その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

高橋俊介 『ホワイト企業』 PHP新書

2014-02-22 13:41:57 | 


 今年は全然読書のペースが遅い。最近まで、会社指定のとある検定試験のお勉強をしていたし、図書館でリクエストした本がどれも廻ってこないとかの理由なのだが、久しぶりの一冊。

 高橋俊介氏の人的資源管理(HRM)の書籍は殆ど読んでいる。氏の著作の多くは、「理論と実践」、「個人と企業」のバランスが上手に取れているのが特徴だ。私のような実務家にとって、実務を客観化・理論化し、その理論を実務に活用するサイクルをまわすことができる点において、読んでためになるところが多い。

 本書の内容は、最近の流行言葉ともいえる「ブラック企業」に相対する「ホワイト企業」というタイトルがキャッチーで目を引いた。内容は、「日本におけるサービス業の健全な発展のためのHRMはどうあるべきか」を考えることを通じ、製造業中心の日本のHRM理論から一皮むけた、今後の日本企業のHRMについて考察するというものである。

 サービス業という切り口でHRMを考察した視点は著者ならではだと思う。非正規雇用社員中心の人材使い捨てのイメージが強い「サービス業」において、どういうHRMが望ましいのか?

 筆者は、サービス業の職種を「個別性」「専門性」の2軸の高低で分類し、「個別性・高×専門性・高」のプロフェッショナル業務(弁護士、医師・・・)、「個別性・高×専門性・低」の顧客接点サービス業務(看護師、宿泊業・・・)、「個別性・低×専門性・低」のオペレーション業務(鉄道乗務員・・・)、「個別性・中×専門性・中」の職人的業務に分類し(もちろん色んな中間形態はありうる)、求められる人材育成やマネジメントを考察している。これは、サービス業という業種・職種における切り口として有用なだけでなく、会社の中の様々な職種を考える上でも参考になる。

 また、筆者が沖縄での実践を通じて、現場と向き合っている姿勢も好感が持てる。やや自画自賛的なところもあるものの、一企業のHRMに留まらず、それをコミュニティや自治体のレベルにまで視点や施策を引き上げて、政策的に展開するところまで提言をしているところは流石だと思った。

 人事に関連する人、興味を持つ人にはぜひ読んで欲しい一冊だ。


 ★★★★☆

(いくつか抜粋)
・顧客接点での心理的付加価値や感受性に基づく個別性対応を求めない小売りは、インターネット販売に変わっていくだろう(p70)

・意思決定における「情報、能力、権限の一致」の法則(p96)

・日本的発想からの脱却:①分業発想からの脱却、②精神主義からの脱却、③序列概念から役割概念への転換、④人物評価固定化というジェネラリスト発想からの脱却(p108)

・変にモチベーションをアップさせるような短期の研修はモチベーションでなくテンションをアップしているだけに過ぎない(p114)

・個別性が高く変化の激しいサービス業の現場では、上司の指導よりも現場にいる同僚からの学びの方がずっと効果が大きい。管理者の仕事は、学びのファシリテーターに徹すること。教える以上に学びあう職場を整備すること。(p182)

・個別性、専門性の高い職場の経営人材には現場経験が必要。工場長は現場経験がなくてもできるが、病院長は医師の経験がないとできない。



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雪掻きのため遅刻  N響C定期/ ネヴィル・マリナー指揮/ ドヴォルザーク交響曲 第8番

2014-02-17 23:31:22 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 いや~、週末は東京もすごい雪でしたね。土曜日の朝、先週末にも劣らない雪に車や家が覆われていました。雪は既に雨に変わっていたものの、風は強いし、重い雪が雨水を吸い取り、我があばら家が雪の重みで潰れないかと心配になるほど。

 11時過ぎには雨もやみ明るくなってきましたが、今度はご近所さん一堂による大雪かき大会の始まり。午後のN響定期に備え、さっさと自宅前は特急で済ましたものの、バス通りに出るまでの100メートルほどの細道を隣の70を過ぎたおじいさんが一生懸命やってくださっている。そして、それに引っ張られるように近所のオジサン連中も手伝う。「そこまでややらなくてもいいんじゃないですか?腰に来ますよ。気温が上がってきたから、放っておけば、溶けますよ。体優先で行きましょうよ」と声をかけてみたものの、「いやあ、この辺りをやっておけば、皆さん車を出せるでしょう~」と一向に止める気配なし。そんな中、私が「スイマセン、外出するのでお先に失礼します~」といって途中抜けなどとても出来る雰囲気でなく、結局、一段落して解散したのは14:00前。コミュニティの責務は一応果たしたものの、楽しみにしていたマリナーさん指揮のN響定期はスタートに間に合わず、ダッシュで駆け付け後半の1曲のみの鑑賞となりました。


≪雪が残るホール前≫

 そのマリナーさんとN響によるドヴォルザーク交響曲第8番。とっても心地良い演奏でした。マリナーさんの指揮は、(たしか)私は初めてなのですが、クリアで堅実。必要以上にスラブ色を強調したり、濃淡をつけることなく、見通し良くまとめ上げるという感じ。とても今年90歳を迎えるとは思えない、背筋がピンと伸びた、折り目正しい指揮ぶりです。N響との相性も良いようで、管も弦も良く鳴っていて、安定してハイレベルな演奏でした。民族とか、物語とかを考えるのではなく、音楽そのものを味わうべきとでも言うような曲作りです。

 終演後の熱い拍手も印象的でした。聴衆は、この日と同様、雪に見舞われた先週末よりも多かった様な気もしましたが、普段よりは少ない。それでも、拍手の暖かさ、大きさは特筆すべきものでした。更に、楽団員さんからも大きな賞賛がマリナーさんに寄せられていたのも気持ちが良かったです。ステージ上で照れるマリナーさんと、客席、ステージ双方から送られる拍手。何とも、ほのぼのとした演奏会です。

 1曲のみの鑑賞ではありましたが、無理してでも行って本当に良かったと温かい気持ちでNHKホールを後にしました。


≪NHKホール三階後方部の廊下から≫


第1776回 定期公演 Cプログラム
2014年2月15日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール

ドヴォルザーク/交響曲 第7番 ニ短調 作品70
ドヴォルザーク/交響曲 第8番 ト長調 作品88

指揮:ネヴィル・マリナー

No.1776 Subscription (Program C)
Saturday, February 15, 2014 3:00p.m.
NHK Hall

Dvorak / Symphony No.7 d minor op.70
Dvorak / Symphony No.8 G major op.88

Neville Marriner, conductor
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10代のためのプレミアム・コンサート アラン・ギルバート&ニューヨーク・フィルハーモニック

2014-02-14 00:00:19 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 過去に何度か我が子を連れてクラシックのコンサートに行ったのですが、全然響きませんでした。直ぐに居眠りに入るのを見て、かえって親のほうがイライラする始末。なので、最近はそうした無駄な努力は一切止めてました。

 ただ、今回の「10代のためのプレミアムコンサート」は何とニューヨーク・フィル(NYP)。しかもウエスト・サイド・ストーリーのシンフォニック・ダンスとガーシュインのラプソディ・イン・ブルーが含まれている十八番プログラム。更に、好きな小曽根真さんがピアノ独奏!通常の大人向けプログラムは高価で手が出ないけど、ファミリー向け企画のためか、チケット代も何とかなる範囲。これは、行かないわけにはいきません。いうことで、我が子を拉致し、サントリーホールへ連行しました。


≪こんな特等席は私も初めて!≫

 結果は・・・、今回は親子ともども大喜びの演奏会となりました。それは、そうでしょう、こんな素晴らしい演奏者とプログラムなんだから。

 スタートは、小曽根さんの楽しいナビゲーションで始まりました。そして、直ぐにギルバートさんの解説付きのブリテン「青少年のための管弦楽入門」の演奏に入ります(指揮はアシスタントコンダクターのジョシュア・ワイラースタインさん)。ギルバートさんは日本語で解説してくれました。日本人のお母さん(NYPのヴァイオリニストとしてこの日は親子出演)を持つとはいえ、母国語ではない日本語で、カンペを見ながら一生懸命、解説してくれるギルバートさん。全身から誠実オーラが漂ってきます。

 続いては、福島とニューヨークの子供たちが連作した作品「ミュージック・フォー・フクシマ」。日本初演です。福島からの3曲とその各曲に呼応したニューヨークからの3曲の計6曲からなる作品が披露されました。合わせても10分程の小品集ですが、しっかりと聴かせてくれます。演奏後、小曽根さんがP席最前列に座っていた福島からの作曲家さんたちを紹介し、会場からも大拍手でした。

 休憩を挟んでは、ギルバートさんの指揮で、定番であろうウエスト・サイド・ストーリーのシンフォニック・ダンスとガーシュインのラプソディ・イン・ブルー。NYPのとてつもなく肉厚だけどもジューシーで切れ味鋭い高級とんかつのような音に、体が飛ばされてしまうんではないかと思ったほど。加えて、各パートから惜しみなく披露される名人芸にも痺れっぱなし。草食系と肉食系、農耕民族と狩猟民族、というステレオタイプな対比が的を得ているかどうかは別として、在京オケとの(優劣とは別の)違いをまざまざと見せつけられた感じ。

 ラプソディ・イン・ブルーのピアノ独奏を担当した小曽根さん。ナマで聴くのは、2009年のエディンバラ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル以来(こちら①→こちら②→)です。相変わらず、軽快でカッコいいし、何より聞いていてウキウキ楽しくなってきます。余りにNYPの音が大きかったため、合奏部分ではピアノの音が聞こえにくかったというところはあったかと思いましたが、小曽根ワールドを堪能しました。

 そして、暖かい大拍手に応えてのアンコールには、何と小曽根さんとNYPのコントラバス奏者とトロンボーン奏者のトリオによるジャズ演奏(曲名はわかりません)。会場もリズムに合わせて手拍子。「音楽って楽しいよね」という空気がホール一杯に満ち溢れていました。

 弾んだ様々の親子の会話に取り囲まれながら、溜池山王駅に向かう帰りの道すがら、我が子からは「こういうのなら、また来たいかも」との生意気発言。今回が如何に貴重な経験であるかをわきまえないコメントに苦笑いしながらも、喜んでくれたことは素直に嬉しかったです。今回の企画元であるソニー音楽財団及び出演者の皆さんには本当に感謝です。ぜひ、今後もこういった企画を続けてほしいですね。間違いなく音楽の裾野を広げていくと信じます。少なくともこの日で一人は広がりましたので・・・




10代のためのプレミアム・コンサート
アラン・ギルバート&ニューヨーク・フィルハーモニック

日時2014年2月11日(火・祝) 18:00 開演 東京サントリーホール

曲目

ブリテン:青少年のための管弦楽入門
「ミュージック・フォー・フクシマ」~福島とニューヨークの子どもたちによる『ベリー・ヤング・コンポザーズ』プログラム作品(日本初演)
バーンスタイン:『ウエストサイド・ストーリー』から「シンフォニック・ダンス」
ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー

指揮&ナレーション:アラン・ギルバート
指揮:ジョシュア・ワイラースタイン
ピアノ:小曽根真
ニューヨーク・フィルハーモニック


<Sony Music Foundation 30TH Anniversary concert>

ALAN GILBERT CONDUCTS NEW YORK PHILHARMONIC
PREMIUM CONCERT FOR TEENAGER NO.1
Cond:Joshua Weilerstein
Pf:Makoto Ozone

Britten/ The Young Person's Guide to the Orchestra
"Music for Fukushima" Compositions written by Children of Fukushima and New York under the "Very Young Composers' Program (Japan Premiere)
Bernstein/ Symphonic Dances, West Side Story
Gershwin/ Rhapsody in Blue

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雪で行けなかった人は大残念  N響 Aプロ/ 指揮:尾高忠明/ シベリウス・プログラム 

2014-02-11 07:44:55 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 前日は20年ぶりの大雪に見舞われた首都圏。溶けた雪が残り足元が滑る中、N響2月Aプロへ行きました。この日は、シベリウスを得意とする尾高さんによるシベリウス・プログラム。私の大好きな「四つの伝説」がメインで、以前から楽しみにしたものです。雪の影響か、聴衆は7割ほどの入りでしたが、前日の寒さを吹き飛ばす熱い演奏会でした。

 弦楽器の美しいアンサンブルが印象的だったアンダンテ・フェスティヴォに続いては、ヴァイオリン協奏曲。独奏のワン・ジジョンさんを聴くのは初めてです。サッカーのオランダチームのような、鮮やかなオレンジ一色のドレスで現れたワン・ジジョンさんの音色は、情熱的ではあるけど、しつこくない。取りにようによっては没個性的で教科書のような演奏にも聞こえますが、私には自然で誠実な音として胸に響きました。不思議に一つ一つの音が無色透明のまま、体に浸み入る感覚で、私のその日の周波数にぴったりとチューニングされた感じ。相性ってあるんでしょうね。とても幸せな気分に浸ることができました。

 休憩後の、シベリウスの「四つの伝説」。個人的にも色んな思い出が詰まった曲です。有名な「トゥオネラの白鳥」は池田さんのイングリッシュ・ホルンの音色がいつもながら美しい。確か、5,6年前にこの曲だけで定演で取り上げられ、池田さんのソロを聴いた覚えがありますが、その時よりも更に色艶がある音色に聞こえました。

 そして、私にはそれ以上に、呼応するチェロの音色の奥深さに痺れました。私の座席の角度からは誰だか良く分からなかったのですが、向山さん?物悲しいが、優しく、包み込むような音に、すっかり物語の世界に自分を引き込まれてしまいます。

 指揮の尾高さんはさすがシベリウスを知り尽くした感じ。この曲の神秘さ、スケール感を縦横無尽にN響から引き出します。実は、恥ずかしながら、日本を代表する指揮者である尾高さんも私にとっては初めてだったのですが、学者さんっぽい知的さと熱い情熱を併せ持った指揮ぶりは引き込まれますね。この曲、もっと土っぽいというか、更に重心が低い演奏を聴き慣れていたのですが、尾高さんの曲つくりはより見渡しが良く、明快なものに聞こえました。

 この日は私の両隣とも空席でとってもリラックスしながらの鑑賞だった上に、充実した演奏を聴けて大満足。5時でもまだ明るさが多少残り、陽が伸びつつあるのを感じながら幸せ気分いっぱいでNHKホールを後にしました。



≪開演前のNHKホール前。労働組合系の政治団体がデモ中≫


≪終演後のNHKホール≫



NHK交響楽団
第1775回 定期公演 Aプログラム
2014年2月9日(日) 開場 2:00pm

NHKホール

シベリウス/アンダンテ・フェスティヴォ
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
(アンコール: ラフマニノフ(ジンゴールド編)/ヴォカリーズ)
シベリウス/交響詩「四つの伝説」作品22 「レンミンケイネンと乙女たち」「トゥオネラの白鳥」「トゥオネラのレンミンケイネン」「レンミンケイネンの帰郷」

指揮:尾高忠明
ヴァイオリン:ワン・ジジョン


No.1775 Subscription (Program A)
Sunday, February 9, 2014 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)

NHK Hall

Sibelius / Andante festivo
Sibelius / Violin Concerto d minor op.47
Sibelius / Four Legends”, sym. poem op.22 ‘Lemminkäinen and the Maidens of Saari’ ‘The Swan of Tuonela’ ‘Lemminkäinen in Tuonela’ ‘The Return of Lemminkäinen’

Tadaaki Otaka, conductor
Zhi-Jong Wang, violin
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うずめ劇場 「砂女」(ピーター・ゲスナー演出) @ザ・スズナリ

2014-02-09 11:23:24 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 20年ぶりの大雪に見舞われた東京。帰りに電車が止まったらどうしようとびくびくしながら下北沢に芝居を見に行きました。ひょんなきっかけで紹介された、うずめ劇場による「砂女」という舞台です。


≪下北沢は演劇祭開催中!≫

 会場の下北沢 ザ・スズナリという小劇場。雑居ビルのような建物の2階から入ります。小さな舞台に10人掛け×10段ぐらいの作りで、ぎゅうぎゅうに100名程度が肩を寄せ合って見るようなところです。ロンドンの小劇場やエンジンバラ・フェスティバル・フリンジを思い起こさせ、なんか懐かしい気分。大雪にもかかわらず、会場は満員で熱気むんむんでした。


≪ザ・スズナリ≫

 お話は、安倍公房の「砂の女」です。砂丘に昆虫採集に来た「男」(都会の学校の先生)が謎の砂に囲まれた穴の中に建ったあばら家に監禁される。あらゆる方法で脱出を試みる「男」とそれを引きとめる「女」の倒錯した関係が描かれます。

 学生時代に読んだ話なので、原作の詳細は忘れてしまっているのですが、原作が持つ常識と非常識が倒錯した世界と不条理が緊張感たっぷりに表現された舞台でした。

 「男」役の荒牧大道さん、「女」役の後藤まなみさんの熱演に引き込まれます。後藤さんは、「女」の世界観、諦観、希望を独特の田舎ことば(どこの方言かは分かりませんでしたが)と動きで、上手く表現した怪演。荒牧さんも、都会の「男」の常識、物事の前提、論理が、砂の穴の中の生活で、砂のように徐々に移り変って行く変化を表していました。お二人に大拍手です。

 舞台はあばら家を中心としたシンプルな作りながら、映像効果を上手く取り入れたもので、見る人の想像力を掻き立てる作りになっていたと思います。演劇としての完成度も高く、ペーター・ゲスナーさんの演出がしっかりしているという印象を持ちました。

 本作は同劇場による「砂男」(エルンスト・ホフマン原作)という作品とペアになっている作品で、演出家は異なるけど、同じスタッフと俳優で行うと言う企画です。残念ながら私は、「砂男」の方は見ることができないのですが、2作を見るときっともっと違ったことが見えてくるのだと思います。

 演劇はロンドンでちょとかじった程度ですが、演劇の面白さは万国共通ですし、日本では言葉も良く分かるので、これからも機会を見つけて、足を運んで見ようと思います。




「砂女」 原作=安部公房
構成・演出=ペーター・ゲスナー

≪公演スタッフ≫

演出 ペーター・ゲスナー 天野天街(少年王者舘)
舞台美術 石原敬
照明 桜井真澄
音響 岩野直人
映像 浜嶋将裕
音楽 坂本弘道
「砂女←→砂男」オリジナルテーマソング 『今日』
歌 UA 作曲 坂本弘道
衣装 仲村祐妃子
宣伝美術 アマノテンガイ
ロゴ 田岡一遠
スチール 宮内勝
振付 夕沈

舞台監督 井村昂
舞監助手 伊東龍彦 村信保
演出助手 二宮彩乃 石坂雷雨
文芸担当 藤澤友
制作 佐藤武 松尾容子
主催 うずめ劇場


≪キャスト≫
後藤まなみ
荒牧大道
井村昂
荒井孝彦
石山慶
太田朝子
奥野美帆
キム ナヲ
河村岳司
日下諭
日下範子
竹内もみ
高橋佑輔
谷原広哉
二宮彩乃
政修二郎
山村涼子

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石井裕也 監督/ 「舟を編む」

2014-02-05 08:20:31 | 映画


 劇場公開中に行きたかったのですが行けずじまいとなった「舟を編む」がDVDになっていたので、さっそくレンタルしてきました。出版社で辞書編纂を担当する人たちが、新しい辞書を作り上げるお話です。

 ほのぼの心暖まる良質の邦画でお奨めです。私自身、辞書を作り上げるということがこれほどの根気と年月の要る一大プロジェクトであることを初めて知りましたし、言葉の持つ美しさ、意味合いの大切さについて、改めて気づかされました。

 主演の松田龍平さんをはじめ、それぞれの役者さんが持ち味を十分に活かした好演です。宮崎あおい、オダギリジョー、加藤剛など実力派俳優の自然な演技が、落ち着ついて映像に集中させてくれました。

 IT化、ディジタル化、ネット化で世の中のスピードが劇的に早くなっている中、この辞書編纂の世界は今なお残る古きアナログ世界にも見えます。現代を描く映画ではあるけども、この世界自体、もう既にこの映画から大きく変わっているところもあるのだろうと思います。そんな失われつつあるアナログ、紙の世界における、この世界ならではの「人と人の繋がり」、「時間の流れ」が自然に描かれているところに、見る者は懐古的になってしまうのでしょう。

 しっかりと心に残り、鑑賞後に「良い映画だった」とつぶやいてしまう秀逸な作品です。



キャスト
馬締光也:松田龍平
林香具矢:宮あおい
西岡正志:オダギリジョー
岸辺みどり:黒木華
タケ:渡辺美佐子
三好麗美:池脇千鶴
村越局長:鶴見辰吾
佐々木薫:伊佐山ひろ子
松本千恵:八千草薫
荒木公平:小林薫
松本朋佑:加藤剛
宮本慎一郎:宇野祥平
江川:森岡龍
戸川:又吉直樹
小林:斎藤嘉樹
編集者:波岡一喜
ポスターの女優:麻生久美子

スタッフ
監督:石井裕也
脚本:渡辺謙作
プロデューサー:土井智生、五箇公貴、池田史嗣、岩浪泰幸
撮影:藤澤順一
照明:長田達也
美術:原田満生
録音:加藤大和
編集:普嶋信一
音楽:渡邊崇
衣装:宮本まさ江
ヘアメイク:豊川京子
製作:「舟を編む」製作委員会(テレビ東京、松竹、アスミック・エース、電通、光文社、朝日放送、テレビ大阪、読売テレビ、朝日新聞社、フィルムメイカーズ、リトルモア)
製作プロダクション:リトルモア、フィルムメイカーズ
特別協力:三省堂、三省堂印刷
配給:松竹、アスミック・エース


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蝶々夫人 @新国立劇場

2014-02-02 22:19:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 タイトルロールのアレクシア・ヴルガリドゥさんの熱演を初めとした歌手陣、オケの情熱的かつ安定したパフォーマンスで素晴らしい「蝶々夫人」でした。
 
 アレクシア・ヴルガリドゥさんは、初日の公演を体調不良でキャンセルしていたので、出てくれるのかどうか気が懸りだったのですが、今日は無事出演。日本人から見ると西洋人の蝶々さんは何かと気になる(障る)ことが多いのですが、アレクシア・ヴルガリドゥさんはかなり良い線いってました。なで肩で和服も似合うし、所作もしっかり稽古してる感じ。そして何よりも、初日キャンセルしてしまったせいか、とっても気合が入っているのが4階席からも十分見て取れました。声も美しく、ピンカートンとの愛を信じつつも、裏切られるけなげな蝶々さんに幾度か思わず涙がこぼれてしまいました。この方、ギリシャの方のようですが、今日の舞台姿は、吉永小百合さんと沢口靖子さんを足して2で割ったようなチャーミングな美人さんで私的にもとっても好み。

 ※この日のヴルガリドゥさんの舞台写真が新国立のホームページで掲載(こちら→)

 ピンカートン役のミハイル・アガフォノフさん、シャープレス役の甲斐栄次郎さんも美しい声がよどみなく劇場に響き渡り、ブラボーです。目立つ役柄ではありませんが、スズキ役の大林智子さんも堅実な歌唱で舞台が締ります。

 私の席からは全く指揮姿は見えなかったのですが、女性指揮者のウィルソンさんと東響の音楽も迫力満点でした。個人的には「蝶々夫人」はもう少しねっとりした演奏が好みですが、スケールと切れの良さが引き立つ演奏で、これはこれで素晴らしい。カーテンコールで舞台に上がったウィルソンさんを観たら、細身で身長の高いこと。映える方です。

 演出は栗山民也氏。昨年、「リア」の演出が素晴らしかったので大いに期待していました。舞台は以外とシンプル。左手に階段を置き、センターに菱形に形取った家屋の居間。決して、何が悪いというわけではないですが、私には特に印象に残るものではありませんでした。

 「蝶々夫人」はストーリーとしては正直好みではありません。蝶々さん、可哀想すぎるし、これ見ると、やっぱり「国家も人間も強くなって、舐められずに自立せねば、こうした悲劇はなくならない!」などと妙に力んでしまうのです。ただ、それにしても、いつもながら音楽の美しさ(私は特に第2幕1部終わりのハミングコーラスが好み)、蝶々さんの純粋さには涙してしまいます。いつも、私にはとっても複雑なオペラです。


2014年2月2日

【指揮】ケリー=リン・ウィルソン|Keri-Lynn Wilson
【演出】栗山民也
【美術】島 次郎
【衣裳】前田文子
【照明】勝柴次朗

キャスト
【蝶々夫人】アレクシア・ヴルガリドゥ|Alexia Voulgaridou
【ピンカートン】ミハイル・アガフォノフ|Pinkerton:Mikhail Agafonov
【シャープレス】甲斐栄次郎|
【スズキ】大林智子
【ゴロー】内山信吾
【ボンゾ】志村文彦
【ヤマドリ】小林由樹
【ケート】小野和歌子

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団
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