その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

カルロス・ルイス サフォン (著), 木村 裕美 (翻訳) 『風の影〈上〉・〈下〉』 (集英社文庫、2006年)

2016-05-30 10:28:26 | 
 

 ロンドン勤務時代に一緒に仕事したカタル―ニャ・フリークの友人から勧められた一冊。原著は2001年発刊。バルセロナを舞台に、フリアン・カラックスという謎の作家を巡っての、少年ダニエルの冒険が描かれる。ミステリーとして、主人公の成長物語として、恋愛アドベンチャーとして、バルセロナの現代史としてなど、いろんな読み方ができる。

 登場人物が多いこともあり、前半はペースに乗るのにやや手間取ったが、一度乗ってしまうと、ページをめくる手が止まらなかった。ストーリー展開のスリリングさとともに、登場人物がどれも個性的だ。真っ直ぐで、ひたむきに前を向いて人生を歩む主人公ダニエル。そして、ダニエルの父が経営する書店の店員フェルミンの毒舌ぶりと機転は、暗く湿った感じが漂う物語の中盤に、明るさや爽快さをもたらしてくれる。

 17言語、37カ国で翻訳出版され、世界中から支持されているというのも納得できる。私も是非、お勧めしたい。

 いかにも映画になりそうな作品だが、映画化の話はないのだろうか?

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映画 「道」 (監督 フェデリコ・フェリーニ、1954年)

2016-05-24 00:09:05 | 映画


 地元の図書館で借りて観てみた。1954年製作・公開のイタリア映画。原題はLa Strada(ロンドンでStradaというレストランがあったけど、こういう意味だったのね)。1956年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞している。

 怪力を売りに地方巡業する大道芸人の男と、その男に買われて相棒として行動を共にする知能は弱いが純真な女(少女?)との道中が描かれる。現実の厳しさ、人の優しさが、装飾なく自然に切り取られており、白黒の映像効果も加わって、しみじみとした気分に浸れる。

 大道芸人とペアを組んで道化として芸をするジェルソミーナ役のジュリエッタ・マシーナが表情豊かで、無味乾燥で荒涼とした道中の映像を活き活きとしたものにしてくれる。孤独で、不器用、暴力的な大道芸人を演じるアンソニー・クインとの対比が鮮やか。

 作品の一つの軸となるニーノ・ロータの音楽が美しく、耳に残る。2010年のバンクーバー冬季オリンピックでフィギュアスケート男子シングルの高橋大輔選手が使った曲だという(Wikiより)。

 現代の映画では、なかなか出会えない落ち着きと深みを持った映画だ。


キャスト

アンソニー・クイン
ジュリエッタ・マシーナ
リチャード・ベースハート
アルド・シルヴァーニ
マルセーラ・ロヴェーレ

スタッフ
フェデリコ・フェリーニ 監督
フェデリコ・フェリーニ 脚本
エンニオ・フライアーノ 脚本
トゥリオ・ピネッリ 脚本
ニーノ・ロータ 音楽

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N響 5月定期Cプロ/ 指揮:ネーメ・ヤルヴィ/ ベートーヴェン交響曲 第6番「田園」ほか

2016-05-22 06:11:49 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 まるまる一月生音から遠ざかっていたので、この日は朝から気分高揚。しかも、今回の指揮は2014年4月以来のヤルヴィ・パパ。

 一曲目のロシアの作曲家カリンニコフの交響曲第1番は、恥ずかしながら作曲家からして全く初めて。ロシアの民謡風の音楽が入るなど、抒情性豊かな美しい曲です。全くの初めてでも、自然に音楽に入り込んでいける。特に第2楽章は、ハーブ、イングリッシュホルン、オーボエの音色が何とも優しく、もうステージに向かって、自分が溶けていきそうな感覚でした。比較対象が無いのでなんとも言えませんが、ヤルヴィ父さんの指揮は、クリアで見通しが良い。大いに盛り上がる第4楽章でも、一定の節度を保ちつつ、鳴らすところは鳴らす。職人的なバランスの良さを感じます。

 休憩後は、ベートーベンの田園。これはきっとスタンダードな王道演奏であろうと勝手に思っていたところが、大いなるサプライズでした。スローなテンポで入り、昔よく聴いたような懐かしさを覚える「田園」風のところもありましたが、芸が細かい、いろんな細工がありました。

 特に、第2楽章などは、弱音部分は、こんな「田園」聴いたことがないと思わせるぐらい、音を抑えるところは、徹底的に抑えます。聴く方は、まるで、森や林の中で、「今鳴いた鳥はどこにいるのだろう」と、静かに耳を澄ますような感じでオケに耳を傾けるのです。不思議なことに、普段以上に一つ一つの音がイキイキとかつ新鮮に耳に飛び込んできます。「この曲のここでは、こんな音がなってたんだ」と新たな発見もありました。

 そして、3楽章以降、強いところはしっかり強く。そのコントラストがまた見事で、表情豊かな音楽です。ベテランの味たっぷりの演奏でした。きっと、幾度となくこの曲を演奏しているはずのN響も、今回のアプローチは新鮮だったのではないでしょうか?

 終演後は、終始オケを立てるヤルヴィ父さん。強面のご面相とは一味違ったお愛想を見せてくれました。息子のパーヴォとはどんな会話するんでしょうね。ちょっと興味あるな・・・



第1836回 定期公演 Cプログラム
2016年5月21日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

カリンニコフ/交響曲 第1番 ト短調
ベートーヴェン/交響曲 第6番 ヘ長調 作品68「田園」

指揮:ネーメ・ヤルヴィ


No.1836 Subscription (Program C)

Saturday, May 21, 2016 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)

NHK Hall

Kalinnikov / Symphony No.1 g minor
Beethoven / Symphony No.6 F major op.68 “Pastorale”

Neeme Järvi, conductor
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映画 「のぼうの城」 (監督: 犬童一心、樋口真嗣 2011)

2016-05-19 22:02:09 | 映画


 職場の同僚と埼玉県行田市(彼が住んでいる)の話になった。埼玉県には3年間の勤務・居住経験があるが、正直、行田市と聞いても何のイメージを浮かんでこない。だが、彼によると「映画『のぼうの城』の舞台の忍城(おしじょう)があったんですよ。映画も面白いですよ」らしい。

 映画のタイトルは知っていたが見たことなかったので、せっかく紹介頂いたのでDVDを借りてみた。エンタメ時代映画として、文句なしの傑作だった。

 戦国時代は大河ドラマをはじめ、いろんな物語、ドラマに接してきたが、恥ずかしながら本映画の主人公、成田長親なる武将は知らなかった。なんと、500の兵で、石田三成率いる2万の豊臣軍を打ち負かしたという。普段は「でくのぼう」をもじって「のぼう様」と言われていたこの武将を、野村萬斎が面白おかしく演じている。脇を固める佐藤浩市、山口智充も万全。

 笑いあり、ドキドキ感あり、見終わった時には気分爽快。のんびり、難しいことを考えたくない時に最適の映画だ。




監督:犬童一心、樋口真嗣
脚本:和田竜
原作:和田竜

製作:久保田修
製作総指揮:信国一朗、濱名一哉、豊島雅郎

出演者
成田長親:野村萬斎
甲斐姫:榮倉奈々
正木丹波守利英:佐藤浩市
酒巻靭負:成宮寛貴
柴崎和泉守:山口智充
石田三成:上地雄輔
大谷吉継:山田孝之
長束正家:平岳大
たへえ:前田吟
かぞう:中尾明慶
ちよ:尾野真千子
ちどり:芦田愛菜
留:ピエール瀧
山田帯刀:和田聰宏
成田泰高:谷川昭一朗
すが:ちすん
権平:米原幸佑
雑賀の狙撃兵:中村靖日
服部大五郎:黒田大輔
市原直右衛門:古村隼人
佐竹義宣:笠原紳司
成田氏長:西村雅彦
北条氏政:中原丈雄
珠:鈴木保奈美
成田泰季:平泉成
和尚:夏八木勲
豊臣秀吉:市村正親
ナレーション:安住紳一郎

撮影:清久素延、江原祥二
編集:上野聡一
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1泊3日の弾丸出張の合間にスタンフォード大キャンパスをジョギング

2016-05-16 22:23:26 | 日記 (2012.8~)
 先週後半、ボスのお供で急きょ米国シリコンバレーに出張しました。今回も凄いスケジュール。金曜日の19:00過ぎの飛行機に乗ると、日付け変更線をまたいで時計の針がぐーっと戻って、現地には同じ金曜日のお昼前に到着します。午後から午後8時までパートナー会社との打ち合わせ、その後夕食会。そして翌日の土曜日は朝8時半から夕刻4時まで打ち合わせ。そのまま空港に向かい、7時過ぎの飛行機に乗って、羽田空港に日曜日の夜の10時半着。この予定だと、日本の職場を留守にするのは金曜日の午後だけで済みます。でも、こんな日程を組んだのは誰だ!?

 この急な出張のため、楽しみにしていた日曜日のチック・コリアと小曽根真が共演するN響定期にも行けず涙。ただ、そんな中で、唯一の息抜きは朝の小一時間を使ってのホテル近くにあったスタンフォード大学キャンパス内のジョギング。これまで、このエリアは冬場しか訪れたことが無かったのですが、今回初めて、初夏の緑が映えるキャンパスを走ることができました。何枚かスマフォで撮ったスナップをご紹介します。


《キャンパスの中心部へ向かうPalm road。朝早くて人がいない》


《立派な大学博物館。入ってみたいがまだ8時前なので入れません》


《博物館横にあるロダンの彫刻》


《キャンパス中心部》


《中国からの観光ツアー客もいました》


《伝統・格式はOxbridgeにはかないませんが、大学って良いですね》


《大学の教会》


《いわゆる大学生協。1時間後には開店するんだけど・・・残念。いろいろ大学グッズをお土産で買いたいのに》


《前回訪れたときはこの辺りは工事中でしたが、随分綺麗になってました》


《カレッジ・フットボールのビルボード》

 大学キャンパスって居るだけで、可能性に満ちたプラスの気が感じられる、不思議なところです。短い時間でしたが、一杯の元気を貰いました。

2015年5月14日 AM6:45~AM7:40

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出張で松山へ行く

2016-05-13 00:29:42 | 旅行 日本
 ゴールデンウィークの谷間に滅多にない国内遠距離出張で松山を訪れました。十年ぶりの松山出張です。

 自由時間は殆どありませんが、歩きながら松山っぽいと感じたスナップを何枚か。

 バスで空港から松山市駅に。

《路面電車が走る町は風情を感じますね》

 昼食場所を探しに駅横のアーケード街をキョロキョロ。

《昭和っぽい雰囲気ですが今のポスター》
 

《駅前に愛媛名物じゃこ天のお店を発見》


《美味しそうなので一枚頂きました》


《愛媛と言えば柑橘類》

 午後の打ち合わせとその後の意見交換会という飲み会が終わって。ホテルは道後温泉エリアのビジネスホテル。名物の道後温泉本館を見学。閉館の10時前だったこともあり、中には入らず。昭和どころか、明治ですよね。








 翌日は朝7:30には町を出ねばならなかったので、朝一番で道後温泉本館へ突撃。


《開館(6:00)の10分前には、既に行列が》


《開館の太鼓の音と一緒に管内へ》

 風呂は観光客と地元の人が7:3ぐらいの印象でしたが、レトロな風呂は出張中ということをわすれさせてくれるような旅気分一杯。

《風呂内は撮影禁止。これは2階の休憩所です》




《2階休憩所では、お茶と茶菓子がもれなくついてきます》


 今回はほんのさわりだけ、松山の香りを嗅いただけですが、一度、プライベートでゆっくり訪れたい町です。

 2016年5月6-7日
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田坂広志 『仕事の技法』 (講談社現代新書、2016)

2016-05-11 20:00:00 | 


 田坂氏の著作を久しぶりに読みました。10年以上前に、シンプルな表現で宗教家のように仕事の本質を説く氏の幾つかの著作を、一時集中的に読みましたが、ここ数年はすっかりご無沙汰してました。

 今回は、図書館の新刊コーナーで見つけ手に取りました。タイトル通りいわゆるハウツー本ですが、全編を通して、「深層対話」の重要性、そのやり方を説いています。深層対話とは、ノン・バーバル(非言語)コミュニケーションのことです。

 本書の特徴は、いろんな実際の職場での会話の再現を通じて、深層対話とは何かを示していることでしょう。職場「あるある」的に自らの体験と照らし合わせて読むことができるので、腹落ち感もあります。

 例えば、本書では下記のような、いわゆるレッスンで各章が締められますが、その前段階の実例としての会話が紹介されますから、「なるほど」となるわけです

 ・商談や交渉、会議や会合の後には必ず、「直後の反省会」を行え
 ・「直後の反省会」では、時間の流れに沿って、「追体験」を行え
 ・「追体験」においては「相手の視点」に徹し、「相手の心の動き」を想像せよ

 私が、本書が単なるハウツー本だけでないと思うのが、最終話で説かれる「相手の、深い「敬意」を持って接する」というところです。えてしてこの手の技法は「操作主義」に陥る危険を孕んでいますが、やはり人のコミュニケーションの基本は、相手に対するリスペクトだと思うのです。

 特に、若い人にお勧めしたい一冊です。




第一話 すべての分野で役に立つ「仕事の技法」は「深層対話の技法」
第二話 「仕事のできる人」は必ず身につけている「相手の心を感じ取る技法」
第三話 「心配り」や「気配り」の本質は「言葉以外のメッセージ」を感じ取る力
第四話 相手の「真意」や「本音」を感じ取る「深層対話力」
第五話 「言葉以外のメッセージ」こそが相手に伝わってしまう
第六話 本を読んだだけでは掴めない「プロフェッショナルの技法」
第七話 「深層対話の技法」が身につく本の読み方
第八話 多忙な日々の中でも深層対話力を身につける「反省の習慣」
第九話 商談や交渉、会議や会合の直後に必ず行うべき「追体験」
第一〇話 「追体験」において求められる「視点の転換」
第一一話 相手の表情、仕草、動作から感じ取る「言葉以外のメッセージ」
第一二話 優れたプロフェッショナルから学ぶべき「深層対話の視点」
第一三話 「一人での反省」がしばしば陥る「解釈の誤り」
第一四話 究極の「深層対話力」を身につける「深夜の反省日誌」
第一五話 「深夜の反省日誌」において見つめるべきは「自分の心の動き」
第一六話 相手から必ず見抜かれる心の中の「操作主義」
第一七話 「直後の反省会」を効果的にする「場面想定」の技法
第一八話 「場面想定」の習慣で身につく最も実践的な「戦略思考」
第一九話 「無意識に相手に伝えているメッセージ」に気がつく高度な「深層対話の技法」
第二〇話 最も成熟した「深層対話力」は「聞き届け」の技法から
第二一話 すべての仕事において活用すべき「深層対話力」
第二二話 「心理学」を学ぶだけでは決して身につかない「深層対話の技法」
第二三話 「深層対話力」とは極めて切れ味の良い「諸刃の剣」

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METライブビューイング プッチーニ 《マノン・レスコー》

2016-05-09 21:10:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 先月観たライブ・ビューイング。時間もたってしまっているので、備忘録的メモ。

 「マノン・レスコー」は昨年の新国立劇場のチケットを持っていたのにもかかわらず、休日出勤となり行けなくなってしまった(涙)ので、今回のライブ・ビューイングで埋め合わせ。

 サプライズは、急きょキャンセルとなったヨナス・カウフマンに代わって出演したロベルト・アラーニャ。なんと「マノン・レスコー」への出演は初めてで、METで公演中の「道化師」を降板して準備にあてたとか。(アラーニャ目当てで「道化師」のチケット買った人の暴動は起こらなかったのかな?)

 そして、この舞台、私にはデ・グリューを演じたアラーニャの独壇場に見えました。アラーニャは、ロンドンで何度か観てますが、相変わらず思いっきり気持ちの入った演技と歌唱で、まったく初めての役柄とは感じさせません。私から見ると、このグリュー、情けないただのストーカー男なはずですが、このダメ男に感情移入してしまうほど、素晴らしかった。

 題名役のクリスティーヌ・オポライスは美人ソプラノ。不満はまったくありませんが、今回はアラーニャに持ってかれた感じ。

 ルイージは、一昨年のN響で初めて聞いて以来、気に入ってます。今回も、過度に甘すぎず、素直に耳に入ってくるルイージが振るオケの音色を堪能しました。

 しかし、いつ観てもMETはキャスティングが豪華絢爛だなあ。最後に行ったのは、1995年だったからあれから20年以上も経ったのか。とほほ・・・。




指揮:ファビオ・ルイージ 演出:リチャード・エア

出演:クリスティーヌ・オポライス、ロベルト・アラーニャ、マッシモ・カヴァレッティ、ブリンドリー・シェラット

上映時間:3時間16分(休憩2回)[ MET上演日 2016年3月5日 ].言語:イタリア語

Conductor: Fabio Luisi

Production: Sir Richard Eyre

Cast: Kristine Opolais (Manon Lescaut), Roberto Alagna (Des Grieux), Massimo Cavalletti (Lescaut), Brindley Sherratt (Geronte)


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桐野夏生 『バラカ』 集英社 2016

2016-05-06 00:00:30 | 


 現代テーマを扱ったミステリー。原発被災者の棄民化、権力による情報操作、世界中で行われている子供の売買市場等、ニュースで知る、私には日常の向こう側の出来事がよりリアルに感じられる。緊張感あり、テンポよしで、一気に読める。

 難点は、小説とは言え、登場人物が現実的でないほど相互に関連して、ストーリー展開が上手くできすぎている感じがするところだろうか。リアリティーがあるようで、リアリティーが感じられないもどかしさは残る。

 現代的で骨太なテーマを扱った作者の問題意識には、大いに共感するだけに、やや不完全燃焼感があったのは残念だが、力作であり、十分一読に値する。



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目に沁みる新緑 -ゴールデンウィーク 箱根旅行-

2016-05-03 00:00:30 | 旅行 日本
 GWの前半、箱根(強羅)に母と1泊2日で出かけました。たまに箱根湯本の日帰り温泉に行くことはありますが、宿泊してゆっくりすることは滅多にありません。今回は天気にも恵まれ、目が眩むような新緑の中、リラックスした時間を過ごすことができました。


(箱根湯本駅にてロマンスカーから登山電車に乗り換え)


(登山列車の車窓から。緑で一杯)

【ポーラ美術館】 →HPはこちら
 初めて訪れる美術館です。緑に溢れたロケーションの魅力を最大限引き出した美術館です。丁度、「Modern Beauty フランスの絵画と化粧道具,ファッションにみる美の近代」という企画展をやっていました。企画展の他にも、常設の印象派から近代日本画家までの選りすぐり15枚の絵画が展示してあり、どれも見ごたえがあります。


(美術館入口)


(企画展入口)

 加えて、素晴らしかったのは、美術館の裏に整備された全長670mの「森の遊歩道」。木洩れ日の中、瑞々しい空気を深呼吸し、鳥の鳴き声に耳を澄ましながら歩いて、マイナスイオンを一杯吸収。体の細胞が隅々まで生き返る感覚です。





【強羅界隈の早朝散歩】
 翌日は6時前に目が覚めたので、さっそく、バードウォッチングも兼ねた朝のウォ―キングへ。坂道だらけの強羅エリアをせっせと歩き、ケーブルカーの終点早雲山駅まで歩いてみました。朝の爽やかな空気が心地よいです。朝日に照らされた早雲山の見晴らし台からの風景は雄大ですが、春霞がかかっていて、海の方はぼんやり。


(朝もやの中のケーブルカーの線路)


(大涌谷へのハイキング道は未だ立ち入り禁止)

【箱根美術館】  →HPはこちら
 チェックアウトぎりぎりまで宿でのんびりし、その後は強羅界隈の観光スポットを訪れました。箱根美術館は初めてです。陶磁器を中心とした展示ですが、縄文式土器とか古墳時代の埴輪(重要文化財)があり楽しめました。また、ここには日本式庭園が整備されており、苔庭が見事です。

(蛇足ですが、書道家・美術家でもあり宗教家でもある岡田茂吉氏が創設した美術館とのことで、ちょっと独特な雰囲気が少しあります(しかも、この日は丁度、氏創設の世界救世教の大会合があったようで、信者さんたちが大挙して観覧にいらしてました)。が、あまり気にせず、純粋に展示品や庭園を楽しみましょう。)


(木々だけでなく、苔も新緑)



【強羅公園】 →HPはこちら
 箱根美術館と向かいにある強羅公園。こちらは西洋式庭園です。昭和の香りがする園内のCafeで午前中からビール。ぜいたくな時間です。


(公園中央の入口には大きな杉の木)


(いい日だなあ~)



 こちらの穴場は、北側にある白雲洞茶苑。賑やかな公園中心部とはうって変わった静寂の世界。丁度、ウグイスが複数羽さえずっており、修養があれば、思わず一句詠みたくなるような環境です。


(新緑に包まれる茶室)


(この木のどこかでウグイスが鳴いてます)

 お昼過ぎに、お蕎麦を食べて、箱根湯本でお土産買って、夕方帰京。絵にかいたような、箱根での保養となりましたが、想像以上の天候と新緑に恵まれて、心身ともにリフレッシュすることができました。


(帰路につく時に乗ったケーブルカーの車窓から)
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東京交響楽団/ R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」ほか

2016-05-01 11:20:22 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
 2週間遅れの演奏会感想です。都響の作曲家シリーズが終了したので、今シーズンから東響の東京オペラシティシリーズの会員になりました。今回はその1回目。東響とノット監督のコンビは2年前のお披露目コンサート以来です。

 今回特筆すべきは、なんと言ってもプログラミング。リゲティのポリフォニーの音楽の間にパーセルを入れ込んだ前半が素晴らしかった。

 リゲティについては全く持って無知でした。冒頭の「2001年宇宙の旅」のエンディングで使われた「アトモスフェール」を聴いてびっくり。高校生の時にこの映画を映画館で観たときは、音楽と思わず、単なる効果音ぐらいにしか思ってなかった。お恥ずかしい・・・。今回3曲のリゲティの曲を聴いて、ポニフォニックな音楽の美しさを堪能しました。

 そして、そのリゲティの曲を間に挟んだパーセルの曲が一層、優雅に聞こえます。ヴィオラ・ダ・ガンバという楽器もきっと初めてです。照明をぐっと落として、2階のオルガン横に陣取った合奏団にスポットライトを当てたのも、リゲティからよりバロック的な雰囲気を盛り上げ効果的でした。5曲続けての演奏が終わった後の拍手が大きく、長かったこと。4回呼び戻しを受けてました。

 休憩後はシュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」。こちらも全曲フルで聴くのは、前回の記憶がないほど久しぶりです。東響とノットさんは、頭からパワー全開で圧倒されました。ただ、この曲は私自身、導入部の「日の出」以外は馴染みがないので、よく分かないというのが正直なところ。まだまだ修行が足りません。

 東京オペラシティコンサートホールは大きすぎず、響きがいいのがとっても好きです。今回は1階席の後部は結構、空席が目立ち残念でしたが、このシリーズ、これから楽しみです。



東京オペラシティシリーズ 第91回

東京オペラシティコンサートホール

2016年04月16日(土)14:00 開演

指揮:ジョナサン・ノット

ヴィオラ・ダ・ガンバ:神戸愉樹美
ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏団

リゲティ:アトモスフェール
パーセル:4声のファンタジア ト調 Z.742、二調 Z.739
リゲティ:ロンターノ
パーセル:4声のファンタジア へ調 Z.737、ホ調 Z.741
リゲティ:サンフランシスコ・ポリフォニー
R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」 作品30


Tokyo Opera City Series No.91
Sat.16th April 2016, 2:00p.m.
Tokyo Opera City Concert Hall
Conductor = Jonathan Nott
Viole da Gamba = Yukimi Kambe Viol Consort

Program
G.Ligeti : Atmosphères
H.Purcell : Fantasia Z.742, Z.739
G.Ligeti : Lontano
H.Purcell : Fantasia Z.737, Z.741
G.Ligeti : San Francisco Polyphony
R.Strauss : Also sprach Zarathustra, op.30

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