ。王宮の向かい合って建つ劇場は、堂々としたもので、ライトアップされた白壁がなんとも美しいです。


≪外観だけオリジナルサイズで≫

 伝統的な外観に比べて、劇場内はとっても綺麗で先進的はハイテクシアターの趣でした。なんと、私が座った最上階席には大型スクリーンが設置されていたのです。舞台の様子がモニター中継され、最上階に居ても細部まで分かるようになっています。ただ、オペラの舞台を見たりスクリーンを見たりというのは、結構面倒なので、上演中は殆ど見ることはありませんでした。


≪ステージ前からロイヤルボックスを臨む≫


≪私が座った最上階からの眺め≫


≪舞台を映すモニター≫

 この夜のプログラムはショスタコーヴィチの『ムツェンスク郡のマクベス夫人』。一度見てみたかったオペラな上に、タイトルロールは、ROHでアンナ・ニコルを演じたEva-Maria Westbroek(エヴァ=マリア・ウェストブロック。劇場のクレジットにはWestbroeckと記載されてますが、スペイン語では綴りがかわるんかしら)。何ともラッキーな巡り合わせに、大感謝です。


≪テアトロリアルのHPから≫

 オペラの方は、もうウェストブロックの一人舞台と言っても良いほどのウェストブロック横綱オペラ。彼女は堕ちたお色気ヒロインを演じると抜群ですね。迫真の演技と繊細かつ十二分の声量のソプラノに痺れまくりでした。エロチックな演出も彼女の醸し出す雰囲気とぴったりです。男性陣は悪くはないですが、ウェストブロックに比べてしまうと存在感が薄く、ちょっと迫力不足だったでしょうか?

 ショスタコーヴィチのオペラを観るのは『賭博師』、『鼻』に続いて2作目ですが、緊張感と躍動感にあふれる音楽は魅力的で、個人的にとっても好みです。ハルトムート・ヘンヒェンの指揮は初めてでしたが、もう少し切れがあっても良いような気がするところもありましたが、全体としては不満はありません。

 しかし、海外でオペラを観て困るのは言葉が分からないこと。今回は、歌はロシア語で、字幕はスペイン語。話の筋は頭に入っているものの、何について話してるのかが分からないと、正直、このオペラの意味するところがどこまで分かっているかは、自分としては甚だ怪しいです。このオペラでカトリ―ナはどういう女性として描かれているのか?音楽と演技で分かるようなところもありますが、正直、自信なし。これでは、このオペラについて語る資格はありませんね。

 まあ、ショスタコーヴィチの音楽とウェストブロックを声を十二分に楽しめたから良いとするか~
 

≪カーテンコールより≫





3 December, 2011

Programme
Shostakovich, Dmitri Dmitriyevich:
Lady Macbeth of the Mtsensk District

Lady Macbeth of the Mtsensk District is an opera in four acts with libretto by Alexander Preys and Dmitri Shostakovich.

The opera will be performed in Russian.

Conductor, Hartmut Haenchen
Stage director, Martin Kusej
Scenography, Martin Zehetgruber
Costume designer, Heide Kastler
Lighting, Reinhard Traub
Choir director, Andrés Máspero

Cast:
Boris Timfeyevich, Ismailov Vladimir Vaneev
Zinovi Borisovich Ismailov, Ludovít Ludha
Katerina Ismailova, Eva-Maria Westbroeck
Serguéi, Michael König
Aksinya/A prisoner, Carole Wilson
A worker, John Easterlin
Pope/A sentry, Alexander Vassiliev
A sergeant/an officer, Scott Wilde
A teacher, Valentin Jar
Sónietka, Lani Poulson

Choir & Orchester of Teatro Real
(Choir Intermezzo & Madrid Symphonic Orchestra)

※付録 向かいの王宮のライトアップです。






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ロイヤル・オペラ・ハウス/ トロイア人 (ベルリオーズ)/ パッパーノ指揮

2012-07-08 20:13:33 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ベルリオーズのトロイア人を見に行きました。2回の30分休憩を含めて5時間半かかる一大スペクタクルオペラです。楽しみにしていた目玉歌手の一人であるテノールのカフマンがキャンセルしてしまったので、貴重な7月の日曜日の午後(Euro2012の決勝もあるし)をオペラに使うかどうかとっても迷ったのですが、夏シーズンの目玉公演でもあるし、パッパーノも今シーズン最後なので、思い切って行きました。が、行って正解でした。演奏、歌唱、プロダクションいずれもすばらしく、時間の長さを全く感じさせない、秀逸なパフォーマンスでした。

 ※トロイア人はあまり公演されないオペラなので、あらすじ等の概要を知りたい方はこちらへ→

(開演前)


 この話、綺麗な起承転結になっているのですが、「起」にあたる1幕、2幕から圧倒されっぱなしでした。この日は、15ポンドの天井桟敷席からの観劇だったんですが、オーケストラ、コーラス、独唱、プロダクションの迫力とあふれる緊張感に肝を抜かれました。トロイの王女カサンドラー役のAnna Antonacciのソプラノがスゴい迫力。恋人のコロエブス役のFabio Capitanucciのテノールも美しく、声量もたっぷりでした。それにコーラスとオーケストラが畳み掛けます。2幕で登場するトロイの木馬は、メタルを使って組みたてた巨大な馬で、実際の火を使った仕掛けが舞台の緊張感を倍増させます。幕間になっても、心臓の鼓動が収まらないぐらいです。つまらなかったら途中で抜けてEUROの決勝を見にパブでもいこうかと思っていたのですが、それどころではありませんでした。

 「承」の3幕では、カルタゴの女王ディードー役でエヴァ=マリア・ウェストブロック(Eva-Maria Westbroek)が登場します。ウェストブロックのソプラノは相変わらず芯の通った力強い美しさです。「転」の4幕では、延々と続くバレエは少々退屈でしたが、その後のディードーとアエネーアスの合唱は、今日これを聴いただけでも来た価値があったと思ったほどの美しさでした。アエネーアス役のカフマン代役のブライアン・ヒメル(Bryan Hymel)はルサルカ以来ですが、カフマンのことなんどはすっかり忘れてしまうほどの柔らかく包み込むように響く歌唱です。カルタゴの城壁を模したセットをバックにして、町の模型を舞台中央に置いたプロダクションもユニークでした。

 そして「結」の第5幕はウェストブロックのほとんど一人舞台です。彼女の迫真の演技力がいかんなく発揮されて、完全にあっちの世界に行ってしまった感じです。見るものも釣られて彼女の世界に引き込まれてしまいます。すさまじい吸引力でした。

 もうホントお腹いっぱい。こんな充実感と疲労感が両立したオペラ観劇は久しぶりでした。やっぱり、パッパーノの音楽には色気があるし、気持ちがグーっと入っています。この日は行けない可能性もあったので、安全サイドをとって天井桟敷にしたのですが、この席は音は良く聴こえるものの、舞台が三分の一ぐらい隠れてしまうのが悔やまれました。ケチらなきゃよかった。

(ろくな写真がないですが・・・)




(ROHのHPから拝借)




Les Troyens
Sunday 1 July 2012, 3.00pm

Main Stage

Les Troyens
David McVicar presents a new production of Berlioz's most ambitious work. The sheer scale of its story, music and staging make this a Royal Opera event of the decade.

Credits
Director David McVicar
Set designs Es Devlin
Costume designs Moritz Junge
Lighting design Wolfgang Göbbel
Choreography Andrew George

Performers
Conductor Antonio Pappano
Cassandre Anna Antonacci
Chorèbe Fabio Capitanucci
Enée Bryan Hymel
Didon Eva-Maria Westbroek
Narbal Brindley Sherratt
Anna Hanna Hipp
Ascagne Barbara Senator
Priam Robert Lloyd
Hécube Pamela Helen Stephen
Ghost of Hector Jihoon Kim
Panthée Ashley Holland
Hélénus Ji Hyun Kim
Greek Captain Lukas Jakobski
Trojan Soldier Daniel Grice
Iopas Ji-Min Park
First Soldier Adrian Clarke
Second Soldier Jeremy White
Hylas Ed Lyon
Chorus Royal Opera Chorus
Orchestra Orchestra of the Royal Opera House
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イングリッシュ・ナショナル・オペラ/ Billy Budd

2012-07-07 22:25:59 | オペラ、バレエ (in 欧州)
Billy Budd

Britten
New Production

Credits
New production supported by ENO’s English Opera Group

A coproduction with the Deutsche Oper, Berlin and The Bolshoi Theatre of Russia

The Britten-Pears Foundation is supporting ENO’s programme of Britten operas leading up to the Centenary of his birth

Conductor Edward Gardner
Director David Alden
Designer Paul Steinberg
Costume Designer Constance Hoffman
Lighting Designer Adam Silverman
Movement Director Maxine Braham

Cast includes
Billy Budd Benedict Nelson
Captain Vere Kim Begley
Claggart Matthew Rose
Mr Redburn Jonathan Summers
Mr Flint Darren Jeffery
Lieutenant Ratcliffe Henry Waddington
Red Whiskers Michael Colvin
Donald Duncan Rock
Dansker Gwynne Howell
Novice Nicky Spence
Squeak Daniel Norman
Bosun Andrew Rupp
The Novice’s Friend Marcus Farnsworth
First Mate Oliver Dunn
Second Mate Gerard Collett
Maintop Jonathan Stoughton

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イングリッシュ・ナショナル・オペラ/ DR DEE (ドクター・ディ)

2012-07-07 07:57:08 | オペラ、バレエ (in 欧州)


 マンチェスター国際フェスティバル(MIF)が昨年委嘱した現代オペラDR DEEが、イングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)によってロンドンで初演されるということで見に行きました。デーモン・アルバーン(Damon Albarn)という1968年生まれのイギリス人シンガーソングライター、プロデューサーが作曲した作品で、ジョン・ディーという、16世紀の錬金術師、占星術師、数学者で、エリザベス女王にも交流のあったイギリス人の半生を描いています。

 非常に興味深いオペラでした。形式、音楽等において色んなフュージョン(融合)が試みてあり、はたしてこれがオペラと言えるのかどうか疑問なくらいなのですが、高度に統合されたパフォーマンスでした。舞台には、主にオペラ歌手、舞台俳優が立ち、歌やセリフはマイクを通したもので地声ではありません。音楽はオーケストラピットに入ったオーケストラに加えて、舞台上にもギター、リード、リコーダー、ドラム、リュート(コラ)、キーボードなどのバンドが奏でます。音楽も、ポップなフォークソングのような音楽、バロックを感じるクラシック音楽などが融合したものです。作曲のデーモン・アルバーン自身もギターを弾き、歌を歌い、少しですが演技もします。(この人は随分有名な人らしく、隣に座った妙齢の女性は、完全に彼の歌だけを聴きに来ていた感じでした)。ダンスも入ります。生きたカラスが飛び交うシーンまで出てきます。

 この形式、音楽上の融合に加えて、Rufus Norris監督による視覚的に美しく、いたるところに工夫が施された舞台演出に魅せられました。特に、感心したのはカーテン(スクリーン)を活用した演出です。演じている人の前に、畳2,3畳分くらいの大きさの屏風のようなカーテン(スクリーン)を舞台の端から移動させ、そのカーテンには影絵のようにカーテン後ろの出演者の輪郭が投影されるのですが、カーテンが横移動される間にカーテンに投影された像は砂時計の砂が崩れるように崩れて行きます。そしてその残像が目に残るうちに、移動したカーテンの後ろからは、新しくなった場面が現れるという仕掛けで、時間、場面の連続的変化を表現するのです。また、映像を駆使している点も印象的です。変な言い方ですが、映画「マトリックス」を生で見ているような気分になります。幻想的で、美しく、洗練された演出は、演出が売りのENOのプロダクションのなかでも、屈指のものでした。

 歌はデーモン・アルバーンの弾き語りが耳に残ります。ハスキーでかすれたような歌声は、この舞台の雰囲気にこれ以上はないというぐらいぴったりで、独特の音楽空間を作っていました。

 こんなオペラがあるのかと信じられない思いで見ながら、確かにこんな方向ならまだオペラ(?)と言う舞台芸術は未来に向かって進化しているのかもしれないと思いました。いわゆるオペラでもないし、ミュージカルでもないし、芝居でも映画でもないこの作品には、感動の仕方も今まで経験のない新鮮なものでした。



(ガーディアンのWebから)



(2012年6月29日)

Damon Albarn's Dr Dee

Albarn
New Production
Mon 25 Jun 12 - Sat 07 Jul 12

Credits
Commissioned by Manchester International Festival,
London 2012 Festival and ENO

A co-production with Manchester International Festival and London 2012 Festival

Damon Albarn stars in every performance

Conductor Stephen Higgins
Director Rufus Norris
Set Designer Paul Atkinson
Costume Designer Katrina Lindsay
Associate Costume Designer Jonathan Lipman
Lighting Designer Paule Constable
Movement Directors Scott Graham and Steven Hoggett for Frantic Assembly
Video Designer Lysander Ashton for 59 Productions
Sound Designer Paul Arditti
Orchestration Consultant André de Ridder

Cast includes

Old Katherine Anna Dennis
Kelley & Bishop Christopher Robson
Elizabeth & Spirit Melanie Pappenheim
Walsingham Steven Page
John Dee Paul Hilton
Ensemble & Young Katherine Victoria Couper
Ensemble & Jane Clemmie Sveaas
Ensemble Nuno Silva
Ensemble Chris Akrill
Ensemble & Young Dee Rebecca Sutherland
Ensemble Benny Maslov
Ensemble Hendrick January
Ensemble Naomi Said
Ensemble Vicki Manderson
Ensemble Matthew Trevannion
Ensemble James Hayward

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オペラ・ホーランド・パーク/ コジ・ファン・トゥッテ

2012-06-29 00:16:43 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ロンドンの夏の風物詩でもある野外オペラのオペラ・ホーランド・パークに、モーチュアルトのコシ・ファン・ティッテを見に行きました。

(天気が良ければ、もっと気持ちいんですが・・・)






(開演前)


 今年のロンドンの夏を象徴するような、ひどい荒れ模様の天気でした。開幕前から凄い風がテント小屋に吹き荒れ、テントの中も寒い寒い。準備のいい人は、コートを着て、ブランケットを膝にかけ、防寒ばっちり。私は、Tubeの駅で配布している無料夕刊紙を体に巻きつけ、少しでも体が冷えるのを避けようと涙ぐましい努力です。休憩時間で、もう帰るべきかどうかを真剣に悩んだぐらいです。そして、休憩後は嵐のような雨で、テントに打ち付ける雨音がうるさいぐらい。こんなコンディションの中で歌う歌手さんや、演奏するオーケストラの皆さんには「お気の毒さまです」ぐらいしかかける言葉がありません。

 そんな最悪のコンディションでしたが、オペラのほうはとても楽しく、熱い公演でした。歌手は女性陣の活躍が目立ちました。特に、フィオルディリージ役のElizabeth Llewellynが張りのある力のこもったソプラノで良かった。ドラベッラ役のJoana Searaも声が美しい。ロイヤルオペラでは(他も普通そうだと思うのですが)、女中のデスピーナ役はおばさんなのでそのイメージが強かったのですが、今回は若いお手伝いさん風。Joana Searaの歌唱はもう一つパンチにかけるものでしたが、若き日の沢口靖子風のチャーミングな感じで、演技もなかなか。楽しませてもらいました。

 演奏のほうは、かなりスローペースの演奏。指揮者のThomas Kempは私には初めての人だと思いますが、派手なところは無く堅実な指揮ぶりが印象的です。演出は極めてオーソドックス。ロイヤル・オペラの現代演出版に慣れてしまったので、レトロな雰囲気が漂うこんな演出もいいものと見直しました。

 「帰らなくてよかった」と心底思える公演で拍手。

(中央がElizabeth Llewellyn)


(指揮者のThomas Kemp)


(デスピーナ役のJoana Seara)




Opera Holland park
Così fan tutte

Wolfgang Amadeus Mozart
June 8, 13, 16, 18, 21, 24, (matinee 2pm), 28, July 4, 7 at 7.15pm

First performed at the Burgtheater in Vienna on 26 January 1790

Libretto by Lorenzo Da Ponte

Sung in Italian with English surtitles
New production


Conductor Thomas Kemp
Director Harry Fehr
Designer Alex Eales
Lighting Designer Colin Grenfell

Fiordiligi Elizabeth Llewellyn
Dorabella Julia Riley
Ferrando Andrew Staples
Guglielmo Dawid Kimberg
Despina Joana Seara
Alfonso Nicholas Garrett

With the City of London Sinfonia and the Opera Holland Park Chorus

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ロイヤル・オペラ・ハウス/ ラ・ボエーム

2012-06-24 00:24:40 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ゲオルギューとアラーニャというスター夫婦の共演による豪華版ラボエーム。さすがに舞台が華やかで、なるほどスターとはこういうものかと納得の公演だった。

 2人は舞台映えだけでなく、もちろんその実力も見せつけた。アラーニャのテノールは艶があり、かつ声量も群を抜いている。この夜も聴いていて惚れ惚れ声だった。演技もちょっとロドルフォ役には色男すぎるのではと思うところもあるが、御愛嬌だろう。ゲオルギューのミミは期待したほどの声量が無く本調子でなかった気がしたが、声の美しさや、細かい表情が感じられる歌唱表現が絶妙で、芸の細かさを感じる。そしてこのコンビが演じるミミとロドルフォの愛は、演技とは思えない距離感の近さと気持ちを感じるものだった。夫婦なんだから当たり前だろうと言ってしまうと、身も蓋もないのだが、特に3幕、4幕の二人の掛け合いでは、2人の強い投入感が見ている者を舞台に強力に引き込むものだった。

 この2人がずば抜けていたのだが、回りの歌手陣やオケも良かった。ムゼッタ役のNuccia Focileの声はキンキンしていて好みではなかったが、演技としては悪くなかったし、マルチェッロ役のバリトンは滑らかで良かった。指揮は病欠のMauizo Beniniの代役でJacques Lacombeという人が振ったが、表情豊かな音楽で、オーケストラのアンサンブルも美しかったので満足。

 が、・・・・・・正直に書く。ゲオルギューの歌唱や演技はレベルの高く、良かったと思った一方で、彼女のミミは全く私の好みでは無かった。可憐なミミではなく、熟女ミミだったからである。40代も後半に入ったゲオルギューだから仕方ないとも思うのだが、昨年の「ファウスト」ではあんなに可憐なマルグリートを演じていたのに、何故、今日は違うのか?彼女の派手な顔立ちに加えて、仕草、表情が、そう感じさせたのであろうが、1幕の2人が恋に陥る場面は、2人の若者が恋に目覚めたというよりも、不倫に目覚めた中年男女に見えてしまった。まあ、自分の勝手なミミのイメージを押しつけているだけなのだが・・・

 カーテンコールは凄い拍手だった。ゲオルギューには花束が沢山投げ込まれ、ゲオルギューもとても嬉しそうだった。確かに舞台としては華のある、レヴェルの高いものだったと思う。でも、それが必ずしも個人の満足度とは合致しない時もある。オペラとは難しいものだ。








La bohème
Saturday 23 June 2012, 7.00pm

Main Stage

Credits
Director John Copley
Designs Julia Trevelyan Oman
Lighting design John Charlton

Performers
Conductor Jacques Lacombe
Mimì Angela Gheorghiu
Rodolfo Roberto Alagna
Musetta Nuccia Focile
Marcello George Petean
Colline Yuri Vorobiev
Schaunard Thomas Oliemans
Benoît Jeremy White
Alcindoro Donald Maxwell
Chorus Royal Opera Chorus
Orchestra Orchestra of the Royal Opera House
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イングリッシュ・ナショナル・オペラ/ カリギュラ

2012-06-14 23:34:01 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ENOの新作「カリギュラ」を見に行きました。悪名高いローマ皇帝カリギュラの孤独と狂気と死を描くオペラです。歌らしい歌はなく、台詞を音楽に乗せて発生する楽劇タイプの作品です。

 舞台自体は演奏者、歌手陣ともにとても熱演だったのですが、暗くて絶望的なストーリーは正直あまり楽しめたものではなかったです。カリギュラを事例として、独裁者の哀しさを描くという作者の作品の意図は理解できるのですが、これをオペラにして公演する意味合いは正直良く解りません。オペラのテーマとして適切とは思えず、現代芸術としてのオペラの難しさを表していると思いました。
 
 でも、ENOは引き続きこうしたチャレンジを続けて欲しいです。この手の現代物の公演では、ENOも相当、集客で非常に苦労していると思うのです(今回私はストールの前から6列目の席が何と20ポンド(!)の割引価格)が、明らかにENOのお客さんはRHO(ロイヤルオペラハウス)とは違っていて、オペラに何か新しい物を求めている気がぷんぷんします。この雰囲気は私はとっても好きだし、イギリスのオペラファンの層の厚さを感じるところです。

 このチャレンジが続く限り、私も極力、ENOの公演は見に行こうと思う次第です。ガンバレ、ENO!



Caligula

Glanert
New Production

19:30 09 June 2012

Credits
New production supported by ENO’s Contemporary Opera Group

Conductor Ryan Wigglesworth
Director Benedict Andrews
Set Designer Ralph Myers
Costume Designer Alice Babidge
Lighting Designer Jon Clark
Choreographer Denni Sayers
Translator Amanda Holden

Cast includes
Caligula Peter Coleman-Wright
Caesonia Yvonne Howard
Helicon Christopher Ainslie
Cherea Pavlo Hunka
Scipio Carolyn Dobbin
Mucius Brian Galliford
Mereia/Lepidus Eddie Wade
Livia Julia Sporsen
コメント (2)
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ロイヤル・オペラ・ハウス/ サロメ

2012-06-09 23:41:10 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 見るものを完全に別世界に連れて行ってしまう磁力の強さにおいてサロメに優るオペラはない。この夜も見事にデノケによるサロメの狂気に当てられた。特に、後半20分のヨナハーンの生首を抱えて恍惚の表情で、エクスタシーに浸るサロメには背筋の凍る戦慄を覚える。私にこの趣味はないが、性的倒錯の世界がわかるような気になるから怖い。

 そして、サロメの狂気は、音楽によってえぐり出しているのではと思わせる怒濤の大音響。ここに見事なオーケストラと歌と舞台の融合がある。あっちの世界に行くのにワーグナーのオペラのように4時間も5時間もいらない。

 不満がないわけではなかった。このプロダクションは私には一昨年に続いて2回目だが、7つの踊りの演出は相変わらず地味な上に意味不明だし、オーケストラも音こそ良く出ていたものの、息のあったアンサンブルとは言いがたく各パートが自分の楽譜をこなすので精一杯な感じで統一感には欠ける演奏だった。

 それでも、この作品の持つ魔力は、こうしたあばたを覆い隠した上に吹き飛ばす。終演後も、しばらくは日常の世界に戻って来れなかった。

(この日は歌唱は本調子で無かった気がしたが、演技の迫力が圧倒的だったデノケ)


(左端のヨナハーンのEgils Silinsは地味だが、歌唱は大したものだった。中央は指揮のAndris Nelsons)


(舞台全体イメージ)



Salome

08 June 2012, 8.00pm

Main Stage

Credits
Director David McVicar
Revival Director Bárbara Lluch
Designer Es Devlin
Lighting design Wolfgang Göbbel
Choreography Andrew George
Revival Choreographer Emily Piercy
Video design Mark Grimmer (for 59 Productions)
Video design Leo Warner (for 59 Productions)

Performers
Conductor Andris Nelsons
Salome Angela Denoke
Jokanaan Egils Silins
Narraboth Will Hartmann
Herod Stig Andersen
Herodias Rosalind Plowright
First Soldier Scott Wilde
Second Soldier Alan Ewing
First Jew Peter Bronder
Second Jew Hubert Francis
Third Jew Timothy Robinson
Fourth Jew Pablo Bemsch
Fifth Jew Jeremy White
First Nazarene Andrew Greenan
Second Nazarene ZhengZhong Zhou
Page Sarah Castle
Cappadocian John Cunningham
Slave Madeleine Pierard
Orchestra Orchestra of the Royal Opera House

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イングリッシュ・ナショナル・オペラ/ 蝶々夫人 ・・・これは必見プロダクション

2012-05-27 07:21:56 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 素晴らしい舞台なので、是非、おススメしたい公演です。

 イングリッシュ・ナシュナル・オペラ(ENO)による蝶々夫人。演出をはじめ、演奏、歌手陣も素晴らしく、今まで観た蝶々夫人のなかでは一番感動した公演でした。

 必見はプロダクションです。2005年初演のプロダクションとのことですが、イギリスの映画監督アンソニー・ミンゲラ(現故人)がオリジナルダイレクターであったこの舞台は、ENOならではの斬新なプロダクションです。簡素ではあるが創造性豊かな装置、美しい照明、そしてダンス、文楽の要素も取り入れたもので、これまで観たオペラの演出の中でも、有数の優れたものでした。

 舞台装置は、私の表現力では表しにくいのですが、舞台奥に、舞台より1メートルほどの高さに大きな障子のようなスクリーンを1枚置いて舞台とは斜面でつなげることで、屋敷の外の奥行きを表します。蝶々さんの家は、舞台中から前方に障子だけを3重ほどに置き、それを適宜移動させるだけのものです。面白いのは、舞台上方に透明な鏡のようなものが観客席に向かって斜めに置かれていて、障子の奥での進行も、観客席から見えるようになっているので、舞台(屋敷)の表と裏が同時並行に見えます。

 装置はこれだけですが、この白いスクリーンや障子に、場面に応じて、夕陽を想起させる紅色、夜の群青色等の鮮明な照明が当てられるため、舞台の印象はとても豊かで、とにかく美しいです。そして、冒頭部分から数回、日本舞踊と西洋のダンスを折衷したようなダンスが織り混ぜてあり、これも美しいです。

 そして、極めつけは、文楽のような黒子を使った演出です。この演出では、蝶々さんの子供は人形で、黒子が文楽のように操る。人形の顔が無表情でグロテスクなので気持ち悪いのですが、子供の動きは生身の人間のごとく自然で、観る者は人形を通じて自分の子供像を頭の中に自然と作ります。こんな演出の仕方もあるのだと、感じ入りました。黒子はこのほかにも、棒にくくりつけた鳥や提灯の動きも、操作するのですが、当たり前ながら機械には絶対できない動きですから、効果抜群です。

 もちろん、日本人としてはいろいろ気になるところもあることはあります。衣装は芸者でも着ないような派手な色合いとデザインで見られたものではありませんし、日本人男性の衣装や髪形も、これはどこの国の人?と思うほど、平安朝の貴族の衣装に中国風の色合いを加えたような風体で、気分が悪いです。ただ、そうした点は差し引いても、装置でなく、色彩、動き、想像力を使って舞台を雄弁に語りあげる。これほどまでに演出に感心したオペラはあまり記憶にありません。

 演出もさることながら、オーケストラ、歌手も素晴らしかったです。イタリア人指揮のOleg Caetani(オレグ・カエターニ)と言う人は、全くの初めてだと思うのですが、非常に情熱的な指揮をする人で豊かで雄弁な表現です。オーケストラもこれがENOのオケ?と思うほど、素晴らしいアンサンブルで、演出と音楽の組み合わせがこれほどマッチした公演も珍しいと思う程でした。

 歌手陣も健闘です。歌手陣のなかでは、ピカートン役のGwyn Hughes Jonesのテノールが、伸びがあって柔らかい声で、良かったです。蝶々さんのMary Plazas(メアリー・プラザス)は、驚くほど小柄な人。失礼ながら、蝶々さんにしてはちょっとベテラン過ぎる感じがしましたが、大袈裟すぎない範囲でとっても気持ちが入った熱演でした。歌は特筆する程ではないのですが、ベテランだけあって、ちょっと動きが日本人的になっていて、ガイジンさんが蝶々さんを演じる違和感は最小限に抑えられています。シャープレスの John Fanning、スズキの Pamela Helen Stephenらも良いです。

 ENO特有の英語上演は違和感を感じるところはありますが、この公演は観ておいて損は無いと思います。6月2日が最終日であと3回ほどありますので、お時間の合うかたは是非。


※演出のイメージは、ENOのHPの広告クリップをご覧ください→

※ストール席のほうが、障子裏を映す鏡や舞台の奥行きがわかるので、この舞台を楽しめる気がします。



(中央がメアリー・プラザス)


(指揮のオレグ・カエターニ)




Saturaday, 26 May 2012 18:30
English National Opera

Madam Butterfly/ Puccini

Credits

Revival supported by American Friends of ENO
Original production supported by Lord and Lady Laidlaw
A co-production with the Metropolitan Opera, New York, and the Lithuanian National Opera

Conductor Oleg Caetani
Original Director Anthony Minghella
Original Associate Director and Choreographer Carolyn Choa
Revival Director Sarah Tipple
Set Designer Michael Levine
Costume Designer Han Feng
Lighting Designer Peter Mumford
Revival Choreographer Anita Griffin
Puppetry Blind Summit Theatre: Mark Down and Nick Barnes

Cast includes
Cio-Cio San Mary Plazas
F.B. Pinkerton Gwyn Hughes Jones
Kate Pinkerton Catherine Young
Sharpless John Fanning
Suzuki Pamela Helen Stephen
Goro Michael Colvin
The Bonze Mark Richardson
Prince Yamadori Jonathan McGovern



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ロイヤル・オペラ・ハウス/ ラ・ボエーム

2012-05-25 23:50:03 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 「ラ・ボエーム」が大好きである。「あの、甘ったるい青春讃歌ね」と言われようとも、好きなものは好きである。「椿姫」と、ヒロインが恋人と居る中で他界するというラストシーンでは似ているが、「椿姫」には何ら感情移入しないが、「ラ・ボエーム」には涙が出る。

 「ラ・ボエーム」は、ロイヤルオペラハウスのドル箱なので、これまでも何度もやっていたのだけど、何故か見る機会に恵まれなくて、今回やっと見ることができた。

 今回、最も印象的だったのは、セミヨン・ビシュコフの創る音楽。ビシュコフのことは、ロンドンに来て初めて知ったのだけど、こちらでは彼の指揮は何回も聴くことができた。いつも重厚で情熱的な音楽を聴かせてくれる。この日も、下手するとお涙頂戴の感傷音楽になるところを、優美さとドラマティックでうねりのあるスケールの大きなさが並存する素晴らしい音楽を聴かせてくれた。オーケストラにも拍手!

 歌手陣は総じて男性陣の方が目立った。とりわけ、ルドルフ役のジョセフ・カレヤのテノールが声の伸びやかさ、優雅さ、声量の大きさで際立っていた。女性陣は悪いとは思わなかったが、もうひとつ印象が弱かった。ミミのカルメン・ジャンナッタージョは可憐な雰囲気がミミにぴったり。でも、歌唱に特徴が無く、主役としてパンチ不足は否めなかった。あと、私的に一番気になる役所であるムゼッタは代役でマドレーヌ・ピラードが演じた。派手な顔立ちで舞台映えし当たり役だったと思った一方で、歌唱も演技もムゼッタらしいはつらつさに欠け、ちょっぴり不満。

 プロダクションは私がオペラDVDを初めて買った1982年のロイヤルオペラのラボエームのDVDとまだ同じ。でも、薄暗いパリのアパートの屋根裏部屋の雰囲気や、明るくにぎやかな酒場、粉雪が舞う美しいパリの邸宅前といった舞台は、古典はいつでも普遍というばかりに、美しく、抒情的だった。

 好きなオペラをこうやって聴ければ、もうそれだけで満足。とって幸せな気持ちで、劇場を後に出来た。

(Joseph Calleja)


(女性陣は左がMadeleine Pierard、右がCarmen Giannattasio)


(指揮のSemyon Bychkovも入って)



La bohème

Saturday 12 May 2012, 7.30pm

Main Stage

Credits
Director: John Copley
Designs: Julia Trevelyan Oman
Lighting: design John Charlton

Performers
Conductor: Semyon Bychkov
Mimì: Carmen Giannattasio
Rodolfo: Joseph Calleja
Musetta: Madeleine Pierard
Marcello: Fabio Capitanucci
Colline: Yuri Vorobiev
Schaunard: Thomas Oliemans
Benoît: Jeremy White
Alcindoro: Donald Maxwell
Parpignol: Luke Price

Chorus Royal Opera Chorus
Orchestra Orchestra of the Royal Opera House
コメント (2)
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イングリッシュ・ナショナル・オペラ/ さまよえるオランダ人

2012-05-24 00:09:14 | オペラ、バレエ (in 欧州)
新プロダクション。良かった。ROH版より個人的に好み。3幕の宴会シーンはゼンダが輪姦されるようなシーンで、少々趣味が悪いが、1幕の映像を取り入れた幻想的かつ視覚的な舞台作りや、2幕のオーソドックスながらも木造と白熱灯によるシックな照明が雰囲気を作っていた。

オーケストラは個々の細かな首をかしげるところはあるが全体として情熱的で劇的な演奏だった。特に3幕の盛り上がりは良かった。
ガーディナーはやっぱり良い。

迫力ある合唱がとても目立った舞台でもあった。タイトルロールはこのやくが持つ怪しさにおいて不十分だったが、バリトンとしては上手い。ゼンダやくが最初かなり不安定でがっかりだったが、尻上がりに調子をあげて、終盤は見事な歌唱だった。ただ喉から絞り出すようなソプラノは好みではない。恋人役は大根役者だったが歌は良い。父親は良い。

しかし空いてたな。97ポンドの席がなんと25ポンドで2階席前から5列目。2階席は後ろ半分は全くの空席だった。どうしてだろう?




The Flying Dutchman
Wagner
New Production

Sat 28 Apr 12 - Thu 24 May 12

Credits
New production supported by a syndicate of individual donors

Conductor Edward Gardner
Director Jonathan Kent
Designer Paul Brown
Lighting Designer Mark Henderson
Choreographer Denni Sayers
Video Designer Nina Dunn

Cast includes
Daland Clive Bayley
Senta Orla Boylan
Erik Stuart Skelton*
Daland’s Steerman Robert Murray
The Dutchman James Creswell
Mary Susanna Tudor-Thomas


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ロイヤル・オペラ・ハウス/ 連隊の娘 (ドニゼッティ)

2012-05-01 21:57:47 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ドゼニティのオペラ『連隊の娘』を見に行きました。ロイヤルオペラでは、このプロダクションでは、これまでタイトルロールのマリー役をナタリー・デセイ(Natalie Dessay)が演じ、最高級の賛辞を受けていたのですが、今回は初めてデセイでないソプラノが出演ということで、違った意味で注目を浴びている公演です。

 そのマリー役を演じたのは、パトリツィア・チョーフィ (Patrizia Ciofi) というイタリア人ソプラノです。流石にデセイには歌、演技ともに一歩及びませんでしたが、かといって何か不満があるかというと決してそんなことはなく、安定した歌唱で、しっかりデセイを引き継いでいたと思います。

 前回は、マリーの恋人トニー役にはフローレスが出ていて、これまた大変な評判だったわけですが、私は前回切符を買い間違えたらしく、フレーレスではなくコリン・リーで聞いています。そして、今回はそのコリン・リーが再び登場。前回同様、柔らかで優しく、かつ声量もあるテノールを聞かせてくれ、ソロ、重唱のたびに聴衆から大きな拍手をもらっていました。ちょっと、演技が大根と言えば、大根だと思うのですが、あの歌を聴かせてくれれば、文句は言いません。

 笑いの絶えない楽しいオペラですし、音楽も耳に優しく心地よいです。プロダクションは特に凝ったところはありませんが、明るくオペラの雰囲気を楽しい雰囲気をよくサポートしています。会場全体にとても和やかな、暖かいムードが充満していた公演でした。今回はAmphithatre Upper Slipsという一番高いところからの観劇でしたが、なんと13ポンド。超お値打ちでした。


(コリン・リー)


(パトリツィア・チョーフィ)


(指揮のYves Abelも一緒に)




27 April, 2012/ 19:30

La Fille du régiment
Donizetti's entertaining opera marches onto the stage in Laurent Pelly's witty production. Irrepressible humour, catchy melodies and comic coincidence make for a delightful evening.

Credits
Director: Laurent Pelly
Music: Gaetano Donizetti
Revival Director: Christian Rath
Dialogue: Agathe Mélinand
Set design: Chantal Thomas
Costume designs: Laurent Pelly
Lighting: Joël Adam
Choreography: Laura Scozzi
Revival Director: Christian Rath

Performers
Conductor: Yves Abel
Marie: Patrizia Ciofi
Tonio: Colin Lee
Sulpice: Alan Opie
La Marquise de Berkenfeld: Ann Murray
Hortensius: Donald Maxwell
La Duchesse de Crackentorp: Ann Widdecombe
Corporal: Jonathan Fisher
Chorus Royal Opera Chorus
Orchestra Orchestra of the Royal Opera House

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ロイヤルオペラ 『リゴレット』

2012-04-29 00:14:35 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 何故、こんなロンドンマラソンの前夜にオペラのチケットを取ってしまったのか?と最後まで行くか行くまいか迷ったのですが、前半だけ観て帰ればいいかと思い、足を運びました。そしたら、歌手陣、オケともに引き締まったレヴェルの高い好演で、結局最後まで観てしまいました。

 リゴレット役のディミートリ・プラタニアスはとても安定したバリトンで、歌声が心地よく耳に入ります。いわゆる男前タイプとは正反対を行く外見がまたリゴレット役にぴったりで、演技も素晴らしく、舞台がしっかり締まっていました。また、好色男マントヴァ公爵を演じるのは、プラタニアスとは反対の超男前のテノール、グリゴーロ君。これがまたはまり役の上、歌唱は相変わらず惚れ惚れする素晴らしさ。声量もたっぷり、声の質も豊かで表情がある彼のテノールは間違いなく世界トップクラスだと思います。
 非運の女性ジルダ役のLucy Croweはまだそれほど実績もない、これからの若手歌手のようですが、繊細だけども声量ある高音ソプラノはとても魅力的でした。まだ歌の表現や細かい演技はこれからという感じもしますが、むしろその素朴さがジルダの役柄ともマッチして、非常に好感度高いものがありました。これからが楽しみです。この3役が非常に良かったので、観ていて全く飽きることのなく、常に集中してみることが出来ました。
そして、演奏の方もこれが素晴らしかったです。ガーディナーさんがロイヤルオペラを指揮するのははじめて聴いたのですが、流石と思わせる非常にシャープな音楽作りで、パッパーノさんが振る時のように際立った演奏でした。メリハリが効いたバトンさばきがすばらしかったです。

 本プロダクションによるリゴレットは2009年、2010年と観ているので、今回で3回目だったのですが、間違いなく今回が一番だったと思います。翌日のマラソンを控え、カーテンコールには参加せず、終演直後に劇場を出ましたが、満足感一杯でした。


Rigoletto
Saturday, April 21 2012 7:30 PM

Credits
Composer; Giuseppe Verdi
Director; David McVicar
Set Designs; Michael Vale
Costume Designs; Tanya McCallin
Lighting; Paule Constable
Associate Director and movement director; Leah Hausman

Performers
Conductor; John Eliot Gardiner
Duke of Mantua; Vittorio Grigolo
Rigoletto; Dimitri Platanias
Gilda; Lucy Crowe
Maddalena; Christine Rice
Sparafucile; Matthew Rose
Giovanna; Elizabeth Sikora
Count Monterone; Gianfranco Montresor
Marullo; Zhengzhong Zhou
Matteo Borsa; Pablo Bemsch
Count Ceprano; Jihoon Kim
Countess Ceprano; Susana Gaspar

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ロイヤルオペラ/ Miss Fortune

2012-03-19 22:28:26 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ロイヤルオペラの新作ミスフォーチュンMiss Fortune (UK初演) を観に行きました。英国の女性作曲家Judith Weirのオペラです。 私が目にした新聞での批評は、あまり芳しくなかったので、「逆に期待できるのでは?」と期待を持って出かけたのですが、正直、かなりがっかりさせられた公演でした。

 個々のパーツで見ると悪いわけではありません。タイトリロールのEmma Bellは良かったし、プロダクションも、矢継ぎ早に変わるセットや照明の色合いも美しく、楽しめました。また、ブレイクダンスのグループが終始、舞台上で切れのあるダンスも披露してくれます。

 でも、何か全体がうまく噛み合っていないというか、ちぐはぐなのです。そして、音楽が単調で盛り上がりがない。人生のアップダウンがテーマで、賭け事が絡むというストーリーは、プロコフィエフのオペラ「賭博師」に似ている気がしますが、あのエキサイティングで緊張感に満ちたプロコフィエフの音楽とは盛り上がりが全然違います。

 現代ものの新作であるがゆえにリスクは付き物なのでしょうが、逆に、普段観ている作品が、歴史のふるいにかけられたものであるということが良くわかりました。オペラという舞台芸術の難しさを感じさせられた作品でした。



Miss Fortune

The Royal Opera
12 March 2012 to 28 March 2012
Main Stage

Running time: 2 hours | 1 interval

Sung in English with surtitles

Credits
Composer and librettist: Judith Weir
Director: Chen Shi-Zheng
Set design: Tom Pye
Costume design: Han Feng
Video design: Leigh Sachwitz
Movement: Ran Arthur Braun

Performers
Conductor: Paul Daniel
Tina (Miss Fortune): Emma Bell
Lord Fortune: Alan Ewing
Lady Fortune: Kathryn Harries
Fate: Andrew Watts
Hassan: Noah Stewart
Donna: Anne-Marie Owens
Simon: Jacques Imbrailo

Chorus
Royal Opera Chorus

Breakdancers
Soul Mavericks

Orchestra
Orchestra of the Royal Opera House


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オペラ バスティーユで〈ペレアスとメリザンド〉を観る

2012-03-15 22:44:06 | オペラ、バレエ (in 欧州)

今までで一番モダンな劇場。現代的というよりもSF映画にでも出てきそうな未来を予感させる洗練されたデザインと暗い照明は、実世界と離れた雰囲気たっぷり。上にも横にも大きい劇場。音響も素晴らしい。
ホワイエが広々としていて休憩時間もしっかりくつろげる。
日曜日のマチネのせいか、ラフな格好の人が多い。
















オペラは美しい音楽と象徴的な演出が印象的。歌というよりも言葉に音楽が乗っている感じなので、歌唱を楽しむわけではない。

ソプラノは美しい。繊細な表情と優雅な動作で舞台上の存在感はピカ一。続いてはおじいさんやくのバリトンが低い低音とどっしりした存在感がいい。ゴローはまずまず。王子は今一つ存在感薄し。

プロダクションは装置はほとんど無く、スクリーンに投影する美しく幻想的な照明が中心。登場人物の動きは最初はむしろバロックオペラのように動きはないのだが、少ない動きはもバレエのような身体の動きになっていて、芸術的である。

言葉がわからないので外国人には難しくかなり激しい睡魔に襲われた。が、公演のレベルは相当高いと思う。


PELLÉAS ET MÉLISANDE

PELLÉAS ET MÉLISANDEDRAME LYRIQUE IN FIVE ACTS AND TWELVE SCENES (1902)

Philippe Jordan Conductor
Robert Wilson Stage director and sets
Frida Parmeggiani Costumes
Heinrich Brunke, Robert Wilson Lighting
Holm Keller Dramaturgy
Giuseppe Frigeni Co-stage director
Stephanie Engeln Collaboration on sets
Alessandro Di Stefano Chorus master

Stéphane Degout Pelléas
Vincent Le Texier Golaud
Franz Josef Selig Arkel
Julien Mathevet Le Petit Yniold
Jérôme Varnier Un Médecin, Le Berger
Elena Tsallagova Mélisande
Anne Sofie Von Otter Geneviève

Paris Opera Orchestra and Chorus

 

2012年3月11日


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