その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

2021年ラン納め 多摩川遊歩道を走る 狛江~調布~府中

2021-12-31 07:16:57 | 日記 (2012.8~)

 今年最後のランニング。小田急線和泉多摩川駅近くの多摩川水道橋近辺から京王線聖蹟桜ヶ丘駅近くの関戸橋まで片道12k弱を多摩川に沿って走りました。このコースのランニングは、遮るものないですし、見晴らしよく、実に気分爽快です。しばしば、サイクリングの「暴走族」が居て注意は必要ですが、年の締めには相応しい。

 少しづつ再開している各地のマラソン大会ですが、今年の私はこの多摩川沿いを走るハーフの小規模大会に出たのが唯一のレースとなりました。大会が無いと、どうしても練習にも身が入らず、今年初めに故障もあったせいもあり、年間走行は1110キロ程と月平均100キロを切る惨状。

 来年は是非、フルマラソンにリターンしたいです。一応、4月の長野マラソンにエントリーしたので、フルマラソンの走り方忘れちゃったぐらいですが、一から練習開始したいと思います。

 皆様、良いお年をお迎えください。

 

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N響12月B定期、指揮:山田和樹、ベートーヴェン交響曲第3番「英雄」ほか

2021-12-30 13:09:03 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

(2週間遅れの演奏会感想です)

若手日本人指揮者としては、世界的に活躍しているである山田和樹さんが登壇です。

冒頭のマーラーの「花の章」。こうしたソフトで雅な音楽は、N響の弦の美しさが引き立ちます。心地よくてあやうく寝落ちするところを何とか踏みとどまりました。

シュトラウスの「最後の4つの歌」。私の中では2009年5月にベルリンで、アバド、ベルリンフィル、メゾがキルヒシュラーガーで聴いた感動的な舞台が今でも脳裏に焼きついています。
今回、佐々木さんのソプラノも厳かで美しかったです。ただ、舞台奥のP席だと歌曲はつらいですね。歌手の背中を見ながら前に向かって進む歌声を後ろから追いかけるように聴くのは、(P席に)慣れてないこともあり難しいです。デリケートなニュアンスまで感じ取るのは私にはハードル高かったです。しょうがないですね。

後半のベートーヴェン第3番。熱量高い聴きごたえある演奏でした。第1楽章はテンポよくサクサク進みますが、それでいてオーケストラからは厚みあるふくよか音が奏でられます。第2楽章もオーボエをはじめ管楽器の調べが美しい。ただ意外にさらっと流れてしまい、個人的にはもう少し感情的な重みが欲しいところがありました。第3,4楽章は畳みかける切れの良い演奏がダイナミックにホールに響きます。一気呵成でフィナーレに向かう指揮者とオーケストラの真剣勝負が見ごたえ、聴きごたえ満点でした。

初めて前から山田さんの指揮姿を拝見しましたが、自信をもってリードする姿が印象的ですね。多くの実演に接したわけではないですが、往年の小澤征爾さんにも少々似ているような気もします。ドイツを拠点に活動されているようですが、これからも定期的に登壇を期待したいです。

第1947回 定期公演 Bプログラム
2021年12月16日(木)開演 7:00pm

サントリーホール

指揮:山田和樹※
ソプラノ:佐々木典子※

※当初出演予定のディマ・スロボデニューク(指揮)、ホーカン・ハーデンベルガー(トランペット)から変更。

マーラー/花の章※
R. シュトラウス/4つの最後の歌※
ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」※
※出演者変更に伴い上記曲目に変更。


No. 1947 Subscription (Program B)
Wednesday, December 15, 2021 7:00p.m.
Suntory Hall

Kazuki Yamada, conductor
Noriko Sasaki, soprano

Mahler / "Blumine" movement*
R. Strauss / 4 Letzte Lieder*
Beethoven / Symphony No. 3 E-flat Major Op. 55 "Eroica"*
*Artists and program have been changed from initially scheduled Dima Slobodeniouk (Cond.) and Håkan Hardenberger (Trumpet).


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N響、指揮:尾高忠明、ベートーヴェン「第9」演奏会 @東京芸術劇場

2021-12-27 07:30:16 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

 年末の風物詩ベートーヴェンの第9。今年はルイージ氏の第9が聴けるということでチケットを購入しましたが、コロナ禍で来日不可に。ピンチヒッターとして尾高忠明氏が登壇です。ルイージさんの欠場はショックでしたが、代役が尾高さんなので、これはこれで楽しみでした。

尾高氏の第9は装飾無しの直球の「正統派」。第1、2楽章は早すぎず、遅すぎずの切れの良い演奏で引きつけられます。

心を奪われたのは第3、4楽章。もともと大好きな第3楽章なのですが、N響の管陣の繊細なソロや合奏と美しい弦のアンサンブルが絶妙に組み合わさって、まさに天上の音楽。いつまでもこの音楽に浸っていたいと思います。

第4楽章は「主役」の東京オペラシンガーズの歌声が圧巻でした。総勢52名。コロナ禍で人数を抑えていると思いますが、その合唱は十二分の迫力。オケとの音響バランスも丁度良く、合唱曲の楽しさを満喫です。この曲、やっぱり「合唱」ですね。むしろソロ陣が合唱の力強さにやや押され気味な印象でした(席が3階席の最深部だったからもしれません)。

尾高さんは全体のバランスを取りつつ、しっかりこの名曲の良さを、音楽に語らせます。N響もしっかり尾高氏のタクトに応え、1年を締めくくってくれました。

終演後は満員の聴衆からも惜しみない拍手。いつものN響定期とは違ったお客さんと思われる方も多く、雰囲気も違って新鮮です。

やっぱり、年末の締めは第九だなあ。あとは年越しを残すのみ。寒気が襲う冷たい空気の池袋の街を歩きながら、しみじみと季節を感じていました。

 

ベートーヴェン「第9」演奏会
2021年12月26日(日) 開演 2:00pm
東京芸術劇場 コンサートホール

ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」

指揮:尾高忠明

ソプラノ:森 麻季
メゾ・ソプラノ:加納悦子
テノール:櫻田 亮
バリトン:三原 剛

合唱: 東京オペラシンガーズ

Beethoven 9th Symphony Concert

Sunday, December 26, 2021 2:00p.m.
Tokyo Metropolitan Theatre 

Beethoven / Symphony No. 9 D Minor Op. 125 "Choral"

Tadaaki Otaka, conductor
Maki Mori, soprano
Etsuko Kanoh, mezzo soprano
Makoto Sakurada, tenor
Mika Kares, bass

Tokyo Opera Singers, chorus


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N響A定期、指揮:ガエタノ・デスピノーサ、シェーンベルク/浄められた夜 他

2021-12-26 07:30:20 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


(3週遅れの演奏会感想です)

コロナによる入国制限で指揮者、プログラムとも変更となった12月定期。当分、こうした形でのイレギュラーバウンドは避けられないでしょうが、今回のイレギュラーバウンドも難なく捌く(捌いているように見える、聴こえる)N響は流石です。

イタリア人指揮者のデスピノーザさん、過去にN響と何度か共演しているようですが、私は初めて聞く方です。
冒頭はブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」。最後に聞いたのは、2013年9月のブロムシュテットさんとの共演。その時の柔らかで、天国のいるような演奏がまだ脳裏に残っていたのですが、この日の演奏も美しいものでした。NHKホールの3階席ではなくて、ステージサイドの奏者に手が届くような距離で聴くアンサンブルや木管の響きにうっとりでした。

2曲目はバルトークのピアノ協奏曲第3番。実演で聴くのは初めてです。映画「蜂蜜と遠雷」で風間塵が弾いたのを観て、是非、一度、生で聴いてみたいと思っていたのが実現しました。私としては、この日のメインです。

ピアノソロの小林さんも初めてです。なじみがあるとはとても言えないバルトークの音楽なのですが、第一楽章からワクワクし、格好いい。以下、恩田陸さんの『蜂蜜と遠雷』からの引用です。
「バルトークのメロディには、他の作曲家にはない土着性がある。沈んだ森の色、風の色、水の色がある。」その通りでした。

 つづく第2楽章は瞑想的な音楽。沈思するという感じです。
「ゆったりとした、厳かなオーケストラの導入部。ゆっくりと、木立の中を鹿が歩いてくるのが見えるようだ。
 かすかに靄が立ちこめ、うっすらと肌寒く、どこか神秘的な空気がぴんと張りつめた朝。
 まだ、夜は明けきらず、息を潜めるような静けさが辺りに漂っている。」(『蜂蜜と遠雷』より)

 そして、第3楽章はピアノからはじけ出る音がピカピカ光り輝いているのが見えるような音楽です。
「わくわくする、躍動感溢れるバルトークの世界が、スリルとスピードを伴って輝かしく膨れ上がる。」

ソロの小林さんは、どっかの大学院の研究室にでもいらっしゃるような雰囲気で、堅実にしっかりと音を出してます。華美に振舞うようなところもなく誠実に音楽に向き合っている感じが好印象でした。また、是非、聴いてみたい演奏家ですね。

そして、後半のシューンベルクの「浄められた夜」。音楽史や音楽理論で頻繁に目にするシューンベルグの代表作も、聞くのはじめて。弦楽器だけの構成で、コントラバスが最後列で一列に並ぶ隊形です。重層的に奏でられる弦楽器のアンサンブルが味わい深い。ただ、前半戦でエネルギーを使い果たした感がある私は、第4曲あたりで猛烈な睡魔に襲われダウン。第5曲終了間際に復活し、最終曲はしっかり聞きましたが、途中離脱したのが何とも残念でした。

ユニークなプログラムで演奏も素晴らしいものでしたが、入りは7割弱といった感じでしたが、内容濃く、充実した演奏会でした。

第1945回 定期公演 池袋Aプログラム
2021年12月5日(日)開演 2:00pm

東京芸術劇場 コンサートホール

指揮:ガエタノ・デスピノーサ※
ピアノ:小林海都※

※当初出演予定の山田和樹(指揮)、佐々木典子(ソプラノ)から変更

ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
バルトーク/ピアノ協奏曲 第3番※
シェーンベルク/浄められた夜 作品4

No. 1945 Subscription (Ikebukuro Program A)
Sunday, December 5, 2021 2:00p.m.

Tokyo Metropolitan Theatre

Gaetano d'Espinosa, conductor
Kaito Kobayashi, piano

Brahms / "Variationen über ein Thema von Haydn," Op. 56a
Bartók / Piano Concerto No. 3*
Schönberg / "Verklärte Nacht," Op. 4
*Artists and program have been changed from initially scheduled Kazuki Yamada (Cond.) and Noriko Sasaki (soprano).


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【近美コレクション】コレクション・ストーリーズ ヨーロッパの版画 @札幌、北海道立近代美術館

2021-12-23 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

 少し隙間時間があったので、タクシー使って北海道立近代美術館を訪れました。北海道立近代美術館のコレクションからの西洋版画展がお目当てです。

 デューラー、レンブラント、ホガース、ゴヤなどの西洋画家の巨人たちの版画が展示されています。細部まで丁寧に描写された版画は、いったいどうやってここまで版画でできるのかとっても不思議。大雪のせいで訪問者もほとんどおらず、作品を独り占め、大接近可の鑑賞となりました。

《ホガースの侵略(イギリス):いろんな寓意が隠れてるらしいが、読み取れず》

 たまたまだと思うのですが、テーマにはキリスト教や戦争を描いたものが多く展示されています。デューラーが受難をテーマに連作しているのを見る一方で、ホガースやゴヤらは、英仏や仏蘭西・スペインの戦争を描き、拷問、処刑など勝者が敗者に対していかに極悪非道な行為等を行ってきたかが描かれており、人間の罪深さに思いが及びます。

 1時間にも満たない滞在でしたが、出張先の隙間時間活用としてはこれ以上は無いぐらいの満足度でした。

《美術館の外は大雪》

2021年12月18日訪問

PS:タクシーの運転手さんから、「お客さん、今日東京に帰るんだったら、2,3時間前には空港に行く感じで予定たてたほうが良いよ。飛行機よりも電車のほうが雪で止まるからね。」とのアドバイスを踏まえ、ビジネス・ランチは短めに済ませ、空港に向かいました。運ちゃんの言う通り、エアポート快速は、間引き運転かつゆっくり運転で、通常の倍以上の時間がかかり、飛行機出発ぎりぎりであせりました。冬の北海道、要注意です。

 


《雪少なく、太陽も照らす新千歳空港:内陸の千歳と日本海側の札幌は全然天候が違うことを初めて知りました》


《夕闇の富士山が美しい》


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新国立劇場演劇部門 こつこつプロジェクト 「あーぶくたった、にいたった」(作・別役 実、演出・西沢栄治)

2021-12-20 08:15:29 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)



1年間試演を重ね、その都度、演出家と芸術監督、製作スタッフが協議し、方向性や展望等を見極めていく新国立劇場演劇部門の「こつこつプロジェクト」の公演ということで楽しみにしていたのだが、残念ながら私の理解を超えた舞台で、首を傾げたまま終わってしまった。

昭和の「小市民」を10のエピソードで描いているのだが、どうも共感できるところが少ない。私自身、昭和の時代を相当年生きているのだが、どうも感覚が合わない(もちろん戦後だけをとっても昭和は40年以上あるからそれぞれいろいろあるのだろうけど)。これが昭和の小市民なのかなあ・・・という思いが最後まで抜けなかった。

脚本の別役実さんは「日本の不条理演劇を確立した第一人者」(Wiki)ということで、相当に高名な方のようだが、私には難しすぎた。個々のエピソードの位置づけ、話の展開、相互の関連がわかりにくい。さらに、「あれ」という指示語が多くの場面で連発されるのだが、確かに日常で使うことは場面は多いだろうが、舞台で多く使われるとかえって不自然さが耳についてしまう。脚本家の意図が良くわからなかった。

世の不条理を描いた不条理劇という分野があって、本劇はそれに該当するようだが、結局、何を描こうとしているのか私にはさっぱりわからずじまいで、消化不良感が大きい。役者さんはそれぞれ熱演だったので、違和感は作品そのものにあったのだろう。

演劇初心者の単なる感想なので、このコメントで不快に思う人がいらしたら、はなはだ申し訳ないのだが、私のストライクゾーンからは外れた舞台であった。

2021年12月8日観劇

 

あーぶくたった、にいたった
Bubbling and Boiling
公演期間:
2021年 12月7日[火]~12月19日[日]
予定上演時間:
1時間45分 (全10場 105分 休憩なし)

スタッフ
【作】別役 実
【演出】西沢栄治
【美術】長田佳代子
【照明】鈴木武人
【音響】信澤祐介
【衣裳】中村洋一
【ヘアメイク】高村マドカ
【演出助手】杉浦一輝
【舞台監督】川除 学

キャスト
山森大輔
浅野令子
木下藤次郎
稲川実代子
龍 昇


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統計以来最大の積雪下の北大キャンパス @札幌

2021-12-19 07:57:42 | 日記 (2012.8~)

年内最後の出張は札幌。日本列島を襲った寒波の中、統計以来(1999年以降)最大と報道された24時間積雪55センチという記録的な日とフルに被った滞在となりました。

札幌入りした金曜日は顧客との商談、社内会議、ビジネスディナーと立て続けのスケジュールで、仕事以外はホテル近くのラーメン屋さんでラーメンを夜食として頂いたぐらい。ただ、翌日の土曜日の予定は、パートナー会社とのランチミーティングのみでしたので、空き時間に雪の札幌を楽しみました。

朝一番で北海道大学のキャンパスを訪問。3年前の夏に初めて訪れ、緑一杯のキャンパスの美しさにすっかり惚れこみました。零下8度の体が縮む寒さの中の、雪化粧したキャンパスも格別の美しさです。なんの雪道対策のない革靴での歩行だったので、途中、雪の下に隠れた氷に足を滑らせ続けざまに転倒すること3回。お尻やら腕にかなりのダメージ受けましたが、とりあえず大事には至りませんでした。


《北大正門》


《夏は緑一杯の中央ローン》


《古河講堂》


《キャンパス内を雪かき車が走ります》

《ここを普通の革靴で歩くのは無理ありました》

《ポプラ並木》

嬉しかったのは、途中、奇跡的に青空が15分ほど覗き、朝日に照らされてキャンパスが全く別の姿となったのを目撃。キャンパスの輝く美しさ、青空の透き通るような青さは、3回の転倒ショックをすっかり忘れさせてくれる素晴らしさでした。




《北大総合博物館》





名残惜しく、インフォメーションセンター「エルムの森」に併設されたCafe「カフェdeごはん」で一服。まだ開店間もない時間帯のため、私の他には1組のお客さんのみ。美味しい有機コーヒーを頂き、冷えた体を温めました。



雪景色だけでなくて、大学のキャンパスって、未来に向かって自分自身を前進させるエネルギーを与えてくれる不思議な力がありますね。いっぱいの元気を貰って、キャンパスを後にしました。

2021年12月18日 8:15AM~9:30AM


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水野敬也『夢をかなえるゾウ1』(文響社、2021)

2021-12-17 09:01:48 | 


2007年に初版された同書の加筆・修正版。自己啓発書としては相当有名なロングセラーだが、読んだのは初めて。

成功を夢見つつ腰が据わらない青年が、ゾウの頭を持つ神ガネーシャと出会い、2人の対話・出来事を通じ、人生の教訓を学び、成長する物語。

物語形式かつガネーシャが関西弁なので説教臭さが抑えられ、しかも「教え」は極めてまっとうなので、自己啓発書でしばしば感じる上から目線の嫌味を感じずに読み進めることができる。

個人的に膝を打ったのは、29の教えの中の「まっすぐ帰宅する」という教えにおけるガネーシャのお説教。会社の帰りに同僚に誘われ、呑んで酔っ払って帰ってきた青年に対して

「ええか、まず誘われて行くちゅうことなんやけど。これって、要するに『反応』しちょるってことやろ。(中略)世の中のほとんどの人間は反応して生きてねんや。・・・そうや、自分から世の中に働きかけるやのうて、自分の周囲に「反応」しとるだけなんや。・・・反応し続けて一生終わるんや。・・・自分の人生手に入れとるやつらはな、全部自分で考えて計画立てて、その計画通りになるように、自分から世界に働きかけていくんや。」

おー、なるほど。耳が痛いわ。

他にも、教訓のなかでなるほどと思ったのをいくつか挙げると・・・
・「一日何かをやめてみる」(時間がパンパンに入った器から何かを外に出してみる。そしたら空いた場所に新しい何かが入ってくる。勝手に何かが入ってくる。)
・「ただでもらう」(どんな小さなことでも、安いものでも、人からただでもらうことを意識してみると、自分のコミュニケーションがかわってくる)
・「身近にいる一番大事な人を喜ばせる」(人はじぶんにとってどうでもいい人には気を遣うが、親のような自分にとって一番大事な人を一番ぞんざいに扱いがち)

「成功」というよりも、人生の毎日をシンプルに大切に生きるためのアドバイス集だ。

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中根千枝『タテ社会の人間関係 単一社会の理論』 (講談社現代新書、1967)

2021-12-15 07:30:00 | 



今年10月、著名な社会人類学者であった中根千枝さんが他界されたとの報道を目にして、本棚に眠っていた『タテ社会の人間関係』を再読してみた。学生時代に社会学の授業のテキストの1冊として読んだ記憶があるのだが、全く内容は覚えてなかった。だが、1967年初版の本書、今読んでも全く古びていないのが驚きであり、その理論は多くの日本社会、日本人論の源流になっていることが分かる。素晴らしい一冊である。

著者は日本社会の構造をはかる物差し(文化人類学でいう「社会構造」)を探求する。社会集団分析を「資格」(社会的個人の一定の属性)と「場」(一定の地域とか所属機関などのように、一定の枠によって、一定の個人が集団を構成)の切り口で設定し、日本の社会をより「場」を重視する社会と分析する。「場」の共通性で構成された日本の集団は、序列による「タテ」の関係が強いのが特徴である。それが、企業における終身雇用、(企業の枠を超えた連帯が弱い)労働組合、構造的にも情緒的にも制約を受けて部下の幹部に引きずられるリーダー、論理的、宗教的ではなく対人関係が自己の行動や位置づけの尺度となる道徳社会の形成といったことにつながっていく。

もちろん日本や日本人も本書発行後の50年の間に、技術進歩、グローバル化、成熟化といった環境変化に対応し、社会も少しづつは変化している。それでも、その根っこにあるDNA的なものは変わっていないことが良くわかる。今、様々なリーダーシップ論や組織論で語られる事象の説明が論理的、学問的に半世紀以上も前に出版された本書に記述されていることは驚き以外の何物でもない。まさに温故知新の一冊と言える。

《目次》
●日本の社会を新しく解明する
●「社会構造」の探究
●「場」による集団の特性
●「ウチの者」「ヨソ者」意識
●「タテ」組織による序列の発達
●集団の構造的特色
●日本的集団の弱点と長所
●リーダーと集団の関係
●人と人との関係

 

2023年12月12日 再読メモ

【集団分析のフレーㇺワーク:「資格」と「場」】

  • 社会集団の構成の第一条件が、それを構成する個人の「資格」の共通性にあるものと、「場」の共通性によるもの。・・・どの社会においても個人は資格と場による社会集団、あるいは社会層に属している。(pp.26-27)
  • 場の共通性によって構成された集団は、枠によって閉ざされた世界を形成し(孤立性)、成員のエモーショナルな全面的参加により、一体感が醸成されて、集団として強い機能を持つようになる。(p.70)

    • 集団分析の枠組みとして、「資格」×「場」という切り口を学ぶ
    • 日本の集団が「場」の共通性に特徴付けられるのも納得感高い(就職でなくて就社、自己紹介の仕方、愛社精神、非社交性・・・)

【組織の構造分析のカギ:「タテ」と「ヨコ」】

  • 場の共通性により構成された組織(資格を異なるものを包含)は、タテの関係が機能を持ち、資格により集団が構成される場合はヨコの関係が機能を持つ。(p.71)
  • タテの組織の構成員の構造原理として、何らかの方法で「差」が設定され、精緻な「序列」が出来上がる。(p.72)
  • (タテの)組織構造の長所は、リーダーから末端成員までの伝達が、非常に迅速に行われるということ、そして、動員力に富んでいることである。(p.128)
    • 組織分析の枠組みとして「タテ」「ヨコ」の切り口を学ぶ
    • 自社における、タテ組織の「序列」の蔓延を再認識。(年次、社員グレード、職位、在級年数、学歴・・・)

【タテ社会日本におけるリーダーシップ】

  • タテのつながりをもつ集団組織においてはリーダシップは構造的にも情的にも制約を受ける。ディレクターシップを持ちえず、権限が非常に小さい。リーダーと部下との相対的な力関係によって、リーダーの在り方が決まってくるのである。(pp.139‐144)
  • 天才的な能力よりも、人間に対する理解力・包容力をもつということが、何よりも日本社会におけるリーダーの資格。・・・子分を情的に把握し、それによって彼らと密着し「タテ」の関係につながらない限り、良きリーダーにはなりえないのである。(p.148)
    • 日本人のリーダーシップの特徴を集団構造から説明した点が新鮮であった
    • 巷のリーダーシップ研修の一定部分は、「タテ組織」におけるリーダシップの取り方であることを認識

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満腹感が凄い! N響 12⽉C定期、ガエタノ・デスピノーサ 指揮、ムソルグスキー(ラヴェル編)組曲「展覧会の絵」ほか

2021-12-12 07:00:18 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


前週に続いてのデスピノーサさんとN響の演奏会。今日は会場良く埋まっていました。ぱっと見、満員に近い入りではなかったでしょうか。

一曲目のチャイコフスキー「ロココ風の主題による変奏曲」は、初めて耳にする佐藤晴馬さんのチェロが絶品でした。紡がれる音は、強く、太くかつ優しい。加えて、歌心に満ちたものです。ホールの隅々にまでチェロの音が染みわたる空間がとっても心地よかった。奏者の希望により、楽譜は良く演奏されるフィッツェンハーゲン版ではなく原典版が使われ、通常とは曲構成らが異なったようですが、版とは無関係にこの音楽自体の優雅な雰囲気に酔いました。

さらにアンコール曲も繊細かつ魅力的な小品で、うれしいお口直しでした。チェロの腕だけでなく、曲選びもセンスいいですね。(ツイッター情報ですと「カタルーニャ民謡 鳥の歌」とのことです。)今回は代役で登場でしたが、嬉しい誤算とはこのことでしょう。佐藤晴馬さん要マークです。

後半は「展覧会の絵」。N響の個人技と合奏力の実力が如何なく発揮された演奏でした。冒頭のトランペットのファンファーレに始まり、パーツパーツで入る管楽器の見せ場は聴きごたえたっぷり。そして、ラヴェルのオーケストレーションの面白さが堪能できるN響のアンサンブルも圧巻です。デスピノーサさんの指揮ぶりもとってもバランスの取れたものでした。しつこすぎず、かといってあっさりしているわけでもなく、この作品の面白さ、楽しさをしっかり聴かせてくれました。ここ数年、色んなオーケストラで実演に接する機会が多かった曲ですが、今回の聴きごたえや満足感は群を抜いていました。当然、会場からは万雷の拍手。

今シーズンから休憩なしの60分前後の簡易プログラムとなったC定期ですが、この日の演奏だとこれだけで十分お腹一杯ですね。幸せ気分に浸りながら、帰路につきました。


第1946回 定期公演 池袋Cプログラム
2021年12月11日(土)開場 1:00pm 開演 2:00pm(休憩なし)
東京芸術劇場 コンサートホール

チャイコフスキー/ロココ風の主題による変奏曲 作品33*
ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」
(※フィッツェンハーゲン版での演奏を予定していたが、出演者変更に伴い原典版による演奏に変更)

指揮:ガエタノ・デスピノーサ※
チェロ:佐藤晴真※
※当初出演予定のワシーリ・ペトレンコ(指揮)、ダニエル・ミュラー・ショット(チェロ)から変更。

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1年以上ぶりの出張 @金沢

2021-12-11 07:30:35 | 日記 (2012.8~)
オミクロン株が心配なこの頃ですが、第四波が来る前にということで、この1年間全く機会が作れなかった出張を敢行。金沢へ行って参りました。

もちろん自由時間は全くないので、唯一の楽しみはお食事。やっぱり金沢旨いです。身の締まった寒ブリが最高でした。


〈ホテル近くの居酒屋にて〉


〈これぞ寒ブリ!〉


〈ぶり大根〉


〈お肴ランチ定食〉


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堤 未果「デジタル・ファシズム  日本の資産と主権が消える」(NHK出版新書、2021)

2021-12-09 07:04:15 | 


日本中、国を挙げて進むディジタル化が日本人にもたらす危険について警鐘を鳴らす一冊。デジタル庁、スーパーシティ、スマフォ決済、デジタルマネー、オンライン教育といった旬なトピックが取り上げられている。

過去のブログエントリーで堤氏の「芸風」は批判的に紹介してきたが、本書においても、ファクトに基づく論理的、具体的な論考よりも、情緒的な反対意見や扇動的な文書が目立ち、論理が飛躍しすぎてついていけないところが多い。

デジタル化は常に光と影がつきまとうので、個人情報の扱いやデータ主権のありかた、「信用スコア」の危険性など、影の部分を取り上げて、読者に注意を促すのは大いに結構だと思うが、闇雲な批判と、具体性のない「べき論」は、万年野党の遠吠えにしか聞こえず残念だ。

個人的に新しい情報としては、米国のチャータースクール制度がビジネスと手を組んで利益至上主義に陥っているような現状もあるということ(これも氏の片面だけの情報を鵜吞みにできないところはあるかもしれない)。こうしたチャータースクールの負の側面は知らなかった。

また、取り上げられているテーマは、デジタル社会の社会的論点となるもので、読者が自分でデジタル化の功罪、自分自身への影響などを考えるには、本書の内容は別として、良いネタだとは思う。

謎なのは、これまでの氏の著作と同様、本書もアマゾンのレイティングでは高く評価されていることだ。私にとっては、いかにアマゾンのレーティングが信用できないかの見本となっている。

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晩秋の武蔵野路 @武蔵野・野川公園

2021-12-05 07:30:00 | 日記 (2012.8~)
 濃く抜けるような青空、眩しい太陽の光に誘われ、週末ジョギングで再び武蔵野・野川公園へ。落葉が進んでいるところはありますが、紅葉の赤、銀杏の黄色らが、これ以上は望めないような輝きを放ってました。


《野川公園 青空と雑木の複雑な色合いが美しい》


《銀杏の大木 黄色の絨毯が》




《なかなか私のスマフォでは捉えられてないのですが、燃えるような赤でした》



 今年は例年以上に武蔵野の紅葉が美しく感じます。きっと来週ぐらいには丸裸。今年最後と思いながら、堪能しました。

2021年12月4日

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谷崎潤一郎『春琴抄』(新潮文庫、1933年発表)

2021-12-04 07:30:00 | 


言わずと知れた谷崎潤一郎の代表作の一つ。20代の時に一度読んだきりだが、書棚から取って読み始めたらページをめくる手が止まらなくなった。

私の理解をはるかに超越した春琴と佐助の「愛」の形に圧倒される。文学、心理学、コミュニケーション学などの面から多面的な分析ができる作品だと思うが、分析など吹き飛ばすような、二人の強烈な個性の吸引力が凄まじい。

句読点の打ち方が現代と異なり、文章が切れても句点がない時もあれば、つけられている時もあり、現代人には読んでいて違和感がある文体なのだが、不思議にテンポよく読める。漢文の書き下し文のようなところもあるのだが、日本語として美しく、場面場面が明瞭に脳裏に浮かんでくる。

物語・人物の普通で無さと気品を感じる文章のアンマッチがなんとも絶妙だ。耽美主義を味わい尽くす誘惑にかられる危ない作品である。

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