その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

LPO "Aureliano in Palmira" (パルミーラのアウレリアーノ)

2010-10-24 21:22:08 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ロンドン・フィルによるロッシーニのオペラ「パルミーラのアウレリアーノ」を見に行きました。オペラ・ララ(1970年にイギリスで創設されたレーベルで、19世紀に活躍したオペラ作曲家の作品、特に、ほとんど上演されることのなくなってしまった作曲家のオペラ作品を鮮やかに蘇らせてきたところに定評がある)の40周年記念上演です。あらすじを一口で言うと、273年のパルミーアが舞台。ローマ皇帝アウレリアーノはパルミーラに侵攻するが、ペルシャの王子Arsaceとパルミーラ女王Zenobiaの強い愛を認め、解放するというお話です。

 とても完成度が高く、感動的な公演でした。

 独唱、オーケストラ、合唱の全てがバランスよく素晴らしかったのですが、特に独唱陣が印象的でした。私としては、パルミーラ女王Zenobiaを歌ったCatriona Smithのソプラノに特に感動しました。何というか歌が気品に溢れており、声が素晴らしく安定的で、かつ美しい。聴き入ってしまいました。また、ペルシャの王子役のArsaceのメゾ・ソプラノも、純真さと勢いを感じる一本気な声の張りに魅入られました。タイトルロールのアウレリアーノ役Kenneth Tarverはその精悍で凛とした姿勢にまず魅かれます。視線の強さと言い、かなり強いオーラを発してます。声量は大きくありませんが、声のふくよかさが素晴らしかったです。これらの独唱陣による独唱、重唱はこれ以上は無いというほどの至福の時間でした。

 音楽の美しさも良かったです。耳に優しい、聴きやすい曲ではじめてでもすんなり入っていけます。「知っているはずのないのに聴いたことがある曲」もあり楽しめました。LPOはとても劇的かつふくよかな演奏をしていたと思います。特に、弦の響きが美しかったです。指揮者Maurizio Beniniという方は知らない方ですが、外見は普通のおじさんですが、丁寧に音楽を作っていく感じで、職人的な巧みを感じるものでした。

 コーラスもいつもながら美しいです。

 筋自体は「愛は勝つ」的な単純なモチーフですが、音楽や独唱、重唱の美しさは格別でなぜこのオペラがそれほど世にでないのか不思議なぐらいでした。

 最近、せっかくの良い演奏、歌唱が醜い演出で台無しにされる経験が多いので、こうした演奏開放式のオペラは本当に嬉しかったです。

(第1幕終了後)


(終演後)



Royal Festival Hall

London Philharmonic Orchestra
Resident at Southbank Centre
Saturday 23 October 2010

Gioachino Rossini: Aureliano in Palmira - opera in 2 acts

(Concert performance in Italian with English surtitles)

Maurizio Benini: conductor
Catriona Smith: Zenobia
Silvia Tro Santafé: Arsace
Kenneth Tarver: Aureliano
Andrew Foster-Williams: Gran Sacerdote
Vuyani Mlinde: Licinio
Ezgi Kutlu: Publia
Geoffrey Mitchell: Choir

コメント (2)
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